循環資源としての木材利用拡大の方向性は?ー第15回世界林業大会持続可能な木材閣僚級会合から(2022/6/15)

世界林業大会で気になっていた木材に利用拡大の話。

前回は宣言の中に入っていなかったけど、今回はソウル宣言に木材利用拡大の話が1項目入りました。

そして、持続可能な木材に関する閣僚級会合が開催され(林野庁次長が出席左の図)、その会合での合意宣言Ministerial Call on Sustainable Woodが、4つのCongress outcomの1として公式ページに掲載されています。、

林野庁でもこの会合について解説ページを掲載しています「持続可能な木材利用」閣僚級フォーラム

閣僚宣言の林野庁訳が上記ページに掲載されているので、対訳形式で掲載します。

 Ministerial Call on Sustainable Wood 「持続可能な木材利用に関する閣僚宣言」 林野庁仮訳
Sustainable production and consumption of wood promotes forest conservation, enhancesthe value of forests and mitigates climate change. Building and living with wood responds to an increased demand for renewable materials and provides impetus for green recovery. Sustainable wood offers solutions across multiple value chains, including construction, furniture, packaging, renewable energy, biomaterials for clothing and biochemicals.    持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。木を用い た建築や木と共に生活することは、再生可能な材料への需要の高まりに対応し、グリー ンリカバリーの推進力となります。 持続可能な木材は、建設、包装、再生可能エネルギー、衣類や生化学物のバイオ素材 などを含む、多様なバリューチェーンにわたる解決策を提供します。
 Scaling-up bio-economies by using sustainable wood replacing carbon-intensive materials has high potential to become a cost-effective and innovative contribution at scale to achieve carbon neutrality and build more resilient economies.  炭素集約型材料の代わりに持続可能な木材を利用することによってバイオ・エコノミ ーを拡大させることは、カーボンニュートラルを達成し、より強靭な経済を構築するための、費用対効果が高く、革新的な貢献の拡大となる高い可能性を有しています。
 Sustainable wood-based solutions build synergies with broader aims for economic recovery, growth of rural areas and circular economy innovation. Sustainable wood-based solutions need to build on sustainable forest management and address risks of trade-offs with the multiple other roles of forests, such as carbon storage in forests, loss of biodiversity and of other essential forest services, including through enhanced management, restoration and afforestation efforts.  持続可能な木材を活用した解決策(sustainable wood-based solutions)は、経済回復、農村地域の成長、循環型経済への革新といった幅広い目的との相乗効果を生み出し ます。持続可能な木材を活用した解決策は、持続可能な森林管理に基づくと共に、森林における炭素貯蔵、生物多様性の喪失、その他の重要な森林サービスなど、森林の他の 多様な役割とのトレードオフのリスクに対処し、森林管理、劣化した森林の回復、造林 の取組を強化する必要があります。
 Building on our national policy experiences and commitments to use wood resources sustainably, and conscious of the need for cost-effective and equitable solutions at scale for value-added and carbon-neutral products, we have come together in the Ministerial Forum on Sustainable Wood to call for scaling-up sustainable wood-based pathways:  木材資源を持続可能な方法で使用するという我々の国家的な政策の経験と責務に基づ き、付加価値のあるカーボンニュートラルな製品には、費用対効果が高く公平な解決策 の拡大が必要であることを認識し、持続可能な木材を活用した(以下のような)方策(sustainable woodbased pathways)の拡大を呼びかけるために、我々は、持続可能な木材利用に関する閣僚級フォーラムに集まりました。
− to address the lack of awareness of their potential;
− to enhance global and regional policy dialogues on pathways and related synergies and trade-offs and ways to strengthen investments;
− to improve modalities to promote technical exchange, sharing of experiences and learning in order to drive innovations, from sustainable forest management and efficient wood value chains to sustainable wood use;
− to significantly increase the use of sustainable wood-based solutions within Nationally Determined Contributions by 2030.
① 持続可能な木材の可能性に対する認識の向上
②関連する相乗効果とトレードオフ、及び投資を強化する方法に係るグローバル及び地域的な政策対話の強化
③持続可能な森林管理、効率的な木材バリューチェーン、持続可能な木材の利用に関するイノベーションを推進するための技術交流、経験の共有を促進する方法の改善
④2030 年までの「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」におけ る持続可能な木材を活用した解決策の大幅な増加
 We also commit to join forces together to promote enhanced policy and technical dialogue and exchange among producer and consumer countries and key stakeholders to develop the necessary momentum and actions at scale, and invite the Food and Agriculture Organization of the United Nations and members of the Collaborative Partnership of Forests (CPF) to support our efforts.  また、我々は、持続可能な木材利用の機運を高め、行動を拡大するための、政策の強 化と技術的対話、国及び主要な利害関係者間の交流等を推進するために共に力を合わせ ると共に、国連食糧農業機関(FAO)と森林に関する協調パートナーシップ(CPF)のメ ンバーによる支援を歓迎します。
 We are convinced that mobilizing the full potential of sustainable wood will enable us to build more carbonneutral and resilient economies and progress towards more sustainable societies.  我々は、持続可能な木材の可能性を最大限に追求することで、よりカーボンニュート ラルで強靭な経済を構築し、より持続可能な社会に向けて前進できると確信していま す。
 The World Forestry Congress Ministerial Call on Sustainable Wood was initiated by the following country representatives on 3 May 2022, at the XV World Forestry Congress:  持続可能な木材利用に関する世界林業会議閣僚宣言は、2022 年5月3日の第 15 回世界 林業会議において、以下の国の代表者によって発議されました。
 Hon. Choi Byeong-Am, Minister of Korea Forest Service, Republic of Korea
- Hon. Jules Doret Ndongo, Minister of Forestry and Wildlife, Republic of Cameroon
- Hon. Orita Hiroshi, Deputy Director General of Japan Forestry Agency, Japan
- Hon. Maria Patek, Deputy Minister of Agriculture, Regions and Tourism, Republic of Austria
- Hon. Hilario López Córdova, Executive Director of the National Forest and Wildlife Service, Republic of Peru on behalf of Hon. Óscar Zea Choquechambi, Minister of Agricultural Development and Irrigation, Republic of Peru
- Hon. Lee White, Minister of Water, Forest, the Sea and Environment, Gabonese Republic
大韓民国山林庁長官 チェ・ビョンアム
カメルーン森林・野生動物省大臣 ジュレス・ドレット・ンドンゴ
日本国林野庁次長 織田央
オーストリア農業・地域・観光省副大臣 マリア・パテック
ペルー農業開発灌漑省大臣代理 森林・野生動物庁長官 ロペス・コルドバ
ガボン水・森林・海洋環境省大臣 リー・ホワイト

(「持続可能な木材」とは何?)

世界林業大会の歴史の中で、最初の木材利用促進の合意宣言が「持続可能な木材の閣僚宣言」だということは、インパクトがありますね。あまり具体的な行動提起ではないかと思いますが、「持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。」

議論の中でなにが、持続可能な木材なのですか?「持続可能な木材の定義が重要」という指摘がありました(コンゴ共和国(森林・経済省マトンゴ大臣))が、宣言の中には記載されていません。合意された4つの方策(pathways)の最初の2つ、①持続可能な木材の可能性に対する認識の向上、② 関連する相乗効果とトレードオフ、及び投資を強化する方法に係るグローバル及び地域的な政策対話の強化、 の中で、持続可能性の定義が議論されえていくのでしょう

(バリューチェーンとクリーンウッド法)

pathewayの3つめは、③持続可能な森林管理、効率的な木材バリューチェーン、持続可能な木材の利用に関するイノベーションを推進するための技術交流、経験の共有を促進する方法の改善

ビジネスの中で、川上の持続可能な森林情報を川下に伝えていく、バリューチェーンですね。

FSCとかPEFCなど第三者が管理する方法が、効率的なのか?日本のクリーンウッド法の次の段階の議論がこの辺に大切な役割があるんでないかと思います

(パリ条約の「国の決定する貢献」NDC)

合意された最後の方策pathwayは④2030 年までの「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」におけ る持続可能な木材を活用した解決策の大幅な増加

全体的に皆で一緒に頑張りましょうというトーンの宣言の中で、非常に具体的な方策が示されているのが、この項目ですね。

昨年の10月に決定した、日本のNDCをもう一度読んでみました。日本のNDC(国が決定する貢献) 国連に提出する日本のNDC(国が決定する貢献)は、別紙とする。 令和 3年 10 月 22 日 地球温暖化対策推進本部決定

森林と木材に関する記載は、以下の通り

森林木材に関する具体的数値:我が国の温室効果ガス削減目標(基準となる2013年の1408百万トンCO2から2013年760同まで減らす中で、吸収量が46同(7%)を負担
その他森林木材に関する記載事項:下表の通り
 様式  日本のNDC記載事項
 決定1/CP.21 パラグラフ28 で言及される、国が決定する貢献の明確性、透明性及び理解のための情報(決定4/CMA1 及び付属文書1)  
 5.人為起源の温室効果ガス排出量、及び、該当する場合は吸収量の算定及び計上のためのものを含む、前提条件及び方法論的アプローチ  
 (a) 決定1/CP.21 パラグラフ31 及びCMA が採択した計上の指針と整合した締約国の国が決定する貢献に対応する人為起源の温室効果ガス排出量及び吸収量の計上に用いる前提条件及び方法論的アプローチ  森林等の吸収源対策による吸収量は、京都議定書の計上方法等に基づき算定する。
なお、算定方法は、今後の算定ルールに関する国際交渉等により変更の可能性がある。
 (e)(ii)
伐採木材製品からの排出・吸収量を計上するために用いられたアプローチ
 我が国は、伐採木材製品による炭素蓄積変化量に起因する排出量及び吸収量を生産法により算定している。
 (e)(iii)
森林における齢級構成の効果に対処するために用いられるアプローチ
 我が国では、森林の吸収量を、森林の齢級構成による炭素蓄積量の違い等を考慮して算定している。

この部分の記述を拡大します!という合意です。

木材利用のJクレジット方法論など、やることはたくさんありそうですね。

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