環境と貿易の関係など、先進国の経済政策の調整を図る上で重要な役割を果たしているOECDが、毎年一回持続可能な発展についての円卓会議を開催いしていますが、年明け早々に行われた今年の会合のテーマは違法伐採についてでした。(OECDサイトによる結果概要英文)。
詳しいバックグランド報告書もホームページ上で公開されています。(こちら)
違法伐採の当事者と指摘されている、ハイリスク国(全ての熱帯林国、ロシア、中国をこう分類するのだそうです(報告書))が参加せずに議論される場なので、具体的な実効性という点では疑問が残るのですが、遠慮せずに、長期的な展望に立った違法伐採問題の核心となる論点が語られています。
報告書に掲載されている、国ごとの原木の生産量の内の違法伐採の程度などについての情報(p17)は、権威ある国際機関の報告書に掲載されているものとして引用されことになるでしょう。世界全体では「工業用丸太生産量のうち、5-10%が違法伐採材であると推定されている」としています。
消費国で、CoCによって合法性を担保された木材を選別して購入する動きが始まっていますが、国境でこれを取り締まることができないのか、というのは、誰でも考えることです。
報告書には、輸出商品の生産過程の善悪によって一定の貿易規制をする取組の実績が、多国間の協定をベースに例として、@絶滅の危機にある野生生物を判別するワシントン条約、A製造過程でオゾン層破壊物質を放出する物資を判別するモントリオール議定書、B紛争地域のダイヤモンドを判別するキンバリープロセスなどが取り上げられています。
キンバリープロセスは、ダイヤモンドの輸入には、輸出国政府の発行するキンバリー証明書(紛争ダイヤモンド非該当証明書)の添付が加盟国に義務づけられる、というものです。
ダイヤモンドと木材とを比べて生産過程の情報を伝えるためのコストの負担力が全然違うということは念頭に置かなければなりませんが、熱帯木材のボイコット問題が課題となった80年代に、同時期に課題となった紛争地ダイヤモンド問題が、一足早く2001年に国際的な協定に基づく貿易規制の力を借りて関係者が問題解決の道筋をつけたことは、森林の関係者にとってもよく考えてみるべきことではないかと思います。
貿易規制を論議する場合必ず話題となるWTOは、社会的な正義を実現するための、国際条約に基づく手段については、なんの異論を差し挟むこともない(できない)ということがよくわかります。
円卓会議には日本の松岡農林水産大臣も出席しました。(農林水産省のサイト)
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