ニュースレター No.209 2017年1月29日発行 (発行部数:1394部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:林業がつくる日本の森林(2016/1/29)
2.  持続可能な開発目標(SDGs)実施指針と森林(2016/1/29)
3 気候変動枠組み条約COP22と森林(2016/1/29)
4. 南会津からー『林業経済』誌編集後記(2016/1/29)
5. 日帰り出張ー勉強部屋ニュース208号編集ばなし(2016/1/29))

フロントページ:林業がつくる日本の森林(2016/1/29)

建築関係者の会合で「「林業がつくる日本の森林」(藤森隆郎著)(築地書館))という本を皆が最近読んだ」、ということが話題となり、たまたま出席していた藤原が{著者と面識がある」ということからご本人を呼んだ勉強会が開催されることとなりました。

この会合の話はおいおいご紹介することとして、本の内容を紹介することとします。

筆者藤森隆郎さんは国立森林総研の元森林環境部長。

我が国も含む温帯林の持続可能性な森林の基準をどのように作っていくのか、モントリオールプロセスという言葉の出発点となった「温帯林等の持続可能な開発に関する専門家セミナー」が1993年にモントリオールで開催されたときに、藤森さんとご一緒したのが縁でお付き合いをしてきました。

私としては「将来の森林条約の重要なコンテンツになるはず」という思いで、森林総研の関係者と基準と指標づくりに一生懸命になったのが思い出されます。

森林生態学の第一線の研究者が森林総研をやめられてから、森林政策対象の現場に密着して(言いにくい)意見を言われてきたのは、こころから敬意を表します。

森林生態学ー持続可能な管理の基礎(2006年)(全国林業改良普及協会)
現場の旅 新たな森林管理を求めて(上)(下)(2010) (全国林業改良普及協会)

「森林と林業の現場と研究の世界との間に大きな隔たり、現場と行政との間の隔たり」(前書きより)が本書のモチベーションの一つになっています。

その一つの例示をされたのが左の図です。

本人の著書、Ecological and Silvicultural Strategies for Sustainable Forest Managementにオリジナルに掲載されたもので、各国で注目されてたくさん引用されたもので(すが、「日本ではだれも注目しない」・・)、森林の林齢にしたがって、森林のさまざまな機能がどのように変化していくかを示したものです。

純生産速度を示す線(若いうちに急速にたかまりその後低落傾向になる)と、他の機能(生物多様性、水源涵養、生態系の炭素量など)を示す線(若齢期に落ち込み徐々に拡大)とは、変化のパターンが全く異なることを示めしている、とされています。

これが、「目指すべき森林の姿は、長伐期の構造豊かな森林である」という明快な主張の根拠となり、また、50年で森林をすべて伐採して新たな新植造林地を作るのは、「長年造成した生産設備がこれから本格稼働しようとするときに壊してしまう」行為であると、厳しい指摘がされます。

これも含めて、現場と政策の中核を担う人材不足、人づくりの必要性について、行政の現場にいた小生からすると耳の痛い話です。

この著書を読んだ多くのビジネス関係者が関心をしめしているので、冒頭の読書会のメンバーとのコンタクトを続けていく予定です。

是非ご一読ください。

朝日新聞書評 高い潜在力、育てたい経営力・人[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)
東京新聞書評 健全化へ垣根越えて[評者]宇江敏勝=作家・林業家

kokunai6-41(fujimoribon)


持続可能な開発目標(SDGs)実施指針と森林(2017/1/28)

一昨年国連サミットで合意された持続可能な開発目標に対して、日本の実施指針が作成されました。

持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(本文)
続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的施策(付表)

各国の開発目標が先進国も含めて示されたことに注目し、その中で短期的な見返りが見えにくい森林がどのように取り扱われるのか、我が国でも地球規模でも問われる課題だと、考えてきました。

国連サミットで合意された「持続可能な成長のための2030年アジェンダ」の中の森林(2015/10/24)

(持続可能な開発の日本の達成状況)

実施指針の前段にも引用されていますが、ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)が共同で発表した2016年の報告書においては、日本は、SDG1(貧困)、SDG5(ジェンダー)、SDG7(エネルギー)、SDG13(気候変動)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、SDG17(実施手段)の7つのゴールについては達成の度合いが低いと評価される指標が含まれています。

【参照ページ】Countries need to act urgently to achieve the UN Sustainable Development Goals
【報告書】SDG INDEX & DASHBOARDS
【機関サイト】Bertelsmann Foundation

日本は上から18番目にランクされていますが、左の図が、日本の評価概要。

(指標と森林との関係は勉強部屋のこのページを参照してください。)

「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」という15番目の目標が赤になっています。絶滅種、森林の減少率、保護地区比率の三つの指標のどれかが赤なら、それを含む目標が赤となっているようなのですが、気になりますね。

(持続可能な開発目標(SDGs)実施指針)

そのような状況をうけて、実施指針ですがホームページにつるされている概要が以下の通りです。


森林に直接関係するのは⑥ですが、③④⑤も関係する目標ですね。

6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全の指標の一つが以下のとおり、

   施策概要  指標  
持続可能な森林経営の
推進 
 ①森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、森林資源の循環利用を確立するとともに、多様で健全な森林の整備及び保全等を総合的かつ体系的に推進する。
②林業の持続的かつ健全な発展を図るため、効率的かつ安定的な林業経営の育成を行うこととし、面的なまとまりをもった施業の確保や低コストで効率的な作業システムの普及・定着等の施策を推進する。
グローバル指標(15.2.1)
持続可能な森林管理における進捗
①森林面積
②森林蓄積
③法的に保護されている森林面積
④森林における施業実施のための具体的な計画が策定されている面積 
 

そのほかに、国産材の供給量(農林水産業の成長産業化)、吸収源対策、国際貢献に関する森林指標など続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的施策(付表)をみると、グローバルな視野にたって日本社会の次の方向を見据えたときに、森林へのかかわりが多様多層になってきていることがわかります。

(chikyu1-35<SDGsJsisin>


 気候変動枠組み条約COP22と森林(2017/1/22)

 

昨年11 月7 日(月曜日)から11 月18 日(金曜日)まで、北アフリカモロッコのマラケシュで「国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)」、「京都議定書第12回締約国会合(CMP12)」、「パリ協定第1回締約国会合(CMA1)が開催されました。

パリ協定が成立してから1年の11月4日に発効、その具体化をどのようにしていくのかの筋道が議論されました。

「パリ協定が法律だとすればそれを施行するための政省令のような」(林野庁担当課長補佐)詳細ルールをCOP24(2018年)で決めることに合意した、ということが重要なポイントだったようです。

国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22),京都議定書第12回締約国会合(CMP12),パリ協定第1回締約国会合(CMA1)等(外務省)

国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)京都議定書第12回締約国会合(CMP12)
パリ協定第1回締約国会合(CMA1)(概要と評価)日本政府代表団
(環境省)

国連気候変動枠組条約事務局 COP22公式サイト(英語)
議長国モロッコ COP22公式サイト(英語)

1月13日フォレストカーボンセミナーCOP22等報告会(森林分野)(国際緑化推進センター)が開催されたので出席してきました。

飯田 俊平氏(林野庁 森林整備部森林利用課 国際研究連絡調整官)
「 COP22での吸収源(LULUCF)の論点と今後の展開
大仲 幸作氏(林野庁 森林整備部計画課 海外林業協力室 課長補佐)
「基礎からわかるREDD+~COP22や緑の気候基金GCFにおける最新動向を中心に~」pdfファイル1)、同2、同3(国土緑化推進センターサイト)
二つの報告に基づき、今後の議論の枠組みやポイントを整理してみます。

(パリ協定実施詳細ルールまでの道筋)

パリ協定に関する国連の交渉は締約国会合COPのほかに、補助機関会合SBSTAパリ協定締約国会合CMAパリ協定特別作業部会APAという3つの会合があります。(気候変動に関する国連交渉の構造(外務省

この枠組みの中で、森林分野に関してどんなことが議論されていくのかについて
飯田 俊平氏(林野庁 森林整備部森林利用課 国際研究連絡調整官)の報告がありました
「 COP22での吸収源(LULUCF)の論点と今後の展開」

森林に関する議論は、①各国の削減目標(NDCs)の(中の森林管理の位置づけなどに関する)あり方、情報提供、積算方法に関する3つのガイダンスに関するものをAPAでおこない、②(途上国の森林保全などへの先進国の民間支援資金などに関連した)市場メカニズムに関しては補助機関会合SBSTAで、2018年まで議論をしていくこととなりました。(飯田報告図1)

飯田報告図1

飯田報告図2

森林問題はLULUCF(「土地利用、土地利用変化及び林業部門(Land Use, Land Use Change and Forestry))というキーワードの中で議論されますが、当面5月に開催されるSBSTA46で伐採木材製品の取り扱いなどに関する議論が再開されるのだそうです。

(REDD+と市場メカニズムにおける主要課題)

