ニュースレター No.172 2013年12月23日発行 (発行部数:1170部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:平成26年度税制大綱における森林吸収源対策(2013/12/21)
2.  林業経済学会2013秋の大会コレクション(2013/12/21)
3. CDPの森林リスク対応調査報告書ー主な調査結果(2013/12/8)

フロントページ:平成26年度税制大綱における森林吸収源対策(2013/12/21)

12月12日平成26年度与党の税制大綱が公表されました

国の財政の骨格である予算と税制は年明けの通常国会で予算案、税額を定める法律の改正案という形で議論されますが、その内容は、前年の暮れに,、予算案の方は財務省が作成した予算案が閣議されるのに対して、税制改正案は与党の税制大綱という形で公表されるのが(自民党が与党である場合の)通例です。

自民党税制調査会が減税施策を握りたがる理由とは【争点:アベノミクス】

各利害関係者から寄せられる要望を、関係する省庁が取りまとめて作成した税制改正要望について、自民党の税制調査会が審議して大綱の作成が進むのですが、その過程が、予算に比べるとオープンなので、税制調査会が開催される会議室の入り口での利害関係者の動員合戦などが報道されることがあります。自民税調 軽自動車税引き上げなど決定

そのような中で、今年度自民党の税調で最後の日まで議論が続いたテーマの一つに、森林吸収源対策の財源確保に係る税制措置(農林水産省)がありました。

  地球温暖化対策として、CO2吸収源である森林の整備(森林吸収源対策)は、エネルギー起源CO2排出抑制対策とともに重要な役割をはたしています(政府が決定してCOP19に報告した温室効果ガス削減目標2005年比3.8%のうち、吸収源対策が2.8%を占めているのだそうです)が、平成24年10月導入された、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例措置(CO2排出源である化石燃料に課税)では、現在、その税収は「エネルギー対策特別会計」に入り、エネルギー起源CO2排出抑制対策のみに充当されているので、「地球温暖化対策のための税」の活用(使途に森林吸収源対策を追加)等による森林吸収源対策に充てることのできる税収枠を創設するように、というものです。

 

この提案に対して、経団連など経済界の主要な団体が、「地球温暖化対策税の使途拡大等に反対する」としおて大反対運動を繰り広げました。

「地球温暖化対策税は、受益者負担の考え方の下、エネルギー起源CO2排出抑制のための費用負担を化石燃料利用者に課していることから、その税収を森林吸収源対策に充てることは、受益と負担の関係を損なうこととなる。」などと

 

しているものですが、受益者負担というよりは、汚染者負担というべきで、化石資源を利用して温室効果ガス排出に関与している人が、温暖化対策の負担をするのは当然で、その用途は排出削減、吸収源対策あらゆる効果的な方策のうち、効率的なものに優先配分をしていくということではないでしょうか。

経済界はすでにきまっている課税の拡大にも反対(温暖化対策税に関する意見)で、「十分な税額が確保されている」といいながら、「用途拡大に反対というのは」説得力にかけるところです。

今回の税制大綱では当該部分は、以下のとおりです。

第三 検討事項

15 わが国は、本年11月に開催された気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)において、2020年の温室効果ガス削減目標を、2005年比で3.8%減とすることを表明した。この目標を確実に達成するためには、排出抑制対策と森林吸収源対策の両面から、多様な政策への取組みを推進していかなければならない。
こうした中、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例措置を講じているが、この税収はエネルギー起源CO₂排出抑制のための諸施策の実施のための財源として活用することとなっている。
一方、森林吸収源対策については、国土保全や地球温暖化防止に大きく貢献する森林・林業を国家戦略として位置付け、造林・間伐などの森林整備を推進することが必要であるが、安定的な財源が確保されていない。このため、税制抜本改革法第7条の規定に基づき、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財源の確保について、財政面での対応、森林整備等に要する費用を国民全体で負担する措置等、新たな仕組みについて専門の検討チームを設置し早急に総合的な検討を行う。
 

専門化チームの検討となるようですが、文字通りの検討である理屈の上での整理とともに、財源の取り合いのようになったしまっている現状で、幅広い理解をもとめるネットワークがどのように構築できるのかが、ポイントとなるでしょう。

地方の行政や議員との幅広い連携は全国森林環境税創設促進連盟などの形で長い間に構築されてきています..
全国森林環境税創設促進議員連盟第二十回記念大会7月11日
全国森林環境税創設促進連盟設立20周年記念大会 での総務副大臣挨拶録画5月28日

その上で、JAPIC]など経済界の主流派の中で森林整備に関する関心の高まっている(「林業復活・森林再生を推進する国民会議設立」)動きを受けて、この議論がどのように発展していくか、日本発の森林管理の情報発信としても教示深いものです。

kokunai4-39<youtokakudai>


2013年林業経済学会秋季大会から(2013/11/24)

11月9-10日に、林業経済学会の秋季大会が高知大学朝倉キャンパスで開催されましたので、久しぶりに出席しました

林業経済学会 2013年秋季大会(高知)
報告プログラム

報告者が現地に入った生々しい報告が多く、里山社会を巡る状況、国産材の供給体制の整備に関する課題などを実感し、これをもとにした政策への率直な批判などが聞けること、また、海外の調査結果から日本の評価が森林政策への政策の示唆が得られることなど充実した二日間でした。

もちろんすべての報告を聞くことはできないのですが、興味のある報告をウェブ上に掲載された情報もふくめてご本人の協力も得て紹介します。 ご協力ありがとうございました。

発表者 標題 関連資料 注目点
海外の林業動向に関係する報告で日本の政策に関係の深い報告
柿澤宏昭研(北海道大学) スウェーデンにおける環境保全型森林管理ー非規制的森林政策はなぜ機能するのか? 要旨
発表用資料
伐採届出制度の仕組みの日本との比較、森林認証と森林法の関係
石崎涼子(森林総研) スイスにおける助成策の改革 要旨
発表用資料
小規模所有者への構造改善対策の模索、日本との対比
久保山裕史(森林総研) オーストリア林業における近年の組織改革 要旨 日本と他の条件がよく似ていて、マーケットへの対応の仕方が違っただけの国の林業
平野悠一郎(森林総研) アメリカ南部地域の私有林をめぐる多面的経営ー森林投資型経営の発展とみんかんフォレスターの活躍 要旨
欧州型と対極にある民間依存型森林管理の展開、公益的機能はどうなる?
小坂香織(筑波大学) ニュージーランド人工林経営における2000年第以降の共同投資の経緯と現状 要旨 牧草地への拡大造林の歴史の変わり目
国際競争力を持つ人工林材の供給に関する報告
外山正次郎 スギ並材生産地域における大規模製材工場の経営動向とその変容‐宮崎県都城地域を事例に‐ 要旨 直送比率の増大の中で原木市場の機能との連携例など
 尾分達也  九州における原木流通構造と材価変動の実態  要旨  直送型、市場依存型の二つの地域の比較
 笠松浩樹  国産材製材産地の現状と可能性‐愛媛県南予地域を事例に‐  要旨
発表用資料
 中小製材工場の地場需要対応型の可能性
 大津裕貴  エネルギー需要はいかにマテリアル利用に影響するか  要旨  パルプ用チップがエネルギー用の利用されれる可能性
 早舩真智  1985 年以降における規模別製材工場の変化とその要因:外材輸入構造の変化との関連  要旨  地域集中と大型化の実態
嶋瀬拓也(森林総研) 木材需給の変動要因と受給基金の役割に関する理論的検討ー研究フレームワーク構築の試みとしてー 要旨 価格の予測の可能性、需給調整機関の流通サービス提供の役割
山村に住むIターン移住問題の最新状況
奥田裕規 山村に住むことについて考える(「共有林利用の変質と活性化 要旨  
 加藤恵里  山村における獣害対策のネットワーク形成‐栃木県佐野市を事例として‐  要旨
発表用資料
 集落の地域資源管理のあり方
 八巻一成  絶滅危惧種保全への山村社会の関わり:礼文島と男鹿半島を事例に  要旨 集落の地域資源管理と自治体との関係
 田中求  山村の資源をどう活かすか‐高知県吾川郡いの町柳野地区における和紙原料生産の動態から‐  要旨
発表用資料
 伝統産業の再構築が誇り楽しみ賑わいにつながる
 福島万紀  山村で暮らすための林業再生にむけて‐住み込み型アクション・リサーチからみえてきた課題‐  要旨
発表用資料
 4年間のリサーチ結果、林業が生活文化の継承として関係者の結節点となる可能性
 大地俊介  地域林業経営における共的な林地所有の重層性とその現代的意義:宮崎県東臼杵群諸塚村の事例  要旨 自伐隣家の経営計画主体としての可能性
 大久保美香  出身山村と他出先との二地域居住  要旨  居住型以外の地域資源管理の可能性
 垂水亜紀  限界自治体化山村における定住問題‐四国の事例から‐  要旨  仁淀川町を例にとった定住問題の課題と展望
土屋俊幸  移住者たちと山村社会‐長野県大鹿村を事例に‐  要旨  移住者先行事例の聞き取り調査、二世代目まで登場
海外の林業
 宮本基枝(森林総研)  マレーシア半島部における貧困削減策が森林減少抑制に与えた影響  要旨
発表用資料
 途上国の森林減少抑制策としての貧困問題の重要性
 持続可能な管理の主体形成
 大石卓史  日本型フォレスターの育成・活動状況と今後の展望  要旨  いよいようまれる都道府県職員フォレスターの活動は、業務なのか
相川高信 日本型フォレスターとは何か?国際比較による分析 要旨
発表用資料
対極をなす欧州型と、米国型との比較

gakkai <rinkei2013>


 CDPの森林リスク対応調査報告書ー主な調査結果(2013/12/8)

既報の「世界企業の事業過程での森林破壊のリスク認識ーCDPの森林リスク対応調査報告書公表」の一部、KeyFinding主要な調査結果の部分を仮約しました。

2013年調査結果概観

自社事業及びサプライチェーン内における森林破壊リスクの管理に関する情報について、CDPが要求したところ、株式時価総額3兆米ドル以上の139社が問い合わせに応じた。回答率は前年比39%増。回答した企業の大半が消費者向けの事業者(60%)であった一方、ビジネス向け及び生産事業者は順に31%、9%と比較的少ない。26カ国の登録企業から回答を得たが、特に今回は日本企業の情報公開が12倍となり、初めてインド企業から参加があった。

52社からの新たな公開情報を得たことは今回の大きな収穫だったが、既に情報を公開している企業の多くが、昨年よりもパフォーマンスが向上していることも期待を抱かせる。2012年に既に公開していた企業は、今回平均して27%スコアが上がっていた。リスクと機会についてよりよく理解し、森林破壊を促進しないよう、より多くのアクションを実施した結果である。

   

続きPDFファイル

junnkan5-3(CDP3keyfindings)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp