ニュースレター No.075 2005年11月6日発行 (発行部数:1200部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:温暖化対策と森林の新たな関係(2005/11/6)
2 サステイナブル建築世界大会基調講演の中の木材(2005/11/6)
3. 環境経済・政策学会2005年大会コレクション(2005/11/6)
4. 「儲かる林業研究会」の設立(2005/11/6)

フロントページ:温暖化対策と森林の新たな関係(2005/11/6)

森林減少によるCO2排出量と京都議定書の削減目標

世界林業研究センターCIFORが配信しているPOLEXというニュースレターがNatural forests key to Kyotoという興味深い記事を配信しています。(日本語版

ブラジルとインドネシアの森林減少により毎年大気中に放出される二酸化炭素は、京都議定書が第一約束期間に削減を目指している排出量の80%に及ぶ(左図)と指摘し、過去の減少速度を基準にしてそれを削減した場合、それに得点を与える新たな枠組みを作ろうという提案に関する記事です。

これにより、京都議定書後の枠組みに途上国の参加を促し、排出量の大きな部分を占めている森林減少を国際条約の枠組みの中でコントロールしようというものです。

地球サミット以来、森林行政関係者は持続可能な森林管理を実現するための国際森林条約のような枠組みを作る試みをしてきましたが成功していません。他方で気候変動枠組み条約が森林の持っているただ一つの面に着目しながら森林管理のガバナンスを広げているという現実がさらにもう一歩進もうとしています。

オリジナルな主張は、Climatic Change誌の8月号(2005)71に掲載された、Santilli, M., et al. "Tropical Deforestainon and the Kyoto Protocol, An Editorial Essay" で発表されたものです。(オンライン上でも入手できます→こちら

他の分野でグローバル化が進む中での地球規模での森林管理の枠組みをテーマとして、来る11月12-13日、愛媛大学で開催される林業経済学会2005年秋期大会で関連分科会(13日)を行います。(分科会報告要旨集はこちら
ご関心のある方はどうぞ参加下さい。

kokusai 2-12 <TFPKyoto>

2 サステイナブル建築世界大会基調講演の中の木材(2005/11/6)

9月27日から29日、都内で開催されたサステイナブル建築世界大会(sb05tokyo)冒頭、地球環境政策論の大御所であるドイツのエルンスト・ワインゼッカー教授が基調講演を行いました。私は会場に出たり入ったりで、ほんの一部を聞いたのですが、その中で、同教授は建築資材としての木材のすばらしさを強調されていたので、その内容が気になっていました。最近、同大会のサイトにその講演の内容が掲載されました。(大会HPからダウンロード

「環境効率の先陣としての建築技術(Buildings Technology in the Vanguard of Eco-efficiency)」と題する講演は、72年にインドのガンジー首相が唱えた「貧困こそが最大の汚染原因」、という有名なテーゼに対して、「気候変動や生物多様性においては裕福こそが最大の汚染原因」になっているという刺激的なイントロにから始まっています。

1700人以上の建築関係者の参加した大会の基調講演で、「木材建築は二酸化炭素を削減する」、「木材は美しくメンテナンスが容易」、といった建築材料としての木材のメリットを強調されている(13ページ)のは、大変意義があることでした。

ご一読下さい。(基調講演のHPより
また、大会のHPには大会総括というページもできました。

kokunai 3-24 <vanguard>


3 環境経済・政策学会2005年大会コレクション(2005/11/6)

10月9-10日早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて表記大会が開催されました。今年の大会には残念ながら報告することができませんでしたが、地の利もよく、また、このサイトの立ち上げの動機にかかる重要な学会なので参加してきました。

プログラムとすべての報告要旨がこちらのサイトからダウンロードできます

例年のことですが、この学会での報告の目玉は「温暖化問題とその対策」で、同名のセッションが三つに分かれ20近い報告がされています。第一約束期間にむけて環境税や吸収源対策がホットな行政・政治過程と違い、学術的な関心はポスト京都に向かっています。頭を柔軟にしておく意味でも一瞥の価値があると思います。

ちょっと気になるのは森林分野の研究者の参画が意外と少ないことです。環境経済政策分野の研究者が大勢森林を対象とした研究に取り組むことが行政と研究の発展にとっても重要だと思いますが、その数も残念ながら少なく、また、大会で十分な議論が足りないという気もします。

気のついた報告を一覧表にしてみました。
森林と森林政策の評価
いかにして地方森林税は実現するのかー地方森林税の政治経済的分析 高橋卓也(滋賀県立大学) b31 各県の税検討開始時期の要因分析。政策逼迫度と関係あり。
入会を起源とする伝統的森林コモンズの変容 島田大作(京都大学) b32 持続可能な資源管理の制度として注目されコモンズの役割を実態分析
Evaluation of subsidy Policy of Japanese Forestry 佑川明子(東京農工大学)他 e35 各県の林業補助金の増分が生み出す便益が少ない
Latent Infuencs on Forest Area Dynamics in Asia Amapola Dela Cruz Generosa
(九州大学)
m22
ja 
林産物輸出の多い国は植林地が多い
バイオマス環境会計の構想 八木裕助(横浜国立大学) g36 地域単位の木質バイオマス循環を記述し評価する手法
エコツアー参加者はどんなツアーを望んでいるかー知床国立公園における実証分析 柘植隆宏(高崎経済大学) h32 ヒグマが見られる確率1%に306円支払う
貿易と環境
Trade Ban and the Black Market: A Consideration of the Incentives for Illegal Production 大沼あゆみ(慶応義塾大学) c33 違法採取物品の貿易禁止は非効率的な政策
企業の社会的責任
環境負荷削減実践が経済効果を引き起こすメカニズム:資源依存の企業感(RBV) 謝双玉(広島大学) i33 環境マネジメントが経済パフォーマンスに貢献する道筋
企業の環境活動が銀行の貸付金利に与える影響の定量分析 大原伸介(東京三菱銀行) i35 企業の良好な環境活動は借入利率に影響するという実証分析
温暖化問題の基礎:ポスト京都議定書問題
CO2温暖化説は間違っている。よって、温暖化対策事業は中止させるべきである。 槌田敦(名城大学) a11 反対論のサマリーが提供されています
2050年脱温暖化社会構築に見えたシナリオアプローチの関する研究 藤野純一(国立環境研)他 a13 最終的な均衡目標を念頭に置いた日本社会のシナリオ研究
気候変動の世界地域別寄与度のブラジル提案 黒沢敦(エネルギー綜合研究所)他 a14 途上国を参加させる枠組みとして提案されている負担均衡論
ポスト京都議定書の枠組み 山口光恒(帝京大学) a16 米国途上国を参加させる実践的な提案
日本における効果的な炭素税制度のあり方とその評価 石橋亮太(東京工業大学)他 a24 他のシナリオと比べた効率性の比較、欧州各国比較
京都議定書以降の気候変動対策における目標設定及び削減義務の分担に関する定量的評価 西本裕美(京都大学) a35 長期目標提案間のシミュエーション
京都メカニズムの総括及び今後の制度設計のあり方 明日香寿川 a34 ポスト京都でも同様なメカニズムは必要
注 英文での報告をしたGenerosaさんにはお願いして和文の資料を作成して頂きました。

kyotuu <seeps2005>

4 「儲かる林業研究会」の設立(2005/11/6)

「3年間で、林業がやり方次第で儲かる仕事であることを提示する。」

このHPで今年の1月に紹介した表記研究会が発足の運びになったと、発起人の一人
肝属木材事業協同組合理事長佐々木幸久さんから連絡をいただきました。

冒頭は研究会の三つの目標の一つめです。

以前も書きましたが、小HPのテーマは環境という切り口で森林や林業・木材を見ていこうというもので、その限りで、国産材・地域材の問題も取り上げ的きましたが、本来国産材や地域材の抱える実践的な問題を議論するなら、もっと重要な視点がある、という認識は持っていました。

