「里山バンキング」が提唱していること

7月5日環境アセスメント学会生態系研究部会定例会、里山生態系保全を推進する「里山バンキング」という会合に出席してきました。

2年前に同じ場所で開催された同じテーマの会合に出席した結果はこのサイトでもご紹介しました「里山バンキング」ワークショップinちば(2012/1/22)が、2年たって谷内の水田にはNPOの力で田植えがされるようになり(←)、その周りの森林の整備の事業を里山バンキングのクレジットとしようという実証実験が行われています。

つまり、下草を刈りはらって管理がしやするするような事業のコストが公認されてクレジットとして登録され、例えば近くの宅地開発を実施する業者が事業過程でやむを得ず行うこととなる緑地の宅地転換とい生態系のロスの代償として、事業費でクレジットを購入し、「この宅地開発はノーネットロス(生態系の負荷をかけない事業)である」と説明できるようにしようというものです。

里山バンキングの解説は、提唱者である東京都市大学田中章教授の、里山のオーバーユースとアンダーユース問題を解決する“SATOYAMAバンキング”を参照ください。

まだ、事業化ということにはなっていませんが、2年前に比べると、大手小売りチェーン店の環境担当者など企業の関係者が数人参加されていたり、環境省の担当課長が来ていたりと、じわじわと事業が進みつつある、という動きが見えました。

前回も触れましたが、この事業が普及するためには、バンキングを義務づける制度(環境アセスの過程で、ノーネットロスを義務付ける規則など)と、生物多様性の定量的評価手法が必要です。

後者については、平成26年度「環境研究総合推進費」で「環境保全オフセット導入のための生態系評価手法の開発」(代表者岡部貴美子(独)森林総合研究所)というプロジェクトが出発したという紹介がありました。(概要

今後の展開を期待します。

(黒四ダムのネットロス)

 

ところで、次の週、黒四ダムに団体の親睦旅行でいってきました。台風一過の素晴らしい天気で、後ろ立山連峰の峰々が一望に見え、すばらしいものでした。

このプロジェクトは1956年から63年までかかった難工事で、映画黒部の太陽、最近では紅白で黒部から中島みゆき地上の星が流れたNHKのプロジェクトXシリーズ黒四ダム、などで紹介され、「この谷は地上の自然と地底にあった人間の情熱とを教えてくれる」として、今でも高度経済成長期の日本の英知と努力を称賛するストーリィが受け入れられています。

ところで、今黒四を作るとなったらどうなるだろう、というのが、里山バンキングのセミナーに出席したばかりの私の設問です。

中部山岳国立公園の真ん中に、349万m2の湛水面積を持つダムをつくるには、まず、回避できないか(回避ミティゲーション)、もっと小さくできないか(最小化ミティゲーション)のギリギリの検討を行ったうえで、最後に代償オフセットという形にしよう、というのが里山バンキングのもととなった、、生物多様性オフセットの主張です。

仮に環境アセスメントの手続きの中で、ノーネットロスという原則が施行されることとなると、黒四ダムと同じ規模の代償を近隣に求める、となり、多分黒4ダムはできなかったでしょう。

発電能力は出力335千KWで原子力発電所の3分の1。

この規模の再生可能エネルギーを推力とした発電施設を作るのに、生物多様性の代償をどう考えるのか、今後の生態系の評価手法の検討をする場合に、頭の隅に置いておかなければならないことかと思います。

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