森林管理の社会化における認証制度に関する研究(2003/4/13) |
○ 小嶋睦雄(静大農) 土屋保文(静大院農) 所有の社会化、費用負担の社会化による森林管理、あるいは流域連携、上下流連携などによる森林管理などが議論されているが、何れもその成功の要素に合意形成の手法が重要であると思われる。合意形成は森林所有者と地域住民、上流域と下流域によるものなどが想定されるが、それらは未だ十分に合意形成が達成されているとは思えない。 そこで昨年の、流域連携における森林認証制度に関する研究(第13回 日林学術講 2002)において、森林認証制度には、認証取得費用、文書化、専門的技術等の問題があるものの、流域連携における合意形成の手法としての可能性を指摘した。そこで今回、この仕組みを推進、実行する機関として流域活性化センターを想定した。しかし、現在の流域活性化センターは、その性格・位置付けが不明確で、予算の裏付けが無いこと等から十分に機能しているとは言い難い状況である。そこで、その現状と課題を明らかにし、森林認証制度を担う可能性について考察する。 全国158流域の流域活性化センターを対象にアンケート調査を行った。実質配布数は151件であり、回収は117件、回収率は78%であった。 質問事項は、 @組織について?予算・職員・活性化協議会 A活動内容について?情報発信・活動内容 B森林認証制度について?関心・取り組み C活性化センターの今後について?予算傾向・機能強化 主なアンケート結果は以下の通りである。 予算規模は、100万円以下が16%、100?500万円が59%、500万円?1000万円が21%、1000万円以上が4%であった。 IV. 考察 調査の結果、流域活性化センターの問題点は、財源、権限がないことに集約される。この問題の原因は、現在の流域活性化センターの役割・活動内容が都道府県の林野行政との違いを明確に出来ないところにある。そのため、予算の確保が難しく、事業が制限され、さらに予算が減額されるという悪循環が起きており、このままでは組織の維持も難しい状況である。 さらに現在の流域活性化センターの運営にも問題点がある。それは、意志決定機関であるセンター、審議・協議機関である活性化協議会に流域住民代表あるいは建築関係者などが構成員になっていない事例が多く、組織内での合意形成が構造的に不可能である。流域活性化センターが誕生した背景には、流域管理システムの推進があった。流域という単位は森林からの利益を提供するものから享受するものまでが含まれ、森林から加工・流通・販売の垂直統合を想定した際にも理想の単位であるとされている。林業活性化と合意形成の視点、両方にとっても流域管理システムの推進は有効であると思われる。しかし、林業関係者のみで構成される事例が多い現在のセンター・協議会の意志決定では、林業関係者の連携のみしか望めず、その先の消費者との接点がない。合意形成の推進の視点からでも、意志決定機関の構成員に下流までの利害関係者が含まれ、発言権があるべきである。それによって流域活性化センターは都道府県の林野行政との明確な違いを生むことが出来る。また、利害関係者の含まれる意志決定機関の存在によって信頼性の確保が可能となる。森林認証制度を合意形成に利用する際の推進組織として流域活性化センターが存在する意義が高まるはずである。 森林から流通・加工・販売までの連携を整備する目的を実現する重要な現代的な取り組みとして、認証制度が全国的に普及した際に認証制度による差別化を維持するためにも、地域材認証制度を組み合わせる必要があると考える。現在の地域材認証制度は、産地保証ではなく品質保証である場合もあり、森林経営と加工が結びついていない事例がある。認証を受けた製材工場が、他の地域からの木材を加工して認証基準を満たす品質を確保していれば地域材として販売が可能な状況である。このままの地域材認証制度では、地域の森林経営者にメリットがない。そこで、流域林業活性化センターが品質とともに流域の木材が使用されていることを認証することによって、森林経営者、加工・流通業者、販売までの連携が可能になる。今回の調査においても今後重点を置く必要がある事業として最も多かった回答が流域原木安定供給事業であったため、権限とシステムの連携・整備が進めば、流域林業活性化センターを中心に進む可能性はあり得るのではないだろうか。 最近の動向として「平成の大合併」が流域林政や森林組合合併に大きな影響を与えている。合併によってセンターの組織や分担金の減少、現在の流域の区域と市町村合併後の変更など先行きが不透明である。今後の市町村合併の動向に注目する必要がある。
|