気候変動枠組み条約におけある森林に関する議論の中で重要なのは、途上国の森林の管理に資金を提供する国際的な枠組みがREDD+ですが、それがパリ会合後にどうなっていくのか、 大仲 幸作氏(林野庁 森林整備部計画課 海外林業協力室 課長補佐)の報告でした。

「基礎からわかるREDD+~COP22や緑の気候基金GCFにおける最新動向を中心に~」


途上国の森林管理の向上に向けて支援について民間資金が投入される道筋は、ある森林管理のプロジェクトの成果がクレジットとして登録され、その資金を肩代わりした企業が吸収量・削減量をしたとする権利をえる(クレジットを獲得する)。その権利を自社事業により排出した温暖化ガスの埋め合わせ(オフセット)につかったり、自社に課せられた削減目標の達成のために利用する、というものでしょう。

その権利が売買でき資金調達に役立つようになることを市場メカニズムといって、パリ協定6条などに規定されています

国別削減目標NDCを使ったパリ協定の枠組みの中で、企業にどのような削減目標が課せられるのか、森林への投資が取引される信頼のある吸収量を明確にできるのか(REDD+の議論の中で蓄積されてきた)などの議論がCOP24にむけて積み上げられていくことになります。

kokukusai2-58(unfccccop22nado)


南会津からー『林業経済』誌編集後記(2016年11月号)(2016/11/24)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。(ご購入はこちらから

 目次 編集後記 
2016年12月号
<やまがら>傀儡国家は(  )依頼か?.......あべしっ、ひでぶっ
 
新年のご挨..................箕輪 光博 
創立70周年を迎えて....藤原  敬 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビュー①
 私の研究史〈熊崎実)......
特集 林業種苗生産の現状と課題(4)論文
 戦前期における林業種苗政策の形成過程......田村 和也 
 
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ.
 『林業経済』投稿連絡票...
 誓約承諾書...
日帰りで、紅葉のまっさかりの南会津に行く機会があった。建築関係者が中心となった「木の建築賞」いうイベントに南会津地域で開発された「縦ログ構法」(加工度の少な木材を横につたログハウス(丸太小屋)に対して、縦にログ(構造材)を敷き詰めて構造と意匠を担う構法)の公共建築物がノミネートされたので、審査過程の一端を担う立場の一日であった。行政が推進しているCLT(直交集成板)が加工拠点の制約から広がりにハードルがあるのに対して、地方にある普通の技術と事業者によって担うことができるのが売りである。木造建築の新たな可能性をもとめる設計者・建築業者がサプライチェーンのすべての関係者と連携できるすばらしい可能性を見ることができた。

本号の内容は二つの論文と書評である。
論文「木材価格における季節要素の析出と構成要素の類似性の検討」(林宇一他)。長い研究蓄積のある木材価格の季節変動の分析が、近年の久しぶりに本格的におこなわれ、国産材のサプライチェーンの脆弱性など政策課題の提示にも資する可能性を示している。

総説論文「本邦における森林資産の流動化とその課題―ファンド組成を念頭におあいたフォールドワークを通じての報告―」(遠藤暁)。市場の主流にある資本からみた日本の森林経営の現場。制度資金を前提としたフィールドワークの経験から、実践的な提言を含めた興味深い論考。当然市場のもっている短期的視野と森林経営の折り合いをどうつけるのかが問題である。

書評「環境政策と環境運動の社会学―自然保護問題における解決過程及び政策課題設定メカニズムの中範囲理論」(山本信次)は、社会学研究の最近のツールを使った森林政策過程の分析である。、森林サイドからの情報発信の必要性の、双方の問題提起をしている。
本号も、それぞれ、ビジネス、学会の隣接部分の方々に幅広く読んでいただきたいものになっているので、よろしくお願いししたい。

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 何をいまさらSDGs、勉強部屋ニュース209号編集ばなし(2016/9/22)

最近読書をする機会が少なくりましたが、そうはいっていられないと、林業がつくる日本の森林。多様な森林を管理するつくるための人つくりへの道は険しいものですが、この本に興味を持つ川下側のエネルギーが受け止められれば道は開けてくると思います。

「我々の世界を変革する」、「我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることを決意している」。2年前に国連で決議されたメッセージです。

そんなことを考えている余裕がなくなっている、というのが、この間のEUや米国の選挙で示された政治状況で、何をいまさらSDGsなんだ?

そんな時だからこそ、しっかりと地球の将来展望をみておかなければ・・・。利害にとらわれて理念をかたらないリーダーに未来を託すことができません。

konosaito<hensyukouki>


最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp