持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
../
ニュースレター 032+
2002年4月11日
534部発行
このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。 藤原
サイトマップへジャンプ、ホームページへジャンプ
ニュースレターからのリンクの不具合がある場合は、直接ホームページへジャンプしてからご覧下さい。
フロントページ:山笑会と「森林ビジネス革命」(2002/4/11)
森林条約への遙かな道ーUNFF2の結果(2002/4/11)
FSC認証虎の巻ーコンサルタントの認証マニュアル公開
グリーンピース創設者の森林認証批判(2002/4/11)
「建築知識」誌の「国産材」特集(2002/4/11)
フロントページ:WWF山笑会と「森林ビジネス革命」(2002/4/11)
(待望の山笑会)
FSC認証森林をサポートする国内の企業グループ「山笑会」が3月中旬に発足しました。さっそくホームページでの情報発信がはじまっています。まだ工事中のページが多いサイトですが、しっかり検討された結果であることがわかる「会の趣旨」や「規約」などベースとなる情報が入手できます。認証の輪が広がるためには、自社の環境への取り組みをアピールするメセナの水準から脱皮し、認証木材の販売促進が自らの利益に直結する企業グループの力が大切だと思います。これからの発展を祈ります。
(森林ビジネス革命)
山笑会の先行事例が描かれている「森林ビジネス革命」(築地書館)という本を最近読みました。森林認証制度など消費者の環境意識への高まりを自らのビジネスチャンスとしてとらえる、米国の木材関連業界のたくましい姿です。産業界が本気になると環境問題が動き出すというのは、エネルギーショックの時の省エネ、自動車排気ガス規制、最近の地球温暖化などで体験済みです。この本はその重要な点にスポットを当てた好著です。(四月号の「林業技術」誌の書評欄に小論が載っています) さて山笑会が我が国の森林ビジネス革命の旗手になれるか。道は厳しいけれど期待したいところです。
(対象とする認証制度)
冒頭に山笑会を「FSC認証森林森林をサポートする企業グループ」と紹介しましたが、正確に言うと「『信頼のおける森林認証制度』を推進する」(規約第一条)というのが正しい表現です。信頼のおける森林認証制度には4つの基準があり、その4つを現時点でクリアするのはFSCしかない、将来その基準を満たすものがあればオープンだ(山笑会趣旨)という主張です。苦心された表現だと思います。4つの基準については趣旨をご覧頂くとして、その中で「世界中の全ての森林を対象にした・・認証」という点がとてつもなく高い参入障壁となっています。輸出を念頭に入れたものでなく我が国の市場を相手にした戦略でしょうから、我が国の手の届くところで展開されるローカルな認証の動きなども視野に入れていただけると大変ありがたいと思います。
森林条約への遙かな道ーUNFF第二回会合の結果(2002/4/11)
10年前の地球サミットでの国際的な持続可能な森林経営に向けた熱い思い。これを実現するメカニズムを追い続けてきた、国際的な議論の場は、IPF(1993-1997)、IFF(1997-2000)、国連森林フォーラム(UNFF:2001-2005)と引き継がれてきました(「地球サミット森林部分のフォローアップの状況」新規改訂参照)。UNFF第二回会合は閣僚会合をともなった大きな会合で3月4−15日ニューヨークの国連本部で開催されました。今回のメインテーマは8−9月に開催予定のヨハネスブルグサミットにむけてのメッセージで「持続可能な森林経営を国際的政治課題の優先事項として位置づけること」などを内容とする閣僚宣言を採択しました。(閣僚宣言本文、会議の概要林野庁プレスリリース)
コスタリカで予定されていたものが財政的な都合で急遽国連本部に場所を移して開催されたのは、フォーラムの置かれた状況を象徴しています。地球サミットで採択された二つの国際条約。気象変動枠組条約と生物多様条約ではその後の締約国会合で森林についての議論が進展しそれぞれの条約で森林についての国際的な規制が実施されてゆく方向にあります。先般来日したグリーンピース本部の森林担当者 クリストフ・ティ−ズ氏が森林総研を訪れ話をする機会がありました。グリーンピースは地球サミットへ向けての森林条約への流れをつくった国際的な環境団体の一つですが、今回来日目的は生物多様性条約での森林行動計画へのコンセンサスづくりでした。何で森林条約でないのだという議論をしましたが、現時点での具体的な展望が見いだせない、という回答でした。
いずれにせよ「森林の急速な減少や荒廃は続いており」(閣僚宣言パラ4)生物多様性など一部の機能だけでなく包括的な観点での規制が必要なことは間違えないことで、その条約の裨益者は日本の林業関係者であることも確かなことだと思います。すこし長い目で戦略的な対応が必要だと思います。
小ホームページでも森林条約の関係資料の整理をしてゆきたいと思います。
FSC認証虎の巻ーコンサルタントの認証マニュアル公開(2002/4/11)
FSCの森林認証は本部が作成している「FSCの原則と規準」に基づいて行われますが、公開されているこの原則は基本的精神が書いてあるもので、それだけで自分の山が認証されそうか判断することは困難です。実際の認証作業はFSCに認定されている認証機関が自ら作成したマニュアルに基づいて行っています。英国に本部を置くFSC認証大手のソイルアソシエーション社が認証時に使用している社内基準が日本のパートナーであるアミタ株式会社によって和訳されています。FSCの10の原則と規準ごとにソイルアソシエーションが設定している内部規準、チェックリスト、それぞれの項目の配点、認定決定方法などが記載されています。これを見ると、認証を受ける側ではFSCの課しているハードルがどの程度のものかわかって大変好都合です。こういうものが公開されていることがFSC認証の強みなのかもしれません。認証を検討されている方は一読をお勧めします。
配布希望の方はご連絡下さい。
(この件についてはは林野庁計画課平井さん、アミタ株式会社井ノ口さんにお世話になりました)
グリーンピース創設者の森林認証批判(2002/4/11)
3月26日付のロスアンジェルスタイムズ紙に掲載された森林認証を批判する評論記事が波紋を呼んでいます。「木材は環境に優しい資材なのに、なぜ木材だけがグリーンのハードルを課せられなければならないのか。環境団体はグリーンなコンクリート・グリーンな鋼材を求めないのか」という厳しい指摘をしている筆者は、国際環境団体グリーンピース創設者の一人です。重要な論点を含んでいます。ご一読下さい(割と短い英文です)。
環境に優しい木材と森林認証の関係については小論の「地域認証制度の提案」も併せてご覧いただければ幸いです。
「建築知識」誌の「国産材」特集(2002/4/11)
建築工務店・設計者を対象にした建築技術の専門誌の最大手「建築知識」誌の3月号が「プロが教える『国産材』読本」という特集を組んでいます。設計者に必要な国産材の樹種ごとの基本性能、複雑な流通の解説、乾燥や加工過程の解説から、手近な入手先を集めた「国産材イエローページ」まで100ページにわたる大きな企画です。特集のキャッチコピーが「最近、施主から『国産材を使いたい』といわれたことはありませんか?安くて強くて便利な外材から、国産材を使おうという施主や設計者が急増中です。」というものでが、我がグリーンコンシューマーの動きが建築業界にインパクトを加えてきているということでしょうか。木材需要の最前線の雰囲気がわかります。
藤原敬
〒356-8687 独立行政法人 森林総合研究所
電話 0298-73-4751 FAX 0298-73-3795
email mailto:takashi.fujiwara@nifty.com?Subject=勉強部屋ニュースレター
HP ../