都会の自治体の森林環境譲与税ー文京区議会決算特別委員会から(2020/11/10)

昨年度に各自治体に配布された森林環境譲与税がなんに使われたのか?

法令で開示を義務づけられているので、地元の文京区ではどうなったかな?と気にしていました。文京区の森林環境譲与税の使い道 (2019/4/20)

10月21日公開!森林環境譲与税の使途について

「多摩産材を活用し、学校施設快適性向上事業において、校舎廊下に腰壁を設置した」(礫川小学校の写真が公開)

(区議会決算特別委員会での議論)

昨年度の予算の使い道に付いての情報公開がなんで10月なのか?というと、区議会の決算特別委員会の議論を経てから、という説明があったので、決算特別委員会でどんな議論があったのか、フォローしてみました。(先週11月6日に議事録速報版が公開

10月1日総括質疑で1名(海津敦子議員(市民みらい))、10月2日個別質疑で2名。宮野ゆみこ議員(市民のひろば)、松平雄一郎(自民)の3人が質問!

早速読んでみましたが、「質問が集中して大人気の森林環境譲与税」(松平議員)について充実した質問だったです。膨大な議事録から取り出して、本件だけのやりとりをこちらに置いておきますが、概要以下の通りでした。(勝手にかいつまんでごめんなさい)

総括質疑10月1日

〇海津委員(市民みらい)

令和元年度から開始された森林環境譲与税を、区は学校施設の快適性向上等で活用しています。
今後は、令和6年度開始予定の森林環境税で、住民税の均等割として、住民一人あたり年間1,000円を徴取することになります。
区民の理解と納得を得るために「日本の森林を支える仕組み」としての森林環境譲与税の意義の啓発を行い、どのように森林環境譲与税の活用を図っていくのか、区のコンセプトを明示する必要があると思います。伺います。
併せて、シビックセンター大規模改修における各フロアの木材利用をどの程度想定するお考えなのでしょうか?
〇担当部長
広く国民に課税される財源であり、公平性の確保も必要になることから、ホームページにおいて使途を公表するとともに、その活用方法については他自治体の事例等も踏まえ、引き続き検討
 10月2日(個別)

○宮野委員(市民のひろば)

昨年提出した予算要望と昨年度の予算審査特別委員会のときに、この税の使途について、区内小・中学生による植林作業を行うことやカーボンオフセット等の施策を推進し、区民にも還元される効果的な活用を行うことを要望してまいりました。現在ホームページはまだ公開されていないということで、現在この使途についてどのように検討が進んでいるのか

 ○担当課長

区有施設の整備における木材利用、区民の森林環境に対する意識の醸成に取り組んでいきたい
今月中旬に区のホームページで公表する予定

  ○宮野委員

東京23区はいずれも林業ゼロなんですけれども、23区合計で約3億6,000万円のお金が下りているんですね。逆に林業地と言える山村では軒並み各自治体で数百万円程度にとどまっているということなんですけれども、なぜこのような制度設計になってしまったのだろうと疑問には感じるんです。区として、この都心部にありながら、私有林人工林面積、それから林業就業者数がゼロにもかかわらず850万円譲与税をもらうこと、それから今後も森林環境譲与税を受け取っていくことに対してどのような意義があるというふうに考えているか

  ○担当課長

 この森林環境譲与税というのは、パリ協定の枠組みの下におけます日本の温室効果ガスの排出削減の目標達成、災害防止を図るといったところが基本的な目的。森林環境に必要な地方財源を安定する観点から、こういった森林環境譲与税という制度ができた。区有施設の整備等で区民の森林環境に対する意識醸成、こういったものを図っていく。これによって、地球温暖化の防止のための温室効果ガスの排出削減につなげていきたい。

○宮野委員

元々は地方の特に苦境にある林業を立て直したいからという趣旨で創設された税金だと認識。結果的に制度の設計のミスでその趣旨に沿っていないような都会にたくさん分配されるという税金になっているのであれば、徴収する機関として国に意見を言っていくべき。
しかし一方で、既にこの制度の中で走り出している限りは、文京区としてきちんとこの税の使途に意義を持たせなければいけない。
文京区では、昨年度は学校快適性向上事業に使われたということなんですけれども、やっぱり859万円という額で木材を購入すると、区と事業者間のやり取りだけで終わってしまって、そこで学校生活を送る児童生徒にその木材が使われている意義がちゃんと伝わっているならばいいんですけれども、それをちゃんと理解しているのかということも疑問。令和6年度からは全区民が1,000円を支払うことになるんですが、区民が森林環境の改善に貢献しているというふうな意識をもっと持っていただいて、区民と一緒に環境のことを考えられるような施策を推進していただきたい

○担当課長

どういった事業に活用するかということにつきましても、今は公共施設のほうの整備などに活用しているわけでございますけれども、様々な事業を展開しているところもございますので、他の自治体の事例なども含めて、引き続き区としても検討してまいりたい
 ○松平委員(自民党)
私は、質問が集中して大人気の森林環境譲与税について、質問させていただきたい
昨日の他会派からの総括質問であったりとか、あと過去の委員でありますとか、今年の予算審査特別委員会でも、我が会派の田中としかね幹事長からもこれに関する質問を神田川の水害と絡めて質問した。
前借りをするような形でスタートしている。、カーボンオフセット等々、そういった地球環境という切り口もあるが、これは自然災害の対応だというふうに認識
学校施設の改修の際に多摩産材を使って腰壁等を設置するということで使っているが、この森林環境税に関しては、いい意味でも悪い意味でも、賛同している方もいれば否定的な意見を反対される方もいるので質問。今回の決算において、どこに該当するか

○担当課長

環境譲与税のこの財源につきましては、歳出の事業では、211ページにございます9番、学校施設快適性向上、こちらの事業に充てた

 

○松平委員

今年度から始まり、令和6年から一律1,000円、森林を保有していない都市部の自治体が一体何に使うんだろうということは、明確にし、足元がすくわれないようにしておいたほうがいい。
今後、令和2年度に関しては1,800万円になり、徐々に上がって令和6年度からは全額、大体恐らく2,600万円、2,700万円ぐらいが毎年安定的に入ってくる
その使途に関しては、特に都心部においては一体何に使っていったらいいんだろうということを各自治体が非常に悩んでいる。都市部の自治体、人口が多い都市部は、木材を消費をしていかなければいけない
国内で今、森林資源の循環利用というのが確立できていないところが、林業が今衰退してしまっている大きな要因なので、植えて、木を育てて、伐採して、それを最後にちゃんと使うというところで、その使い先というのは、やっぱり人口が多い都市部でないとできないことではないか。都市部での木材利用の促進というのが林業従事者の利益の還元につながり、それが森林の整備につながって、近年の土砂災害等々の災害のリスクを軽減するもの
近年、災害ですとか、地球温暖化という観点から国の方針が大きく変わりまして、森林資源の充実と地方創生であったり、国土強靱化という切り口で、木材をどんどん使用していこうという方向性に既に国は切り替わっている。平成22年に公共物等における木材利用の促進に関する法律というのが制定。この公共物等における木材利用の促進方針に関して、国と都道府県はもう既に策定済み。全国では92の市区町村が制定をされている。今こういった大きな方向性、国の方針が切り替わってきている中で、文京区としても木材を利用していこうという方向性をそろそろ見せるべきではないか

○担当課長

平成22年に公共施設の木材の使用促進に関する法律というものが施行された以降、整備してきた第六中学校ですとか、それから教育センター、特に教育センターは外壁のルーバーに木質系のルーバーを使うなど、適材適所の場所について促進する方向で進めてきた。平成22年以降、第六中学校ですとか、先ほど来答弁させていただいているように、学校の快適化、そういった使える場所には適切に用いて促進に努めてきたという経緯。

○松平委員

今、技術の向上というのがありましたけれども、今、木を交互に重ね合わせるCLTというパネルが普及してきており、今もう欧米中心にマンションや商業施設や壁とかで普及。これは、同じ大きさなんですけれども、コンクリートよりも軽いですし、断熱性もコンクリートより高いという検証結果。あとは、当然コストの面がどこまで下がってくるか
建築基準法の規制の合理化というのも、木材を今後どんどん使用していっていけるような法改正というのも、平成28年、平成30年、平成31年と、少しずつ構造に関する規定も、あと防火に関する規定も今国土交通省中心に進んでいる。自民党の議連でも、森林(もり)を活かす都市(まち)の木造化推進議員連盟というのが立ち上がり、都市における木造化を推進するということを議連のほうでも今進めているところ。今、他の23区でも、今回のこの森林環境譲与税、当然、建物を建てるとなった場合に、森林環境譲与税が呼び水となって、都市での木材の利用というのが進むことができればというふうに思い、他区での研究というのも進んでいるので、是非文京区も先頭を切るような形で進めていっていただきたい

学校の内装に多摩産材利用というところから始まった、文京区の森林環境譲与税の利用。

「森林の現場に資金がまわらず、都市の自治体に森林環境譲与税が配分される矛盾?!」が指摘されました。

学校現場で、循環資源である地元の木を使うことの意味が、次世代の都市の子どもたちに伝達されていくきっかけになれば(きっかけになるかどうかは、これからの取組次第ですが)、森林環境税の趣旨目的そった、これ以上大切な使い道はないように思います。

また、公共建築物の木材利用促進方針が、文京区でも作成され木の利用の道をリードすることになればすばらしい、と思います。

 全国で92%の自治体が木材利用促進方針を作成しているけれど、東京23区では8区だけ(江東区港区、品川区、豊島区、足立区中野区世田谷区渋谷区)(2020年10月現在)

kokunai14-10<joyozeibunkyo2>


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