FSC創設30周年ー記念フォーラムと30年のあゆみ(2025/1/1)

11月29日都内でFSC創設30周年記念フォーラムが開催されたので、出席しました。

こちらに報告ページがあります→FSC 30周年記念フォーラムを開催

左の写真はー左からFSC国際事務局 特使キム・カールステンセン氏、林野庁 長官青山豊久氏、環境省 自然環境局 局長植田明浩氏、FSCジャパン代表太田猛彦氏

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熱帯林を中心とした森林のガバナンスがうまくいかない。森林条約のような政府主導の解決策がうまくいかず、環境NGOなどが中心となって森林の現場と消費者をつなげる、森林認証システム。勉強部屋としても重要な話題として追いかけてきました。

日本における森林認証制度の展開方向についてのメモ(2002/1/11)
FSCの日本規格策定ー勉強部屋とFSC(2019/3/24)
FSC森林認証と勉強部屋の長い関係

このページでは、会場でいただいた、「FSC30年のあゆみ」という冊子(ネット上に公開される見込みとされますが12月27日現在まだです)などを中心に、30年の歴史の中でインパクトがあった点を紹介します。そして後半は森林行政とFSC関係について考えたこと

((「FSC30年のあゆみ」から))

(FSC始動期)

FSC国際事務局T.シノット初代事務局長が語るFSC始動の3つのきっかけ:

1)1960年代から熱帯林問題の不安を気にする評論・批判はあった(英国においては・・)が何も変化が生まれなかったので・・・1980年代後半、グリーンピースはブラジル先住民族代表とともに大手小売店に入り、ブラジル産マホガニーでできた家具を「押収」・・・マスコミに報道。
2)1988年ITTO(国際熱帯木材機関)に英国が調査を提案したが・・・否決!!
3)英国の熱帯木材輸入業者 (Ecological Trading Company)が供給元の選定基準を独自に作成する作業を始め、多くの欧州NPOと米国の一部団体も参画して、その作業を進めた。→FSC設立へ

以上:FSC設立過程は、環境ビジネスと環境NGOの連携がエンジンでありーガバメント(ITTOなど)は枠外

TS氏の記事の最後の言葉「予期せぬことだったが、現在では多くの新しい認証制度がFSCの例にならい、利害関係者や組織間の幅広い協議に基づく、マルチステークホルダー基準を策定している。このように、FSCは進化を続け、影響をあたえつづけており、今後ともそれは続ていくだろう。

(日本でのFSC草創期)

FSCジャパン前澤初代事務局長が語る日本での草創期3つのポイント

1)WWFジャパンに勤務していたら、1996年に日本でFSCを普及するよう言われた。海外の関係者は「日本は環境意識が欧州に比べると20−30年遅れているので、FSCを広げるには覚悟がいる」といわれたが、セミナーを始めるなど・・・自治体が関心を持ってくれたのが良かった。
2)2つの方針、A)FM認証をCOC認証より先に広める、B)複数の認証機関をつくる、で取り組んだが、速水林業から申し出があり、専門家3人をさがした。「最高の人選だ」とほめられた。速水林業の結果がマスコミに広がり、次のステップに
3)購入者・山林所有者などを含む推進団体山笑会を作って活動展開(勉強部屋でも紹介しました)、2026年NPO日本FSC設立の母体となった

「日本の持続可能な森林管理の作成具体的基準のが成果。」

やりのこしたのは、海外への含めて情報発信。「誰もが信頼する根拠の明確な認証制度が広がることを願っています」

(日本の林業とFSCのこれまでの、これから)

最初のFM認証をとった速水さん、その時に審査委員だった白石さん・富村さん(最高の人選と褒められた3人にうちの二人)、そしてSGSジャパンの北村さんの4人でディスカッション。(内容がたくさんのなので、FSCが日本の森林現場に与えた影響などを中心に)

(マネジメントの姿勢)
認証にまじめに対峙しているところは、森林管理が主体的になった。補助金中心ではなく、どういう森林をつくりたいのかという意識を皆で共有しながら、そこに補助金を当てはめていく!

(FSCは労働安全には間違いなく貢献)
初めのころはゴム付き手袋、地下足袋でチェーンソーを振るっていました。けがも多かった。安全靴は歩きにくいと言われ、普及に時間がかかりましたが、今では普通になりました。

(FSCの規格にジェンダーについての基準)
以前は男女差別についてインタビューしていた女性職員が段々とマネジメント候補に上がってきて、審査にも徐々に深く対応されるようになってきているのを見て、FSCの効果や時代の変化を感じます。機械化によって、今は女性も随分林業の現場に入ってきやすくなりました

(環境意識も高まり)
河川の際までスギを植えるのではなく、何mは広葉樹にするという「バッファゾーン」を設けるのはFSCから始まった。
カリフォルニアでは100mですと言われましたが、そんなことをしたら、日本では植えられなくなってしまう。・・・、樹高分にしようかということになりましたよね。

(FSCならではの基準は)
一定割合以上の保全地域を求めるのはFSC特有ですよね。
高い保護価値(HCV)もFSCならではです。HCVは元々FSCが生み出したコンセプトですから。
認定機関の厳格さもFSCの特徴だと思います。

(未來に向けてー最後に伝えたいことを)
〇森林認証の原点を忘れない、それだけです。
〇自分が考えて林業をする入口、そのチャンスを与えてるのがFSC です。グループでやる場合は、FSC という基準を使って皆で共通の意識を持って森林を管理していける。はなかなかない便利な道具ですが、使い方を知らないと意味がない。生物多様性や適切な森林管理に価値を見出してくださる方々と連携する、そのネットワーク構築にも役立つのではと思います。
〇FSC 誕生から30 年経って、初期のころに推進してくださった方々が引退される時期になってきました。これまで続いてきた取り組みが次の世代、若い方々に引き継がれるよう、認証をうまくツールに使っていただきたいと思います。
〇森林関係者には、生態系を通じた防災・減災とか、2030 年までに陸と海の30 %以上を健全な生態系として保全しようという「30by30 (サーティー・バイ・サーティー)」などの社会の動きを知ってほしい。森林の価値を感じて、総合的な位置づけで森林を見てほしいと願っています。私は林業は産業であって、かつ公共事業だと言っています。なぜ、補助金が付いているのか。それは、社会に貢献しなければならないからです。森林が防災や生物多様性保全、地球温暖化防止などの社会課題解決に貢献することを、森林関係者は自覚してほしい。森林認証はそのよいきっかけ、ツールになると思います。

以上「FSC30年のあゆみ」という冊子の一節です。まだまだ、関係企業の先行事例などたくさんの内容がふくまれていますので、どうぞネット上からダウンロードしてください。(少々おまちください)

((森林行政とFSCの関係)

国際的なFSCが立ち上がる経緯を記載しましたが、:環境ビジネスと環境NGOの連携がエンジンでありーガバメント(ITTOなど)は枠外が、出発点でした。

持続可能な森林のガバナンスを目的とするFSCと行政との関係性は?この問題を考えてみましょう。

イベントには、林野庁長官が来席して冒頭に以下のような挨拶をしています。

         祝辞: FSC設立30周年に寄せて
             林野庁長官青山豊久氏

FSCの設立30周年心よりお祝い申し上げます。
森林には、生物多様性保全、二酸化炭素の吸収・固定、国土保全、木材供給といった様々な機能があります。
これらの機能は複合的に絡み合い、相互にトレードオフ関係にもあり、これらの機能を総合的かつ高度に発揮できるよう経営していくことが求められています。
また、森林はあくまで自然環境の構成要素ですから、その経営は、所在する地域の特性や長期の時間軸を意識しながら、順応的に行っていかざるを得ません。
こうした森林の機能の多様さ、地域性、時間軸の長期性などが、森林経営を難しくしていると考えます。こうした森林経営の難しさに対して、一定の物差しを与え持続可能なものにしていく貴重なツールが森林認証であると考えます。
今日、地球温暖化防止や生物多様性保全に果たす森林や木材の役割は、国際的にも国内的にもますます重要になっています。林野庁では本年3月に「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」、「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」をそれぞれとりまとめ公表しました。これらは、持続可能な森林経営と木材利用を進めようとする林業経営者や建築事業者の経営の指針になるものであり、森林認証制度とも親和性の高いものと考えます。
貴協議会の活動がますます活発となり、今後さらに発展されることを心より祈念いたします。

森林認証制度が、課題の多い森林のガバナンスをはかる道具として、重要な働きをしているので、敬意を表し今後の発展を祈念します!ですね。

林野庁のサイトでも、主な森林認証の概要という簡単な解説ページを置いています

では発展を願うだけでなく、具体的にその発展のために、森林政策が森林認証を応援したり、逆にFSCが開発したツールを森林政策の進展に利用したりしていくといった、もう一歩前進させる連携方策はないのでしょうか?

(森林経営計画策定手続きと森林認証取得過程)

いままで、勉強部屋で思いついたのは、林野庁がやっている森林経営計画制度と森林認証制度の連携です。

左の図は、2001年(の12月に開かれた林業団体の森林認証制度検討会というイベントで)紹介した、FSCの認証基準と森林施業計画(いまでいう森林経営計画)の認定基準お関係を示した図です。

日本における森林認証制度の展開方向についてのメモ(2002/1/11)(2024/12/22加筆スライドを表出)

FSCの10の基準を1)経営の社会的責務、2)森林の多面的機能の継続的な発揮、3)マネジメントシステムの運営、の三つに分けてみると、1)はほとんどクリアしているが説明ができていない、2)も殆どクリアしているが、少し認定基準に+が必要(保護地区の設置など?)、3)が殆どできていないので大変ということを考えてみました。

その後、勉強部屋としても追加の検討などしていませんが、経営計画策定段階で、所有者が次の一歩森林認証を取得する可能性などを議論できるプロセスを策定することができるのでないか、と考てみたらどうでしょう。

(CW法とCOC認証の関係)

その他の連携の可能性は、クリーンウッド法手続きとの関係ですね。クリーンウッド法の登録事業者が伸び悩んでいて、一つの課題になっていますが、COC認証を取る場合、CW法の登録事業者になっていることは重要なステップいなるんでないでしょうか。CW法登録の手続きをするコンサルが、FSCの認証過程にも参加しているところがありますので、いろいろメリットがあるシステムを作り上げられるのでないかと思いました

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ごめんなさい、思い付きです。

Sinrin2-18 <FSCJkijun>.

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