この研究会が取り組もうとしているのは、日本林業の効率性という、その問題です。

日本の林業の最も弱点となっている効率性という問題に対して、先駆けて真っ正面から取り組むのが南九州発の研究会だということは、それ自体が重要な検討テーマかもしれません。

ご了解を得て、趣意書を掲載します。


儲かる林業研究会の設立について

設立趣意

 「国産材の時代」という言葉が期待と希望をもって語られたのはいつの頃だったろうか。しかしながら国産材のシェアは年々低下し、今や20%を切っている。林業関係者の間には「輸入材の流入が激しく、このままでは林業はやっていけない」との悲観論が台頭してきている。

 それでは輸入材はなぜかくも大量に流入しているのだろう。それらの木材輸出国は国情が安定し、豊かな生活を営んでいる北米やヨーロッパであり、森林資源管理が適切に行われ合理的な林業・木材加工体制が確立し、国際競争力を確保している。今後もその充実した資源をもとに国際的なマーケットへの展開を続けていくであろう。このような状況下で国産材は抜本的な手を打たない限り、常にそして永遠に熾烈な国際競争に勝つ見通しが立たないのである。

 我が国は森林面積が十分に広く、森林資源が充実しつつあるにも関わらず、国際競争力において一方的な劣勢にある。まさにわが国の林学、木材工学、経営技術、更には行政・民政の資質までが問われかねない局面であり、国産材に関わる者としてこの惨状を座視できない。

 一方、木材価格が低迷を続ける中、拡大造林期以降育成されてきた人工林は、間伐や再造林が進まず環境機能も十分発揮できない質的低下が生じている。これら人工林を健全に育成するには間伐などの保育が必要であり、そのために間伐材などの販路・収益拡大が必須である。また、大規模なスギの集成材工場、合板工場の出現により国産材の大量消費がはじまりつつある。さらに、製材設備の革新により従来では利用できなかった原木の利用が可能となり、新しい育林体系・素材生産の仕組みが必要となってきている。

これらの課題を克服するために、日本、特に南九州地域における持続的な林業・国産材利用の姿を提示することが必要であり、例えば、市場逆算価により許容される低コスト林業の提案とともに、国産材の販路・収益拡大のための方策を徹底的に研究すべきである。問題は大きいように見えるが、個々の問題をきちんと解決していけば展望は必ず開ける。

まず悲観主義他力本願から脱しよう。ここに有志を募り、それぞれの専門分野・職域の壁を取り除き、目標に向かって問題を解決していきたい。そこで、国産材を資源として再び位置づけ、活力ある新たな国産材産業を創造するために、川上・川下を含めた産官学関係者で「儲かる林業研究会」を発足させる。国内林業や国産材を取り巻く事態は急を要している。この研究会では以下の目的を掲げ,目標を達成するため3年間を目途に活動して行きたい。問題意識を共有する仲間を募り、研究会への参加を呼びかけたい。

 

研究会の目的

 人工林の健全化、木材の持続的安定供給を可能とする新しい国内林業の姿を提示することにより、林業経営者を激励し山村地域の振興を図り、ひいては森林資源の循環利用の推進などに寄与すること。

 

3年間の目標

・林業がやり方次第で儲かる仕事であることを提示する

・価格、品質、供給力で輸入材に対抗できる競争力モデルを確立する

・持続的で安定した木材の生産体制を構築するための手法を確立する

 

平成1711月1日

 

設立発起人

鹿児島大学農学部長                     下川悦郎

九州森林管理局長                      島田泰助

鹿児島県林務水産部長                   諏訪弘美

鹿児島県森林組合連合会副会長    平瀬戸 茂

肝属木材事業協同組合理事長             佐々木幸久

 


研究会を全国組織にすることは事務局には若干の躊躇があるようですが、ご関心のある方は、
以下の問い合わせ先までどうぞ。

〒890-0065鹿児島市郡元1丁目21-24
鹿児島大学農学部森林計画学研究室内「儲かる林業研究会」事務局(担当:寺岡行雄)
TEL:099-285-8574, FAX:099-285-8575
teraoka@agri.鹿児島大学

kokunai 8-2 <mourinso>

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp