WTOドーハ閣僚宣言の読み方・・・林産物貿易に関する三つのポイント | ||||||||||
11月9日から14日にまでドーハで開かれたWTO第4回閣僚会議は新たな包括的な貿易交渉を始めることを決定しました。 会議で合意された閣僚宣言のテキストがWTO事務局のホームページ上で公開されています。 現時点で全文の日本語訳は公開されたものはないようですが、要約が外務省、経済産業省のホームページに掲載されています。 また、農林水産省のホームページに農林水産物に関連する部分の抄訳が掲載されています。
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会議に出席した、林野庁のメンバーと意見交換をし、今回の閣僚宣言を検討してみました。日本の林業者にとって次の三点の合意が重要です。
この点について閣僚宣言の前文パラ6に「我々は多角的貿易システムの擁護と環境の保全は両立可能であり、また、両立させなければならない、と確信する。」 "We are convinced that the aims of upholding and safeguarding an open and non-discriminatory multilateral trading system, and acting for the protection of the environment and the promotion of sustainable development can and must be mutually supportive."と表現されていることは重要です。 「貿易と環境の両立」という表現はよく使われるキーワードですが、mustという助動詞と一緒に使われる機会はあまり多くはありません。 そして、「産品の適用範囲は包括的で事前に例外は作らない」"Product coverage shall be comprehensive and without a priori exclusions."としています。 ある品目を「例外扱いにしない」と言う記述の前に「アプリオリな」という、形容詞が係っていることが重要です。 文理上、「事後には例外がある。」と言う解釈がなされることになるでしょう。つまり交渉次第であり、我が国が林産物は自由化の例外であると主張することを妨げるものではないことが、a
prioriの一語の重要な意味です。 とりあえず国際環境協定とWTOルールの関係など三つの事項を交渉事項とすることにしています(パラ31)。さらに「環境目的のためのラベリング」など三つの事項についてWTO貿易環境委員会で審議し、次回の第五回閣僚会合で交渉事項とするかどうか勧告させるとしています(パラ32)。 「環境目的のためのラベリング」を交渉事項とし、WTOルールを変えてゆくことができる道を示しています。 ただし、WTOルールを変えなくてもモントリオール議定書など「フロンを使用して製造した半導体と、そうでない半導体とを差別して取り扱う」ということを堂々と国際協定に書き込まれており、別にWTOの規程を変えることもない,との意見もあることでしょうが。
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