持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム(2015/11/24) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10月13日から15日に和歌山大学で開催された林業経済研究会秋季大会で、「持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム」と題する報告をしました。 (概要) 緑の認証森林会議SGECの森林認証における森林施業にかかる計画事項の要求事項と、森林法の森林経営計画の認定における要求事項を、森林生産の管理、生物多様性の保全などの持続可能な森林管理の国際的な基準をもとに比較検討おうというものです。
(報告の背景と問題意識) 森林管理の義務と支援を直接対象とした国際約束をめざした国際森林条約の不調(1992年地球サミット、国連環境開発会議)を背景に、国際的な持続可能な森林管理に向けた活動は、市場を通じたアプローチが一つの方向性を示すものとなりました。第三者により認証された森林をベースとする「森林認証システム」、行政機関が判断した森林法の手続きの合法性をベースとする「合法性証明システム」など、です。 持続可能な森林管理を巡る国際的レジーム形成に向けて、市場を巻き込んだ森林認証システムは重要な役割を担っていいます。明確な枠組み/グリーンな消費と結びついた外部からの圧力の可視化/第三者による信頼性の担保などによるものです。 ただし、中小企業のネットワークが支配的な市場では、森林認証の普及に第三者管理によるコスト問題n障害などがあり、行政との連携を強めることで出口は見えないだろうか、という問題意識をもって取り組みました。 (森林経営計画の認定のための要求事項) 森林法11条5項、同施行規則38条などに規定されている、森林経営計画の認定基準の概要は以下の通りです。
認定をする、市町村が作成する市町村森林森林整備計画が認定基準で重要な鍵を握っていることがわかります。 (SGEC森林管理認証要求事項 7の基準) SGECの森林管理認証基準は、「SGEC森林管理認証基準・指標・ガイドライン」に規定されており、以下の7つの基準の下、38の管理認証指標、94の管理認証ガイドラインからなっています。
SGEC森林管理認証基準・指標・ガイドライン(改正)(SGEC文書3 2012 理事会2015.4.1)(SGEC文書全般(2015.0401)の中に掲載) (二つの基準の比較方法) 二つの基準の関係を、第一にSGEC 38の指標を以下の基準に基づき、森林経営計画の必須事項から、同計希求では計画事項でないので対応していない、まで5段階で評価しました。
そして、必須事項でないBからDまでについて、森林経営計画に含めるとしたらどのような課題があるのかを検討しました。
この結果が、以下のとおりです (結果の検討) SGECの求める要求にたいして、現在運用されている森林経営計画の作成過程の実態は、多くの場合対応していないといえるでしょう。 グラフ左側、「経営計画の計画事項ではないと理解されているので対応していな」が38のうち、29をしめています。本当に計画事項でないのかといえば、そうではなく、仮にSGECの要求基準に合うようにするには、(市町村がその気になれば)、市町村森林計画にSGECが要求する基本的な事項記述し、森林経営計画の長期方針の部分に、市森計の該当項目を引用し、この部分は特に留意して実施する、と記載するなどの対応が可能です。 次に、グラフの右側ですが、SGEC基準に対応するのに必要なことは、すでに対応しているものと森林計画策定時・実施過程の注意義務で対応できるものが6割、コストの負担を含めた所有者のコンセンサスなどが4割程度でしょうか。 全体として「きつめな評価でないか」とフロアから議論がありました たとえば、基準3指標1は「土壌及び水資源の保全に与える影響を事前に把握し、森林管理計画等や実施過程における悪影響を最小化するよう努めなければならない。」は今回D1に分類しています。この指標のガイドライン(3−1−1)に 「伐採、林道開設等の林業活動における環境変化や保全水準を認識するとともに、環境に配慮すべき項目を整理し、従業員や委託・請け負わせ先に周知徹底が図られなければならない。」といった記述があり、「最小化するよう努める」具体的要求事項を現在の森林経営計画がカバーし切れていないという市町村の担当者の意見に基づくものです。 これらに対応するには施工上のコストがかかるものでなく、計画時と施工時の注意がしっかりできる体制を求めているものでしょう。少しの工夫でクリアできるものがたくさんある、というのが主たるメッセージです。 (報告の意義と課題) このような対応の可能性の議論にどんな意味があるのか?フロアから批判的な議論がありました。「日本の森林が持続可能な森林経営であることのグローバルな発信をすることがどの程度重要なのか」という認識の問題ですが、もしも重要なのだと考えるなら、森林法の合法性の要求事項と、グローバルなスタンダートになりつつある森林認証の基準の関係を議論していく意味は大きいと思います。(この報告の準備過程で、林野庁の担当者とも話もしましたが、「オープンの議論に期待する」とというポジションです。) この評価の客観性が問題、という厳しい指摘がフロアからありました。市町村の森林経営計画の担当者の方と一緒に作業をしたとはいえ今回の報告のABCD部分について客観性はありません。「どういう議論のプロセスが必要かという提示をしたという意味があ 今後、SGECだけでなくFSCの文書も対象とする、客観的な評価といえるシステムの検討などいろいろ課題が見えています。 座長からは、「過去に「 森林認証制度が発展していけば、森林法はいらなくなる?そんな議論も含めた基本的な制度問題を議論できる、大変有益な機会でした。。
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