持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 040
2002年12月11

670部発行

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。  藤原

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目次

フロントページ:生物多様性条約と気候変動枠組み条約
創生から発展への転換期ー「緑の列島ネットワーク」通常総会から
住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案


フロントページ:生物多様性条約と気候変動枠組み条約new(2002/12/11)

12月2日と3日森林総研で森林の生物多様性に関するシンポジウムが開催されました。招待講演が放送大学の岩槻邦夫先生・東京大学の樋口広芳先生、森林総研の関係研究者が総出演という催しで総研の大会議室に人が入りきれないような盛況でした。ひっそりとしていた生物学の研究が、この10年ほどの間に「生物多様性の保全」という地球環境の中心課題を背負うこととなって、間違えなく活気を帯びてきたということだと思います。概要はこちら。ただし、一般の方々の関心はどうでしょうか。

シンポジウムに引き続いて第六回生物多様性条約締約国会合の報告会が開催され、同会合に森林総研から出席した北海道支所の河原孝行さんが報告しましたが、前座に小生が生物多様性条約の概要などについて小さな報告をしました。そのなかで、前々から気になっていた、生物多様性条約と気候変動枠組み条約の活性度の違いについてあえて触れてみました。

紹介したのは朝日新聞の記事データベースから作成した次のグラフです。


二つの条約に関する記事の掲載頻度を1990年から調べ12年間の経年変化を示したものです。総件数は気候変動枠組み条約が1737回生物多様性条約が293回です。これには1997年に京都議定書を作成した第3回締約国会合が日本で開催されたことが大きく影響しており、この年だけで前者の記事が847回もあるのですが、それを差し引いても、年を経るに従い掲載頻度の差が開いてくることが気になります。私の考えでは、この違いは、気候変動枠組み条約が京都議定書で期限付きの数値目標を設定することに成功したのに、生物多様性条約がそれを達成していないということに起因していると思います。(小サイト内関連「生物多様性損失指数」と生物多様性条約生物多様性条約の新たな森林に関する行動計画に寄せて

もちろん圧倒的な生物多様性資源を保有する途上国の主権を制限するという南北問題の難しい国際政治問題が絡んでいるわけですが、生物多様性研究の進展がこの壁を乗り越える原動力になることを期待します。

(このことを、岩槻先生、樋口先生の前でお話ししましたが、新聞の記事の掲載頻度で両条約の活性度の違いを評価するという手法自体に問題がある、とのご指摘を受けたことを紹介しておきます。)

報告会でのプレゼンテーションのファイル(ppt)はこちら

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創生から発展への転換期ー「緑の列島ネットワーク」通常総会から(2002/12/11)

12月7日「緑の列島ネットワーク」の通常総会が江東区東陽町の関東森林管理局東京分局で開催されたので、小生も出席しました。(何十回も行ったことがある元東京営林局に行くのは4年ぶり。すっかり周辺が変わってしまって迷子に(^_^;)。

「近くの山の木で家をつくる運動」を進めてまる2年たち、各地にネットワークは続々と誕生し、行政が「顔の見える家づくり」を政策に取り入れるようになってくるという大きな変化が生まれてきた。その反面、外部で広がる活気が緑の列島ネットワークの活動の活性化に十分つながっていない面が指摘されました。

「山と木、木造住宅の専門家といえる人をたくさん輩出し、山と町を結ぶ人材を育てていくこと」を目的として各地で行われているモックスクールゼミは各地で満員の盛況で、住宅建築用木材品質基準づくりは「木造の多様性」を前提とした新たな基準作りに挑んでいます。その一方で本来のネットワークの機能であるきめ細かな情報提供がうまくなされていないという指摘がされていました。事務局体制の問題などがあるようですが、何をやっても新鮮な創生期から将来の活動モデルが試される発展期への転換の重要な時期にさしかかっているところのようです。ますますの発展を期待します。

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住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案(2002/12/11)

12月7日の緑の列島ネットワークの総会で、小生は、「住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案」という報告をしました。ウッドマイルズは、我が国の住宅で使用されている木材が世界中でも特異に遠距離から運ばれており、木材の輸送過程で製造過程の何倍ものエネルギーを消費していることに着目し、住宅に使われた木材の総輸送距離を表示しすこしでも輸送距離を減らすことに貢献しようというものです。

小サイトでも紹介した小論「『ウッドマイルズ』(木材総輸送距離)と地域材利用住宅」(木材情報2002年8月号)(概要)を説明しながら、これに基づく活動モデルの私案を紹介しました。
参加者から協力の申し出や、暖かいコメントをいただきました。
今のところ思いつきの域を出ないものですが、ご意見をいただきながら、具体的な話にしてゆきたいと思います。

プレゼンテーションファイルpptダウンロード
「『ウッドマイルズ』(木材総輸送距離)と地域材利用住宅」(木材情報2002年8月号)pdfファイルダウンロード

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藤原敬 
〒356-8687 独立行政法人 森林総合研究所
電話 0298-73-4751 FAX 0298-73-3795
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