ニュースレター No.2232018年3月25日発行 (発行部数:1420部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそって月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムー森林政策への応援団の広がりは?(2018/3/25)
2. 日本の森林のガバナンス-無断伐採に係る都道府県調査結果について(2018/3/25)
3. 製紙業界のクリーンウッド法事業者登録ー初めての一括申請の結果(2018/3/25)
4.  新たな森林経営管理に関する法案-森林環境税の目指すもの(2018/3/25)
5. 森林破壊と無関係な食料ー勉強部屋ニュース222号編集ばなし(2018/3/25)

フロントページ:森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムー森林政策への応援団の広がりは?(2018/3/25)

1月23日24日と二日間、林野庁他主催の森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムが、開催されました。

ネスレ、スターバックス・・・「森林の減少をゼロにす」るという、各国の森林管理行政当局の取組むべき課題に、グローバルなサプライチェーンをコントロールしている企業群が、どのように関与・貢献してくる可能性があるのか?

興味深いイベントに、出席してきましたので、概要報告します。

二日間のプログラムとスピーチで紹介されたデータ(日本の講演者も英語で情報提供)が、林野庁の以下のページにつるされています
森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム

(背景と趣旨)

上記サイトの4プログラムからダウンローされるデータに少し長い「背景と趣旨」が掲載されてますが、要約すると・・・

 シンポジウム開催の背景と目的(プログラムから)抄
(背景)

 世界の森林面積は、依然として熱帯地域を中心として年間3.3百万haの森林が失われており、地球規模の課題をもたらすため、生物多様性条約の第10回締約国会議( COP10) で採択された愛知目標では、「2020年までに、森林を含む自然生息地の損失が少なくとも半減、可能な場合にはゼロに近づく」ことを掲げるとともに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)においては、「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復」することとされるなど、森林減少に歯止めをかけることは、国際社会の公約となっている。

 森林減少の原因の8割は食料の増産を目的とする農地の開発によるものと言われていることから、「森林を犠牲にせずに将来的に増大が見込まれる食料需要に応えていくことが不可欠であり、森林減少を伴わない形で生産された商品作物を取り扱うことにコミットする取組(ゼロ・デフォレステーション)が様々な形で国際的に広がりつつある。

 時期  事項  コミットメント
2004年  「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)設立  持続可能性の基準設定等を通じて持続可能なパーム油の生産、調達等の達成を目指す 
 2009年  消費財フォーラム(Consumer Goods Forum)設立  世界70か国・400社以上の小売、流通、製造業からなる団体が団体が、パーム油、大豆、牛肉、紙パルプのサプライ・チェーンに関連する森林減少を2020年までにゼロにするとの決議を採択
 2014年  森林に関するニューヨーク宣言に署名  40ヶ国の政府(日本含む)、57の国際企業、57のNGOを含む190もの団体が、食料安全保障を強化すると同時に全世界の森林喪失を減速、停止、反転させるというビジョンを共有
 2015年  地球環境ファシリティ(GEF)パイロット・プログラム承認  主要な環境系条約の資金メカニズムである地球環境ファシリティ(GEF)は、「商品サプライ・チェーンから森林減少の排除」という5年間のパイロット・プログラム(45百万米ドル)を承認
 2015年  欧州6ヶ国がアムステルダム宣言に署名 デンマーク、仏、独、蘭、ノルウェー、英が 農産物の商品チェーンに由来する全ての森林減少の撲滅と持続可能なパーム油のサプライ・チェーンを2020年までに達成する目標を共有

 我が国においても、民間セクターの主導により同様の取組が広がる傾向にあり、今後、さらなる拡大が期待される。

(シンポジウムの目的)
 以上を踏まえ、国際的なゼロ・デフォレステーションの動向について理解を深めるとともに、SDGsや愛知目標の達成を目指す我が国の取組について国際社会に対する情報発信力を強化し、さらには民間セクターを含む多様な利害関係者の参加を得て世界の森林減少に歯止めをかけるための行動を促進することを目的とし、本国際シンポジウムを開催する。

