ニュースレター No.261 2021年5月15発行 (発行部数:1580部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:森林のガバナンスからみた「人(ひと)新世と「資本論」」(2021/5/15)
2.  成長産業化は?次世代にむけたの山づくり・カーボンニュートラルに向けた木材利用などー森林・林業基本計画改定案へのパブコメ提出(2021/5/15)
3.  全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割(2021/5/15)
4. 管(すが)総理の森林問題への言説ーみどりの式典(2021/5/4)
5.  「気候変動サミット」の中の森林の役割(2021/5/1)
6. 地球環境時代と木材ー連載が始まりました(2021/5/4)
7. 22年間メールニュース発信ー勉強部屋ニュースが日刊木材新聞に(2021/4/30)
8. 年度替わりー勉強部屋ニュース261編集ばなし(2021/5/15)

フロントページ:森林のガバナンスからみた「人新生と『資本論』」(2020/4/11)

コロナ渦の大型連休中、何人かの方に勧められ、今評判(?)の「人新生(ひとしんせい)と『資本論』」という新書本を、読んでみました。筆者は斎藤幸平35才(34才?)

ーーー

生産の基盤が私的所有され、「使用価値」とは別の市場が求める「価値」を追い求めて矛盾(不平等と環境問題と・・・)を拡大する資本主義。この問題をどのように解決するのか?

行政が社会保障、環境政策といった政策を積み重ねて市場の失敗を修正する。企業もESGやSDGsといった市場からの圧力をうけて失敗の是正をする。・・・

といった、資本主義の色にどっぷりつかった方法では本質を見誤る(「SDGsはアヘン」なのだ)(そうです)。

初期のマルクスも資本主義を成長の成果を踏まえてコミュニズムをいっていたが、間違っていた。

キーワードは「脱成長のコミュニズム」(①使用価値経済への転換、②労働時間の短縮、③画一的な分業の廃止、④生産過程の民主化、⑤エッセンシャルワークの重視の5つの柱から成る)(第7章)

そのような社会への転換の兆しがバルセロナに(第8章)

ーーーーご興味があればどうぞ、1020円+税

温暖化に対応せざるを得ない「人新生」で「脱成長」という主張が、分かり易くなっているという面もあります。成長しながらカーボンニュートラルな社会ができるのか?莫大な開発投資をしてすべての(先進国の)自動車を電動化して再生電力のみにした場合、リチウム電池のリチウムは乾燥地の地下水を大量にくみ上げて製造・・・地球のバウンダリーを超えるのでは・・・

それはそれとして、このような本(失礼)が売れているということは、今の社会のある断面を「しっかりきりとっている」ことは、間違えないのでしょう。

ということで、現代社会の森林問題をこの本に沿って少し考えてみました。

(犠牲を不可視化する外部化社会ー地球の矛盾の外部化の最後が熱帯林?)

資本主義が自らの矛盾を拡大するシステムの一つが、先進国の豊かな社会がその代償を遠くに転嫁して不可視可するプロセスがあるからだ、という。「先進国はグローバルサウス(途上国)を犠牲にして豊かな生活を享受している。途上国の低廉な労働力だけでなく、地球環境も。そろそろ外延ができなくなり行き詰まりつつある。」(33ページなど)

豊かな社会の最も外延部に位置するのが途上国の首都から離れた(アマゾンやカリマンタンの)熱帯降雨林です。矛盾が集積し熱帯林の自然と、そこに居住する原住民に、豊かさの矛盾が集積します。未だに続く熱帯林の減少。地球上で、最も難しいガバナンスの問題が表出する熱帯雨林。その最も大切な課題に答をだすのが、グローバルサウスの森林関係者、市民、世界中の森林科学者です。そこのガバナンスをどのように構築していくのかが、齋藤の問題提起に答える一つの道でしょう。

(排他的なプロセスと「コモン」という第三の道ー森林管理は最先端をいけるかも)

新しいどんな社会をつくるのでしょうか?当ロジックの重要な部分が、昔共有化されていた水などの自然資源を、資本が管理し、希少性をつけて価値(儲け)を生み出してきた資本主義。ここにコモンを取りもどして、「市民」有化して新しい社会にいたる(マルクスも晩年になってそのことに気がついたんだそうです)。(251ページなど)

電力の場合、原子力とか火力とちがって、太陽光や風力は排他的な利用がなじまないので、希少性が作りづらく「市民営化」で可能、(260ページ)など。

それでは、(我が)森林管理プロセスはどうなのでしょうか?天然資源由来のものでも鉄やアルミニウムのようなものは原料採取や生産過程で、「閉鎖的なプロセス」(巨大なインフラの中の専門家しか解らないシステム)が必要ですが、それが不要な、「開放的な」木材や木質バイオマスの生産過程です。

そのためにサプライチェーン管理が逆にむずかしく大変なんですが、「自伐的林業」など、生産過程の市民的管理の実験が可能なのかも。

民主的管理については、森林では、入会い林など、共有資源としてのとしての長い実績と研究の蓄積があります。コモンズとしての市民管理が資源管理から波及していくという過程を想定すると、森林分野の役割は注目されるかも。

(小さな林業と大きな林業なども関係あるかな)

グローバルマーケットの立ち向かって国産材を消費者にとどける、大型の国産材製材工場の流れ(グローバルに課題を転嫁させているのが輸入材だとすると国産材は何に転嫁させている?山づくりは大丈夫なのか?)。

それに対して、近くの山の木で作った家を市民に供給する顔の見える関係。大きな林業に対する小さな林業。難しい課題ですが。市民とともに課題を解決する仕組みでもありそうです。

ーーーー

私的所有権をベースにした生産基盤という資本主義、近現代の常識に、基本的な問題提起をしてインパクトを与えている「人新生の資本論」というおとぎ話のような本でした。

そんな道がこの社会にありうるのか?といのが基本的な疑問で、それは自分の中ではそのままです。(おとぎ話)

が、この本を読んでみて、森林ガバナンスに関わる様々な課題が、森林分野だけでなく、「人新生」というの社会のガバナンスに広い影響をあたえる可能性をもっているのではないか?というポジティブな物語だったように思います。

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  成長産業化は?次世代にむけたの山づくり・カーボンニュートラルに向けた木材利用などー森林林業基本計画改定案へのパブコメ提出(2021/5/15)

森林・林業基本計画(案)が4月末に公開われパブコメの募集がされました。

作成過程でもこのページでも関心をもってフォローしてきました。

市民と森林との関わり(など)ー「新たな森林・林業基本計画に関する意見」提出 (2020/7/24)
日本の森林の新たなガバナンスにむけてー林政審で次期森林・林業基本計画の議論が始まる (2020/11/15)
森林林業基本計画の改定作業ーカーボンニュートラルとの関係は (2021/4/11)

そこで、計画案を読んでみました。

成長産業化はどうなるんだ?次世代に向けた山づくりは?カーボンニュートラルとの関係は?
以下のような意見を提出しました。

 ★1 林業成長産業化、グリーン成長、新しい林業の関係は

産業政策として、前計画では、林業成長産業化が、基本的な対応方向を示す一つのキーワードでした。

(参考1)現計画
2 森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向
(1)資源の循環利用による林業の成長産業化

それに対して、今計画案は成長産業化という言葉は前計画の評価の文脈でしか(記述が)ありません。今計画では、「グリーン成長」ということばが出てきます。

(参考2)今回案5ページ
2 森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向
(1)森林・林業・木材産業によるグリーン成長

また、情勢変化を踏まえた対応方向(3)6ページに「新しい林業」という言葉が登場します。それらの関係がよく分かりません。

そこで、

☆意見1-1 成長産業化と新たな林業に関する説明を

成長産業化ということばが今計画からなくなっていますが、成長産業化がある程度達成されたからですか?成長産業化という言葉が不適切な面を包摂しているという理解なのですか?計画の中で説明が必要だと思います。また新たな林業との関係は説明して下さい。

☆意見1-2 グリーン成長は林業の役割の一部である(一部でしかない)ことを明確に

政府全体の中カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略が重要な課題になっているので、その関係をしめすことは重要だと思います。が、政府が経産省が中心になって提起しているグリーン成長戦略は、主として温室効果ガスを出し続けてきた産業の方向転換をしめす政策であり、多面的な環境性能と向き合ってきた林業との関係では多面的な機能の中の1つの分野(地球環境保全機能)に関するものです。その辺も含めた整理を是非お願いします。

★2 次世代に向けた山づくりのリスクへの対応、再造林に関するガバナンス

今計画案では、国産材利用が進んだ後の山づくりのリスクについて、認識を示しています。

例えば、「立木販売収入から再造林費用を捻出できる状況にはなっておらず、近年の主伐面積に対する再造林面積の割合は約3割にとどまっている。また、伐採後に適切な更新がなされていない造林未済地は、平成29年度末で約1.1万haに増加した」(3ページなど)

最も重要なテーマだと思います。

その点で15ページの以下セッションの記述は重要な内容だと思います。

第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策
(1)適切な森林施業の確保
(3)再造林の推進

その内容に関して、以下の意見を述べます

☆意見2-1 線引きの重要性

現行の育成単層林を条件に応じて、次期も育成単層林にするのか、複層林にしていくのか、線引きをすべきとの考えですが、その通りだと思います。
そこで、線引きの基準や見通しについてしっかり対応すべきだと考えますが、具体的なガイドラインが示されるべきと思います。

今の計画の数値だと660万ヘクタールは育成単層林にすると読めますが、現場の実態を確り反映していますか?私の知る限りもう少し少ないのでないかと思います。
立木価格で再造林費をまかなえる地域を線引きすると読めますが(3ページなど)、それで660万ヘクタールをカバーするということでしょうか?
この辺があいまいだと、実施過程で、問題が出てくると思います
木材関係者などの参画によって具体的な取組をすすめるとありますが(15ページ1(1)ア)
エンドユーザに近い建築関係者視野に入れて下さい。建築関係者は森林のガバナンスに心配している方が多いです。

☆意見2-2 消費者と連携したガバナンスの確立

15ページ「イ適切な伐採と更新の確保」についても、川下の情報提供のシステムの関しても、是非建築関係者を入れて下さい。リスクだけでなく管理された大切な素材だと言うことを含めて、川下に訴求していくシステムを作っていただきたいと思います。

★3 カーボンニュートラルの実現への貢献

20ページの「製造時のエネルギー消費の比較的少ない木材利用、化石燃料の代替となる木質バイオマスのエネルギー利用、化石資源由来の製品の代替となる木質系新素材の開発・普及、加工流通などにおける低炭素化等を通じて、二酸化炭素の排出削減に貢献していく」は重要な指摘だと思います。

☆意見3-1 カーボンニュートラルと木材利用の関係

自社のカーボンニュートラルに取り組む企業のビルを木質化する場合、どのように排出量の削減に資するのか、示す必要があるとおもいます。カーボンオフセットを念頭においた木材利用拡大のクレジットの方法論など、検討方向としても是非記載していただきたい、と思います。
この点は、32ページ「(3)都市等における木材利用の促進」、34ページ「(7)消費者等の理解の醸成」の記述にも関係します。「消費者」というだけでなくビジネスの中での需要拡大を念頭においた表現を検討下さい。

☆意見3-2カーボンニュートラルと木質バイオマスのエネルギー利用

33ページの(5)木質バイオマスの利用に関連して、木質バイオマスのエネルギー利用は、カーボンニュートラルでないという議論が進んでいます(Letter Regarding Use of Forests for BioenergyーHundreds of scientists affirm that trees are more valuable alive than dead--both for climate and for biodiversity.)など。
その関係で、森林資源を保続を担保する観点での取組は大切になっています。
発電用FIT利用について由来を担保するシステム(林野庁:発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン)ができていますが、そのガイドラインの拡張や、熱利用についても由来を担保するシステムの導入が要なので、その点の指摘をお願いします。また、大量の木質バイオマス原料の輸入がされていますが、輸送中や製造過程の温室効果ガス排出などをガイドラインの基準にくわえることも念頭においた指摘をお願いしたいです。

★4 中小製材工場等による「地場競争力の強化」

6ページの「中小地場の製材工場等については、地域における多様な消費者ニーズをくみ取り」は大切な視点だと思います。多様な消費者の中に、建築関係者の動きが重要なので,是非記述して下さい

★5 ゼロデフォレステーション商品の普及

14ページ「(13)国際的な協調及び貢献」に関連して、ニューヨーク宣言にもある、民間セクターが森林に優しい商品調達を推進、といった関連で日本の消費者の商品の嗜好をグローバルな森林政策に位置づけたらどうでしょう。パームオイル、牛肉、大豆など森林減少をゼロに貢献する商品が開発されています。森林政策を、木材やバイオマスだけでなく幅広く商品に関するツールとして拡大して下さい。

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全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割(2021/5/15)

The Conversationというサイトに、There aren’t enough trees in the world to offset society’s carbon emissions – and there never will beと題する、記事が掲載されています。

翻訳すると、「全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上にありませんー未来永劫ありません

筆者はBonnie Waring Senior Lecturer, Grantham Institute - Climate Change and Environment, Imperial College London(写真右:コスタリカのらセルバ生物研究所で研究を行っている筆者、だそうです)

ーーーー

一番のポイントの部分を翻訳して紹介します

 Our society asks so much of these fragile ecosystems, which control freshwater availability for millions of people and are home to two thirds of the planet’s terrestrial biodiversity. And increasingly, we have placed a new demand on these forests – to save us from human-caused climate change.  何百万もの人々の淡水の利用可能性を制御し、地球の陸生生物多様性の3分の2が生息する、森林ー脆弱な生態系に、我々の社会はの多くを求めています。そして、私たちはますます、人為的な気候変動から救うために、これらの森林に新たな要求を課しています。
 Plants absorb CO₂ from the atmosphere, transforming it into leaves, wood and roots. This everyday miracle has spurred hopes that plants – particularly fast growing tropical trees – can act as a natural brake on climate change, capturing much of the CO₂ emitted by fossil fuel burning. Across the world, governments, companies and conservation charities have pledged to conserve or plant massive numbers of trees.  植物は大気からCO2を吸収し、葉、木、根に変換します。この日常の奇跡は、植物、特に成長の早い熱帯樹木が気候変動の自然なブレーキとして機能し、化石燃料の燃焼によって排出されるCO2の多くを捕捉できるという期待に拍車をかけています。世界中の政府、企業、自然保護慈善団体は、膨大な数の木を保護または植えることを約束しています。
 But the fact is that there aren’t enough trees to offset society’s carbon emissions – and there never will be.  しかし、実際には、社会の炭素排出量を相殺するのに十分な樹木はありません。そして、決してそうなることはありません。
 I recently conducted a review of the available scientific literature to assess how much carbon forests could feasibly absorb. If we absolutely maximised the amount of vegetation all land on Earth could hold, we’d sequester enough carbon to offset about ten years of greenhouse gas emissions at current rates. After that, there could be no further increase in carbon capture. 私は最近、利用可能な科学文献のレビューを実施して、炭素林がどれだけの炭素林を実現可能に吸収できるかを評価しました。地球上のすべての土地が保持できる植生の量を絶対的に最大化した場合、現在の速度で約10年間の温室効果ガス放出を相殺するのに十分な炭素を隔離します。その後、炭素回収量はこれ以上増加しません。 
   

上記にもあるように文献のレビューをした結果なForests and Decarbonization – Roles of Natural and Planted Forests等も紹介しながら、最近、森林の一部の機能に着目した過大な期待が寄せられていることを心配する、丁寧な説明をしています。

もちろん森林はカーボンニュートラルな社会をつくるために大切な役割を、果たすことは間違えないのですが、それに過大な期待が寄せられて大切なチャレンジがおろそかにならないように、という忠告ですね。、

最後の一文を紹介して終わります。
It occurred to me, as I packed up my equipment to return to the lab, that thousands of such small dramas were playing out around me in parallel. Forests are so much more than just carbon stores. They are the unknowably complex green webs that bind together the fates of millions of known species, with millions more still waiting to be discovered. To survive and thrive in a future of dramatic global change, we will have to respect that tangled web and our place in it.  研究室に戻るために機器を梱包していると、何千ものそのような小さなドラマが私の周りで並行して再生されていることに気づきました。森林は単なる炭素貯蔵以上のものです。それらは、数百万の既知の種の運命を結びつける、知らないうちに複雑な緑色の網であり、さらに数百万が発見されるのを待っています。劇的な地球規模の変化の未来で生き残り、繁栄するために、私たちは、森林そのもつれた網とその中での私たちの位置を、尊重しなければなりません。 

もちろん、カーボンニュートラルに向かう非常事態の社会に森林の炭素貯蔵機能は大切な役割をもっています。が、カーボンストックより、沢山の未来へのドラマ詰まった・・・森林は、人新生にとって大切なモノですね。

kokusai2-77<NE_offsettree>

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管総理の森林問題への言説ー緑の式典(2021/5/4)

緑の月間の中心行事として、4月23日第15回みどりの式典が開催されました

植物や自然保護の研究者などに贈られる「みどりの学術賞」の授賞式なども併催。

総理大臣が式辞を述べました。年に一度の国行政の最高責任者である総理大臣の森林に関する現状と施策の方向性に関する認識の表明。

一昨年の安倍総理の式辞(昨年はコロナで中止だったので一番最近)と比較してみました。

第15回みどりの式典管総理大臣の式辞  第13回みどりの式典安倍総理大臣の式辞 
 2021年4月23日  2019年4月26日
  本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、みどりの式典を挙行するに当たり、政府を代表して式辞を申し述べます。
 平成19年に5月4日が国民の祝日みどりの日になって以来、この日は国民にとって、自然に親しむとともに、その恩恵に感謝し、豊かな心を育む日として定着してまいりました。
 本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、「みどりの式典」を挙行するに当たり、政府を代表して式辞を申し述べます。
 平成19年に5月4日が国民の祝日「みどりの日」になって以来この日は、国民にとって、自然に親しむとともに、その恩恵に感謝し、豊かな心を育む日として定着してまいりました。
 国土の約7割を占める森林は年々、齢(よわい)を重ね、我が国にとって貴重な資源となっています。切って、使って、また植える、という循環の下で利用していくことが、近年多発している災害の防止や、2050年カーボンニュートラルの実現に、極めて重要であります。森林は、我が国の二酸化炭素吸収量の約9割を占めております。森林を豊かにすることが、我が国の環境対策に不可欠なものとなっています。
 また新型コロナを契機に、人々の自然への関わりにも変化が生まれております。森林豊かな環境への関心が高まり、地方への移住が増えています。
 令和の時代にあっても、国民と共に、森林をしっかりと守り育てる取組を進め、次の世代へ引き継いでいきたいと思います。
 
 今日、我が国は、みどり豊かな、世界有数の森林国となっています。国民の身近に四季折々の豊かな自然が保たれ、日々の生活の中で親しまれています。
 本年は、明治元年から150年に当たる年です。みどりを守る保安林制度や、植樹の奨励など、国を挙げての森林再生の取組が始まったのも明治時代です。今日の我が国の豊かな森林は、このような先人のたゆまぬ努力によってもたらされたものであります。
 私たちは、このような豊かな「みどり」を次世代に引き継いでいかなければなりません。明治150年の節目に当たって、このような歴史を振り返り、国民全体の努力によってこれからも「みどり」をしっかりと守り育てるとの決意を新たにしているところです。
 本日の式典を通じて、多くの人々が、改めて緑に対する理解を深めることを期待するとともに、皆様の御活躍と御健勝を祈念して、式辞といたします。   今年も、国民の自然への理解を深めるため、「みどりの日」などに、吹上御苑で、皇居の美しい自然に触れる催しが開催されると伺っています。
 本日の式典や「みどり」に関わる様々な取組を通じて、国民が改めて「みどり」に思いを巡らせ、理解を深めることを期待するとともに、皆様の御活躍と御健勝を祈念して、式辞といたします。
 https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202104/23midori.html  https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201804/27midori.html

一昨年は明治元年から150年という特殊な年だったかから特別だったからなのか、総理大臣が替わったからなのか、「みどりを守り育てる」だけでなく、「伐って、使って、また植える、循環利用を進めましょう」と具体的、そして、背景説明も「災害の防止や、2050年カーボンニュートラルの実現」、「新型コロナを契機に、・・・。森林豊かな環境への関心が高まり、地方への移住が増え」具体的な言葉が並びます。

 式典では、総理は、式辞を述べた後、みどりの学術賞の授与及び緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰の授与を行いました

kokunai1-20<sugasinrin>

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気候変動サミットの中の森林問題(2021/4/11)

4月22、23日にかけて、アメリカのバイデン大統領の主催による、「気候変動問題」をテーマとした首脳会合、すなわち「気候変動サミット」が、オンラインで開催されました。

気候サミット閉幕、パリ協定修復へ世界再始動

米国のバイデン新大統領が地球環境問題で新たなイニシアティブを示す場となった(バイデン氏、気候変動対策の「勝負の10年」 サミットでCO2削減の新目標を発表)、管首相がこの会議にむけて、会議直前に菅首相 2030年の温室効果ガス目標 2013年度比46%削減を表明と、注目されるイベントでした。

オンラインで開催されたこの会議のすべてが、米国国務省のLeaders Summit on Climateというサイトに掲載されています。

このページでは、森林問題がどのように取り扱われたのか報告します。

(プログラムの構成と森林問題)

二日間にわたるサミットはのプログラムはLeaders Summit on Climate: Scheduleに掲載されていますが、概要以下の通りです。

1日目  8:00 a.m.–Session 1   Our Climate Ambition  This session will underscore the urgent need for the world’s major economies to strengthen their climate ambition by the time of COP 26 to keep the goal of limiting warming to 1.5 degrees Celsius within reach. It will provide an opportunity for leaders to highlight the climate-related challenges their countries face and the efforts they are undertaking, and to announce new steps to strengthen climate ambition.
このセッションは、世界の主要経済国がCOP 26までに気候変動の野心を強化し、温暖化を1.5℃に制限するという目標を達成するという緊急の必要性を強調します。それは、指導者が自国が直面している気候関連の課題と彼らが取り組んでいる努力を強調し、気候の野心を強化するための新しいステップを発表する機会を提供します。
   10:30 a.m.–Session 2   Investing in Climate Solutions  This session will highlight the urgent need to scale up climate finance; efforts to increase public finance for mitigation and adaptation in developing countries; and efforts to shift trillions of dollars of private investment to finance the transition to net zero by 2050.
このセッションでは、気候ファイナンスを拡大する緊急の必要性に焦点を当てます。発展途上国における緩和と適応のための財政を増やす努力。 2050年までにネットゼロへの移行に資金を提供するために、数兆ドルの民間投資をシフトする取り組み。
   12:30 p.m.–Session 3
 (Breakout Sessions, Round 1)

Adaptation and Resilience
 This session will highlight the climate adaptation and resilience challenges faced by all countries, especially those most vulnerable to climate impacts, and cutting-edge approaches to strengthening resilience in the face of climate change and climate variability.
このセッションでは、すべての国、特に気候の影響に対して最も脆弱な国が直面する気候適応とレジリエンスの課題、および気候変動と気候変動に直面してレジリエンスを強化するための最先端のアプローチに焦点を当てます。
     Climate Action at All Levels  This session will highlight the critical efforts of subnational and non-state actors (cities, states/regions, and indigenous groups) that are contributing to green recovery and working closely with national governments to advance climate ambition and resilience on the ground.
このセッションでは、グリーン復旧に貢献し、各国政府と緊密に協力して気候変動の野心と現場の回復力を向上させる、サブナショナルおよび非ステートアクター(都市、州/地域、先住民グループ)の重要な取り組みに焦点を当てます。
   1:30 p.m.–Session 3
(Breakout Sessions, Round 2)
 Climate Security  This session will highlight the global security challenges posed by climate change, the impact on the military and readiness, and efforts underway to address the threat multipliers to energy, economic, and national security.
このセッションでは、気候変動によってもたらされる世界的な安全保障上の課題、軍事力と準備への影響、およびエネルギー、経済、国家安全保障への脅威の乗数に対処するために進行中の取り組みに焦点を当てます。
    Nature-based Solutions  This session will highlight the critical role of nature-based solutions in reducing emissions and strengthening climate resilience, including efforts to reduce deforestation and the loss of wetlands, restore marine and terrestrial ecosystems, and promote sustainable agricultural practices.
このセッションでは、森林破壊と湿地の喪失を減らし、海洋と陸域の生態系を回復し、持続可能な農業慣行を促進する取り組みを含む、排出量の削減と気候回復力の強化における自然ベースのソリューションの重要な役割に焦点を当てます。
 2日目  8:00 a.m.–Session 4   Unleashing Climate Innovation  This session highlighted the critical role of technological innovation in achieving a net-zero, climate-resilient economy; the importance of accelerating public and private investment in climate innovation; and the enormous economic opportunities in building the industries of the future.
このセッションでは、ネットゼロで気候変動に強い経済を実現する上での技術革新の重要な役割に焦点を当てました。気候革新への公的および私的投資を加速することの重要性。そして将来の産業を構築する上での莫大な経済的機会。
   9:15 a.m.–Session 5
 The Economic Opportunities of Climate Action  This session highlighted the broad economic benefits of climate action, with a strong focus on job creation. It explored the economic benefits of green recovery and long-term decarbonization and the importance of ensuring that all communities and workers benefit from the clean-energy transition.
このセッションでは、雇用創出に重点を置いて、気候変動対策の幅広い経済的メリットに焦点を当てました。それは、グリーン回復と長期的な脱炭素化の経済的利益と、すべてのコミュニティと労働者がクリーンエネルギー移行から利益を得るようにすることの重要性を調査しました。

(森林保全に言及したリーダー)

1日目冒頭のSession 1 Raising Our Climate AmbitionSession 2 Investing in Climate Solutionsという二つのセッションが、首脳クラスのプレゼンテーションでした(以降のセッションは担当大臣クラス)

これらのセッションで登場した首脳で、森林について言及したブラジルのPresident Jair Bolsonaro大統領「30年までにアマゾン違法伐採ゼロ」ブラジル大統領(朝日新聞)など日本のマスコミでも報道される大きなトピックスでした。

ブラジル大統領、森林「保護」へ急転換 支持低迷に焦り(日経新聞)

、40地域の首脳のプレゼンテーションをすべてをチェックしたわけではないですが、途上国を中心に多くの首脳が森林問題に触れました。
President Jair Bolsonaro, Brazil
President Ivan Duque Marquez, Colombia
President Joko Widodo, Indonesia
President Felix Tshisekedi, Democratic Republic of the Congo

(自然を基礎にした解決策)

1日目の午後から、各国大臣クラスが参画するテーマ別のセッションがあり、その中で、Nature-based Solutionsと名付けた、セッションがあります。

「森林破壊と湿地の喪失を減らし、海洋と陸域の生態系を回復し、持続可能な農業慣行を促進する取り組みを含む、排出量の削減と気候回復力の強化における自然ベースのソリューションの重要な役割に焦点を当てる」とあります。

登壇者は、以下の通り

U.S. Participants:Secretary of the Interior Deb Haalan
Speakers:
☆1 Andrea Meza, Minister of Environment and Energy, Costa Rica
☆2 Flavien P. Joubert, Minister for Agriculture, Climate Change and Environment, Seychelles
☆3 Tuntiak Katan, General Coordinator, Global Alliance of Territorial Communities
☆4 Jonathan Wilkinson, Minister of Environment and Climate Change, Canada
☆5 Archana Soreng, Member, Youth Advisory Group on Climate to the U.N. Secretary General; Kharia Tribe, Sundergarh, India
☆6 Luhut B. Pandjaitan, Coordinating Minister for Maritime Affairs and Investment, Indonesia
☆7 Lee White, Minister of Water, Forests, the Seas, and Environment, Gabon
☆8 Gabriel Quijandria, Minister of the Environment, Peru

上記からそれぞれのプレゼンテーションを録画で見ることができます。テキストがないので、正確にこのページで内容をつたえることは、できませんが、是非ご覧下さい。

関係ページに記載している説明分(英文を和訳)は以下の通りです。

ハーランド内務長官Secretary of the Interiorが主催し、森林破壊の停止や湿地の喪失、海洋および陸域の生態系の回復などの自然気候ソリューションなしでは、2050年までにネットゼロを達成することは不可能であると述べました。また、彼女は、南極の海洋生物資源保護条約(CCAMLR)に基づく3つの海洋保護区の提案を通じて、南極海を保護する提案に対する米国の支持を発表しました。

すべての参加者は、炭素を隔離し、気候の回復力を構築するために、陸域と海域を保護および保護するための支援を強調し、いくつかの発表を行いました。セイシェルは、強化されたNDCの章を海洋ベースのソリューションに捧げており、支援を受けて、2025年までに海草とマングローブの生態系の少なくとも50%、2030年までに100%を保護することを約束しています。カナダは、その一部として、は、陸と海の保護のための新しい連邦予算に40億ドルを投じています。さらに、コスタリカは、自然と人々のための高い野心連合の共同リーダーシップと、2022年までに海の30%を保護する意向を強調しました。ペルーは、NDC対策の5分の1以上が自然ベースのソリューションに関連していることを強調しました。インドネシアは、伐採と泥炭地の利用に関する新しいライセンスを恒久的に凍結するという大統領令と、マングローブのリハビリプログラムについて話し合った。ガボンは、無傷で伐採された森林は、すべてのセクターの総排出量の年間4倍のCO2を吸収すると述べました。

もちろん、自然を基礎にした解決策ですので、陸地と海洋の全てについて対象としているのですが、内務省が作成したであろう、上記の文章では、森林のことが少ししか記載していないですね。

内容をご覧になると、森林の保全について原住民の生活を守ることが保全の原動力になるといった、事例が多く述べられています。

先進国はカナダだけ。自国の森林についての言及はないみたいでした(途上国支援の話が中心。)、議長の内務長官の発言も米国内の取組でないですね。

先進国の木材利用の話は残念ながらないみたいです。

kokusai2-77<LSumtC>

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地球環境時代と木材ー連載が始まりました(2021/5/4)

クボデラ株式会社(東京都中野区、代表取締役:窪寺 伸浩)のサイトで、「地球環境時代の木材」という連載をさせていただくこととなりました。

プレスリリース「地球環境時代の木材」 ~消費者と生産者を結ぶ環境ビジネスの可能性~ 2021年5月より連載開始によりますと・・・

「昨年度から開始しましたアカデミアとの連携・協業活動の一環として・・・・当社は2020年10月から6回にわたり、千葉大学環境健康フィールド科学センターの宮崎良文グランドフェロー、池井晴美特任助教に「木材と快適性~科学的エビデンスに基づいて~」を執筆していただきました。

藤原(ウッドマイルズフォーラム)理事長には地球環境時代という新たな考え方に基づいて、森林・林業・木材産業の役割を提起していただきます。

本連載を皆様方の商売のヒント、お客様への提案などに活用していただければ幸いです。ぜひご一読をお願い申し上げます。」

なんだそうです。

第1回 地球環境時代って何?―循環しない異常な社会を、子孫のための循環社会に
第2回 固定された炭素の貯蔵庫としての木材利用
第3回 木材は省エネ資材―化石資源の代替資材
第4回 木材を使えば森林が減る?森林のガバナンスとサプライチェーン管理
第5回 ウッドマイルズって何?森林と消費者の距離を近づける運動
第6回 2050カーボンニュートラルに向けた施策と木材ビジネス

頑張ります

kokunai3-61<kubodera>

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  22年間メールニュース発信ー勉強部屋ニュースが日刊木材新聞に(2021/4/30)

木材業界向けの超メジャーな日刊紙「日刊木材新聞」4月28日号に、勉強部屋ニュースの紹介記事がのりました。

見出し「22年間メールニュース発信ー産学官民ネットワークをつくる」ー持続可能な森林フォーラムの藤原代表が発信するメールニュースが先頃260号を迎えた。タイトルは「持続可能な森林経営のための勉強部屋」で毎月一回22年間欠かさず会員に配信を続けた・・・・(こちらに記事のコピーをを置いておきます

きっかけは、ニュースレターの読者でもある記者のかたから、「木造の本社ビルもできたことだし、一度遊びにきませんか?」とお誘いをうけたこと。

4月中旬に遊びにいってきました(自転車にのって)。お話をしている内に、「お話の内容をコラムにしましょうか」(やったー!)

毎日、全国の木材関係ビジネスの関係者に4万部ほど配達されている、業界紙。

読者の最近の関心は「第三次ウッドショック」(でしょう)。

木材製品の値上がり、どの製品の値段があがり、どの製品がそうでもないか、はビジネスの最も関心事(でしょう)。(日刊木材以外にたよるものがない)

ただ、このような業界紙が、もう少し先をみて環境問題とビジネスの関係情報も大切な課題。すこし、環境が動き出しているので、勉強部屋も日刊木材さんとコラボレーションができないかなーなどと、考えて(妄想して)います


konosaito<nitimoku2104>
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森林にはカーボンニュートラルより大切な仕事がー勉強部屋ニュース261編集ばなし(2021/5/15)

コロナ渦の大型連休。じっと自宅になんですが・・・結構気になるネット上イベントもふくめた情報が一杯。そして本も読んで。皆さんに報告したい情報があふれて8本のニュースとなりました。

このところ、2050からカーボンニュートラルという大きなトピックスに関連した記事が多くなり、今月号もバイデン大統領の主催する気候リーダーズサミットという大きなイベントがあり、それを追いかけた記事(全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割)を作成しました。

が、森林という奥深いポテンシャルをもったテーマを取り上げる、このサイトで、そればかりいっていてはもっと長期的大きなテーマがン受け落ちるんではないか、という指摘の材料があり(全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割)、そういう視野からしっかりページ作りしなければ・・森林・林業基本計画改定案へのパブコメ提出森林のガバナンスからみた「人(ひと)新世と「資本論」」。すこし大変な連休でしたが、充実したともいえる、大型連休でもありました。

日刊木材の記事も事前に掲載をしていたら、木材関係者からの反響がありした。

6月19日に一般社団法人持続可能な森林フォーラムの総会を行います。今後の方針などに関して会員の方々と議論をするばとなりますが、それまでに、読者の方々には会員になるとどんないいことがあるの?といったことも含めてご連絡しますので、よろしくお願い会います。

今月からアンケートの場所を設けました。この記事はおもしろかった。この記事はもうすこし、こうしたら?以下のページからよろしかったらお願いします。

ニュースレターアンケートページ

次号以降の予告、バイオマス熱利用の普及拡大への道筋、地域の未来自伐型林業で定住化、「論語と算盤」と森林の関係(2)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定と森林・木材ーTPP/EPAとの比較、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com