日本の持続可能な林業経営の未来と「森林未来会議」(2019/7/15、7/17加筆)
 
 パネルディスカッション:執筆者と話す
増田元岩手県知事

7月9日に都内で開催された、出版記念シンポジウム「森林未来会議」森を活かす仕組みを作る、に出席しました。

林業成長産業化というが、本当に持続可能な林業ができるのか?資源はあるが利用した後の次世代の森林はどうるのか?

「未来会議」というタイトルが魅力的ですし、筆者の多くが知人だったので、しっかり本を読んで出席。

森林未来会議ー森を活かす仕組みをつくる(熊崎実・速水亨・石崎涼子[編著]:築地書館

日本の持続可能な林業の可能性、全体を見ない森林政策の問題点、人づくりの大切さと課題など、議論の過程で、欧州と米国の現状を踏まえたグローバルな視野と、歴史的な分析の双方をふまえ大切な作業だったと思います。

昔「霞が関村」にかよっていた私にとって、行政の可能性がいったいなんなのか考える大切な機会でした。
行政と市場、森林認証と行政との関係性、森林認証のコスト問題はどのように処理されるのか・・・・

また、ウッドマイルズやこの勉強部屋での作業で情報発信をする立場では、次のような問題意識がひろがる場面でもありました
○グローバルなマーケットの中で、日本の地勢的条件の下で、補助金がいらない、持続可能な木材生産ができる可能性はあるのか
○本当に一時的な国産材時代でなく、持続可能な成熟した国産材時代と地域創生ができるのか、
○国産材時代は日本のニッチなマーケットのローカルな一時的な問題なのか、それともグローバルな森林の未来に関する課題なのか

 などなど

「これからの日本の森を動かす知恵が詰まった本」(増田寛也(元総務相・前岩手県知事))です
ご関心のある方は是非どうぞ

それぞれの章について、自分で納得したメッセージをまとめてみました。

  章タイトル  筆者  メッセージ
 序章  豊かな森林経営を未来に引き継ぐ―林業家からの発信  速水亨  林業の担い手は森林所有者・森林管理者・森林労働者の三段階だが、所有者の顔が見えない
第1章 オーストリアとの比較から見た日本林業の可能性 久保山裕史 資源制約のオーストリアと当面それがない日本のコスト比較、再造林コスト以外はクリア可能か?
第2章 小規模な林業経営と大規模な需要を繋ぐドイツの木材共同販売組織 堀 靖人 川下側のパワーアップに対抗する山側のパワーアップは、販売の共同化が第一歩
第3章 森を有効に活かすアメリカの投資経営とフォレスターの役割 平野悠一郎・小野泰宏・大塚生美 森林投資型経営が発展する米国南部の林業が、日本に示唆するものは・・・所有と経営の分離と、フォレスターによる変化への対応
第4章 ドイツの森林官が持つ専門性と政府の役割 石崎涼子 ドイツの森林官がになってきた仕事を官民にわけることができるか?森林所有者の伴走者か裁判官か?
第5章 政策と現場を繋ぐ自治体フォレスターの可能性 中村幹広 持続可能な林業は、環境分野の人が枠組みをつくり、ビジネスを林業分野の人が考え、フォレスターが実証する枠組みが必要
第6章 市町村フォレスターの挑戦 鈴木春彦 市町村の人材が足りない!!一人一人にモデル林管理を任せる豊田市の森林施業プランナー研修制度
第7章 多様な森林経営を実現させるための技術者育成 横井秀一 林業が成長産業でなく、林業が成熟産業になれるかどうかが目標
第8章 科学に裏付けられた森づくり 正木 隆 研究者以外に研究成果がとどいていない。英語ドイツ語にくらべて日本語の学術用語は難しすぎる。丁寧なことばを通じた意思疎通を
終章 新しい「木の時代」がやってくる 熊崎 実 公的資金が、人づくりと路網整備でなく間伐にむかったのが問題の根源。上からの補助金でなく現場を見るフォレスターが必要

kokunai6-50<mirai>

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