木質バイオマスの利用が日本の森林の将来にどのように関わるのかー林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会の行方(2020/8/15)

7月20日エネ庁と林野庁が一緒に「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」を開催、というので、傍聴しました(オンライン傍聴

(今後20年間発電所に木質バイオマスが供給できるのですか?)

「木質バイオマス発電の発電事業としての自立化と、木質バイオマス 燃料の供給元としての森林の持続可能性の確保を両立させるため、経済産業省、農 林水産省、及び関係事業者団体等が、課題認識を共有するとともに、課題解決に向 けた方策を官民連携により検討」するのだそうです(研究会の設立について)。

冒頭挨拶にたった、エネ庁松山省エネルギー新エネルギー部長(当日付で交替なので前部長)が、ここにいたった思いを語りましたが、「FIT法ができて経済的なインセンティブにより全国に木質バイオマス発電所ができて・・・それは喜ばしいことなのですが、今後20年も先まで供給が可能なのか?森林の持続可能性は大丈夫なのか?などの問題意識が共有され、・・・未来に向けた持続可能な木質バイオマス発電・森林林業の在り方を議論する待ちに待った機会です」

エネ庁の幹部が林野行政を心配?ではないと思いますが、発電事業者のマーケット側のエネ庁が、大規模なインフラ投資が必要な事業者の立場にたって、森林由来のバイオマスを原料にして大丈夫なのか?というのは分かり易い問題提起。それを林野庁側がどんな議論をしてくのか・・楽しみです。

双方の説明資料が公開されているのでそれにそって、若干説明してみます。

(時限的な制度FITの次の段階はどうなる?)

エネ庁の説明資料の題名は「持続可能な木質外オマス発電について

この研究会がFIT(固定価格買取制度)という時期を限った経済的インセンティブを与えているが次はどうするのか?という大きな枠組みでやっているのですが(FIT法に20年度末までに抜本的な見直しを行うと規定)、そのことについてバイオマスだけでなく全体の枠組みを詳しく説明してあって勉強になります。

エネ庁の資料は@再生可能なエネルギー政策全体の動向、A木質バイオマスのエネルギー利用の現状と課題の二部構成

左の図は「再生可能エネルギー政策」という総論部分に掲載してある1枚の図です。

大規模な太陽光と風力発電は競争力があるので、電力市場の中に軟着陸させる競争電力(左側)。それではバイオマスは?「地域活用電力」(右側)なのだそうです。

キーワードは地域のレジリエンス(「災害への対応力」でしょうか)強化。自治体の防災計画などに位置づけられることを前提にFITの助成を続けていこう、といったアイディアを検討しようということのようです。

それでは輸入バイオマスはどうなるの?災害時以外の発電は誰が買うの?などなどたくさん課題がありそうですね。

(本研究会で検討すべき主な論点(案)))

次の表は前出のエネ庁説明資料林野庁の説明資料の中で、「研究会で検討すべき主な論点」と題する二つの図を並べたものです

双方が案としていいるので、また、今回の検討会ですりあわせの議論をしたようでもないので、それぞれを皆議論していきますということだと思います。

(事業の持続可能性)

双方で共通しているのが2番目の事業の持続可能性です。冒頭の松山前部長の指摘のとおり。

林野庁の資料には「主伐の増加や伐採跡地の放置、それによる森林荒廃の懸念の声も挙がっているが、FIT法施行規則第5条第1項第11号ハで定められた、安定的なバイオマス調達の見込みは担保されているか」と大変ストレートな課題提示。

エネ庁のほうには、@木質バイオマス燃料の品質安定化のための適正な評価方法、A適正な調達範囲を検討するための輸送過程などの温室効果ガスGHG排出量の問題など、大切な課題が並びます。

(その他の課題)

あとは、エネ庁が当然ながら、「コスト低減について」。「FIT制度に基づく買取期間終了後共倒れリスク回避のため」ということばが並んでいます。前段のようにバイオマスは自立できない、という前提でなくうまくいけば自立。特に輸入バイオマスなどがどうなるか、大切なポイントだと思います。

林野庁は、@関係業界が心配している既存の木材利用との競合と、A地域エネルギーに踏み出していく場合の熱利用の推進。の二つがなならんでいます。

今後どんなスケジュールでやっていくのか不明な点もありますが、次回は8月下旬だそうです。

そのサイトでもしっかりフォローしていきますね。

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