全国森林組合連合会の月刊誌「森林組合」7月20日号に標記を投稿しました。
仕事上、違法伐採問題とか合法性が証明された木材製品の供給といったことに関わっていますが、「違法伐採は外国のことなのに、なぜ国内の関係者が(合法木材の証明などといって)苦労をしなければならないのか?」という、国内の林業関係者の厳しい意見に直面することがあります。
全国森林組合の機関誌に、このことについて、今まで考えてきたことを書かせてもらいました。
以下にその部分を再掲します
4 日本の林業にとっての違法伐採問題の取組の意義
以上述べてきたように、もともと海外の問題である違法伐採の対策に、日本の業界組織が大規模に関与するという形になっている。なぜ、「日本の業界がそこまでやらなければならないか」という素朴は疑問があることは確かである。それについて3点にわたって整理してみたい。
(1)国際商品としての林産物の廉価販売の悪影響の排除
すでにふれたが、第一の点は、違法木材を放置することが、木材価格を押し下げ、日本の様な輸入国の山づくりにも悪影響をあたえることになる。違法木製品が世界市場に流入することで生じる全体的な影響についての調査からは、林産物の種類によって異なるが、7%から16%の国際価格の押し下げ効果が見られるという結果が示されている(OECD 2007)。日本が他の消費国と共に違法伐採問題に取り組むこことは、木材の再生産可能な価格を実現することになる。
(2)消費者のグリーン購入の促進
次に、消費者や企業の購入部門が環境に負荷をかけない商品を選別し始めていることである。それは、グリーン購入法だけでなく、建築物の環境負荷を客観的に評価する「建築物環境性能総合評価システム」CASBEEなどの普及によってバックアップされている。2007年に公表された「CASBEEすまい(戸建)(2007年版)」では、「省資源、廃棄物抑制に役立つ材料の使用」という評価項目の中で、木質系住宅の構造躯体の過半に合法木材を使っている場合は1点加点する、という評価基準を採用している。木材は再生可能な資材であり、製造過程で二酸化炭素の排出量がきわめて少ないエコマテリアルである、として、環境指向の消費者に訴えてきたところであるが、違法伐採材はその動きの中での「とげ」のようなものである。簡易な形で合法性を証明することは、「とげ」を取り除き消費者との信頼関係を深めていくときに不可欠な要件である。
(3)森林政策のもつ宿命の返上
違法伐採問題は地球サミットの森林原則声明を受けて各国が森林法制を改定し、その執行過程で生まれたといえる。立法過程では首都で議論され国際的な議論を踏まえた格調高い法律が生まれるが、森林法の執行過程は首都から離れた遠隔地が現場であり、執行するのに十分な体制・予算をとれない、実施評価が不十分となりがちで、またその状態が放置されるという森林政策にとっての宿命的な構造が背景にある。違法伐採問題はこの構造的問題に今まで関心を示さなかった都市住民が異議を唱えはじめた、という見方もできる。程度や形態の差こそあれ、どこの国にもある普通の問題である。日常生活に欠かせない木材の生産過程に消費者が関心をもつことは、殆どすべての人に関心が広がることであり、基本的に解決に近づくことでもある。我が国の場合も、国産材時代を迎えて、放置森林などの問題が重要な局面にある中で、国内の森林計画や管理の情報が利用時点で市民に伝わることは、日本の森林や国産材の持続可能性という問題を市民と共に考えるチャンスといえるのではないか。 |
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