ニュースレター No.1172009年5月25日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:低炭素社会を主導する地方自治体(2009/5/25)
2. マレーシア森林認証制度がPEFCの相互認証(2009/5/25)
3. 北海道森林づくり基本計画とウッドマイルズ(2009/5/25)
4. 森林の吸収源としての不思議な能力ー最近の学術研究の最前線から(2009/5/25)

フロントページ:低炭素社会を主導する地方自治体(2009/4/15)

美幌峠から屈斜路湖を望む

4月下旬ウッドマイルズセミナーin美幌というイベント(イベント概要はウッドマイルズ研究会HP)で、北海道美幌町に伺う機会がありました。人口2万2千人、東北海道の北見、網走の中間にあるまちです。

美幌峠から見える屈斜路湖からの眺望は有名です。

今回町の関係者と話をしていて印象的だったのは、行政のあらゆる面に低炭素社会が意識されており、中央政府や経済界を巻き込んだ「低炭素社会にむけた行動計画」を町づくりにいかす「低炭素なまちづくり」が進んでいることでした。(温室効果ガスの削減・吸収、炭素固定化による 美幌発「低炭素な町づくり」

プロジェクトのいくつかを紹介します。

(町産認証材活用を活用した住宅建設の促進)

「21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業」対象地域の提案概要が発表になり、美幌町の提案が全国20のモデルとなりました。(環境省プレスリリース5/13

「里山と田園に囲まれた「みどりの村森林公園」に隣接して木造2階建てのモデルハウスを建設。三世代が同居して長く暮らせる住まいを理想とし、FSC認証地域材の使用によりウッドマイレージCO2を低減するとともに、温度差や氷雪などをローカルエネルギーとして最大限活用した低炭素な家づくりを行う。」としています。

2007年度から「美幌町産材活用住宅助成制度」ができ、町内にある3000ヘクタールのFSC認証森林から生産された木材を利用した住宅の支援をしています。地元産材を利用した住宅への助成は各地で行われていますが、環境認証とタイアップした取組は珍しいですね。現在新築住宅の半分はこの認定を受けているそうです。

COCを持っている町内の工務店で美幌.木夢クラブ(ビホロドットコムクラブというのだそうです)で、協同して住宅展示場にモデルハウスを出しています。(地元町有林新聞3/19

(カーボンオフセットの投資対象と森林認証された森林の管理)

美幌町など道内4町でつくる森林バイオマス吸収量活用推進協議会が4月21日、ミュージシャンの坂本龍一氏が代表を務める有限責任中間法人「more trees(モア・ツリーズ)」との間で、森林づくりの協定を結びました。地元のフリーペーパー伝書鳩から

昨年創設された「オフセット・クレジット(J-VER)制度」の中に本年3月から「間伐等の森林管理を実施し、森林の二酸化炭素吸収量を増加させる取組」が位置づけらましたが、その制度に基づく森林管理プロジェクトにこのプロジェクトも応募しています。(オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林管理プロジェクトの申請受付結果について(お知らせ)

これらの申請については、今後、気候変動対策認証センターにおいてパブリック・コメントを募集した後、同センター内の内部審査を経て、オフセット・クレジット(J-VER)認証運営委員会による審議を受けることになります。 しばらくこのHPでもフォローアップします。

その他に北海道国際航空株式会社(エアドゥ) 女満別空港近郊で植林を行いました!といったとりくみもあります。

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マレーシア森林認証制度がPEFCの相互認証

PEFC評議会は、5月5日付でマレーシアの森林認証制度MTCSがPEFCの承認を受けたことを発表しました。プレスリリースはこちら

これはアジアでは最初のケース、また、熱帯林の認証制度の相互承認としては先日のガボンに次いで2番目となりました。

評価報告書本文
Conformity Assessment of Malaysian Timber Certification Scheme to PEFC Requirements

概要部分を訳してみました。PEFCがどんな点をチェックしているか参考になります。

EFCの評価レポートの概要
Conformity Assessment of Malaysian Timber Certification Scheme to PEFC Requirements


1 基準の作成過程の独立性に関するPEFC要件

2002年の基準MC&I (2002) は独立した関係者のグループにより作成され、認証され評価される対象者の影響を受けるものではなかった。

2 参加手続きに関するPEFC要件の適合

参加プロセスは透明で組織され、文書化されている。国レベル地方レベルの広い関係者を対象としており、PEFCの要件に適合するよう、文書による合意の証拠が示されており、社会的、環境的利害関係が、政府機関の政策にそって、バランスのとれた調整がなされているか。MC&I (2002)が作成されたときはPEFCの要件が文書化されていなかったので、このルールは今後の改定過程にのみ適用される。

3 実施レベルのPEFC要件の適合

森林認証基準は個人、グループ、地域のレベルで適応出来るように記載されていても、実施のレベルが個々の森林管理の認証を規定することになる。CoC認証に関しては、いくつかの地域で事業を行っているひとつの事業者に対して、複数箇所認証が適用することができる。

4 実施上の要件がITTOガイドライン及びPEOLGsへの適合

2002年基準の91のITTO/PEOLGガイドラインのうち81については完全に適合し、6のガイドラインが適合せず、4つが部分的な適合をしている。主たる問題点はいくつかの要件が「すべきである」と記載されているにも関わらず、「原則として」(normative)という取扱になっている点である。実施基準が指標の形で記載されているが、評価者はFSC原則のように厳密な要求をしない。
この状況ような状況は、基準作成に参画した関係者によって認識されており、プロセスの結果に反映されている。評価者は地域における統一性を求めており、それが実施水準を規定している。

5 PEFCの規則は法律に従うことを要求している

マレーシアの基準は国と地方の法律を基礎とし、規範的なルールに従っている。マレーシアは全ての国際環境条約を批准しているが、ILO条約の一部を批准していない。そして、マレーシアの基準は失われた因子に関連している。法令は労働組合を設立する権利を保障し、それらの組合員とその他の職員の差別を禁止している。
森林分野の労働者が十分に保証され、同国の他の分野の労働者の同様の恩恵をうけるように、マレーシア政府はILOの作業工程表に従う。
労働組合からの聞き取りでは、労働者の権利を推進する法制のギャップはあるが、労働者の利益をさらに発展させる手続きが存在する。この報告書の5.2は、ILO条約の非批准要請事項と法令の取り扱いについて詳細に説明している。

6 COCの承認過程はPEFCの規則に沿ったものである

MTCCはCOCの基準としてPEFCTD付属書4を採用している。認証された原料の出所はMTCS文書に記載されているが、これはPEFC TD Annex 4, Appendix 1に適合している。

7 認証、認定の過程におけるPEFC要件への適合

認証、認定の過程は2009年1月にMTCCの再編が行われた段階でPEFCの要件に適合することとなった。他方でその前のPEFCに認められない認証も効力を持っている。

8 認証機関のPEFCへの通知がPEFC要件では必要

MTCCの通知手続きがPEFCの要件に適合している。

9 紛争処理手続きはPEFC要件に適合

紛争解決の手続きは基準に策定及び制度の運営をカバーしており、認証機関の認定及び認定機関の認定に対応するプロセスにおいて適合しているとされた。紛争処理手続きはMTCCが関与する場合とそうでない場合に公平な苦情処理システムを提供している。


http://www.pefc.org/internet/resources/5_1185_2023_file.2365.pdf

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北海道森林づくり基本計画とウッドマイルズ(2009/4/25)

平成15年に作成された北海道森林づくり基本計画の中にウッドマイルズについての解説記事がありました。

ビジュアル版48ページ(第四の中

豆知識

 ウッドマイルズ

 はるか遠くから運ばれてくる木材は、輸送にかかるエネルギーが莫大です。家を建てるのに使う全ての木材を地球の裏側から輸送するエネルギーは、その家を建てるために必要な全ての部材を作るエネルギーに匹敵します。

 ウッドマイルズとは、木材の産地から消費地までの距離に関する指標で、主に建築物に使用される木材の輸送距離を短縮し、輸送エネルギーの削減や、地域材需要の活性化を目指すために平成15年6月に設立された「ウッドマイルズ研究会」が提唱しているものです。 なお、ウッドマイルズの考え方は、道が推進している「地材地消」に通じるものであることから、平成19年8月23日に、北海道知事がウッドマイルズ研究会顧問に就任しました。

ウッドマイルズの指標

 下の図は「ウッドマイレージCO2」といい、家一軒分に当たる木材が、輸送時に排出されるCO2の量を表す指標です。道産木材で住宅を建てた場合、外材を使用した場合に比べ、輸送時にCO2排出が少ないことを良く表しています。


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森林の吸収源としての不思議な能力ー最近の学術研究の最前線から(2009/4/25)

「極相林の場合:幹や枝の枯死分解速度と生産速度はおおよそ釣り合い、吸収源でも放出源でもないと考えられる。」というのが森林生態学の普通の教科書に載っている記述ですが、最近の研究成果は必ずしもそうでないことを示しているそうです。

