グローバルに動く木材の需給と「小さな林業」の意味ーウッドショックでみえるもの(2020/7/15)

木材需給逼迫により木材値段が急騰!ウッドショックという言葉が一般マスコミにも登場するようになっています。

木材が消えた?身近に迫るウッドショックNHK6/10
国産木材、増産に3つの壁 ウッドショック対応鈍くー山道整備・林業家の採算・建材変化日経7/1
始まった住宅値上げ、「ウッドショック」はいつまで続く(日経XTECH)6/24
オイルならぬ「ウッドショック」木材不足で戸建てピンチ朝日4/10

ウッドショックは、木材を取りまく結構大きな問題だということは解るですが、でも、木材の値段の話は、ビジネス関係者にとっては死活問題?なので、日々、必死になって情報収集をされている事案であり、勉強部屋で取り上げるのは、少し慎重に、と思っていました。

でも一般市民の関心も拡がり、セミナーなども開かれるようになってきたので、勉強部屋で追いかけてきた課題との関係で、この問題を少し考えてみました。

(ウッドショック、なんで?)

「価格高騰の背景をひと言で言うと、コロナ禍で停滞したアメリカ経済が活動を再開し、木材の需要が高まっていること」なんだそうです。(左図(出典NHK)はアメリカの木材価格)

アメリカではとりわけ郊外に住宅を建てる需要が高まってます。それに伴って木材の価格が上昇。 それに、中国の需要活発化(住宅でなく産業資材)と、コンテナ船不足(物流)の短期的な要素はこの三つ。

そして、日本の木材の購買力の低下、という少し中期的なトレンド要素が一つ。

だいたいどこの論調も同じだから、(ウッドショックとは(日経)、そうなんでしょう。

少し体系的にまとめたのが、遠藤日雄NPO活木活木森ネットワーク代表の右の図です。

第3次ウッドショック」はなぜ起きたのか(全体)(遠藤日雄さん)いただいたのでこちらに置いておきます。 NPO法人活木活木(いきいき) 森ネットワーク遠藤日雄理事長:第3次ウッドショク」はなぜ起きたのか? ーその背景と今後行方を探る(林政ジャーナリスト会議プレゼン資料(以下遠藤報告)

(対応策って有るの?)

木材の値段が上がることはいいことだ、考える人はいるでしょうが、ショックというように値段が動くことは、誰も望まない。それなのに何故、ショックというような値段の動きがあるのでしょうか?

右の図は、60年間にわたる日本の木材の価格と、木材輸入量を示した表です。(木材利用システム研究会月例研究会基調報告(農林中金総合研究所)から)

いままで木材価格のショックは、1973年第1次オイルショック、79年第2次オイルドショック;イランイラク戦争、94年第1次ウッドショック(北米の環境規制強化)、2006年第2次ウッドショック(インドネシアの伐採規制)、2020年今回のウッドショック。50年に5回の木材価格の急騰とその後の反落がありました(今回のあとに下落があるかどうかはわかりませんが、あるんでしょう)。

その殆どが海外の供給制約要因みたいですが、今回は海外の需要拡大(日本への供給阻害要因であることは同じです)。 (今回のはより複合的と遠藤報告

同じ自然資源のサプライチェーンでも鉄やアルミと言った途中に巨大な装置産業が入る場合は、その企業が需給全体を見通して安定を図るのでしょうが、木材はサプライチェーンが細かくて複雑なんで、需給全体を見通すことが難しく、(もう少し高くなるから買っておこうといった)仮需がおこる。

そこで、「木材については行政が需給をコントロースすべきだ」という理屈で、74年に日本木材備蓄機構という財団法人ができて、製材や合板の中間製品を公的に在庫して仮需などがおきないようなシステムを創りました。

それが1991年に備蓄終了し、木材総合情報センターになったのですが、10年に一度ほどのリスクのために公的備蓄を維持することが無理だったんだと思います。(ここは勉強不足なのでまた今度)

有効な対応先はない?

(輸入材主導のショックが、「国産材時代?」になると?)

「国産材時代」とはいえる状況ではないですが、国産材の自給率が拡大してきました。

そのような中で、輸入材の供給制約をきっかけにして、その情報不足で拡大した過去のショックは、今後少し局面がちがってくるのでしょうか?

国産材が増えていく局面で、そのサプライチェーンがどのように形成されるのかが一つのポイントですね。

輸入材に対抗して、高品質な材料を、安価にタイミングよく提供する大型のシステムを作り上げて対抗する、大型のサプライチェーン。国内で存在感を増してきた「大きな林業」。これがウッドショック的な場合にどんなに機能するのかは注目点です、が、少し心配。

信頼できる小さなサプライチェーン、建築関係者が山づくりを念頭にフェアトレードのチェーンを小さくても構築する、「小さな林業」。

これが一時的な需給ギャップによるウッドショックに強いことは間違えないでしょう。

左の図は、どうみるウッドショック木材調達の尺度は「価格からおなじみさんとの関係へ」木村木材木村司社長から。

右は遠藤報告の最後の1枚。

長期的視点から第3次ウッドショック後はどうなる?(どうする?)。

やっぱり新しい信頼のできるサプライチェーンの構築(SCM。でした(MEC Industryという鹿児島県の会社が例示、ローカルな会社なのかな?)。

SCM、日本木材備蓄機構以来、50年間色んな人が考えてきた難しい問題ですが 今後ともフォローして参ります。

boueki1-14<woodshock>

 

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