ということで、食品産業を中心とした「優良事例」の紹介がありました。
   企業・団体  報告者  報告の内容  自社サイト
関連情報
食品企業     ネスレ日本  嘉納 未來 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長   Nestle Commitment on Deforestation and Forest tewardship
 味の素  長谷川 泰伸 グローバルコミュニケーション部 CSRグループ長   森林破壊ゼロに向けた取り組み
紙とパーム油
 公正な事業慣行
倫理的で誠実な取引の実践
スターバックス コーヒー ジャパン  田原 象二郎 /  コーヒースペシャリスト/チームマネージャー  Ethical Sourcing 倫理的な調達  Ethical Sourcing 倫理的な調達
 明治  萩原 秀和 / 菓子営業本部 菓子マーケティング部長  明治のカカオ生産の取組(アグロフォレストリーと農民支援(MCS) 明治カカオサポート
アグロフォレストリーチョコレート
その他森林関係商品供給企業     日本製紙連合会  上河 潔 / 常務理事  日本の製紙業界の持続可能なサプライチェーン管理  製紙連合会木材調達に対する考え方
 積水ハウス  佐々木 正顕 / 環境推進部部長  森林破壊ゼロにむけてー合法で持続可能なフェアな木材の利用  積水ハウス合法で持続可能な木材「フェアウッド」の利用促進
 花王  田中 秀輝 / 執行役員 購買部門統括   持続可能で責任のある調達、消費財フォーラム/NY宣言署名  原材料調達ガイドライン
 イオン  三宅 香 / 執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当  持続可能な社会を実現に向けたイオンの取組  イオン森の循環プログラム

以上の他に、国際機関、や途上国の取組についても報告されています。
林野庁の関係サイトをご覧ください。

採択されたモモデレータズサマリー(日本語英語
 「森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポ ジウム」モデレーターズ・サマリー(のサマリー)

2018 年 1 月 23-24 日、東京において、林野庁、国連食糧農業機関、国際熱帯木材機 関の共催により、森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関 する国際シンポジウムが開催された。
国際的なゼロ・デフォレステーションの動向について理解を深めるとともに、SDGs や愛知目標の達成を目指す日本の取組について国際社会に対する情報発信力を強化 し、さらには民間セクターを含む多様な利害関係者の参加を得て世界の森林減少に歯 止めをかけるための行動を促進することを目的とし、様々なステークホルダー延べ約 350 名が集まった。

2 日間のシンポジウムを通じて議論された主要なポイントには、以下の事項が含まれ る。
(1) 森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンは、持続可能な開発目 標(SDGs)の多く、さらには生物多様性愛知目標 5 及び 7 の達成に 決定的な役割を同時に果たす。
(2) 森林に関するニューヨーク宣言に掲げられた目標は、ゼロ・デフォレステーショ ンへのコミットメントの実施にとって優れた参考となりうる。
(3) 世界 の主要経済国である日本において事業活動を行う民間セクター及び海外事業展開 を行う日本企業としては、現在及び将来の世代が持続可能で快適な暮らしを送れるような調達方針を確 立するとともに、その実施状況を継続的に公表するために必要な措置を柔軟な方法 で講じるべきである。
(4) 証明された形で合法的かつ持続可能なサプライチェーンを確立するためのキ ャパシティ・ビルディングの努力が強化されるべきである。
(5) 事業活動において環境の問題に対処するためには、競争的ではなく、むしろ共 同的かつ透明性をもって取り組むことが重要である。
(6) さらに、より確実なトレーサビリティの仕組みの構築、特にリモートセンシング技術については、少なくとも サプライチェーンを通じた一次産品流通が始まる生産現場を特定する上において、 さらに役立つツールとなることが期待されている。
(7) 森林生態系にプレッシャーを与える潜在的なリスクを有する一次産品のサプ ライチェーンに関わるあらゆるステークホルダーは、ゼロ・デフォレステーション へのコミットメント及びその実施状況の開示が世界規模での ESG 投資の流れに関 連付けられる状況にある事実を認識するべきである。
(8) 金融及び投資セクターとしても、森林減少を伴わない一次産品の生産や関連するサ プライチェーンに対する融資を強化することにより、それらステークホルダーに対 して持続可能な生産及び消費に向けた変革を促すことが可能である。
(9) 森林減少を伴わないサプライチェーンの推進のため、森林減少を伴わないグローバル・サプライチェーンを普及し、拡 大することを目指した官民連携が強化さ れるべきである。
(10) 森林減少を伴わないサプライチェーンの推進に向けた民間企業の取組を後押 しする上では、日本の消費者の役割も重要である。
(11) 森林劣化が森林減少よりもさらに多くの CO2 の排出源となっており、、森林劣化に対処 することの重要性に対しても十分な注意が払わなければならない。
(12) 森林の保全並びに世界の食料需要が増加を続ける状況の下での食料安全保障 の達成という目標が本質的には二律背反の性格を抱えることを考慮しつつ、森林減 少を伴わないグローバル・サプライチェーンの推進を図っていくためには、適切な 行政単位レベルで全ての関係者により十分に調整が図られた土地利用計画に即し、 包括的なアプローチを実践することが重要である。 (13) 主要輸入国が整合的で協調したアプローチを目指す可能性を追求する必要があ る。
(14) 今回のシンポジウムの成果としてとりまとめられた本サマリーは、森林に関 する協調パートナーシップが主催して 2 月にローマで開催される「森林減少の阻 止と森林面積の拡大~野心から行動へ」と題する国際会議をはじめ、森林減少ゼロ に貢献する一次産品サプライチェーンに関する国際的な政策対話に伝達していく ことが期待される。

