持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 041
2003年1月1

690部発行

謹賀新年

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。  藤原

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目次

フロントページ:2003年新年のご挨拶
地球環境問題と森林の20年ーーー 「林業技術」誌2月号の小論
FSC森林認証制度の国内基準案および認証取得に向けた課題の検討会
「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」報告書


フロントページ:2003年新年のご挨拶new(2003/1/1)

あけましておめでとうございます。
                                         
                
 
@循環社会の中での森林の役割、A森林管理の国際化と我が国の森林の関係に焦点をあて、行政と市民、研究と業界など関係者のコミュニケーションの結節点となるべく小ホームページを立ち上げてから、3年目になりました。

おかげさまで、40号を超えたニュースレターの発行部数は700部近くなり、林業行政の担当者、森林科学の若い研究者や建築関係者など幅広い分野で活動される方々から支持をいただいていることに心から感謝申し上げます。

今年は、小ホームページの双方向のコミュニケーション力を強化し、海外向けの情報発信力を向上させるため、イオン環境財団のご支援を得て、本ホームページの抜本的改定を予定しています。

ますますのご支援をお願いいたします。皆様のご多幸をお祈りします。

2003年元旦

「勉強部屋」管理者 藤原敬


地球環境問題と森林の20年ーーー 「林業技術」誌12月号の小論new(2003/1/1)

1万名を超える会員と70年の歴史を持つ日本林業技術協会の機関誌「林業技術」の12月号に「地球環境問題と森林の20年」という小論が掲載されました。地球サミットから10年たってヨハネスブルグサミットが行われましたが、10年間を総括し、熱帯林の破壊から森林条約の設立へと問題提起された森林政策の国際化の課題の展望を語ろう、という問題意識で執筆したものです。今後我が国の林業技術者としては「エコマテリアルとしての木材生産機能を保全する国際的課題」という形で、この問題に取り組んでゆくことが重要であるとの主張です。

12月中旬に刊行されてから10数年間お会いしていない大先輩から電話をもらうなど「林業技術」の、それも「論壇」というページの影響力の大きさを再認識しました。

自分で設定した課題が大きすぎたことや、関連する話題がてんこ盛りになっているため、ちょっと小難しくてよくわからないとのご批判があるようなので(編集部からラフな写真という依頼があったので、我が家の愛犬とのツーショットを載せましたが、「あれだけはよかった。」という辛辣なご意見もありました(^_^;)。) 、あらすじを整理しておきます。

ご関心のある方は本誌をご覧ください。
地球環境問題と森林の20年
ー森林管理国際化とエコマテリアルとしての木材問題
林業技術 N0.7202002.12

1 地球環境時代の森林

(1) 限界に達した地球
小サイトで紹介した、南極の氷柱のco2濃度のグラフを林業関係者に紹介。(これだけでも小論の意味があると思っています。)
循環社会に向けた、パラダイム変換の必要性

(2) 循環社会についてのハーマンデイリーの三原則と持続可能な森林経営
循環社会に向けて世銀の経済学者ハーマンデイリーが三つの原則を提示しているが、循環社会の中で木材の役割や持続可能な森林経営の国際的課題が重要であることを示している。(この点は小論のオリジナルなポイントだと思っています)

2 地球環境問題と森林の国際化の20年

(1) 地球環境問題としての森林
地球環境問題の主要な課題に森林が幅広く関係している。

(2) 森林の国際化を巡る20年
気候変動条約、生物多様性条約で森林に関して議論されている中で、残った部分は何か。(ちょっとこの辺が駆け足になっていてわかりづらかったかなーと反省)

3 森林管理国際化の今後の課題


(1) エコマテリアルとしての木材生産機能を保全する国際的課題
貿易制限につながる課題であり政治的には困難な課題だが、日本が議論を提起しなければ・・・

(2) 森林管理国際化としての森林認証問題
資源国が国際的な森林管理の必要性を受け入れるのは歴史的にいっても消費者の圧力であり、森林認証などもその一環。(重要な点だと思います)

4 おわりに
木材輸入大国である我が国の林業技術者の役割は重要

FSC森林認証制度の国内基準案および認証取得に向けた課題の検討会new(2003/1/1)

12月11日から13日にかけて北海道美幌町森林組合を中心に表記の会が開かれ小生も出席しました。メンバーはFSC側から主査の富村さん、WWFの前澤さん、調査を主催する日本林業技術協会の馬淵さん、林野庁から平井さんなどで、北海道側からは道庁や森林総研北海道支所、美幌町、同森林組合などの関係者で現地調査は10台ほどの車列となる大調査でした。

道東のカラマツ林に取り組む美幌町森林組合は毎年約10億円の取扱高の中で1億数千万円の事業利益を計上する優良事業体。FSCの模擬認証に取り組む姿勢も真剣そのものでした。

二日間にわたる書類審査と現地調査の結果、FSCの原則にてらして、富村さんから講評がありました。[
組合長や専務が熱っぽく語った経営の理念がしっかりと文書化あるべきである」(原則7「適切な管理計画の文書化」)などいくつかの条件が付けられるが、認証されるだろう、との結論でした。

調査の過程で現在公開され検討中の国内基準修正草案3に基づき、様々な議論がありました。プリテストをやりながら日本基準を検討するという過程での議論は、二つの意味があると思います。一つは、世界中の持続可能な森林経営の運動の中で作られてきたFSC原則が日本の森林の現場に新鮮なインパクトを加えるという点です。もう一つ重要なのは、FSCが世界中で展開しているとはいえアジア地域は空白に近い盲点で、アジア地域の現実からFSCの基準を豊富なものにしてゆく重要なフィードバックがあるということです。以下のような論点が、我が国にとってもFSC側にとっても重要な課題だと思います。

第1に、FSCの原則の中で厳しく評価している、外来樹種を使った造林という、立場で、道東のカラマツ林をどう評価するか。
第2に、資源造成期にある北海道の林業から見て、「1994年以降の造林地の認証を基本的に対象としない」としている、FSCの立場をどう見るか
第3に、FSCの先住民の権利とアイヌ問題。
第4に、ゾーンニングなどの行政側の施策と認証基準のリンクの可能性
第5に 資源管理者と所有者の契約関係
関連資料
北海道における森林認証制度への取組状況
FSC原則基準の解説本原稿ー豊かな森づくりのための世界的な取り組み

「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」報告書new(2003/1/1)

 環境省が、設置していた「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」(座長:山口光恒慶應義塾大学経済学部教授)の報告書がまとまり、公表されました。

北米自由貿易協定などの中で行われてきた各国が行っている貿易自由化に関する環境影響評価の事例を分析し、我が国での導入に向けて、その意義や手法についての基本的考え方を提示したものです。(概要、本文の入手は環境省関連サイトから) 

林産物貿易の関税撤廃の影響について米国が報告書を公表しており、それについての検討も我が国で行われています。貿易自由化を環境の観点から総合的に判断する手法として事前の評価が制度化されることは好ましいことだと思います。

少し気になるのは、影響評価の目的は、自由化のプログラム自体の是非を論じるのではなく、その影響を緩和するための措置を検討するため、と、限定を加えていることです(11ページ、27ページ)。暮れの27日を期限として意見募集をしていましたが、小ホームページを管理している立場で、この点について簡単な意見を提出しておきました。(提出意見

藤原敬 
email mailto:takashi.fujiwara@nifty.com
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