ネイチャー、サイエンスといった世界中の自然科学分野の研究者があこがれる論文投稿先に掲載された森林分野の最前線の研究成果を題材にして、分かりやすい解説してくれる通信がインドネシアにある国際林業研究センターCIFORのセイモア所長から送られてきますが、その最新版の日本語訳を以下に掲載します。

排出、吸収、循環 (2009/04/28付)
Sources, sinks and cycles / April 28, 2009

今年12月コペンハーゲンのUNFCCC COP15に向け、森林の減少や劣化による二酸化炭素の排出が気候変動にもたらす影響が大きな話題となっています。しかし、地球の炭素循環と森林との関係はさらにもっと興味深いことを、リーズ大学(University of Leeds)の科学者を中心とした世界中の100人以上の共著者による2つの論文は示しています。

つい最近まで、成熟した原生林は、成長による炭素吸収が木質物質の腐朽による排出と平均的には釣り合うので、排出源でも吸収源でもないと広く考えられてきました。しかし、アマゾンの原生林では実際には炭素蓄積が増えているという、この古い教えに反する結果が数年前に出てきました。

Simon Lewisらは、アフリカで得た同様の知見を用いて、地球上の未知の部分を埋める作業を開始しました。Nature誌に発表された論文「アフリカの熱帯原生林で増加する炭素蓄積 Increasing carbon storage in intact African tropical forests」によれば、彼らは10カ国の79ヶ所で樹幹の成長を計測し、その結果を外挿して総森林バイオマスを大陸スケールで計算しました。彼らの推計によれば、アフリカの成熟した湿潤林は最近数十年で毎年340百万炭素トンを吸収してきました。この吸収量はアフリカ全体の森林減少による排出量にほぼ匹敵し、アフリカ大陸全体の化石燃料起源の排出量よりはるかに大きな値です。

この意外な成長量はいったいどこから来るのでしょうか?これらの森林が過去の撹乱からの回復過程にあるとは著者らは考えていません。なぜなら、もしそうならもともと木材比重の低い種の比率が減少していくことが生態学の理論から予測されますが、そのような形跡はないからです。そうではなく、より大きな木は、大気中の二酸化炭素の増加による施肥効果も含め、より多くの資源を使えるようになるからなのでしょう。

Oliver Phillipsらは、Science誌の論文「アマゾン熱帯雨林の干ばつに対する反応 Drought sensitivity of the Amazon rainforest」で、2005年に起きた大干ばつに森林がどう反応したかという、天然の実験の結果を報告しました。将来、一部の気候変動モデルが予測するようにもし乾燥がより進むのなら、この実験結果はアマゾンで今後何が起こるかを占うものとなりえます。アマゾン地域一帯の原生林に配置された長期観測プロットのデータを用いて気候データに合うようにバイオマスの変化を計算することにより、乾燥下で森林がどのように反応したかを推定することができました。

干ばつ前の最近数十年間にこの地域の森林では年間450百万炭素トンの純吸収量がありました。それが一転し、2005年の大干ばつの影響を最も激しく受けた森林はバイオマスを失い大気への純排出源となりました。プロットレベルから干ばつの影響を受けた地域全体へのスケールアップを行い、さらに計測されていない部分のバイオマスも算入した結果、干ばつの影響により地域全体で1,200百万炭素トンの変化が起き、アマゾンの森林は炭素の吸収源から大きな排出源へと変わったと著者らは推定しました。ちなみに、米国の2005年の化石燃料起源の排出は1,600百万炭素トンでした。

これら2つの論文は、地球の炭素循環における森林の役割が、通常考えられているよりもいかに大きくまた複雑であるかを示しています。私たちは、気候変動に対する森林起源の炭素排出の影響ばかりでなく、森林に対する気候変動の影響、炭素吸収など様々な生態系サービスを提供する森林の機能にも、斉しく注目していく必要があります。そのためには、森林の長期観測を支援していくことが不可欠です。その努力があってはじめてこれらの論文のような知見が得られるのです。

フランシス セイモア (CIFOR所長)

(日本語訳 鷹尾 元(CIFOR))

POLEXのこの記事の英語版はこちらのHPに掲載されています。
また、日本語訳はCIFORに出稿している鷹尾さんによるものですが、日本語のHPもあります。日本語のレターも配信してくれます。希望者はこちらから直接鷹尾さんへ

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp