いま、求められる木の建築・活動とはー第13回木の建築賞公表(2018/4/22)
第13回木の建築大賞
香美町立村岡小学校・村岡幼稚園

第13回木の建築賞の発表がありました。

第13回 木の建築賞 結果発表(木の建築フォーラム
◆ NPO木の建築46号

森林と利用先である建築物との間をつなぐ建築係者が、「地域の文化や風土が表現され、木の建築文化と芸術の振興に寄与」した上で「木材を主として用い、森林の保全、林業、木材産業の振興に寄与していること」(選考基準より)という課題に取り組む、歴史のある建築賞です。

建築賞ではめずらしい作品と活動を両方評価するというこの賞の、活動面の担当の選考委員をしていることもあり、自分が評価に参加してた事例を中心に紹介します。

(木の建築大賞:香美町立村岡小学校・村岡幼稚園)

今年の大賞は、香美町立村上小学校・村岡幼稚園。今井信博(株式会社現代計画研究所)
関連サイト【公共木造施設】〜香美町立村岡小学校、幼稚園地域材で建築完成!!〜

兵庫県北部但馬地域、山間部の小学校の、大規模改修と特別教室・幼稚園の木造による改築です。

廊下と教室の間の木材に囲まれた小空間。楽しいそうですね。

活動面でのポイントは、設計段階から施工段階まで地元の木材を使う中心となった木材コーデネーターの役割だとされています。

木造による改修工事に木材コーディネーターを起用して、その木材利用計画に基づいて設計を進めることで、地域の木材を活かした設計が無理なく実現されている。 ・・・
木材コーディネーターの役割と設計者との共同の仕組みも、画期的な試みとして注目に値する。
(講評より)

(木材コーディネーターの役割とは)

木材コーディネーターをつとめた、NPO法人サウンドウッズがこのプロジェクトの説明用に作成した、図は以下の通りです。資料室「地域の公共建築を地域の木材でつくるー木の学校」村岡小学校改築工事」参照。

建築会社が施工過程で市場に流通している木材を購入して建築するのでなく、地元の町内の木で創る作業を効率的に行うための仕事です。

 
 

さらに興味のある方は、資料室安田哲也(NPO 法人サウンドウッズ代表理事)「木づかい社会の定着のための突破口〜木材コーディネーターは誰に何を伝えなければならないのか〜」(森林技術誌 No.905 2017.8掲載)(掲載許可をいただきましたありがとうございます)を是非お読みください。

(木の活動賞、メンバーズチョイス賞、かしも木匠塾)

 かしも木匠塾2017年開校式

木の活動分野の大賞にあたる「木の活動賞」は、かしも木匠塾、中島大地((株)中島工務店)
関連サイト・加子母木匠塾

22年前から、森林や林業と深い関わりを加子母村(現在中津川市加子母)に、全国から大学生たちが集まり(2017年は今年は8 大学288 人!)、木造建築実習に取り組む夏の合宿です。

毎年学生たちが決めたテーマに基づき、公共の建物や学校遊具、バス停、公園のベンチなどを、地元の工務店の指導のもと製作。「大学での勉強だけでは習得する機会のない日本の伝統的な木造建築の技法を体感できるの」というわけです。

1995年から2017年までの卒業生は4000人 だそうです。

資料室かしも木匠塾活動シートを参照ください

かしも木匠塾(金沢工業大学) (@kashimokodai) | Twitter
東洋大学かしも木匠塾 (@toyo_mokumoku) | Twitter
立命館かしも木匠塾 - Home | Facebook
 OB・OG のネットワークを活用して次のステップへ

加子母の記憶を心に刻んだOB・OG が全国に広がっている――これが、22 年に亘ってかしも木匠塾を継続開催してきた最大の成果である。加子母は「森林・木材・木造建築」を基幹産業としてきた地域だ。加子母の住民や工務店にとって未来の建築を担う学生たちを受け入れてきた経験は、自らの生業を見つめ直すきっかけとなってきた。学生たちにとっては、大学ではできない貴重な体験が建築を志す上での羅針盤となり、建築実務における糧となってきた。かしも木匠塾は、設立当初の目的を着実に達成してきたのだ。
初期に参加したOB・OG がそれぞれのフィールドで一人前になってきた今、木匠塾の次のステップとして彼らとの連携も考えていきたい。加子母に縁も持ちながらもより幅広い分野の知識と経験を持つ彼らの力が加われば、地域に根差しつつ、さらに多様な活動ができるに違いない。木匠塾でつながった人たちがその力を持ち寄って次の世代を育てていく。それはきっと、木造建築と木材産業を支えていく礎のひとつになるだろう。

資料室かしも木匠塾活動シートより

楽しみです。

(木の建築賞、しそうの杉の家)

 

私が現地審査に加わったプロジェクト。しそう杉の家ー播磨地域における里山の循環型住居システムー(三渡真介、(株)山弘)です。
関連サイトヤマヒロ

近くの山の木は運動はしっかり定着しているようですが、サプライチェーンをすべて自分の会社にして、近くの山の木の良さをすべて、くみ上げる、究極のすがたかもしれません。

資料室しそう杉の家活動シートを参照ください

 「しそう杉の家」は、手の入らなくなった里山の杉と山木を用いることで、里山の環境を再評価し、基幹産業の林業を再興させるための里山循環型の住居システムです。このような地域の文脈性から生まれた建築は、地域に生きるもの同士がつながり、現代社会に適応した新しい農村民家のあり方として魅力的な農の風景を描いていくと考えています。

資料室しそう杉の家活動シートより

以下私の講評です。

兵庫県西部の一級河川揖保川上流の宍粟市。シソウ杉の産地として再び豊かな森林資源をベースにした活性化を図る課題を抱えている。ここに所在する工務店と山林会社が一体となって、森林の作業から家造りまでを一貫して実施する体制を構築し、姫路市など下流域の都市地域に、播磨地域の里山循環型住宅システムとして訴求し、数十棟の新築・改築に取り組んでいる。

「近くの山の木の家」の運動は、20年ばかりの歴史をもって広がり、決して主流にはなっていないが、しっかりした流れとなっている。その取り組みをリードする好事例として参考にしてほしいプロジェクトである。

履歴がわかる,90パーセントが同じ流域の木、庭には山の生態系の復元、上下の流域という関係性がわかりやすい。

一貫した生産体制であることを活かして、木の様々な部材を活用した歩留まりの向上、自然乾燥・低温乾燥といった一時的なコストリスクをかぶった技術改善への取り組みなど、サプライチェーンを一体化した体制を武器に技術的な成果をあげている。

もう一歩、水源である揖保川上流の木で家、といったコンセプトをしっかり持って市民に体系的に訴求し、その蓄積を他の地域にも広げてほしい。 

(木の建築賞で気になった点ーローカルな活動のグローバルな意義)

入選作品の内、大賞と私が関与した活動系のプロジェクトについて紹介しました。地域の中のつながりなどがよくわかる、素晴らしいプロジェクトです。

が、少し気になったのは,ローカルはいいのですが、グローバルな視点はどうなのか?特に、この時期に行われた審査過程でクリーンウッドの話が出てこなかったことです。(ウッドマイルズフォーラムの責任でもあるかな?)

ローカルに手間をかけることの重要な意味の一つがが、グローバルに議論されているトレーサビリティにつながる大切な要素の一つであるという視点が是非、議論されるべきだと思いました。来年は審査基準の中にでも入れてほしいですね。

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