バイオマス持続可能性WG第3次中間整理ーバイオマスFITに新たな制度(2023/7/15) 

経産省でバイオマス持続可能性WGが開催されていまることは報告していました。

問われる 森林バイオマスの持続可能性 (2019/12/06)

7月4日に第22回WG会合が開催され第三次中間報告公表ました。

いよいよ、遠距離の輸入バイオマスにブレーキをかける(ということが制度の趣旨ではないですが、皆が期待する「バイオマス発電の輸入燃料が急増。日本の電力料金の海外流出は増えるばかり」)、ライフサイクルGHGの規則が実施に移されます。

(バイオマス燃料のライフサイクルGHG)

発電所に投入する前の過程で燃料の製造輸送過程で排出されるGHGをカウントして規制する欧州で出発したシステムについては、このサイトでもずーといおかけてきました。

固体木質バイオマスエネルギーの需給動向と環境基準の展開の可能性ー森林学会報告(2017/4/23)
森林バイオマス発電の次のステップは?-FIT提案セミナー(2019/10/15)_固定価格買取制度(FIT)におけるバイオマス発電に、ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出評価の導入を!

今回の中間整理で、2021年度までに認定されていた発電所はライフサイクルGHGの自主的情報開示をする、22年度以降の認定事業体は認定時にGHGを確認できる認証を取得、基準値を下回ることを申請し、運転が開始したら基準を下回ることを報告(経過措置3年間で準備)、となりました(p32)。

そしてどの程度の数値となるか?という既定値(産地ごと製品ごとの推定GHG)については、勉強部屋で途中経過の数値に基づく計算をして報告してきましたが、(FIT/FIP制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の既定値について (2023/1/15)、(それに基づいて(とは書いてありませんがきっと参考にしてもらったはず))確定数値が公表されました(少し変なところがありますが)。概要以下の通りです。

木質バイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量(既定値による算出)
  製品   由来 GHG排出量  単位g-CO2/MJ燃料
輸入  国産 
 チップ    林地残材  20.20  8.26
 伐採木材  20.06  8.69
 製材は材  18.97  6.02
 ペレット    林地残材  30.77  26.70
 伐採木材  32.62  27.15
 製材は材  18.47  17.12
表16から表23
 注:輸入距離8000km(北米を念頭)
国産の輸送距離原木50km、製品50km
人工乾燥を想定

上記の表の作成過程のエクセルファイルをこちらに置いておきます

(どの程度のインパクトがあるの?)

この数値がどの程度の影響をあたえるかですが、2021年度の経産省バイオマス持続可能性ワーキンググループで提示された、バイオマス発電のGHG基準は、2030年の化石燃料を使う火力発電の加重平均、180g-CO₂/MJ電力を比較対象として、新規認定にバイオマス発電のGHG排出を2030年までは50%減、2030年以降は70%減を求めるというものだとすると180g-CO₂/MJ電力の70%減は、54g-CO₂/MJ電力です(これが30年以降のハードル、それまでは半減なので90g-CO₂/MJ電力)。

つまり、1MJの電力を発電すときに排出されれるCO2は180gなので、2030年以降、それを発電する時に必要なバイオマス原料を供給するのにその製造輸送過程で排出されるGHGの上限値は54g-CO2(180gの30%)です。

2030年までは過渡的な措置として、90g-CO2(180gの50%)まで認めますけどね。

さて、1Mjの電力を発電するのに必要なバイオマスの量は何MJ燃料なのでしょうか?それが発電効率ですが、バイオマスの発電効率はおよそ20%と言われています

つまり、54g-CO₂/MJ電力という上限値のハードルは、20%の発電効率だと1MJの電気を発電するの5Mjの燃料を燃やす必要があるので、原料の供給過程のGHGが11g-CO₂/MJ燃料以上になるとブーブブー(FITの支援はだめ)になります。

そして暫定値の90g-CO₂/MJ電力は18g-CO₂/MJ燃料ですか。

上記の表でいうと、11g-CO2MJ燃料以下の燃料は、国産材チップだけ。18g-CO2MJ燃料以下だと輸入材チップがはいってきますが、いずれにしてもペレットは失格ですか。

(いろいろ工夫が必要で、智恵を絞りましょう)

だだ、上記の表は乾燥過程を化石資源の燃料を前提にしていますが、これがバイオマス燃料を使って乾燥させると・・・、すこし数値が下がってきます。

また、発電が熱電併給のように発電に活かされ燃焼エネルギーが熱利用される場合には発電効率がたかまります(p.24)。

さらに、既定値は安全率をみて保守的な数値が採用されており(例えば国産材のチップ加工過程など)よく、自分のプロセスのエネルギーの実測値を計測することも大切です。

その辺の含めて検討が必要になってきますね。

その他に、発電所によって発電効率も違ってくるでしょうし、ガス化発電か蒸気で発電かで、発電効率が違います。

いずれにしてもすこし、しっかり管理をしていかなければならなくなりそうで。既定値でなくしっかり自分のサプライチェーンを検討してみる必要がありますよーというのが、今回の中間整理で公表された既定値のメッセージです。

(FITの持続可能性基準など)

今回の文書は全部で37ページですが、第3章、第4章の28ページほどがライフサイクルGHGに関するものですが、あとは、第2章新規燃料の候補に係る食料競合の懸念に関する検討結果とFIT/FIP 制度における持続可能性基準、第5章.農産物の収穫に伴って生じるバイオマスに求める持続可能性基準に関する検討となっていて、ココナツやアーモンドなどのサトウキビの茎などの検討が進んでいます。

そして、これらの製品では栽培過程で土地利用変化への影響など持続可能性基準が具体化しています。

それに対して、木質バイオマスの持続可能性基準はどうなるのか?検討が進められていくのだと思います

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今回のページ作成過程でJWBA日本木質バイオマスエネルギー協会の関係者に、大変お世話になりました(が、内容はJWBAの意見ではなく勉強部屋の意見です)。
JWBAのポテンシャル。今後、発電所や原料供給事業者が智恵を絞る場合の相談相手になっていくんだと思います。

ご発展をお祈りしますー

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