消費者と森林ガバナンスを結ぶ森林認証システムー日本における現状と課題(2021/6/15)

6月2日は、午前中一般社団法人緑の循環認証会議SGEC評議委員会が、午後はNGO森林認証協議会FSC通常社員総会が開催されました。

私は午前中は会議の座長、午後は一会員として、日本の二つの森林認証を管理する団体の年度の事業を総括する会合に出席しました(両方の会議に出席した人は他にはいないかな?)。

森林認証制度といえば、各国の森林の管理をするという課題を、行政でなく市民と民間団体が管理するグローバルな仕組み!長年積み重ねてきた森林法による我が国の森林管理のシステムが、グローバルな目からみてどんな課題を抱えているのかな?ということがわかる、興味深いテーマなので、このサイトでも関心をもって追いかけてきました。

森林認証についてのメニューページ

東京オリパラ大会に向けた新規建築国立競技場が、各都道府県の認証森林由来の木材をもとめるなど、森林認証を巡る大きな環境の変化のもとで、可能性と同時に持ち色んな課題が気になりなったので、情報を整理してみます。

(日本の森林認証を巡る進展の動向)

下の図は、認証された森林の面積と、COC(加工流通業者の分別管理責任)認証された事業者数の推移です。会議に出席してから、パフォーマンスを示す2つの指標について双方の数値を同じ表にまとめたものがないようなので、作成してみました(面積については森林・林業白書に19年までのものが掲載されていますが、最新版でCoCがあるのは勉強部屋だけ!(たぶん))。


データの出所:FSC https://fsc.org/en/facts-figures  SGEC 緑の循環認証会議暦年の会議資料

認証された森林はあわせて2583千ha(2021年4月現在)となり、日本の森林面積2501万ha(新森林・林業基本計画)の10.3%、1割を超えました!

そして二つの組織別にみると認証森林はSGECが進み、FSCは停滞。そして、COC認証企業の方はFSCが進み、SGECは停滞しています。

二つの組織の方々と話をしてみて課題を探ってみました。

(SGECの森林認証面積拡大の背景)

SGECの森林認証面積の拡大の背景は、東京オリパラ木材調達で、森林認証材が優先され(持続可能性に配慮した木材の調達基準)、また、国立競技場の建設過程で47都道府県の森林認証材利用するという方向になり(国立競技場の軒庇)急きょ森林認証材の拡大が進んだことです。

施行を請け負った会社がSGEC材を調達することとなり、「これまでに森林認証材を持たなかった県も、林野庁、地方自治体、地元民間企業などの協力により、このたび全都道府県で認証森林が確保されました」とされています(新国立競技場で47都道府県のSGEC認証林からの木材が調達されることに決定)。

ここで、ポイントになるのが、第三者の認証機関が認証する森林認証のプロセスの中で、地方自治体などの行政機関がどのような、関係になっているかです。その一つの形態が、グループ認証という制度です。

(グループ認証の課題)

SGEC-FM認証(森林認証)事業体リスト(2021年3月31日現在)をみると、森林認証の取得事業体の欄に「〇〇地域森林認証会議」といった名称がたくさんあり、その行には「グループ認証の参加者」という列に、沢山の森林組合などが並んでいる場合があります。SGEC認証森林216万ヘクタールのうち、半分以上の112万ヘクタールが「グループ認証」です。

通常、森林認証機関がある森林を法的に管理する責任をもっている森林所有者に対して、森林の現状と経営方針とその実態をチェックして持続可能性を確認して認証するという手続きですが、森林所有者が小規模で単独では認証をとるための手続きが進められない場合、グループリーダーが地域内の森林所有者をまとめて、認証機関との手続きに対応する、という仕組みです(SGECグループ森林管理認証の要件,FEC4森林管理グループ認証).

具体的に視てみましょう、SGECの〜信州カラマツの故郷〜 佐久森林認証協議会 というサイトが面白いです。佐久市長が会長、11の市町村が持っている市町村有林を25千ヘクタールをまとめて認証をしています。佐久市の関連ページに理念と基本方針、管理運営マニュアルなどの文書が公開されています。

ただし、その他のグループではその内容がネット上では十分に公開されていないところが多いです。森林認証の場合、基本となるのは認証機関が森林の管理所有者をチェックする仕組ですが、グループ認証の場合認証機関がグループリーダーである協議会をチェックし、グループリーダーが加盟者をチェックするという二段階になっています。あるいは三段階?もあるようです

システム構築する人は一生懸命でも、現場段階では海外でできた面倒くさい森林認証システムが何のことか解らず、ただ、持ってきた書面にハンコをおしたら手続き終了、といったことにもなる心配があります。

いずれにしても、小規模な所有者が多い我が国の森林管理には不可欠の、このグループ認証システムです。急拡大したこのシステムを信頼性を確り守っていく体制が必要でしょう。

(FSCのCOCが活性化していますが?)

さて、もう一つのFSCは前述のように認証森林は増えないけれど、COCがどんどん拡大中。

FSCとPEFCのCOCの企業の数の違いは、消費者が目にする紙製品や消費財の紙パッケージに記載しているマークの違いに関係があるんだそうです(とある、認証機関の方がいっていました)。

サントリーグループ、FSC認証を取得した商品梱包用段ボール包材を順次採用

マークをみて消費者がFSCマークとPEFCマーク、何もないマークのものを選別しているのかというの、そうではなく、消費財を製造しているメーカが投資家を視て選別をしているんだそうです。

ESG投資といった市場の動きに対応して考えると、FSCの方がPEFCよりも強いんだそうです。

FSCジャパンセミナー「SDGsに貢献するFSC−環境・経済・社会のバランスを保つ森林管理の現場から−」

それでは、FSCの森林認証が増えないのはなぜ?市場のパワーが森林所有者に届いていないのでしょうね。

(二つの仕組みの原動力)

以上のように、行政のパワーを背景としたSGEC、市場のパワーを背景としたFSCといった姿がみえてきます。

森林管理という難しい課題を、消費者とともに取り組んでいこうという、森林認証制度の築いてきた土台の上に、どのような構築物を造っていくのか?、今後とも関心をもってフォローしていきます。

sinrin1-20<JFcertkadai>

 

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