新たな「森林・林業基本計画」を考える―「グリーン成長」の特徴と問題点(2022/2/15)

勉強部屋Zoom会議のゲストをしていただた、九州大学佐藤宣子教授と準備過程で打合せをしている過程で、佐藤教授から最近月間「経済」誌に発表した、標記原稿を送っていただきまししたので、勉強してみました。

10ページにわたる論考の、全体の構成は以下の通りです。

はじめに
1「ウッドショック」が突きつけたこと
(1)日本における木材需給構造の概観
(2)各国の環境政策の進展と中国の台頭で不安定化する木材輸入
(3)第3次「ウッドショック」が問うたこと
2新基本計画の特徴と注目点ー「グリーン成長」が目指していることー
(1)前基本計画からの各種制度変更と新計画の特徴
(2)新基本計画で示された危機
(3)具体的な数値目標
3「グリーン成長」路線で抜け落ちたもの
(1)地域政策視点の弱さ
(2)大規模林業に偏った林業経営の主体像
おわりにー農業政策との違い 

(ウッドショックと基本計画)

最初のセッションがウッドショックについてです。

だれでも知っている最近のキーワードをもとに歴史的な考察を加えて、グローバルなマーケットの木材供給の不安定性が見えてきた。

そえを踏まえて、今後の森林林業政策立案への重要な示唆です。「他のどの産業よりも長期的な視野が必要な」森林政策が木材の安定需要との結びつきが必要です!

(基本計画の問題点1 地域政策が欠けているんでは?)

3の問題点の指摘のセッションのポイントは、1点目は地域政策視点の弱さ。。

山村政策としての豊富な現場経験が記述に反映されていない(自伐型林業もふれられていない)

農業政策ではその辺が進展しているんだそうです。「基本法の基本議論も研究者の中で求められています。」

現場を歩かれた佐藤教授の思いですね。林野庁の施策も森林サービス産業などの形で展開されています。このページでもフォローしていきますが、どんなところが欠けているか、検討をしていきましょう。

(基本計画問題点の指摘2 林業経営の主体が大規模林業に偏っているんでは?)

基本計画では、林業の多様な主体として、「林業経営を行う製材工場など『林産複合型』の法人も含む」大規模事業者を記述した後、、「専ら自家労働等により作業を行い、農業などと複合的に所得を確保する主体等については、地域の林業経営を前述の主体とともに相補的に支えるものであり、その活動が継続できるよう取り組む」とされています。

ただ、これについて、佐藤教授は当初林野庁のサイトに掲載されている資料(林業経営と林業構造の展望A )には、この文脈で自伐型林業という言葉が記載されていたのに、基本計画の段階でこの言葉がなくなったと、気にされています。

相補的なのかどうかは置くとして「その活動が継続できるように取り組む」という大切な文章を具体化する場合、重要な役割をしている自伐型林業のネットワークと連携することが不可欠ですよ!という、佐藤教授の思いですね。

専ら自家労働等により作業を行い、農業などと複合的に所得を確保する主体の活動、田園回帰などの動向ともかかわった、森林政策の重要な視点なので、このサイトでもフォローしてまいります。

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森林政策学の研究者が、過去の論考も引用しながら、政策を昔までさかのぼってレビューした提言が含まれていて、勉強になります。

こちらに置いておきますのでどうぞお読みください→新たな「森林・林業基本計画」を考える―「グリーン成長」の特徴と問題点

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