木質バイオマスの利用が日本の森林の将来にどのように関わるのかー林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会(2)第2回(2020/9/15)

7月20日の第一回にに引き続き、8月27日第2回の「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」を傍聴しました。

第1回で提示された、本研究会で検討すべき論点に基づいて、久保山座長の検討方向に関する概説(左の図がその一部)のあと、7つの業界団体、3つの学術団体、1つの地方自治体の報告がありました。

そのすべての内容の資料と2時間のネット中継された録画が、第2回 林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会のページに掲載されています。

資料一覧表はこのページの末尾にも掲載しています。

そのすべてを紹介することはできませんが、研究会に課題全体像を詳しく紹介提示している「木質バイオマスエネルギー協会JWBA」の資料「木質バイオマスエネルギー利用の推進と燃料材の効率的な供給システムの構築」以下JWBA資料にもとづいて、ご紹介します。

ーーーーここからJWBA資料の概要

(日本の森林資源と燃料材の需給見通し)

日本の森林は蓄積が多くなっているけれど、ほかの国に比べると使われていない。

森林1ha当たりの木材生産量はドイツの4分の1以下(左の図)。

日本の建築需要は少し減る方向だが、燃材料としての需要は間違えなく増えそう。

木質バイオマスの燃料利用の供給体制をについての議論は日本の森林にとっても大切な課題。(でも課題がたくさん)

(木質バイオマス燃料供給の課題@ 山側の工夫、林地残材の有効活用など=森林資源の持続可能な利用)

他の潜在的な副産物にくらべて、林地残材の利用が進んでいない。(左図)

その他、あまり利用されていない広葉樹の利用の拡大、や、創生樹林の造成と燃料材としての利用も大切な課題。(右の図)

検討課題だが、課題も多い。

林野庁の提起していた「既存の木材利用との関係」、「森林の持続可能な利用」に関する検討事項でしょうか。

(木質バイオマス燃料供給の課題A 供給コストの低減)

「卒FIT後においても木質バイオマス発電が継続していくためには、発電コストの6〜7割を占める燃料材供給コストの低減が必要。

? このことは、今後、熱利用の拡大を図っていくためにも重要。熱利用に経済性を持たせていくためには、かかり増しにならざるを得ないイニシャルコストを、ランニングコストの低減で補っていけるビジネスモデルの構築が必要。

? そのため、燃料材供給としての効率性を追求し、12,000円/tの現状コストを低減し、8,000円/t程度で供給できるシステムの構築を目指す。

として具体的提案をしています。

「燃料材の効率的なシステムを作り上げるために、それぞれの地域(発電所を中心に100km 圏程度)において、関係者の連携の下、燃料材供給効率化実施計画を作成する。

実施計画を実行しようとする事業体には、土場整備や機械購入等について補助の優先採択をする。」

など

このテーマについはたくさんの人が提案をしています。

エネ庁が一番最初に提示した「コスト低減について」の課題が重要なテーマになることは間違えなさそうですね。

この辺に関して、林野庁に対して、最近作業道への補助がおおくて、林道整備が少なくなっているが、林道整備が大切と、何人かが言われていました。

(燃料材供給の課題B 燃料チップの品質確保)

「発電の効率化を図るためには、水分が低く、形状のバラツキが少なく、かつ異物等の混入が少ないチップが安定的に確保されることが必要であるので、・・・「木質燃料価格を、絶乾基準(水分を控除した価格)あるいは、熱量ベース(水分等を考慮した燃料の持つ熱量で評価)とすることで、燃料品質と価格を連動させることが可能となり、品質向上、効率的な供給システム構築への動機づけになる。」と提案

燃料材の品質を認証し保証する制度の構築が必要である(右の図)

(燃料材供給の課題C 持続性の確保)

? 森林資源の成熟に伴い我が国の森林施業は、要間伐林分がある一方、主伐(皆伐)が増加するが、伐採後の更新がされなければ、将来の持続性が確保できず、二酸化炭素吸収や森林の多面的公益機能の発揮が危惧される。
? このため、森林政策と連動しつつ、更新が確保されているかの確認が重要。
である。

人工林主伐=A、B材生産と合わせて燃料材生産が行われるので、その中で更新が確保されるよう対応
広葉樹林主伐=萌芽更新の確保、一部補植の実施
早生樹林主伐=萌芽更新の確保

(木質バイオマスの熱利用)

最近の木質バイオマス熱利用の拡大は停滞している。

・再生可能熱利用を推進すべきとする関係者の認識が低く、コスト的にも重油等に対する競争力が出来ていない。
・イニシャルコストが高いうえに、効率的に運営される成功モデルが少なく、それを見習っての横展開が出来ていない。
・拡大が停滞しているために、メーカー等の改革意欲が乏しく、適切にシステム設計、運営できるエンジニアが少ない。

大きな課題

左の図のような提案

(木質バイオマスが育む多様化価値)

木質バイオマス発電は再生可能エネルギーとして化石燃料を代替するのみならず、多様な価値を有しています。

特に地域においては、将来にわたって継続的に経営されることが必要であり、そのためのあり方と対策を検討することが大切です。

(以上)

ーーーーここまでJWBA資料概要

検討課題を幅広くカバーした木質バイオマスエネルギー協会の資料を紹介してきました。

下の一覧表にあるそれぞれの報告は、発電事業者、ある種の燃料供給事業者がそれぞれ抱える問題を提示しているので大切なのですが、全体像を提示しているのは、座長の説明のほかは、JWBAの報告だったので紹介しました。

検討課題の概要はこんなところでしょうか。森林の持続可能な経営の部分がすこし薄かったかもしれませんが。

((岡山県真庭市の先進事例)

(真庭バイオマス発電所)

もう一つ全体像がわかる大切な方向が標記の「広葉樹の活用による自然エネルギー100%のまちづくり」です。

鳥取県境の岡山県山間部の真庭市に、地域内林業・木材業関係者と市で真庭バイオマス発電所ができました(2013年設立)。

規模:10,000KW(未利用材、製材・端材、樹皮を活用)
稼働率:103%(前年期稼働率105%)
利用燃料:木質バイオマス約107,500t/年(計画148,000t/年)
売上;約23.2億円
(未利用木:一般木=5:5)
燃料購入(チップ);約14.2億円
石油代替;25.1億円相当

もちろん固定価格買い取り制度で運営されています。

(地元の資源に支えられた森里側海連携)

環境省の“Local SDGs”「地域循環共生圏」の考えに沿った森里川海連携。(右の図)

近世から戦後にかけて、たたら製鉄や薪炭生産が盛んだったので、豊富tな広葉樹林がを利用sるための移動式チッパーの導入。

ここに導いたトピックスが満載です。

(FITが終わった後はどうなるの)

ですが、一番のポイントは、この研究会の一番の課題でもあるFIT後にこの発電所がどうなるのか?

シッカリした道筋が固まっているわけではないようですが・・・・がどこまで進められるのか?そして、市場競争が可能なのか?

地域のレジリエンス強化に資する地域活用電源の方向性?災害時系統電力が停止した場合に地域にどう貢献できるのか?(地域マイクログリッド構築事業)

今回の研究会の検討の根拠となるであろうバックグラウンドデータを提供してくれる大切な情報です。

その他に、資料2-9から11までは学術研究者からの注意点是非資料を見てくださいね。

 

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