ニュースレター No.260 2021年4月11発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:建築物への木材利用と炭素クレジットーGHGゼロ排出に貢献する道筋(2021/4/11)
2.  森林林業基本計画の改定作業ーカーボンニュートラルとの関係は(2021/4/11)
3.  春の学会の季節ー132回日本森林学会コレクション(2020/4/11)
4. 日本の2030年削減目標(NDC)を45%以上にー気候変動イニシアティブの会員になりました(2021/4/11)
5.  みどりの食料システム戦略の中の森林林業木材産業(2021/4/11)
6.  カーボンニュートラルな社会 の中での木材利用 市民研入門講座(2021/4/11)
6. 年度替わりー勉強部屋ニュース260編集ばなし(2021/4/11)

フロントページ:建築物への木材利用と炭素クレジットーGHGゼロ排出に貢献する道筋(2020/4/11)

3月19日から23日にかけて開催された第132回日本森林学会大会の3月20日のセッションで、標記の発表をしました(例に拠ってオンライン)。

演題は:「建築物への木材利用と炭素クレジットーGHGゼロ排出に貢献する道筋」。

2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という国の方針に、森林の学会関係者として、どんな課題があるのか、というのが話の内容です。

(森林の吸収量、木材の固定量へ企業の関心が高まっている!)

左の図は、準備過程で作成した大切な情報。

林業経済研究所で5年前に作成しネット上に公開している、企業の森林づくり・木材利用のCO2吸収固定量の見える化ガイドラインと、見える化計算シートをネットの月別のダウンロー数。昨年1年間のダウンロード数は5年間の累積数の半分!自治体も企業も関心が広がっています!

といったことも含めて、報告しました。

こちらにプレゼン資料を置いておきます

(プレゼン概要をご説明)

概要を報告します

背景   パリ協定の基本は、協定の趣旨を踏まえ、各国がGHG排出削減の目標INDC(Intended National Determined Contribution)を通知しそれを高めていくこと。

日本は2030年の目標を提出しているが、これは2015年7月に政府が決めたモノで、2050年80%削減を念頭においたもの。2050カーボンニュートラルとは整合性がとれていない。

これから、拡大された目標数値の作業が始まる。(真ん中の赤い〇
その作業は、国内のコンセンサスがとれるかどうかも問題だが、海外の人たちに(学会関係者もふくめた)納得してもらう必要があり、学会関係者も大切な役割。
     政府は昨年12月26日にグリーン成長戦略発表したが、その内容にもとづいて課題を検討

一つのターゲットは今年11月に英国で開催される、COP26
それまでにNDCを作成するだろう
 政策の現時点    左の図は、政府が年末に公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に記載されていたポンチ絵。
これによると、電力は50年までに全量を脱炭素電源にすることはできるが、電力以外はどうしても削減できない部分がのこる(黒い部分)。そこで、下の吸収量で差し引く、というストーリー。

森林も大切な役割がありそう
合理的に差し引くシステムをどう作るかが、一つのポイント。
 実現に向けた原動力
   カーボンニュートラルの社会を実現できるかどうか、その原動力は、自治体と企業。 
2050年CN宣言をした自治体は、2年前は4自治体だったのが、今年の3月では311自治体に(1億人以上の人口をかかえる)
(その後増えて4月7日現在359)

CN宣言をする企業も増えている

これらの人たちに森林や木材の側から、何を提供できるのだろうか?
 実現に向けた原動力
 
 企業への提供データ    その先行事例を紹介。(手前味噌ですが)

林業経済研究所で、5年前に左の事業を実施。

その成果品である、企業の森林づくり・木材利用のCO2吸収固定量の見える化ガイドラインと、見える化計算シートをネット上に公開

だれでもダウンロードできます
 この一枚をご紹介したかったです    左の図はダウンロードの月別の数。5年間で森林づくりの吸収量計算シートダウンロード、380件、建築用木材の固定量計算シートは232件
ですが、昨年1年間のダウンロード数は5年間の累積数の半分!
自治体も企業も関心が広がっています!!
(この一枚が紹介したかった!
 今後の課題は    見える化事業で提供するデータ。それと、削減量と取引でできる、データは何が違うのか?
それを判断ための既存のシステムに、国が認定したJクレジット制度があります。
森林づくりには、森林経営活動と、植林活動という、二つのチェックシスト(方法論)が公表されています
木の固定量の方には、チェックリストがありません
いろいろとやることがありそう
   御礼
ダウンロードしてくれた関係者とコンタクトして、意見を聞いたり、チェックリストを作成する方向性を検討したり、いろいろやるべきことは、たくさんありまーす!

関心ある方は連絡をください

以上
     

(質疑)

質問を一つ頂きました

質問
林政1(A7)・様々な動きをご説明戴き参考になりました。二酸化炭素の吸収・固定量の「見える化」について、どこからどこへ移動しているかも大事と思います。そうしたフローの見える化はどの程度進んでいるのでしょうか 
 答え
Jクレジット化した森林活動に関する蓄積が、どの程度購入されているのだろうか?という質問ですね?

正直言うと、正確には把握しておりません。
個別のイベントや商品作成過程をオフセットをするなどの取引がされているようなので、件数は結構あるかと思いますが、数量は余り多くないのでないかと思います。今後しっかり調査をしていきたいと思います
重要な事案なので報告をしたいと思い立ってから、あまりに、基本的なことを知らなすぎることを、知りました。今後、Jクレジットの登録者などに話をおききしながら、すこし知見を広げていきたいと思っています

以上でした

(森林計画学会でも)

なお、森林計画学会で3月26日に春季シンポジウムがあり、第二部「21世紀の森林林業の諸課題と森林計画学の方向性」というセッションの中に、「会員からの提言」というプログラムがあったので、同じタイトルで、お話をさせていただきました。

左の一枚は、森林計画学会の皆さん方にむけに、一枚追加

「計測が比較的容易なエネルギー消費過程のGHG排出量の削減量に対応した、森林の吸収量の計測・森林管理活動の評価・ベースラインの測定、また木材の固定量に関する評価の手続きなどについて、課題と可能性を検討したい。」と思います

(「見える化」するのは吸収量と固定量のだけでよいのか)

森林計画学会の議論で、すごく大切なご指摘を受けました。

どうして吸収量と木材による固定量だけなんでしょうか? 今は全く見えていない、木材利用によるマテリアル代替(省エネ効果)による排出削減量、化石燃料代替による排出削減量を見える化することこそ必要なことではないでしょうか? もちろん、これらはすでに排出削減量としてカウントされていますが、その中で木材の貢献が全く見えないのが現状です。 

多くの企業が排出削減を一生懸命やっている中、森林の吸収量・固定量について問題提起をしよう、というのが今回の報告の意図でした。

しかし、排出削減努力のなかにも、木材利用による省エネや化石燃料代替などのよる重要な側面があるので、その分を忘れないように!というご指摘です。

関連論文も送っていただきましたので、別途ご報告します。

kokunai4-50<2050NCJ1>

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  森林林業基本計画の改定作業ーカーボンニュートラルとの関係は(2021/4/11)

5年に一回改定をしている森林林業基本計画の改定作業が行われていますが、3月30日に開催された林政審議会で、その骨子に関する以下のような一連の情報が配布されています。

資料1-1 新たな基本計画(骨子案)のポイント(PDF : 475KB)
資料1-2 森林・林業基本計画(骨子案)(PDF : 248KB)
資料1-3 新たな基本計画の項目立てについて(PDF : 148KB)
資料1-4 森林・林業基本計画に掲げる目標数値について(案)(PDF : 1,073KB)
資料1参考 用語の考え方や定義等について(PDF : 220KB)

いよいよ、検討が具体的な中身に入ってきたみたいですね。拾い読みをしてみました。

(新しい基本計画のストーリー)

このページでも今まで、「グローバルな視野をもって、森林のガバナンスの確保を市民の参加で」という視点で意見を言ってきました。

市民と森林との関わり(など)ー「新たな森林・林業基本計画に関する意見」提出(2020/7/24)

下の図、左側は、資料1-2森林林業基本計画(骨子案)の骨子です。

そして右側はその内容で①第一にグローバルな視野に基づいたカーボンニュートラルと関連しそうな木材利用の推進が記載されそうなA-G ②次に、次世代に森林のガバナンスについて、関係ありそうな「あ」と「い」、に記載しえあったことをメモしています

今後どんな書きぶりになるか、フォローしていきます。

(林産物の供給利用に関する目標)

右の図は、 資料1-4 森林・林業基本計画に掲げる目標数値について(案)(PDF : 1,073KB)のなかの、林産物の供給利用に関する目標数値を、前計画の数値と比較が分かり易くまとめてみたモノです。

左側の総需要が、国産材と輸入材を合わせた国民が木材を使う総量、右側がそのうち、国産材の供給量です。用途別の目標数値などがならんでいます。

今回の数値の実績欄の19年度の数値と、前計画の20年度目標のと比較をしてみると、・・・

製材用材など建築用材は実績が目標に少し及びません。それに対して、燃料材は、19年度実績が20年度目標の倍以上。

それでは今後の目標は?建築材の目標は、前回の目標以上の数値が掲げられています。カーボンニュートラルを武器に拡大でしょうか?どんなシナリオで建築材に需要を拡大していくのか今回の計画の一つのポイントですね。

そして、燃料材の計画は、輸入材を中心に拡大基調がつづくストーリー。輸入バイオマスのリスクをどう考えるのか、重要な論点になりそうです。

今後フォローしていきますね

kokunai1-19<kihonkeikaku2021_2>

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春の学会の季節ー132回日本森林学会コレクション (2021/3/15)

3月19日から23日にかけて開催された第132回日本森林学会大会

日頃少し気になっていたことを、少しまとめて考えるチャンスになるだろう、と、時間がありそうなときに、学会発表するようにしています。

森林分野の横断的な学術的報告が行われる森林学会大会は、持続可能な森林経営の枠組みについての研究動向を知る上で重要なのですが、年度末のこの時期に出席するのは難しい状況が続いていました。が少し余裕ができたので、いってきました(Zoom会議ですが)

気になった報告をすべてフォローすることはできませんが、本人のご厚意によりいただいた発表資料データ、大会誌に掲載された概要をもとにを紹介します。

森林学会の報告全体はこちらから

 標題  発表者  関連データ  趣旨・注目点
ゼロエミッションへの道
T1-1木質バイオマス供給の現状と課題 久保山裕史(森林総研) T1-1 発電所の新規稼働が今後も続くことから、現状ではほとんど利
用されていない林地残材の低コスト供給や、A∼C 材需要を増やすことによる伐採量の拡大、
未利用広葉樹材の活用、ヤナギ等の超短伐期林業の低コスト化が必須
T1-4炭素負債を巡る国際的な議論と日本の林業 ・ バイオマス政策への示唆 相川高信 (公益財団法人自然エネルギー財団) T1-4
参考情報「やっかいな問題」として森林バイオエネルギー問題を捉える-JRCレポートを読み解く
木材中の炭素をカウントする場合、化石燃料に比べてバイオマス燃料の方が単位エネルギー量あたりのCO2 排出量が多く、大気中のCO2 量を一時的に増加させる。
特に、樹木・森林の場合は、成長・再生に時間を要するため、放出されたCO2 の再吸収にかかる時間が長く、CO2 削減効果が発現するのに時間がかかると批判されている
木質バイオマスはカーボンニュートラルか?という国際的な議論に参戦!途中経過ですが。調達過程のGHG排出が重要な要素。
今後フォローしていきますね。参考情報「やっかいな問題」として森林バイオエネルギー問題を捉える-JRCレポートを読み解く」こちらを読んで少々お待ち下さい
 建築物への木材利用と炭素クレジットーGHGゼロ排出に貢献する道筋  藤原敬  A6
プレゼン資料
 近年、建築基準法の改正などで中大規模建築の木材利用が進む方向になっている。中大規模建築物の木造化が進んだ場合、炭素吸収量の増大として認定する可能性について、他のJクレジットの方法論の手法と比較して検討専用サイトこちらをご覧下さい
製材工場におけるスクリュ式小型蒸気発電機導入による環境効果と経済効果 立花敏(筑波大学) A7 製材工場がスクリュ式小型蒸気発電機(MSEG)を導入し、余剰蒸気を利用して発電することが二酸化炭素排出削減にどの程度寄与するか
国内森林のガバナンス
再造林における費用構成と所有者負担ー南九州の森林組合を事例にー : 尾分達也 (宮崎大学) A2 再造林の主たる担い手である森林組合を対象に、南九州7 組合における再造林の現状について、事業担当者への聞き取り
所有者の負担はほとんどないが、そのためには、国県が定める標準経費を元に、実際の事業費は標準経費の8 割程度、造林作業班の労賃が低く抑えられた結果、造林作業の担い手確保が困難になっている。森林所有者の意識を変えること、補助金額や標準経費の適正化が求められる
市町村森林行政の体制と業務 :  石崎涼子 (森林研究 ・ 整備機構 森林総合研究所) ら A12 総務省統計を用いた職員数の長期推移の把握とアンケート調査を通じた実人員および業務範囲の把握・分析
市町村における林業部門の職員数は、1990年代後半、市町村森林行政の役割が大幅に拡充された時期から10 年間で3 割減と大幅な減少に転じたこと、近年、一部市町村で職員数が増加
森林経営管理制度下の経営管理実施権を巡る初動-岩手県の事例から 大塚生美 (国立研究開発法人森林研究 ・ 整備機構 森林総合研究所) ら A15 林業経営に適しても適していなくても市町村が自ら施業を行うことは困難であり、委託せざるを得ないのが実態。アンケート結果から、市町村自ら森林所有者の意向調査に着手した例、委託により進めている例が明らかになっている。本報告では、そうした違いに至った要因について、アンケート調査後のフォローアップ調査に基づき、代表的事例から経営管理実施権を巡る初動をのべる
森林環境譲与税を活用した都道府県による市町村支援の概況と課題 香坂玲 (名古屋大学) ら A15
掲載論文がでますので少し待って下さい
都道府県を対象とし、その市町村支援について、関連組織・会議体や人事交流、市町村向けのガイドライン等について概況を把握
6 県で独自にセンターを設置し、人事交流を行う10 府県も存在し、県と市町村の職員を併任する制度を導入した事例も把握された。更に森林経営管理制度または森林環境譲与税の活用方法に関する市町村向けのガイドラインが17 府県で作成環境譲与税と府県単位の超過課税の整理が必要
森林の多面的機能の意味
生態系サービスの提供についての森林所有者の意識について 柴田晋吾(上智大学) ら A32 日本の森林所有者を対象に生態系サービスの提供についてのアンケート調査を実施
森林の保有・管理の目的としては、木材生産、水資源の保全、相続、自然や生物多様性の保全、美や景観を楽しむが上位
生態系サービスへの支払いを受けている者は2 割に満たないが、7 割以上の者が関心を示している。森林サービス産業について期待している者は6 割
都市化と森林再生の時代における政策指標としての主観的幸福度 : 高橋卓也 (滋賀県立大学) ら A28
プレゼン資料
人びとのウェルビーイング(厚生、幸福)の向上は資源管理の究極の目標だと考えられるが、森林政策の指標として明確に検討されたことはなかった。政策指標としての有用性を評価するため、滋賀県野洲川流域における森林に関連した主観的幸福度(森林幸福度)測定の解析結果を検討
森林幸福度を従来の物理的・客観的政策指標(整備森林面積、木材生産量など)を補足する指標として提案する。その根拠は次の四つである。①GDP などの市場経済基準の厚生指標を補完できる。②住民と森林との多面的関係性といった都市化社会において重要な側面が反映される。③森林生態系サービスの受益者と森林管理の担い手の間にある非衡平・公正性が認識できる。④森林幸福度は回答者に認識されるすべての側面を反映しうるので包括的
このサイトでも今まで、追いかけてきました。成長産業の基盤を所有している人が不幸せ、林業が成長産業となるのかどうか重要な指摘です
グローバルな森林ガバナンス
森林減少の発生メカニズムと有効な対策 宮本基杖 (森林総合研究所) ら A11
関連論文Poverty reduction saves forests sustainably: Lessons for deforestation policies
、1.現行の対策(保護地域の設置拡大、農地開発の停止、農業分野への規制など)は、農業地代を下げる対策が主流である。2.農業地代低下策は、即効性があるものの、高い代償を必要とし、当該国に経済打撃と貧困拡大のリスクが高く、持続性が低い。3.貧困削減策は、森林減少を止める効果的かつ持続的な解決策となりうる。世界の森林減少対策は抜本的変革が求められており、対策の主軸を農業地代低下策から貧困削減策へと移すことが必要である。
途上国の森林減少の原因は貧困だ!今の政策を転換する必要がある
すごい政策的なインパクトのある報告です!グローバルな場でどんどん議論が必要です
学会と行政との関係
森林の計画 ・ 計画学の特徴と目的 :他分野の計画の視座を交えたレビュー 當山啓介 (東京大学) ら D2 森林計画制度や森林計画学会が存在し、森林管理分野において計画の必要性は自明のように取り扱われるが、そもそも計画とは何で、計画学は何をする学問かを明確化すべく、他分野の計画学を含めてレビューした

発表資料をいただける方は、ご連絡いただけるとありがたいです。

gakkai<sinrin2021>

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日本の2030年削減目標(NDC)を45%以上にー気候変動イニシアティブの会員になりました

2050カーボンニュートラルにむけて、30年削減目標NDCをどのようにしていくのでしょうか?温室ガス削減、加速なるか 50年ゼロへ 政権、30年目標見直し(朝日新聞4/3)

といったときに、気候変動イニシアティブという団体から、気候変動イニシアティブ(JCI)メッセージ賛同募集を開始します!と以下のようなメッセージが届きました。

4月15日が締め切りで、まだ間に合います.(21日に全国紙にPR記事が掲載されるんだそうです)

 気候変動イニシアティブ(JCI)メッセージ賛同募集を開始します!
パリ協定を実現する2030年目標を求めるJCIメッセージ
  ・日本の2030年削減目標(NDC)を45%以上に
・2030年、再生可能エネルギー電力目標を40~50%に

現在、政府では本年6月に開催されるG7サミットを目途に、2030 年までの温室効果ガス排出量削減目標等を含む国別目標(Nationally Determined Contributions、NDC)の見直しを進めています。また、これと並行して、2030年のエネルギーミックスの検討も進めています。

グテーレス国連事務総長は、2月末、現在の各国の削減目標は、パリ協定の目標を達成し気温上昇を1.5℃に抑えるのに必要な、2030年までの45%の排出削減(2010年比)にはほど遠いと指摘。EUは既に昨年、2030年までの削減目標を40%から55%に強化しています(1990年比)。また、EUと連携して世界の気候変動対策をリードすることをめざす米国は、4月22日に開催されるバイデン大統領主催の気候サミットまでに現在の削減目標(2025年に2005年比で26~28%減)の大幅な強化を公表する見込みです。

こうした状況を踏まえ、気候変動イニシアティブ(JCI)から日本政府に向けて、現在の日本の削減目標(2013年比26%)を45%以上にすることを求めるメッセージを発信したいと思います。また、これを可能にするよう、2030年の再生可能エネルギー電力目標を40~50%にすることも提案します。

いま、パリ協定の目標実現のため、日本を含む世界各国に排出削減目標の引き上げとそれを実現する対策強化が求められています。多くの企業、自治体、団体の皆さまから、このメッセージへのご賛同をお待ちしています。

 

ということで、パナソニック株式会社株式会社 日立製作所イオンモール株式会社住友林業株式会社などなど、600社・団体ほど(4月4日現在)が参加する気候変動イニシアティブJIC、に、一般社団法人 持続可能な森林フォーラムが加入しました。よろしくお願いします。

同団体が3月31日に開催したウェビナ「NDC:2050年ゼロを実現する2030年の排出削減目標とは」に参加しました。

「日本で45%以上の削減は可能なのか」と題する自然エネルギー財団 常務理事 大野 輝之氏の報告が面白かったです。

それによると、右の図は現在の削減ペースでも26%目標を超過達成し、35%程度の削減へ。

あと、ひとがんばりですね。

そこは、太陽光と風力発電を野心的目標(転換促進型)にたかめれば、自然エネルギ-45%となって・・料金も安定性も大丈夫(左の図)(自然エネルギー財団2030年エネルギーミックスへの提言(第1版))なんだそうです。

この分析が供給側、それも発電だけを対象にしているのようなので、バイオマスの話(転換促進でも4%アップ)があまり登場していません。

第2版では、熱利用のはなしとか、需要側(削減)など木材利用に関しても、議論がされるように期待します。

kokunai4-51<JCIkaiin>

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みどりの食料システム戦略の中の森林林業木材産業(2021/4/11)

農林水産省が、3月26日「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめというのを発表しました

「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現~」というサブタイトルがついているので、森林林業分野はどうなっているのかな、読んでみました。

目次は、
1 はじめに
2 本戦略の背景
3 本戦略の目指す姿と取組方向
4 具体的な取組
5 工程表など
となっています

左の図は、2から3までの総論部分を示したポンチ絵です

その中に森林関係のことがどのように記載されているか、また、ちょっと気になった点を書き加えてみました

(戦略の背景説明)

図の左上の「背景」ですが、2背景説明の、地球環境問題に関して記載してある部分の冒頭は、「カーボンニュートラル2050の農林水産省版かな」と思ってみてみたんですが、もちろん、そうでもあるのですが、「地球の安定性を維持する限界値を意味する「プラネタリー・バウンダリー」は、9つの項目のうち、気候変動、生物多様性、土地利用、窒素・リンの4項目で限界値をすでに超え」とされてます。

・・・プラネタリーバウンダリー20年度環境白書からPlanetary boundaries: guiding human development on a changing planet

「気候変動だけを問題にしているんではないんですよ」というわけですね。

(政策手法のグリーン化)

3の「本戦略が目指す姿と取組方向」のなかに、「政策手法のグリーン化を図る」とあります(4ページ)。「政策手法のグリーン化とは、補助・投融資・税・制度等の政策誘導の手法に環境の観点を盛り込むこと」なんだそうです。

そして、その中に記載されているのは・・・

① 2030年までに施策の支援対象を持続可能な食料・農林水産業を行う者に集中していくことを目指す。農林水産省の補助事業については、技術開発の状況を踏まえつつ、2040年までにカーボンニュートラルに対応することを目指す・・・

④ 持続可能な食料・原材料や資材の利用など、環境保全に取り組む企業の情報開示等の取組を促すため、表彰やESG投資等の引き込みを検討する。
⑤ 農林水産・食品事業者の取組が適正に評価され、消費者等の行動変容等を促進する事業者の取組の可視化を促進する。

など

ということで、補助金の対象となる、路網の整備、森林造成などの作業の機械の電動化などが進められ、カーボンニュートラルを進める企業を応援するシステムなどが進むんでしょうか。

(苗木の中のエリートツリーの割合)

また、戦略が目指す目標を具体的な数値で示していくようです。とりあえず、今回の中間とりまとめでは、以下のような記述があります

⑫ エリートツリー等の成長に優れた苗木の活用について、2030年までに林業用苗木の3割、2050年までに9割以上を目指すことに加え、2040年までに高層木造の技術の確立を目指すとともに、木材による炭素貯蔵の最大化を図る(7ページ)。

現在検討中の森林林業基本計画改定作業などのなかに、こんな数値があったんでしたっけ。結構重要な数値ですよね。

(具体的な取組)

右の図は目次の「4具体的な取組」のポンチ絵ですが、そのなかで、気がついた点を拾ってみたものです。

具体的な取組は

(1)資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
(2)イノベーション等による持続的生産体制の構築
(3)ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立
(4)環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進
(5)食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造
(6)サプライチェーン全体を貫く基盤技術の確立と連携
(7)カーボンニュートラルに向けた森林・木材のフル活用によるCO2吸収と固定の最大化

という7つのセッションから構成されています。

内容を見てみましょう

(カーボンニュートラルに向けた森林・木材のフル活用によるCO2吸収と固定の最大化)

森林が中心となっているセッション(7)は森林に関する以下のような内容からなっています、

① 林業イノベーション等による森林吸収の向上
・間伐の推進に加え、利用期を迎えた人工林について「伐って、使って、植える」循環サイクルを確立し、林業の成長産業化を実現・CO₂吸収を最大化するエリートツリー等の開発・普及による再造林の推進
・レーザー計測等による森林資源情報把握
・自動化林業機械の開発等による省力化、生産性の向上
・ICT等の活用による生産・流通の効率化
・健康で豊かなライフスタイル実現のための森林サービス産業の創出・推進
・安心して暮らせる社会実現のための適切な森林整備・治山事業による国土強靱化
・国民参加の植樹運動の展開
② 木材利用拡大による炭素貯蔵・CO₂排出削減効果の最大化
・木造化・木質化を取り入れた新たな生活スタイルによるサーキュラーエコノミーの実現・高層建築物等の木造化の推進
・木材利用の多様な取組を推進(土木分野、家具、オフィス空間、外壁等)
・改質リグニン、セルロースナノファイバー( C N F)を活用した高機能材料の開発や、それに続く木質由来新素材の開発
・高効率な木質バイオマスエネルギー利用(熱利用等)の推進
・木のお酒、飼料への活用等、木材の新たな付加価値の創出

(その他のセッションの森林・木材関連事項)

森林木材の話は上記にすべて記載されている、ということかもしれませんが
(1)資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
(2)イノベーション等による持続的生産体制の構築のなかにも、関連事項があります

(消費者との連携)

また、食品にくらべて、森林関係の記述がうすいのは、、(4)環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進、の部分ですね。

② 消費者と生産者の交流を通じた相互理解の促進といった事項が、食品に関して記述されています。

森林や木材についても、建築関係者との連携など、川下との交流を通じた木材の利用拡大、など、是非記述を充実させて、5月の最終報告に向けて検討を進めて欲しいです。

関連して再造林の確保、のようなガバナンスの確保の部分も、市民や消費者との連携が大切なような気がします

junkan1-25<midorisyokuryo>

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 カーボンニュートラルな社会 の中での木材利用 市民研入門講座

NPO法人市民科学研究室(市民研)という団体があって私もかかわっていましたが、4月5日その団体の入門講座というところで、「カーボンニュートラルな社会の中での木材利用」という話をさせていただきました(もちろんZOOM会議)

(市民研とは)

「科学技術に市民の思いを活かしたい。」

科学技術がどんどん細分化して他の世界に人がわからなくなくなってきて、その最先端を担う人が中心となってその周辺に「村社会」をつくる。原子力村?。

原子力ほどでなくても、みんなそれぞれの村人ですね。私も森林村、霞ヶ関村の村人(もちろん、村役場の中心人物ではありませんが周辺の村人)。それは悪いことではもちろんありません(自分がローカルな住民であると言うこと自覚していれば)。

市民研は、いろんな、科学技術の村人に市民の声を届けよう、ということをやっている人たちです。

(市民に向けて、木材利用の情報提供)

プレゼンタイトルは「カーボンニュートラルな社会 の中での木材利用」、こちらに置いておきます。

〇自己紹介
〇地球環境と木材利用
   気候変動問題と森林
   気候変動緩和策と木材の利用
     木材のCO2固定量など
   地球環境と木材利用の注意点(違法伐採問題など)
〇終わりに
   ウッドマイルズフォーラムとは
   持続可能な森林経営のための勉強部屋

右の図はこのサイトでも紹介した、ネイチャーサステイナビリティ誌に掲載された記事「世界の炭素貯蔵庫としての都市のビルディングの図ですが、これを冒頭に紹介しました。

三つに分かれた時間軸の、右側が排出量の3割をになっている都市化のインフラ建設が炭素の固定量となる、という話。

この話の導入のつもりで、準備したんですが、今回準備をしてみて、この図の左側の部分に、「気候変動と森林」の話をする場合、インパクトがあることに気がつきました。

3億5千万年前から300年前までが、左の部分。そんな昔は大気中の二酸化炭素は今よりも倍以上あったのです、今のようにするまでに光合成をして固定する樹木(シダなど)が現れ腐朽菌がまだいなかったなので事情で、地中に炭素を蓄えた・・・。

ということなんで、大気中の二酸化炭素の増減をコントロールする話をするときには、森林関係の村人を必ず入れてくださいネ。

質疑のときに、厳しいご意見も。

①カーボンニュートラルといっても、それではカーボンが減らないでないではないですか、木材を地中にうめて、蓄積する方法を考えるべき!!
②大規模バイオマス発電は原料を輸入しているようですが輸送過程のエネルギーなど議論されているんですか?
③食料ならコンビニ行ったときに消費者が環境に優しい商品を選択することはあるんでしょうが、木材の場合消費者が選択する場面あるんですか?
④環境に優しい木を売り物にしている住宅メーカーはけっこうあるんですか?
⑤木材を使うこともあるが、森林がなくなることが重要だ、まえにブラジル人が住民の権利が奪われてい、ということをいっていた。切ったところをうえるということだけではだめなんではないですか?
⑥良質な木材とはどんな木材?
⑦50年たった木材を製材所にうったら3000円。

・・・大切な問題提起だが、何をどうしたらよいか、ということが一辺にわかるということでないことがよく分かった。今後とも議論を続けていきましょう。

junkan1-26<shiminken>
 今年度もよろしくお願いしますー勉強部屋ニュース260編集ばなし(2021/4/11)

年度末には、日本森林学会大会(今年は日本木材学会と合同大会)があり、関連して林業経済学会森林計画学会などのイベントがあります。

年度末というビジネスや行政の関係者にとっては超忙しい時期に、アカデミア(学会)の関係者は教育現場は春休みですこし時間があり、ということで、この時期に学会大会の開催にはズーとすこし外側にいて、違和感がありました。が、私自身もマネジネントの仕事から外れて、少し余裕ができてきたので、「産学官民の情報交流の場」を目指す勉強部屋の主宰者としては、だからこそ、少し頑張らなければならない、と、報告の機会にまず手をあげるることとしています。

霞ヶ関でホットな話題からみた、学会への期待。カーボンニュートラルの話ばかりになって、ごめんなさい。

年度がかわって、新任地であらたな生活を始める方の多いかと思います。連絡先が変わった方は連絡下さいね。

新年度、勉強部屋の新年度は何をしようかと、考えていますが。読者の皆さんとのコミュにケーションをどのように、とっていくか?

昨年試行したZoom会議は、是非やりたいとおもいます。また、今月からアンケートの場所を設けました。この記事はおもしろかった。この記事はもうすこし、こうしたら?以下のページからよろしかったらお願いします。

ニュースレターアンケートページ

次号以降の予告、成長産業化創出モデル事業-財務省が関心を持つ理由、バイデン大統領の森林問題、地域の未来自伐型林業で定住化、「論語と算盤」と森林の関係(2)、森林ビジネスイノベーション研究会、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性

konosaito<hensyukouki>

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藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com