月刊森林技術の3月号に標記小論が掲載されました。
全木連で2006年から9年間にわたってつきあってきた(?)、違法伐採問題にかかる木材製品の合法性証明のガイドラインに関する思いを、日本の森林技術者の共有するメディアである森林技術誌に掲載させて頂いたものです。
ガイドライン等に基づく日本の取り組みは、輸入材の管理を通じて熱帯林の減少の原因の一つとなっている途上国の違法伐採問題の対処に貢献する枠組みとして提案・構築され、欧州・米国等でもその延長線上での新たな施策がはじまっていますが、日本の枠組みは途上国問題にとどまらない、(欧州や北米を含む)先進国でも共通する「持続可能な森林管理のための森林ガバナンスの強化」というより大きな課題に対して、行政当局が市民・消費者・市場ともに挑戦するツールとして、グローバルなスタンダードの可能性をもっている、というメッセージ(思い込み)です。
編集部のご了解を得て全文を掲載します。(→こちらからpdfファイル)
概要は以下の通りです。
(はじめに)
日本政府が国際的な違法伐採問題に対処するため,2006(平成18)年に,調達する木材製品や建築部材に合法性が証明されたものを優先調達することを決め,その証明のために,林野庁が「木材・木材製品の合法性,持続可能性の証明のためのガイドライン」を発表してから来年の2月で10
年となる。違法伐採に対する対応は米国やEU などでも進展しており,日本の取組との比較をされる機会が多くなっている。このシステムの運営に当初からかかわっていた筆者としては,本稿で,グローバルな視野で現時点での日本のシステムの意義と課題について議論し,10
周年という時点でこの大切なシステムに,あらたな地平が開かれることを期待する。
(4つのサプライチェーン管理システムの比較)
森林管理の義務と支援を直接対象とした国際約束をめざした国際森林条約の不調を背景に,市場を通じたアプローチが1 つの方向性を示すものとった。
森林認証制度、林野庁のガイドライン、欧州木材規則、米国レイシー法の4つのシステムを緑のサプライチェーン管理の効率性と信頼性という点から比較検討。
日本のガイドラインはその中で,中小企業が中心となったネットワークの信頼性を,「業界団体の社会的責任」においてカバーしようという意味合いをもったものだが、4つのシステムのそれぞれの特質を考えて、組み合わせて展開することが必要。
(我が国の森林管理と林野庁ガイドライン)
過去三回の森林・林業基本計画で違法伐採についての記載を比較すると,現行計画では,「適切な森林施業の確保」という国内森林のガバナンスに関連する文脈で「伐採に係る手続が適正になされた木材の証明等の普及を図り,適切な森林施業の推進に資する」と記載されていることが特徴。
途上国,先進国を含めた「すべての森林」のガバナンス強化は,すべての国の抱える課題だが,林野庁ガイドラインが,行政と業界,市民(消費者)が一体となって森林施業のガバナンス向上に取り組むツールとしての大切な役割をもっていることを提示しているもの。ガイドライン形成期では認識されていなかったこのシステムの普遍性や重要性が執行過程で認識されてきた。
(おわりに)
ガイドラインが,このような役割を果たしていくためには,実施過程の自主的なモニタリング体制,制度の説明責任を果たすコントロールタワーの形成などのステップアップが必要。また,そのためには,住宅政策などと協同した市場からの応援体制の確立が不可欠。10
周年という時期がこれらの課題に取り組む絶好の機会であり,日本が生み出したこの大切なツールがもう一段階成長し,グローバルな社会に広がっていくことを期待。
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