エコロジカルエコノミクス島本論文の国際的な反響(2005/7/10)

 
既報の通り法政大学島本助教授らによるForest sustainability and the free trade of forest products: cases from Southeast Asia(「森林の持続可能性と林産物の自由貿易:東南アジアの事例」)と題する論文が、国際生態経済学会ISEEの機関誌Ecologila Economicsに掲載され、それが国際林業研究センターのメールリストによって広く伝えられました。

その後、島本さんから以下の連絡をいただきました。
・・・・ついでにPOLEXその後日談ですが、200人余りの方から、電子コピーの請求がありました。そしてそれに関連する有益な論文を紹介してくれた方、自分の国でも同様な現象が起きていると書いてきてくれた方も数名いらっしゃって、大変参考になりました。ちょっと私個人では、これらの国(アフリカやラテンアメリカなので)までフォローする事はできそうにありませんが、どなたかそんな研究をやりたいという方がいれば、情報はお流ししたいと思っています。 

これから反論も出てくると思いますが、この問題、議論に参加する人が増えれば増えるほど、質的に向上していくと思うので、その起爆剤になれば幸いです。そのうちIFFからの貿易と森林のお粗末な議論も向上すればもうけものです。

お願いして、よせられた情報のサマリーを作っていただきました。

Ecological Economics 50(1-2)‘Forest sustainability and the free trade of forest products: cases from Southeast Asia ’pp.23-34に寄せられた有益な情報

 我々の上記論文のサマリーが2005年1月にCIFORのPOLEXに配信され、200件余りの反響がありました。その中に有益な情報をいただいた方がいらっしゃいましたので、多くの方と共有できれば幸いと思いまして、以下のようにまとめてみました。

1.何よりも心強かったのは、世界の森林に関する情報の収集・分析にかけては世界一の権威であるフィンランドの研究者のメールに、次のような情報が添えられていたことです。

「我々も熱帯林全体の問題を研究しており、65カ国の熱帯林諸国についての我々のモデルから発見されたことは、フィリピン、タイ、インドネシアからあなたがたが発見されたことを支持している。」

2.アメリカのアナリストからは、インドネシアの林産物関税引き下げがインドネシアの天然林破壊を加速することになった、ということから、森林破壊の制御のための貿易政策として関税政策を考慮すべきではないか、という自らの論文を送ってくださいました。(→原著Joshua Brann, Trade policy in Indonesia: Implications for Deforestation, Journal of International Affairs, Spring 2002, The Bologna Center, のpdfファイルをご希望の方は島本さんに

3.チリとニカラグアの研究者からは、論文で取り上げられている国々と自国では似たような問題が起こっている、との指摘がありました。

4.メキシコの研究者からは、自国では自由貿易の問題を抱えている、というコメントが、エクアドルの方からは、アンデスの国々はアメリカとの自由貿易協定を結ぼうとしているのでこの問題は興味深い、という情報がありました。

5.モザンビークの方からは、現在経済そして林業に関して自由化の波に直面している、との情報がありました。

6.バヌアツについて詳しいカナダの研究者からは、バヌアツ政府は地元民やNGOの声に対応して丸太の輸出禁止を発動したが、経済開発を推進するためには禁輸を解除すべきであると、主な援助国からの強い圧力に直面しているとの情報がありました。

7.ベトナムの研究者からは、ベトナムでは天然林の枯渇について非常に似た状況にある、という情報がありました。

8.文献の紹介もありました。オランダの方から、Joel Baken著のThe Corporation(NY:Feee Press,2004)という本と似たような問題を扱っているとのコメントがありました。この本は企業の利潤追求の病理について書かれた本で、自由貿易批判という点で共通する点があるとの見方だと思います。

9.最後に拙稿は、EUによるWTO交渉による貿易自由化による持続可能性アセスの森林分野の最終レポートに引用されました。
http://www.sia-trade.org/wto/ForestDraftFinalReport_v1_2_270205.pdf

これらの情報が私の手の中で埋もれることなく、更なる調査研究に結びついていけば幸いです。

以上ですが、上記の情報に関心がある方は直接島本さんに連絡を取ってください(→こちら)。