ニュースレター No.130 2010年6月26日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:7年目のウッドマイルズ WMフォーラム2010から(2010/6/26)
2. 菅直人公式サイトの中の林業再生(2010/6/20)
3 森林・林業の再生に向けた改革の姿(中間とりまとめ)(2010/6/26)
4. REDD+閣僚会合(2010/6/26)

フロントページ:7年目のウッドマイルズ WMフォーラム2010から(2010/6/26)

WMフォーラム2010

6月19日ウッドマイルズ研究会主催のウッドマイルズフォーラム2010が「地球環境時代の今、どのような木材調達基準をつくるべきか」というテーマで新木場木材会館で開催されました。

住宅建築の現場や東京港区で取り組まれている木材利用の指標への取組みの報告とパネルディスカッションからなるイベント全体の概要はウッドマイルズ研究会のサイトに掲載されることになります(当日の配付資料(こちらからダウンロード)を参照下さい)が、当日冒頭に時間をいただき、このイベントに臨むウッドマイルズ研究会思いを話させて頂きましたので、その部分だけ掲載します。

7年目のウッドマイルズ

ウッドマイルズ研究会は7年前の2003年発足以来、建築物に利用される木材の輸送距離と輸送エネルギーを少なくして、地域材の利用を促進しようという趣旨で、木材の産地から消費地までの距離(ウッドマイルズ)に関する指標の開発と普及を行ってきましたが、本日は「地球環境時代の今、どのような木材調達基準をつくるべきか」という少し大きなテーマでフォーラムを開催することとなりました。

ウッドマイルズは地域材や県産材といった身近な資材に対し、グローバルな環境問題の視点から分かり易い指標を提供したインパクトを与えたと自負していますが、木材を環境的な視点でみることが、ますます重要になってきたといことが今日のフォーラムの背景です。

その一つが先月国会で全会一致可決成立した「公共建築物等の木材利用の促進に関する法律」です。木材業界の人と話すときによく言うのですが「何でこの法律ができたのか?木材業界を支援する産業政策なのか?」法律の目的規定を読んでみるとわかることですが、全会一致の根拠は環境問題なのですね。そう考えると「どんな木材でもよいのか?」という話になります。極端なのは違法伐採木材です。

それで、少なくとも合法性だけは証明した木材の供給というのは始まっています。また、国産材・地域材これの環境的側面がウッドマイルズによって先導的に問題提起をされてのですね。その他もっと早くからこの問題に取り組んでいたのはFSCとかPEFCとかSGECとかいう森林管理の持続可能性の情報を消費者に提供する森林認証と信頼できるビジネスチェーンの認証制度です。

いままで、いろんな制度ができて準備をしてきたのだけれど、それが表舞台にあがることができるようになってきたと言うことだと思います。国土交通省の長期優良住宅先導的モデル事業で採択される提案には、「木造等循環型社会形成部門」が一番応募が多いのです。ウッドマイルズ、合法木材、間伐材、林地残材、森林認証材など・・・

環境のいろんな側面をとらえたアプローチがありますがそれを一同に集めて、眺めてみよう、共同作業をすすまないか、というのが今回のイベントの出発点です。

お手元に「地球環境問題と森林・木材の環境的側面の「見える化」の流れ」という図を配布しています。木材に関する環境的指標は、緑の枠で囲った「地球の森林の持続可能な経営」に関するものと、黄色の枠で囲った「地球温暖化対策」に関するものの二つの系列があります。

指標の開発は前者が先行し、森林認証制度そして合法性証明という形で地球規模で取り組まれていますが、後者の開発にはウッドマイルズ研究会の取組が重要な役割を果たしたという(すこし手前みその)図になっています。それが研究会の思いです。

先ほど、全国建築士協会連合会の会長でもある当研究会の藤本会長も言われましたが、建築・設計関係者の中で木材の調達基準について関心か広がっており、これらにここたえるチェックブックを作成しようと研究会では考えていますが、本日のイベントがその出発点になればと思っています。



energy2-59<WMforum2010>


菅直人公式サイトの中の林業再生(2010/6/20)

既報(民主党の森林・林業に関連する政策)の通り、民主党の林業政策の作成には新しく総理大臣となった菅直人氏が強いイニシアティブをとってきました。

菅代行、バイオマス事業視察後、党「森と里の再生プラン」発表(2007/6/9)
菅代表代行、森と里から地域再生を実現する民主党森林・林業政策を改めて発表(2007/7/4)

(新聞発表のメンバーは菅直人代表代理のほか、山田、篠原、郡司jという現政務三役です)

菅直人公式サイトに一日一言というページをつくっていますが、これを読んでみると新総理の林業への強いこだわりがわかります。

林業再生
2008年7月27日 12:57 :

