ニュースレター No.148 2011年12月23日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:COP17気候変動枠組み条約ダーバン会合と森林(2011/12/23)
2. 環太平洋戦略的経済連携協定の大枠(2011/12/23)
3. エコプロダクツ2011:グリーン購入パワーの回復度(2011/12/23)

フロントページ:COP17気候変動枠組み条約ダーバン会合と森林・木材吸収源(2011/12/23)

11月28日から12月11日まで南アフリカ共和国ダーバンで、気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)、京都議定書第7回締約国会合(CMP7)等が行われ、すべての国が参加する新たな法的枠組みの構築にむけて、2015年までの交渉を行うとしたダーバンプラットフォームが合意されたことなど注目されています。

社説(朝日日経読売毎日東京産経

そのほかに、京都議定書の第二約束期間にむけた合意、緑の気候基金に基本設計、カンクン合意の実施についての合意されました。

COP17について外務省のページ政府代表団による概要評価など)
農林水産省プレスリリース

報道されませんが、森林や木材の吸収源について重要な決定がなされています 。

その一つが、京都議定書第二約束期間の国際義務の計測方法が合意され、森林吸収源についてあらたな、方法がきめられたことです。(CMP7における土地、土地の変化および林業に関する決議(英文)

(日本にとっての京都議定書第二約束期間の意味)

第一約束期間では日本は基準年に対して6パーセントの排出削減を約束していましたが、そのうち3.9パーセントは森林吸収源の管理で実現することとしていました。毎年の林野庁予算要求根拠の前書きには、京都議定書の国際約束を遵守するための予算であることが記載されていて、言外に、「この予算を措置しなくてもよいけれど、そうでなければ不達成の代償として、京都メカニズムにそった海外支援のための予算を措置することになりますが、どうしますか?」という、財政当局に対して「脅し?」に近いことばを含めて、林野庁は大変強い立場を保持することができたといえます。

来年のCOP18(CMP8)で第二約束期間の国際約束の数値が決められる場面で、日本は議定書の国際約束には応じないそうなので、事態はすこし変わってきますが、それでも、対外的な交渉力を維持するため、議定書の手続きに従ってい削減目標の数字を決定をし、その実現をはかっていくということになるでしょう。

今回合意した第二約束期間の国際義務の計測方法の森林関係部分の一つは、各国の森林の現況や過去の蓄積をふまえた参照レベルとの比較で目標設定することとしたことで、参照レベルの数値は各国毎に決められました(日本はプラスマイナス0)。

ほとんど今まで通りということとなので(よく今まで通りになってものだという感慨(?)はあるとしても)、今後の行政に対するインパクトは大きな変わりがないと思います。

(吸収源・排出源としての伐採木材のストックと日本の木材行政)

吸収源についてのもう一つの合意事項が、伐採後の木材も温室効果ガスの貯蔵庫として計測されること、となり、輸入材は除外され、国産材のみがプールとして計測されること、製材、木質パネル、紙など用途に応じて固定される期間のデフォルト値が決められたことです。

この部分が、どのように計測され、目標値が設定され、それに基づく予算が措置されるのか、業界の努力にまかされるのか、今後の大きな議論となると思われわれます。国際協定と国内施策の関連としても、小サイトの問題意識から大変興味深いところです。

とりあえず、決議に関連部分を抄訳しておきます
26 Each Party included in Annex I shall account for all changes in the following carbon pools: above-ground biomass, below-ground biomass, litter, dead wood, soil organic carbon and harvested wood products.3 With the exception of harvested wood products, a Party may choose not to account for a given pool in a commitment period, if transparent and verifiable information is provided that demonstrates that the pool is not a source 付属書1の締約国は、以下の炭素貯蔵庫の全てについてその変化を計測する必要がある。地上のバイオマス、地下のバイオマス、落葉落枝、故損木、土壌有機物、伐採後の木材。伐採後の木材ついては、例外的に、約束期間中、もしも明確にその貯蔵庫が排出源となっていないという明確な証拠を提示すれば、計測しないこともできる。
27 Emissions from harvested wood products removed from forests which are accounted for by a Party under Article 3, paragraphs 3 and 4, shall be accounted for by that Party only. Imported harvested wood products, irrespective of their origin, shall not be accounted by the importing Party. 第三条第三項および第四項のもとで締約国により計測された森林から伐採された木材からの排出量は、当該締約国においてのみ計測される。輸入された木材は、その産地にかかわらず、輸入国では計測されない。
28 Accounting shall be on the basis of instantaneous oxidation. 計測は即時に酸化されるとして、なされるべきである。
29 Notwithstanding paragraph 28 above, and provided that transparent and verifiable activity data for the harvested wood product categories specified below are available, accounting shall be on the basis of the change in the harvested wood products pool during the second and subsequent commitment periods, estimated using the first-order decay function4 with default half-lives5 of two years for paper, 25 years for wood panels and 35 years for sawn wood パラ23に関わらず、伐採後の木材の以下のカテゴリーに関する透明かつ検証可能なデータが利用可能な場合、計測は、第二約束期およびその後の約束期間における伐採木材の貯蔵庫の変化を、最初の半減期のデフォルト値を紙では2年、木質パネルでは25年、製材では30年とした一次崩壊関数を利用して推定することができる。
30 .A Party may use country-specific6 data to replace the default half-lives specified above, or to account for such products in accordance with the definitions and estimation methodologies in the most recently adopted IPCC guidelines and any subsequent clarifications agreed by the Conference of the Parties, provided that verifiable and transparent activity data are available and that the methodologies used are at least as detailed or accurate as those prescribed above. 締約国は、検証可能で透明な活動によるデータが入手可能で、その手法が少なくとも上記の方法と同程度以上に詳細で正確である場合、デフォルト値の代わりに、その国の独自のデータを使用すること、あるいは、IPCCび最新のガイドラインに基づく方法と締約国会合が合意した手法を利用することができる。
31 Harvested wood products resulting from deforestation shall be accounted for on the basis of instantaneous oxidation. 森林が転換される地域で採取された木材は排出されたと見なされるべきである。
32 Where carbon dioxide emissions from harvested wood products in solid waste disposal sites are separately accounted, this shall be on the basis of instantaneous oxidation. Carbon dioxide emissions from wood harvested for energy purposes shall be accounted for on the basis of instantaneous oxidation. 廃棄場において伐採木材から排出される二酸化炭素は別途計測すべきであり、即時排出とすべきである。

そのほか、ダーバンでの決議で森林にとって重要なのは、途上国の森林の減少に関する対応策(REDD+)です。本件については別項

kokusai2-42<unfccccop17>


環太平洋戦略的経済連携協定の大枠(2011/12/23)

11月12日ホノルルでのTPP首脳会議で、環太平洋パートナーシップ(TPP)の輪郭と題する中間報告となる文書が公表されました。

英語(USTR)、日本文(外務省仮訳)

環境に関係ある部分は以下の通りです

o Environment. A meaningful outcome on environment will ensure that the agreement appropriately addresses important trade and environment challenges and enhances the mutual supportiveness of trade and environment. The TPP countries share the view that the environment text should include effective provisions on trade-related issues that would help to reinforce environmental protection and are discussing an effective institutional arrangement to oversee implementation and a specific cooperation framework for addressing capacity building needs. They also are discussing proposals on new issues, such as marine fisheries and other conservation issues, biodiversity, invasive alien species, climate change, and environmental goods and services. ○環境:
環境に関する意味のある成果により,この協定は,貿易と環境に関する重要な課題に適切に取り組み,貿易と環境の相互補助を向上させるものとなる。TPP参加国は,環境に関する条文案が,環境保護の強化に資する貿易関連課題について効果的な規定を含むものであるべきという考え方を共有し,また,協定の実施を監督する効果的な制度的枠組と能力構築のための協力枠組について議論している。さらに,参加国は,海洋漁業,その他の環境保全についての課題,生物多様性,特定外来生物,気候変動,環境物品・サービス等の新たな課題に関する提案についても議論している。

その後12月にマレーシアで会合が開催され、環境に関して1月下旬に会合が行われるというスケジュールが公表されています。
USTRプレスリリース

boueki7-4<TPPoutline1111>


エコプロダクツ2011のグリーン購入パワーの回復度(2011/12/23)

12月15日から17日にかけて恒例のエコプロダクツ2011が東京ビックサイトで開催されました
この展示会は参加者データが過去にさかのぼって公表されており、小サイトでもグリーン購入パワーの拡大の指標として、そのデータを追いかけてきました。

グリーン購入パワーとエコプロダクツ展(2007/1/20)
グリーン購入パワーの指標、エコプロダクツ展の来場者データ (2008/2/10)
エコプロダクツ2009 (2009/12/20)

2008年まで右肩上がりだった入場者数、参加者団体数が、2009年を転機に一進一退となりました。2008年9月のリーマンショックを引き金にした景気停滞の反映のようです(経営環境が厳しいときに環境にまで手が回らない。)

それでも団体数は過去最高の182団体で、すこし風向きが変わったといえるでしょうか。


1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
入場者数 千人 47 68 89 100 114 125 140 153 165 174 183 183 182
参加団体 団体 274 305 350 370 416 453 502 572 632 750 721 745 752
うち「木材」団体 2 2 11 6 3 6 12 7 6

合法木材ナビエコプロダクツ2001
国際森林認証PEFC
フェアウッドパートナーズ2011
国際森林年記念「森林からはじまるエコライフ」トークショー
国際森林年記念・東日本大震災復興支援Green Baseball Project2011 公開調印式 & 森と野球をつなぐトークショー〜日本のプロ野球が、日本の森を守る、東北復興を支援する〜


kokunai3-44<ecopro2011>



最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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