木材の環境情報の伝達と木材輸送距離(2015/4/25)

3月下旬札幌市北海道大学において2015年日本森林学会の大会がありました。年度末に開催されるこの学会大会は、年度末にどっと宿題が発生する団体のマネジメントなどをやっていると出席しにくいのですが、5年ぶりで出席し、一本報告をしてきました。

報告のタイトルは、標記、木材の環境情報の伝達と木材輸送距離

ウッドマイルズ研究会からウッドマイルズフォーラムへと、木材の輸送距離に関する環境指標を提起しててきたウッドマイルズ運動に関連し、学術的な蓄積を整理し次の一歩がどのような方向になるのか明らかにしようという意図をもって取り組んだ課題でした。これからの宿題ばかり明らかになり、しっかり整理されたものとするには、少し時間がかかりそうですが、とりあえず報告内容を紹介します。

(ウッドマイルズに関する先行研究)
先行研究の概要は、フォーラムの研究ノートというコーナーにフォローされています。個人的な情報収集から始まったこの分野の「研究活動」ですが、この間、科研費(立花敏他、ウッド・マイレージに基づく木材貿易に関する環境負荷の定量化(平成17年度ー平成19年度)はじめ、森林総研の大きなプロジェクト(「森林及び林業分野における温暖化緩和技術の開発」など)の一部を担当するなど、研究分野でウッドマイルズというキーワードは一定の広がりと蓄積を加えてきました。既存のデータを利用したウッドマイルズの分析の不十分さなど厳しい指摘もされながら、環境指標のみならず、産業構造の変化を知るツールとして利用例が蓄積されました。

(我が国のウッドマイルズ指標の変化)
近年のデータに基づいて、日本の木材消費のウッドマイルズ関連指数を示したのが以下の表です。一般の消費者が利用する木材の輸送距離は国産材、輸入材個別に評価すると遠隔化しているが、国産材の比率が増えるに応じて平均の輸送距離は短くなっています。

2002年

2012年

距離

排出量

距離

排出量

日本の

消費者が使う木材の輸送過程

7173

km

152

kg/m3

7114

km

149

kg/m3

うち国産材

366

km

79

kg/m3

384

km

79

kg/m3

うち輸入材

10371

km

186

kg/m3

12286

km

203

kg/m3

(ウッドマイルズの国際比較)
国連食糧農業機関FAOが毎年公表している林産物貿易の交流表DERECTION OF TRADEの、公表している最新版2012年版林産物年報(The forest products year book2012)に基づいて、各国の消費する木材の輸送距離を明らかにしてみました。とりあえずの結果は下表のとおり。

2012年

日本の

消費者が使う木材の輸送距離

7114

km

米国の

消費者が使う木材の輸送距離

969

km

中国の

消費者が使う木材の輸送距離

3426

km

ドイツの

消費者が使う木材の輸送距離

536

km

(定量型ラベリングの展開とウッドマイルズ)

ウッドマイルズが木材の輸送過程の環境負荷をテーマとしましたが、その後カーボンフットプリントなど、ライフサイクル全体での環境負荷を定量化して表示する動きが広まってきました。

木材製品でもいくつかの企業が自社の製品の評価をして、公開しましたが、現在現在その内容が公式サイトに公表されているのは、北海道のM産業です。

これらのデータとウッドマイルズの評価を比較して、ウッドマイルズが全体の負荷の中でどの程度の大きさのものか、評価してみました。

カーボンフットプリント全体の4割程度が原料と、製品の輸送過程での排出量だという結果です。

カーボンフットプリントの積算内容などを精査した結果ではありませんが、木材製品という製品の特性から輸送過程の温暖化ガス排出量が多くなるのは、予想された結果です。

(今後の課題)
今回の報告は、裏付けのデータなどが不十分で学術論文として世に出すには少し時間をかかりそうですが、環境物品を消費者に届ける様々な取組みの中で、ウッドマイルズの役割の重要性を再確認した過程でした。

報告の発表資料をここ資料室に置きます

A30 木材の環境情報の伝達と木材輸送距離
藤原敬1,2
1一般社団法人ウッドマイルズフォーラム・2林業経済研究所

来るべき循環社会の中で再生産可能な木材は重要な役割を果たす可能性をもっており、それに至る過程で、木材の環境負荷と貢献に関する情報を市民社会・最終消費者とサプライチェーン等を通じて共有することが課題である。
木材の環境情報は、1)生産地における森林持続可能性に関するもの、2)供給過程における生産・輸送にかかる外部への環境負荷の程度に関するものがある。
前者については、森林認証制度のサプライチェーン管理、合法性証明のガイドラインなどが提唱され、後者はカーボンフットプリントなどが提唱さてきた。木材の輸送距離を環境負荷の説明変数として利用するウッドマイルズ運動は上記2)のライフサイクル全体の情報のごく一部を対象としたものとしての制約はあるが、他方で1)の情報の信頼性トレーサビリティの効率性にかかわる情報でもあり、重要な役割をもつものと考えられる。木材の需給を巡っては、市場のグローバル化に対して、自給率向上・地域材住宅ブランド化など政策面でのローカル化を推進する動きなどがある。
これらのふまえた日本の消費木材の輸送距離の推移を推計し、環境評価と政策評価の手法としてのウッドマイルズの可能性を検討する。

energy2-66<2015sinringakkai1>