日本の林業が変わり始めた。私自身数年前から林業に関心を持ち、国内の林業の現場だけでなく昨年の5月の連休にはドイツの黒い森の周辺に林業の視察に出かけた。その時、驚いたのはドイツの木材まで日本が輸入しているということ。1万キロはなれ、賃金水準も変わらないドイツの木材がなぜ日本の国産材との競争に勝つのか。全ては日本の林業の生産性の低さに原因がある。まず路網が整備されず、機械化が遅れていること。路網整備には林地の団地化、つまり集団化が必要。一部の林業組合で行われていた林地の団地化など林業改革がここ1~2年の間に大きく動き始めたようだ。補助金目当ての切捨て間伐から間伐材を市場に出して採算を取れる仕組みにする努力が始まった。今外材も値上がりし、国産材にとっては追い風。日本は国土の3分の2が山林。日本の林業を根本的に再生させ、農業と共に地場産業のひとつの柱にするルチャンス。木材を育て、利用し、さらに植林すれば二酸化炭素の収支はゼロ。地球温暖化を防ぐ意味からも大きな意義がある


ドイツ林業視察2007年5月 2日、林業と官製談合2006年11月 5日、

林業再生プラン
2006年11月 4日、山林2006年8月31日、山村の手入れ2006年8月11日、

林業視察
2006年8月10日、林業を考える2004年11月17日


kokunai1-7<n-kanringyou>

森林・林業の再生に向けた改革の姿(中間とりまとめ)(2010/6/26)

新政権の森林林業政策の柱として昨年末出された森林林業再生プラン具体化の検討が森林・林業基本政策検討委員会その他の部会で進められており、検討過程が林野庁サイトの森林林業再生プランについてというページに掲載されていますが6月10日の農林水産省森林・林業再生プラン推進本部の席上でその中間とりまとめが公表されました。

「森林・林業の再生に向けた改革の姿(中間とりまとめ)」 (PDF:199KB) (林野庁関連ページから)

これまでの森林・林業施策は、森林の造成に主眼が置かれ、持続的な森林経営を構築するためのビジョン、そのために必要な実効性のある施策、体制を作らないまま、間伐等の森林整備に対し広く支援してきた・・・・このため、このままでは、林業再生のチャンスを無にするばかりか、施業放棄による森林の機能の低下や持続的な森林経営の理念無く無秩序な伐採が進み、戦後築いてきた森林の荒廃を招く恐れ。」という厳しい現状認識の率直な表明は、政権交代ならではのこと。

こうした状況を真摯に受け止め、森林・林業に関する施策、制度、体制について、
@ 森林の多面的機能が持続的に発揮しうる森林経営を構築するためのビジョン、ルール、ガイドラインの確立に向け、法律改正を前提にした実効性ある森林計画制度の改正を行うとともに、
A 実効性の高い施策を効果的に推進しうる体制を構築するため、
a.国・都道府県・市町村の役割分担を明確にし、地域主権時代にマッチした現場で使い易くシンプルで分かり易い制度への変革
b.それぞれの段階(国、都道府県、市町村、森林所有者)における、各種補助事業計画の一元化など計画策定に関する負担の軽減
c.専門知識を持った現場密着の実行体制を整備(フォレスター制度の創設、森林施業プランナーの充実等の人材の育成)
等の抜本的見直しを行い、森林資源の利用期に適合した、新たな森林・林業政策を構築していくことが必要。
」としています。

国産材の利用が住宅メーカーのキーワードになったり木材利用推進法案が全会一致で成立したりという状況の中で、その供給基地である日本の森林の管理状況が、持続可能な森林経営というグローバルスタンダードの基準にしたがって適切示される仕組みがこれほど重要になっている時期はありません。まさに再生にチャンスです。

kokunai1-8<saiseiplan0620>


REDD+閣僚会合 気候と森林に関するオスロ会議(2010/6/26)

気候変動枠組み条約の京都議定書以降の枠組みを決める国際的な議論は、昨年末のコペンハーゲンでのCOP15以降もCOP16(カンクン・メキシコ)COP17(ヨハネスブルグ・南アフリカ)にむけて努力が続けられているようです。
5月31日〜6月11日国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会等 結果概要(外務省)
同(林野庁)

COP15の前のような熱気がいまいち感じられないところがありますが、その中で唯一熱気にあふれているのが、森林分野の取組REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)です。

5月にはオスロで閣僚クラスの会合が開催されました。

財政支援、人材養成、国家計画策定努力等を強化すべく国際社会の協調・連携を図るための「パートナーシップ」構築が合意され、パートナーシップの目的、基本原則、運営方式等を定める文書が採択・発表されました。

外務省関連ページ
THE OSLO CLIMATE AND FOREST CONFERENCE 2010

kokusai2-36<REDD+oslo>



最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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