ニュースレター No.264 2021年8月15発行 (発行部数:1511部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:熱海の大規模土石流と森林のガバナンス(2021/8/15)
2.  カーボンプライシングで森林はどうなるー企業内CPで広がる可能性(2021/8/1)
3.  「森が育むプラットフォーム」と新なた「森林・林業基本計画」が提示したものーWMF総会から(2021/8/1)
4. 基本計画の策定過程から(海外・他分野の計画と比較も)ー勉強部屋Zoom会議やりました(2021/8/1)
5.  2030年に向けた新EU森林戦略-森林・林業基本計画とどう違う(2021/8/10)
6. 「木材活用・脱酸素化で加速」-日経新聞(夕刊)一面記事(2021/8/15)
7. 五輪開会式木の五輪ー前大会から展示林でそだてられた世界の木(2021/8/15)
8. 消費者と森林ガバナンスをつなぐツール森林認証ー勉強部屋ニュース264編集ばなし(2021/8/15)

フロントページ:熱海の大規模土石流と森林のガバナンス(2020/8/15)

7月3日熱海市伊豆山の土石流。

市街地に流れる渓流に、上流から土石が押し寄せてくる映像を誰もが共有。

日本中どこにでもおこりそうな、斜面地における、大雨のリスク。日本の多くの斜面地は森林。森林のガバナンスと土石流の関係は?

気候変動で大雨の頻度が増えた中で、森林の管理に関して大きな課題が提起されているのだと思います。

すこし、勉強をしてみました。

(熱海土石流の原因の「盛り土」と森林法)

原因はなにで、防ぐ方法はなかったのか?

自身が土木技術者である静岡県の難波喬司副知事は7日午前、記者会見し、土石流の起点部分で行われていた盛り土などの土地改変について「(森林法に基づく)林地開発許可違反など、複数の不適切な行為があった」との見解を示しました(盛り土に複数の不適切行為 熱海土石流で副知事が見解。

ネット上に掲載されている情報(熱海市伊豆山地内の土石流発生箇所付近の土地改変行為①)(7月28日現在)では以下の経緯。、

①2007年にA社が県土採取等規制条例に基づき、土採取届けを市に提出(0.9446ha)受理。②その後市から県事務所に対して、1haを超える事案であると連絡し、県事務所は現地確認の上森林法の「林地開発許可」違反(1haを超える民有林の土地の形質を変更する(開発行為)については知事の許可が必要)と判断し、土地改変地1.2329haの森林復旧を指示(07年5月)。③植栽などが行われ、(その後林地開発許可手続きが行われ)林地開発許可違反が是正(09年8月)。④その後県土採取等規制条例等にもとづく防災措置の指導、廃棄物混入、工事中止命令など

土石流の一因と思われる盛り土に関して、森林法の林地開発許可手続きに照らしてみると、当初林地開発許可手続き違反行為があったので、是正されその後、林地開発許可手続き違反が是正されたうえで、盛り土作業が行われた。つまり林地開発許可手続き上許可された盛り土、が原因となった土石流みたいです。

一体どんな基準で、林地開発許可手続きが是正され許可されたのでしょうか?林野庁のページで許可基準を視てみました。

開発行為の許可制に関する事務の取扱いについて

許可基準
(1) 「都道府県知事は、(林地開発)許可の申請があった場合において、(以下に)該当すると認められる場合に限り許可しない

ア 「当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること」(法第10条の2第2項第1号)
これは、開発行為をする森林の植生、地形、地質、土壌、湧水の状態等から土地に関する災害の防止の機能を把握し、土地の形質を変更する行為の態様、防災施設の設置計画の内容等から周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれの有無を判断する趣旨である 

谷の両岸の森林の立木を伐採し、どこかから運ばれてきた土を堆積する場所として使うために林地開発許可申請が出てきた時には、防災施設も含めた全体計画を提出させ、土砂流出災害の発生の恐れがないことを判断してから許可をすることになっているんですね。

今回の場合は、静岡県の土採取等条例と森林法ダブルチェックなんですけど、県条例は県によって違うし、全国をカバーしているのは森林法だけ。

森林法の林地開発許可の判断の手続き、特に谷を土砂で埋めるような施設の場合は、今後厳密な確認がされるんでしょう。

多雨災害が各地で発生しているようなので、林地開発規制の基準のしっかりした確認作業が必要でしょうね。業者Aは明らかに森林法のチェックをさけるために面積を0.9446haとして、届けたことはあきらかなんで、業界関係者は森林法のチェックをかいぐる工夫をしているのでしょうか?

(太陽光発電施設と林地開発許可)

土石流の発生現場の近くに太陽光発電施設があったことが報道され、因果関係が議論されていますが、熱海市の土石流、太陽光発電施設は「直接的な原因ではない」 (静岡県・林野庁)ようです(左の図)。

それはそれとして、近年上記の林地開発許可の件数が増加し、その理由が太陽光発電施設のようです(右の図)。(近年の半数以上が太陽光施設)

カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの主役としての太陽光発電施設。地元との調整課題などが浮上し、その中で森林側の対応が注目されることになります。

林野庁の太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会報告書(2019年9月)がネット上に公開されています

左の図は上記報告書に引用されていた、マスコミに登場した太陽光発電施設にまつわるトラブルの分野別事例数です(原典は環境省:太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書

土砂災害と景観がダントツ。

谷止め盛り土の話は、前述として、太陽光パネルは、簡易な基礎工事のみで据付けが可能であることから、造成費等を抑えるために自然斜面にそのまま設置する事例が多いようです

上記報告書で、自然斜面の太陽光発電の許可基準はどういう方向になっているかというところを視てみましょう。

左の図は報告書の掲載図面。許可された施設工事の施工中に土石流などの発生事案が結構あり(左)、傾斜毎に土砂流出の発生具合をみてみると、30度以上で急に多くなる(右)のだそうです。

それで、自然斜面に設置される太陽光施設の許可基準も、そんな方向で検討が進むようです。報告書13ページ

近くの森林に太陽光発電施設が計画されているならチェックして下さいね。

(皆伐跡地は大丈夫かな?)

自然斜面に太陽光施設を創る場合の許可基準について視てきましたが、話は少し変わりますが、森林を裸地にして大きな構造物をつくらないで自然斜面に施設を創る場合のリスクと、木材生産のために大面積の皆伐をした場合のリスクはどう違うのでしょうか?

跡地に植林をした場合は少し置いておいて、しない場合は?

伐採された前生樹の根っこが腐朽して土壌を補足する力が弱くなる。そして30度以上の急角度の皆伐跡地に土石流が発生する可能性が想定されます。たとえ植林をした場合にも。

土砂崩れの9割は林業が原因 政府が誘発する皆伐を推奨
毎日新聞スクープ記事「民有林1万ヘクタール超 伐採後の植え直し進まず」

いまの人工林は皆伐跡地に造成されたことは間違えないので、、「今の人工林の皆伐後のリスクは実験済み!」という説得力のある議論がありますが、雨の降り方、森林の周りの人の住まい方など50年前といまとではなのが違っているのかな?

ということで、今後人工林の皆伐が進んでいくのは、予想されることで、いまの人工林の次の世代をどのようにつくっていくのか、特に急傾斜地の人工林の取扱に確りしたガイドラインが必要なんだと思いました。

kokunai4-52<AtamiSS>

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 カーボンプライシングで森林はどうなるー企業内CPで広がる可能性など(2021/8/1)

地球環境戦略研究機関IGES「カーボンプライシングの国内外の動向」というイベント(気候変動ウェビナ)というイベントに参加しました。

カーボンプライシング(炭素の価格付け)が非常に明解で単純な気候変動対策であるので、たぶん対策の主流になるだろうし、そこで森林はどうなる。そこに至るまでどんなシナリオなのかな?勉強部屋の関心事項の一つ。

汚染者負担の原則によるカーボンプライジグ(炭素価格付け)が市場に与える影響-(2020/12/14)など

二つの報告のうち、「カーボンプライシングの動向」にそって最近の状況を報告します。森林にはどんな関係があるかな?

((EUの新なた温室効果ガス削減総合政策))

右の図は「カーボンプライシングの動向」にあった、7月14日にEU委員会発表した、新たな温室効果ガスの総合政策についてです。

European Green Deal: Commission proposes transformation of EU economy and society to meet climate ambitions

EUの「カーボンプライシング」のバックグラウンドになっているのはEUの排出量取引制度(ETS)。

発電所、石油精製、製鉄、セメント等の大規模排出施設を対象に、実質的に排出量上限がきめられて、達成過程でETSが機能するようですが、その業種に、建設業がはいってくるんだそうです。

木造建築の省エネルギー性などが配慮さているのかな?たぶん、そうでないでしょうね。
詳しくはこちらをEU Emissions Trading System (EU ETS)

その他に今回の発表のなかに、EU森林戦略の変更に関する記述もあり、2030年までにヨーロッパ全体に30億本の木を植える計画を立てながら、森林管理者と森林ベースの生物経済をサポートするなどが記載されています。

以下参照ください。REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL amending Regulations (EU) 2018/841

以上European Green Deal: Commission proposes transformation of EU economy and society to meet climate ambitionsから。

((インターナルカーボンプライシング))

もう一つ気になったのが、排出量取引のきっかけとしての、インターナルカーボンプライシングです。

「企業などの組織が投資判断等、内部で使用するために、CO2排出量に価格を付ける仕組み」なんだそうです。企業のセクションごとに排出量目標を設定して取引をするケースなんかもあるんだそうです。

取引の内容がJクレジットのようなフォーマルなしくみでなくても、いろんな取引がひろがっていく、可能性がありますね。

左の図のように、世界で2,012の企業が導入済み又は2年以内に導入予定なのだそうです。

環境省;インターナルカーボンプライシングについて

((カーボンプライシングに関する霞が関の検討状況))

それから、カーボンプライシングについては政府が環境省と経済産業省で別々の研究会をすすめているところです。

環境省:カーボンプライシングの活用に関する小委員会
経産省:世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会

そろそろ素案などがでてきているようです。

秋口のCOP26が一つの出口でしょうか?

このページでもフォローしていきます。

kokunai4-54<ICPfore>

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「森が育むプラットフォーム」と新なた「森林・林業基本計画」が提示したものーWMF総会から(2021/8/1)

7月20日にウッドマイルズフォーラムの総会がオンラインで行われ、その時に合わせて開催された情報交換のイベントで、私と、森林パートナーズ代表の小柳さんが報告をしました。

タイトルは右にあるように、私が「ウッドマイルズからみた新たな「森林・林業基本計画」が提示する課題」、森林パートナーズ代表の小柳さんが「森を育むプラットフォーム」です。

「小さな林業の可能性」を見事に示している、小柳さんの報告を中心に紹介します。

その前に、前座の藤原報告を簡単に。

((ウッドマイルズからみた新たな「森林・林業基本計画」が提示する課題))

このサイトでも新たな森林林業基本計画の紹介は、何回かしてきました。

次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林林業基本計画を読む(2021/7/15)

そこで、「ウッドマイルズ(フォーラム)からみた」という部分に絞って紹介します

右の図をご覧下さい。

最初のパラは、先ほど終わったばかりの、ウッドマイルズフォーラムの総会の主要なトピックスです。

昨年度の事業報告の重要な点は、「(2)地域の木質資源の持続可能な利活用の手法に関する調査・研究・開発」という新たな事業を始めたことです。

その説明に、「 大規模事業者による国産材流通(大きな林業)が拡大する中で、地域の中小事業者による山と町をつなぐ取組(小さな林業)の現状や必要性を学ぶことを目的として、内部関係者によるオンラインミーティング(勉強会)を開始した」と記載され、フォーラムの今後の課題は、それを発展させることです。

そこで、たまたまタイミングよく先月閣議決定された、新たな森林・林業基本計画で「山と町つなぐ取組」がどのように位置づけられているかな、ということを説明しました。

(令和の国産材時代の次世代の山創りの課題ー森林ガバナンスはユーザーとの連携で)

パブコメでも追いかけてきた、「山づくりの課題をユーザー(消費者や建築関係者など)と一緒に取り組んでいこう」、というコンセプトは、ウッドマイルズフォーラムの取組の中から生まれた考えでした。この話をウッドマイルズフォーラム総会のイベントで話ができてよかったです。

左の三つのパネルで説明。

一番上は、ほとんど計画の骨組みは前計画と同じなんですが、新しく基本方針にはいった「4 森林・林業・木材産業関係者に特に必要とされる視点」というセッションに、「自らの短期的な利益のみを追求するのではなく、国土と自然環境の根幹である森林の適正な管理、森林資源の持続的な利用を確保すべく、効率的なサプライチェーンを構築して相互利益を拡大しつつ、再造林につなげるとの視点を共有し努力していくことを期待する。」と記載されています。

真ん中の図は、再造林問題は重要なリスクがあるという認識が、基本計画に記載されている!

下の図は、どこに植えてどこに植えないというゾーンニング(線引きを)を県や市町村の計画で作成過程で、関係者と皆でやっていきましょう、という対処方針です。

以上です。そのほかに、カーボンニュートラルで木材利用に日があたっているか?等も含めて報告しましたが。ご興味のある方は、以下にデータをおいておきますので、ご覧ください。

.ウッドマイルズからみた新たな「森林・林業基本計画」が提示する課題

((森を育むプラットホーム))

さていよいよ、森林パートナーズという会社の紹介です。

森林パートナーズ
事業目的
① 森林の維持・再生と、地域材の活用促進のための事業を行う。
② 地域工務店と林業・木材加工業の連携による6次産業化を実現するため、 「森林再生プラットフォーム」を提供する新木材流通コーディネート事業を行う。
事業の概要
① QRコード、ICタグを活用したトレーサビリティシステムを有するプットフォームを提供し、新木材流通コーディネーションを行う。
② 1次・2次・3次産業の協同により、工務店の、山元への還元を確保する原木調達を原則として、SPウッドの合理的な加工/流通/透明な価格を実現する。
③ 都市生活者と山元を繋ぎ、エンドユーザー(建て主)に森林の維持・再生の共感を得る活動を行う。
 

上は示された会社概要

事業概要を順に説明します。

(工務店の、山元への還元を確保する原木調達を原則)

まず、ビックリするのが、「工務店による山林所有者からの原木(丸太)の直接購入」。

もちろん、山から建築現場までに木材は、まず丸太の段階で選木され、製材に加工され、乾燥され、建築に必要な製品が選別され、プレカットされ建築現場に渡される、というプロセスがあります。

普通、工務店は、プレカット工場か製材工場から、自分の建築にあった製品を購入して、現場で組み立てるということになります(上の図の下二つ)。

工務店の側は建築に見合った正確な形状と性質の製品を、いかにやすく買うかということになります。

ところが、事業目的に「森林の維持・再生と、地域材の活用促進のための事業を行う」を掲げる森林パートナーズは、山元に適正価格で丸太をかうため、直接山林所有者から丸太を購入!

今後の建築計画を見据えて、原木を購入。ですので、上記にあったどんな資材をどんなタイミングで購入するかといった、中間の事業者がおこなう選別や貯蔵のリスクを、後述の情報管理でしっかり担保して、リスクをへらして浮いたコスト(の一部)で丸太を高く買う!そして、加工コストは委託料で支払っていきます。

こんなことがどうしたらできるんでしょうか?外にいる我々にはなかなか、イメージがつかめませんが、ポイントになるのが、、山元、製材所からプレカット事業や工務店が株式になった森林パートナーズという会社の力。

(ICTトレーサビリティシステム)

その重要な柱の一つが、ICT (Information and Communication Technology、 情報通信技術 )による「一本一本の原木について、原木丸太から住宅の材木までトレースするだけでなく、工務店からの情報を起点に、出材・製材・プレカットの工程を総合的に連結し、生産管理・在庫管理にも活用出来る情報システム」トレーサビリティシステム(e-Forester2.0)なんだそうです。

右の図にあるように製品ごとに特定の番号が振られ、それがネット上に登録される。

その情報が森林パートナーズで管理され、それぞれのメンバーが入手できる。

どんな形式で見えるようになっているかなど、もう少し詳しいデータがプレゼンデータにあります。

このようなシステムを通じて、信頼できる事業者の連携ができ、消費者への訴求ができます。(右の図はウッドマイルズフォーラムが開発してきた近くの木の環境性能の見えるか図)

(今後の方向性)

いままで、手探りで積み重ねてきた森林パートナーズの活動。

「埼玉秩父での直営事業を常に改善しながら、ノウハウを蓄積し、そのノウハウを他地域へ提供」しようとしています。(福岡県・千葉県・・・)

それをさらに拡大していくためは?

そもそも、「森林再生・カーボンニュートラルという社会問題を持続可能な仕組み(シッカリしたお金の流れが前程)で取り組むという難度の高い挑戦」それを進めるには「志を共有する地域行政と関係事業者が必要となる」でしょう。

「このプラットフォームは築後3年間は地方行政による支援が必要だが、経済活動を通じたサステナブルな仕組みを内包し4年目には自立事業化」するそうです。(もちろん半分は決意表明)

こちらにプレゼン資料森を育むプラットフォーム置いておきます

ーーーー森林パートナーズ以上です

今後ともウッドマイルズフォーラムは森林パートナーズと連携して、小さな林業の可能性を拡げていくこととなると思います。

energy2-74<WMF2021>

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基本計画の策定過程から(海外・他分野の計画と比較も)ー勉強部屋Zoom会議やりました(2021/8/1)

7月24日第1回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー実施しました

4連休のさなか、57年ぶりのビックイベントの開催中。

東京2020より勉強部屋Zoom会議が大切、という方が30人集まっていただきました!

「新なた森林・林業基本計画と国内森林政策の課題ー基本計画の作成過程からみえてきたもの}というタイトルですが、今回の計画を、欧州の計画、農業の分野の計画などと比較して、どんなことが見えてくるのか?林政審の土屋会長のプレゼンを中心に、ご説明します。

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((基調報告))

(前計画からの流れ)

左の図です。2016年6月日本再興戦略2016などで「成長産業化」がとりあれられ、林業の成長産業化があらわれる・・・。

など、「閣議決定」である「基本計画」のキャッチフレーズは、その時の政権の描くピクチャーにうまくのるように、ということが一つの原動力になります。

それはそれでわかるけ(よくわかります)ど、森林政策は政権のピクチャーが思ってもいない、長期展望を見据えたモノ!成長産業化の議論は少し反省が必要かも。(「林業の産業としての成長」が問題なのでなく「成長産業化」とは何を望んでいたのか?)。森林政策はあまりそれに流されないように-(という,というこの部分は林政審会長でなく勉強部屋の独り言)。

それから右の図。

前計画の策定されてからおこった、大きな政策の流れは、①森林経営管理法(2018年)、②森林環境税・森林環境譲与税(2019年)、③国有林の樹木採取権(2019年)。

林政審という場で、それぞれがどのように議論されたか、大変面白いです。

これらの、政策上の大きなイベントが前計画の中にどのように位置づけられていたのか?(殆ど位置づけられていなかった)もふくめて、丁寧な解説がありました。

このような部分はいままでも、勉強部屋でもフォローしてきましたが・・・徹底討論:林政の新展開を問う」林業経済学会が問うたもの(2019/12/15)

勉強部屋でも、もう少し頑張らなければと反省。

(National Forestry Programm)

さて、森林・林業基本計画をグローバルな視野から視ると?

1992年の地球サミットのあとで、森林の持続可能な管理を国連の場で議論していく枠組みIPF(1995-1997)、IFF(1997-2000)ができて、各国である水準の「国家森林計画National Forestry Programm」を作成すべしと提言され、欧州では紆余曲折で進行しその考え方が定着しました。

日本も森林・林業基本計画がNFPであると、FAOに報告している(形跡がある?)んだそうです。

そこで、NFPの仕様(作成プロセス(市民の参加プロセス)、政策内容(環境的視点の統合)など・・・そんなプロセス)から、基本計画を視ていく必要もある。

それを踏まえて林政審の検討過程は?

(林政審の検討過程)

右の図。いつもと(いままでと)違って形成プロセスが大きな変更あり。はじめて、大がかりな意見聴取をしました。

勉強部屋でもパブコメのまえに国民の意見公募に応じました

その他に、議論の充実のための方策がたくさん。

(すこし辛口の)会長としてもこの辺は満足で、NFPのプロセス(スウェーデンが自らのプロセスは×だったと認めた)から行っても(満点?といわれたかどうかはわすれましたが)「合格点」でした。

(林政審会長の意見は反映されたか)

左の図。

そのそも、基本計画を作成するなら、メリハリとバランスが大切

「森林は長期的な視点で政策を考えるべきだと言うが、2001年(基本法)、2011年(森林・林業再生プラン)、成長産業化政策(2018/2019)とコロコロ変わり過ぎではないか。}」

・期初の政策の達成目標→期末の達成度の明示とその評価・改善策の提示
・重点化のためには、広範な国民の参加による合意の形成が必要。

とか結構難しいハードルを林政審会長は審議過程で、皆さんに?事務局に求めた、んだそうです。

全体的なプレゼンの雰囲気では、満点でないけど、合格点だったといったようです。

さて、内容に入ります。

(グリーン成長とは)

左が、今回の計画のメインコンセプトとなるグリーン成長に関する基本計画の記載事項。

「林業・木材産業か゛内包する持続性を高めなか゛ら成長発展させ、人々か゛森林の発揮する多面的機能の恩恵を享受て゛きるようにすることを通し゛て、社会経済生活の向上とカーホ゛ンニュートラルに寄与する「ク゛リーン成長」を実現し ていく。」

赤字は多分土屋会長が、こう言っているよというコメント部分なのでしょうが、「納得できる内容」といった雰囲気でのポジティブな説明でした。

これ以下は藤原のコメントです

社会経済生活の向上という部分が成長産業化が指向していた、成長部分だとして、それにカーボンニュートラルを併せて追求するのが、グリーン成長なんでしょうか。いずれにしても成長ということばが計画本文の中にはいってくると、「成長産業化」という言葉との関係がどうなているのか、気になります。

「林業を成長させること」と、「林業を成長産業化させること」との間にはギャップがあるような気がします。

ーーーここまで

右は、グリーン成長をグローバルの最近の動きで検討した、2枚です。

欧州の政策と、日本の他の分野の政策を比較しながら、森林林業政策のなかで、グリーン成長をどのように規定すべきかということを考える、材料を頂いた感じです。

グリーン成長ということばが、成長産業化みたいに5年でなくなってしまわないように、厳密にはっきりと言葉の定義をした上で、フォローして参りましょう。

という宿題だと思います。

(計画の内容)

基本計画の5つの重点項目については、こことでは省略します。(本文をしっかり見て下さい)

(策定に関わってーまとめ)

右はまとめの1枚。

どう評価するかといわれれば、「色んな制約があるなかで、これは合格点」とはいわずに、「精一杯」とされました。合格点ということでしょう。

最後の2つのパラを再録しておきます。

「問題は、制度として基本計画を今後どうしていくべきなのかの議論がないことだろう。個人的には、NFP的、あるいは欧州森林戦略の向こうを張る真のプログラムを目指すべきと思う。

ひとまず、林政審としてやるべきは、進行管理、あるいは実行過程の監視をしっかりやっていくことだろう」
とのことでした

もちろん、森林審議会で取り組んでゆくべき自らの宿題を会長が表明されたんでしょうが、勉強部屋への宿題ともしたいと思います。

素晴らしい、プレゼン資料、
←こちらに置いておきます。

なお、
会員ページに映像を置いています。(ご希望の方はこちらから個人会員に

konosaito3-2<Zoommt1st-2>

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2030年に向けた新EU森林戦略ー森林林業基本計画とどう違う?(2021/8/5)

日本の森林林業基本計画、Zoom会議などで視てきましたが、林政審議会土屋会長が指摘されていたように、グローバルな視点から日本の森林政策を評価してみよう、おもっていると、ちょうど、「EUの新たな森林戦略」が7月14日に公開されました。

New EU forest strategy for 2030

日本の計画とどのような違いがあるかな?

特に前から気になっていた、木材利用がカーボンニュートラルなかで、どんな書きぶりになっているか、勉強してみました。

とりあえず原文の日本語仮訳を作成してみました

構成は以下のとおり。

 英文オリジナル  和文、勉強部屋の仮訳
 1. Introduction  1. はじめに
2. Supporting the socio-economic functions of forests for thriving rural areas and boosting forest-based bio-economy within sustainability boundaries
2.1. Promoting sustainable forest bioeconomy for long-lived wood products
2.2. Ensuring sustainable use of wood-based resources for bioenergy
2.3. Promoting non-wood forest-based bioeconomy, including ecotourism
2.4. Developing skills and empowering people for sustainable forest-based bioeconomy
 2. 繁栄する農村地域のための森林の社会経済的機能を支援し、持続可能性の境界内で森林ベースの生物経済を後押しする
2.1。長寿命の木材製品のための持続可能な森林生物経済の促進
2.2。バイオエナジーのための木材ベースの資源の持続可能な利用の確保
2.3。エコツーリズムを含む、木材以外の森林ベースの生物経済の促進
2.4。持続可能な森林ベースの生物経済のためのスキルの開発と人々のエンパワーメント
3. Protecting, restoring and enlarging EU’s forests to combat climate change, reverse biodiversity loss and ensure resilient and multifunctional forest ecosystems
3.1. Protecting EU’s last remaining primary and old-growth forests
3.2. Ensuring forest restoration and reinforced sustainable forest management for
climateadaptation and forest resilience
3.3. Re- and afforestation of biodiverse forests
3.4. Financial incentives for forest owners and managers for improving the quantity and quality of EU forests
3.気候変動と戦い、生物多様性の喪失を逆転させ、回復力のある多機能な森林生態系を確保するために、EUの森林を保護、回復、拡大
3.1。 EUの最後に残っている原生林と原生林を保護する
3.2。気候適応と森林回復力のための森林回復と強化された持続可能な森林管理の確保
3.3。生物多様性のある森林の再植林と植林
3.4。 EUの森林の量と質を改善するための森林所有者と管理者への金銭的インセンティブ
4. Strategic forest monitoring, reporting and data collection
5. A strong research and innovation agenda to improve our knowledge on forests
6. Inclusive and coherent EU forest governance framework
7. Stepping up implementation and enforcement of existing EU acquis
8. Conclusion
4.戦略的な森林の監視、報告、データ収集
5.森林に関する知識を向上させるための強力な研究と革新のアジェンダ
6.包括的で首尾一貫したEU森林ガバナンスの枠組み
7.既存のEU Aquis(法体系)の実施と施行を強化する
8.結論

8つのセッションの分かれていますが、具体的な施策内容が記載してあるのが、2と3。

木材利用の話は2の社会経済的側面についてのセッション。3は山づくりに関する記述です。その他のセッションは計画を進めるフレームワークが記述されています。

((EU森林戦略の木材利用戦略))

2.1が建築材料(長寿命)、2.2がエネルギー(短寿命)といった二つのストーリーが記載されています。順番に紹介

(建築材料としての木材利用の促進)

「2. 繁栄する農村地域のための森林の社会経済的機能を支援し、持続可能性の境界内で森林ベースの生物経済を後押しする」というタイトルの、2の総論が書いてあるセッションの、木材利用については、以下の通りです。

持続可能な方法で生産され、長寿命の木材ベースの製品は、炭素を貯蔵し、化石ベースの材料に置き換えることで、特に生物学的プロセスを通じて行われる炭素除去に炭素を追加することで、気候の中立性を実現するのに役立つ。収穫時または自然枯死時、火事、エネルギーの燃焼、焼却、または自然の腐敗過程による時間の経過、樹木は炭素を大気中に放出する。木質バイオマスをライフサイクルの長い木質材料や製品に変換する場合、炭素除去期間を大幅に延長することとなる。(4ページ)

そして、「2.1。長寿命の木材製品のための持続可能な森林生物経済の促進」という本文のセッションの中に以下のような記述があります

木製品の最も重要な役割は、建設部門を温室効果ガスの排出源から炭素吸収源に変える手助けをすることである。これらは、かなりの改善の余地がある。市場シェアの3%未満である木製品は、依然としてヨーロッパの建築材料のごく一部にすぎず、エネルギー集約型で現在は化石燃料ベースの材料が大部分を占めている。委員会は、建物のライフサイクル全体の炭素排出量を削減するための2050年のロードマップを作成する。建設製品規則の改訂に関連して、委員会は、木材建設製品およびその他の建築材料の気候上の利点を定量化するための、標準的で堅牢かつ透明な方法論を開発する。
EUで木材製品の使用を促進するには、火災リスクや耐久性の欠如に関する誤解との闘い、建設、使用、解体中フェーズでの汚染とエネルギー消費の削減という点での木材製品の複数の利点の認識など、需要側の行動も必要である。建設エンジニアや建築家は、木で建物を設計するように奨励されるべきである。建設会社は、ライフサイクル思考と循環性の原則に従って、リスクプレミアムとビジネスモデルに木造建築のすべての利点を反映する必要がある。(6ページ)

(バイオマスエネルギー)

「2.2。バイオエナジーのための木材ベースの資源の持続可能な利用の確保」というセッションの記載は以下の通り。

木材ベースのバイオエネルギーは現在、再生可能エネルギーの主な供給源であり、EUの再生可能エネルギー使用量の60%を供給している。 2030年までに少なくとも55%の排出削減目標を達成するには、加盟国はエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー源のシェアを大幅に増やす必要がある。バイオマスが持続可能に生産され、効率的に使用される場合、カスケードの原則に沿って、EUの炭素吸収源と生物多様性の目標、および持続可能性の境界内での木材の全体的な利用可能性を考慮に入れて、2030年の展望を見据えて、バイオエナジーはこのミックスで引き続き注目すべき役割を果たすだろう。(7ページ)
木材ベースのバイオエネルギーの使用に関連する潜在的な気候と環境のリスクを軽減し、そのプラスの気候への影響を最大化するために、2030年のEU生物多様性戦略は、エネルギー生産のための樹木全体の使用は、EUからであろうと輸入であろうと、最小限の抑えるべきであるとした。(8ページ)
再生可能エネルギー指令の改訂の提案は、追加の具体的な保護手段を定めた。これには、バイオエナジーの持続可能性基準の強化、適用範囲の拡大、調達のための立ち入り禁止区域の拡大が含まれる。これは、原生林からの森林バイオマスの調達を禁止し、自然保護の目的に干渉しないように、生物多様性の高い森林でそれを制限することを意味する。(8ページ)

(木材利用の全体動向)

建築の中で木材利用をすすめるために、環境性能の見える化のための色んな情報を開発してくる可能性、楽しみです。それに対して、エネルギーは再生エネルギーの大半をになっている木質バイオマスの方は、いろいろ課題をかぶせて少しブレーキを踏んで来るみたいです。

((EUの森づくりは))

森林戦略の本体となる、セッション3。タイトルは、「気候変動と戦い、生物多様性の喪失を逆転させ、回復力のある多機能な森林生態系を確保するために、EUの森林を保護、回復、拡大」です。

(3億本の植樹)

「3 3.3。生物多様性のある森林 再植と。生物多様性のある森林 再植と。生物多様性のある森林」というセッションに3億本の植樹記載している。

「主に、都市および都市周辺地域(都市公園、公共および私有地の樹木、緑化建物とインフラストラクチャ、都市庭園を含む)および農業地域(たとえば、放棄された地域、アグロフォレストリーおよび森林放牧地、および景観の特徴を含む生態学的回廊の確立)に関係する。強化された植林は、森林セクターで最も効果的な気候変動と災害リスク軽減戦略の1つ」とされます。

「2030年までに少なくとも30億本の追加の木を植えるためのロードマップ」という文書が作られていて、この事業のモニタリングのやり方などが記載されているようです。

原文はこちらに公開→COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT The 3 Billion Tree Planting Pledge For 2030

今回の作業アウトプットを紹介する文書に「2030年までに少なくとも30億本植樹」というキーワードがはいっていますので、はー当たり1000本うえると10年間で30万ヘクタール(1年あたり3万ヘクタール)の植林ですね。

多分いろんな形でフォローされていくでしょう。

(森づくりのための補助金)

「3.4。 EUの森林の量と質を改善するための森林所有者と管理者への金銭的インセンティブ」というセッションは、所有者を意識させるための手法ですね。

「特に小規模な所有地の私有林の所有者と管理者は、生計を直接森林に依存することが多く、今日、彼らの主な収入は木材の供給から来ている。他の利点、特に生態系サービスの提供は、めったにまたは決して報われない。これは変革する必要がある。森林の所有者と管理者は、木材と非木材の材料と製品に加えて、ほとんどの気候と生物多様性にやさしい森林管理の実践を通して、森林の保護と回復を通じて生態系サービスを提供する、原動力と支援をうけなければならない。これは、予想よりも早く、より困難な気候変動に見舞われ、農村地域が森林災害による収入、生計、さらには生命の損失に苦しんでいるヨーロッパの一部で特に重要である。」としえて、優良事例が紹介されています。

生態系サービスのための公的および私的支払いスキームの例

フィンランドのメッツォプログラムは、私有林の所有者に、生物多様性のために土地を確保するための支払いを行っている。提供される金額は、土地の価値と森林が確保される期間によって異なる。

 すべての人に対するクロアチアの税金は、経済活動を行う自然人と合法者、および400.000ユーロを超える収入が、森林生態系サービスの恩恵を受けるために総収入の0.0265%を支払うことを要求し、特別な国家基金を通じて、これは森林地域に応じて森林管理計画に従って、森林所有者に分配される。

 フランスのLabelBas Carbonスキームでは、フランスの森林管理における環境サービス(低炭素行動)を財政的に支援することにより、民間および公的行動が温室効果ガス排出量を自主的に相殺することができる。

 2019年、ポルトガルは、ユーカリ植林地の再生、自生種の植林、非木材製品の開発をカバーする2つの自然公園で森林生態系サービスを支払うパイロットプログラムを開始した。

など

この辺は、日本の環境税・譲与税 の話などがのれば、大きく光る部分ですね。

 (オリジナルデータがすべて公表さています(英語ですけれど))、

いずれにしても、ご関心のあるあるかたは、記載事項の出所情報などもしっかり記載されていて、面白いです。原文の和訳も作成しておきましたので、ご関心のある方はどうぞ。

オリジナル:New EU forest strategy for 2030

勉強部屋による仮訳:2030年に向けた新たなEU森林戦略 

chikyu7-2<EUFS2021>

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「木材活用・脱酸素化で加速」-日経新聞(夕刊)一面記事(2021/8/5)

8月2日付けの日経新聞一面トップ記事(夕刊ですが)の見出しは、「木材活用、脱炭素で加速ー不動産各社、住宅向け一段とーケイアイスター国産で輸送負担減でした。

電子版にも:住宅、木材活用に知恵 環境にも配慮ー住友不動産やケイアイスター(有料会員限定?かな)

環境の視点から木造住宅の普及ーいよいよ、木材住宅もメインストリーム(か?)

(環境配慮の見える化)

電子版から記事を引用します、「ケイアイスター不動産は平屋建ての注文住宅「IKI」について、4月以降の契約分から使用する木材を全て国産材に切り替えた。これまでも全体の約8割を国産材としていたが、新たに構造材の梁(はり)もすべて国産木材で建てられるようにした。

同社によると、木造の戸建て住宅は鉄筋コンクリート(RC)造と比べ建築時に排出するCO2を約29トン削減できる。1世帯が排出する約7年間分のCO2に相当する。

輸入材を使用するよりも輸送時の環境負荷も減らせる。全て欧州産の木材を使って建てた場合は国産材を使った場合に比べて約8.5倍のCO2が発生するとの試算もある。建屋の価格は17坪(約56平方メートル)で599万円から。今後3年間で500棟の受注を目指す考えだ。」

(環境配慮の見える化とウッドマイルズフォーラム)

ケイアイスター不動産は、4月に「一般社団法人 日本木造分譲住宅協会」という団体を他社(三栄建築設計オープンハウス国産木材活用の業界団体設立)と設立しました。そして、木造の環境性能を普及するため、ウッドマイルズフォーラムに入会してその蓄積を活かそうとしています。

その結果が、上記記事のアンダーライン部分(以下に再録)につながっています。

「木造の戸建て住宅は鉄筋コンクリート(RC)造と比べ建築時に排出するCO2を約29トン削減できる。1世帯が排出する約7年間分のCO2に相当」「全て欧州産の木材を使って建てた場合は国産材を使った場合に比べて約8.5倍のCO2が発生するとの試算もある}(右の図)

ウッドマイルズフォーラムが積み重ねてきた、木材、地域材の環境貢献見える化の蓄積がビジネスの中で活かされるようになってきましたね。

kokuai11-13<Nikkei-mokuzai>

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 五輪開会式木の五輪ー前大会から展示林でそだてられた世界の木(2021/8/15)

世界中の人が見るTokyo2020東京五輪の開会式

途中(クライマックス?)で木の五輪が登場

開会式の公式HPでも、4. A LASTING LEGACYとして、丁寧な解説

「今回登場するオリンピックリングスには、1964年の大会のレガシーが受け継がれています。前回の東京1964オリンピックで、各国選手団が持ちよった種から育てた木の間伐材が使われているのです。デザインは、日本の伝統工芸である寄せ木細工をイメージしています。

さらに舞台となる国立競技場にも47都道府県の間伐材が活用されています。木の恵みと共に暮らしてきた日本の木工技術の素晴らしさ、それを担う江戸の大工職人たちに光を当てたパフォーマンスが繰り広げられます。そして日本各地はもちろん、世界の様々なカルチャーが一緒にこの地を踏みしめながら、リズムを重ねていきます。2度目の東京大会が目指す「多様性と調和」の響きをぜひ感じ取ってください。」

舞台となる新国立競技場の木(間伐材だったかな?)もふくめて、木とそれを加工する技術者がつくる日本の伝統社会の木の恵み。引き継がれるレガシーなんだそうです。

(木の由来は)

五輪開会式、北海道が「下支え」 五輪オブジェは遠軽産木材(北海道新聞)

こちらに詳しい解説があります。
1964東京オリンピックゆかりの木(遠軽町 北海道家庭学校展示林)(遠軽町)

「遠軽町内、留岡にある児童自立支援施設「北海道家庭学校」の広大な敷地の一角に、1964年(昭和39年)東京オリンピックの際に、参加各国選手団が持ち寄った木の種から育った林があります。展示林と呼ばれるこの林には、カナダやアイルランド、北欧などから提供されたパイン類やトーヒ類が約160本育ちました。
 大会当時、世界中から集まった種は生育環境や気候に合わせて日本各地に配布され、北海道で育苗されたものはここ遠軽の自然豊かな家庭学校展示林に植樹されました。」

1964東京オリンピックゆかりの木(遠軽町 北海道家庭学校展示林) 紹介動画

1964の世界の日本の共生のレガシー。大切に育てられた森林のパワーを感じます。

2020のレガシーはどのように伝えられていくのかな?

junkan4-8<TK2020enkaru>

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大雨と土石流などー勉強部屋ニュース264編集ばなし(2021/8/15)

今月のフロントページは熱海の土石流。

日本列島に停滞する前線にそって一日で通常の一か月の雨が降る線状降水帯。8月も梅雨末期のような状況ですが、日本のほとんどの傾斜にある森林の防災機能が議論されます。

このサイトの主たる関心事項である木材の利用?より、生命にかかわる土石流のリスクのほうが当然インパクトがありますよね。熱海の土石流と林地開発許可手続きの合理性とリスクは木材利用の皆伐跡地のリスクとも関係してくるので重要です。

第一回の勉強部屋Zoom会議、林政審議会土屋会長をお招きして、森林林業基本計画の作成過程の思いを語っていただきました。土屋さんにお願いした内容については、基本計画を5年間の大きな政策動向との関係やグローバル動きとの関係で解説という素晴らし満点なんですが・・・。

私が担当したロジについては、参加者とのコミュニケーションやアンケートなどいろいろ問題。年四回予定なので次回は10月なんですが、来月号にはしっかり準備をしてお知らせします。

よろしくお願いします

次号以降の予告、IPCC第六次報告書と森林、サプライチェーンマネジメントってどんなこと?第6次エネルギー基本計画とバイオマス熱利用の普及拡大への道筋、地域の未来自伐型林業で定住化、地球温暖化対策の推進に関する法律改正は?森林所有者は幸せか?森林に関する主観的幸福度論文が公開、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com