林野庁に対しては、 様々な主体による実施状況を継続的に把握するとともに、その進捗を共有した上で、 関係省庁との連携を図り、さらに必要な活動を議論するための機会を定期的に用意す るなど、本シンポジウムのフォローアップ活動を促進するための触媒的な役割を果た し続けることへの期待が示された。
また、今後の議論に当たっては、生産サイドと消費サイドの相互補完的な役割を踏ま え、生産国のより広範な参加が促進される必要性についても強調された。 本シンポジウムのモデレーターは、粟野美佳子・一般社団法人 SusCon 代表理事及び 末松広行・経済産業省産業技術環境局長が務めた。
2018 年 1 月 24 日

サプライチェーンを管理できる大企業の可能性を感じるとともに、まだ、出発点に立ったばかりということでもあると思いました。これがよいコミュニケーションの切っ掛けになるとよいと思います。

森林管理は第一義にその国の行政当局の責任でしょうが、広い地域のガバナンスを確実にしていくためには、需用者側の応援が必要という意味で、森林にインパクトを加える可能性のある商品生産のサプライチェーン管理という要素が不可欠なものであるという、考えるべきだと思います。

木材業界のクリーンウッドの取組などは、自分のことなので、もっと動きが見えてよいですよね。

kokusai4-4<zerodefsympo>


日本の森林のガバナンス-無断伐採に係る都道府県調査結果について(2018/3/25)

林野庁は3月9日付けで、全国の民有林で昨年4月~今年1月の間に、所有者に無断で伐採した事例が62件あったと発表しました。

無断伐採に係る都道府県調査結果について(林野庁)

宮崎県などで盗伐事案が報道されるケースが増えています。、

違法流通など調査を 県や林業団体に被害者の会が要望書 /宮崎)(毎日2018年2月9日)
相次ぐ盗伐、その裏に見える日本の森の大問題(読売2016年11月19日)

成熟しつつある日本の森林資源で、最も早く次世代の課題が見えるのか九州であり宮崎といえるかもしれません。主伐が進む日本の森林のガバナンスのリスクをしっかり、とらえておく必要があると思います。

伐採届けはでていたが、その偽造が疑われる事案などの上記に報道されています。

林野庁の木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドラインが証明書の連鎖を基にしたサプライチェーンの管理を要求していますが、証明書の元の信頼性がどうなのか、クリーンウッド法が求めるデイユーデレジェンス(調達先の調査)が必要になっているのでしょう。

クリーンウッド法第1条(目的)に、「我が国又は外国における違法な森林の伐採・・に鑑み」と記載されている重みを感じます。

kokunai3-55(mudanbatsu)


 製紙業界のクリーンウッド法事業者登録ー初めての一括申請の結果(2018/3/25)

3月19日付けで、製紙業界の27社が、製紙連合会の一括登録申請に基づく登録決定がされたと報じられました。

日刊木材3月21日づけ「クリーンウッド法、製紙連が一括申請活用」
林業経済研究所プレスリリースクリーンウッド法木材関連事業者登録‐日本製紙連合会の一括申請による登録決定について
ガス機器検査協会関連ページクリーンウッド法 木材関連事業者登録

昨年5月に施行されたクリーンウッド法の事業者登録の進捗状況に興味があり、いままで、10年以上やってきた違法伐採に関する林野庁ガイドラインにもとづく、業界団体の取組の活性化にならないものかと思ってきました。

所属する、(一財)林業経済研究所で開始した、登録実施機関と業界団体の連携事業の第一弾でした。

 

林業経済研究所プレスリリースより

製紙連合会は規模の大きな企業の集まりで、クリーンウッド法の見方が多くの木材事業者と異なる面はアルかもしれませんが、クリーンウッド法によって、木材業界全体が違法伐採問題など積極的に対応することが求められている現状で、少しでもクリーンウッド登録が進むことを期待します。

boueki4-69<CWpaper>


新たな森林経営管理に関する法案ー森林環境税の目指すもの(2018/3/25)

3月9日「森林経営管理法案」が閣議決定されました。

森林経営法案を閣議決定=市町村や業者が管理(時事ドットコム)

森林環境税が31年度からとなった理由に、「次期通常国会における森林関連法令の見直しを踏まえ」と言う一文があることは指摘しました(新なた森林管理のシステムが、この法案が森林環境税の前提となる法案です。

法案の全文は衆議院の議案一覧ページに掲載されています森林経営管理法案

内容を林野庁が掲載している森林経営管理法案の概要 法案の概要趣旨を見てみましょう

(趣旨)

①森林所有者に適切な経営管理を促すため、経営管理の責務を明確化する(第3条)
②森林所有者自らが経営管理を実行できない場合に、市町村が経営管理の委託を受け意欲と能力のある林業経営者に再委託する。
③再委託できない森林及び再委託に至るまでの間の森林においては、市町村が経営管理を行う(第33条市町村森林経営管理事業)。

いくつかのキーワードがあります

経営管理権:森林所有者の委託をうけて伐採等を行うために市町村に設定される権利
経営管理権集積計画:市町村が、その区域内に存する森林の全部又は一部について、当該森林の経営管理権を当該市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合作成する計画
経営管理実施権:市町村の委託をうけて、伐採等を実施するために民間事業者に設定される経営管理権に基づく権利

林業経済学会が実施した研究ボックス(「新たなたな森林管理システム」と「森林環境税」を考える )に出席して、話を聞きました。

研究者の間から大筋で別の対案がでてくるわけではありませんが、多くの参加者が、「市町村にこれだけの事業を実施すマンパワーががあるのか?」「市町村が経営管理の委託を受け意欲と能力のある再委託先を見つけられるのか?」と心配をしていました。

森林環境税という新たな枠組みをつかった、大きな転換が必要だということでしょう。

また、「今まで林野庁の補助金は多くて550程度の市町村に配分されていましたが、今回の森林環境譲与税は配布先が1700になる」ということだそうで、いままで森林行政に全く関係のなかった都市の自治体が、森林行政に関心をもつ、大切なきっかけだということも再認識しました。

年度末にかけて使い方の事例集のようなものを作成する準備をしているようです。来月号には紹介したいですね。

kokunai14-1<kanrihouan>


 森林破壊と無関係な食品ー勉強部屋ニュース223号編集ばなし(2018/1/21)

二日間にわたる林野庁のシンポジウムの一つのテーマは、食品という消費者が毎日手にする商品のサプライチェーンを通じて遠く離れた海外の環境・ひいては地球環境が守られる可能性でした。エシカル(倫理的)調達は、児童労働、地域住民の権利、森林の破壊など幅広い社会問題に目配りをします。
5年前、バングラデシュのダッカで、違法建設のビルが倒壊して1000人の人が亡くなった現場のがれきの中に、先進国の有名なアパレル企業のロゴがついた布切れが散乱していました。「これを切っ掛けに欧州の消費者の倫理的な調達の考えか広がった」という話が日経エコロジーの2月号(持続可能な調達)に紹介されています。
先進国の都市生活者の需要を満たすためのグローバルな競争のために生じた、社会のひずみ。これを解決する責任はだれにあるのか。当事者が属する社会・行政が一義的な責任をもっているのかもしれませんが、倫理的な調達という運動がその一部を担おうとしています。
クリーンウッド法や、宮崎県の不法伐採問題など、遠い外国のことだけでなく、日本社会のひずみも視野に入れた議論です。

次号以降の予告、森林環境譲与税の施策事例集、新たな森林経営管理法を巡る国会議論、SDGs時代の森林×企業シンポジウム~持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい~、森林の管理・活用に関する総務省行政評価、林業経済研究所70周年記念出版、新建築誌「CLTに関して」 、木匠塾訪問

konosaito<hensyukouki>


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp