ニュースレター No.263 2021年7月15発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:グローバルに動く木材の需給と「小さな林業」の意味ーウッドショックでみえるもの(2021/7/15)
2.  「おかえりモネ」と木の建築賞ー第16回「木の建築賞」(東北地区)公募始まる(2021/7/1)
3.  次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林・林業基本計画を読む<続き>(2021/7/15)
4. G7サミットの森林・木材ー自然協約とは何(2021/7/15)
5.  森林投資とカーボンオフセットーある投資セミナー関心事項(2021/7/15)
6. COP26は世界の森林を保護するために貢献ーFACT対話始まる (2021/7/15)
7. 持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/6/15)
8. 勉強部屋とビジネス関係者ー勉強部屋ニュース263編集ばなし(2021/7/15)

フロントページ:グローバルに動く木材の需給と「小さな林業」の意味ーウッドショックでみえるもの(2020/7/15)

木材需給逼迫により木材値段が急騰!ウッドショックという言葉が一般マスコミにも登場するようになっています。

木材が消えた?身近に迫るウッドショックNHK6/10
国産木材、増産に3つの壁 ウッドショック対応鈍くー山道整備・林業家の採算・建材変化日経7/1
始まった住宅値上げ、「ウッドショック」はいつまで続く(日経XTECH)6/24
オイルならぬ「ウッドショック」木材不足で戸建てピンチ朝日4/10

ウッドショックは、木材を取りまく結構大きな問題だということは解るですが、でも、木材の値段の話は、ビジネス関係者にとっては死活問題?なので、日々、必死になって情報収集をされている事案であり、勉強部屋で取り上げるのは、少し慎重に、と思っていました。

でも一般市民の関心も拡がり、セミナーなども開かれるようになってきたので、勉強部屋で追いかけてきた課題との関係で、この問題を少し考えてみました。

(ウッドショック、なんで?)

「価格高騰の背景をひと言で言うと、コロナ禍で停滞したアメリカ経済が活動を再開し、木材の需要が高まっていること」なんだそうです。(左図(出典NHK)はアメリカの木材価格)

アメリカではとりわけ郊外に住宅を建てる需要が高まってます。それに伴って木材の価格が上昇。 それに、中国の需要活発化(住宅でなく産業資材)と、コンテナ船不足(物流)の短期的な要素はこの三つ。

そして、日本の木材の購買力の低下、という少し中期的なトレンド要素が一つ。

だいたいどこの論調も同じだから、(ウッドショックとは(日経)、そうなんでしょう。

少し体系的にまとめたのが、遠藤日雄NPO活木活木森ネットワーク代表の右の図です。

第3次ウッドショック」はなぜ起きたのか(全体)(遠藤日雄さん)いただいたのでこちらに置いておきます。 NPO法人活木活木(いきいき) 森ネットワーク遠藤日雄理事長:第3次ウッドショク」はなぜ起きたのか? ーその背景と今後行方を探る(林政ジャーナリスト会議プレゼン資料(以下遠藤報告)

(対応策って有るの?)

木材の値段が上がることはいいことだ、考える人はいるでしょうが、ショックというように値段が動くことは、誰も望まない。それなのに何故、ショックというような値段の動きがあるのでしょうか?

右の図は、60年間にわたる日本の木材の価格と、木材輸入量を示した表です。(木材利用システム研究会月例研究会基調報告(農林中金総合研究所)から)

いままで木材価格のショックは、1973年第1次オイルショック、79年第2次オイルドショック;イランイラク戦争、94年第1次ウッドショック(北米の環境規制強化)、2006年第2次ウッドショック(インドネシアの伐採規制)、2020年今回のウッドショック。50年に5回の木材価格の急騰とその後の反落がありました(今回のあとに下落があるかどうかはわかりませんが、あるんでしょう)。

その殆どが海外の供給制約要因みたいですが、今回は海外の需要拡大(日本への供給阻害要因であることは同じです)。 (今回のはより複合的と遠藤報告

同じ自然資源のサプライチェーンでも鉄やアルミと言った途中に巨大な装置産業が入る場合は、その企業が需給全体を見通して安定を図るのでしょうが、木材はサプライチェーンが細かくて複雑なんで、需給全体を見通すことが難しく、(もう少し高くなるから買っておこうといった)仮需がおこる。

そこで、「木材については行政が需給をコントロースすべきだ」という理屈で、74年に日本木材備蓄機構という財団法人ができて、製材や合板の中間製品を公的に在庫して仮需などがおきないようなシステムを創りました。

それが1991年に備蓄終了し、木材総合情報センターになったのですが、10年に一度ほどのリスクのために公的備蓄を維持することが無理だったんだと思います。(ここは勉強不足なのでまた今度)

有効な対応先はない?

(輸入材主導のショックが、「国産材時代?」になると?)

「国産材時代」とはいえる状況ではないですが、国産材の自給率が拡大してきました。

そのような中で、輸入材の供給制約をきっかけにして、その情報不足で拡大した過去のショックは、今後少し局面がちがってくるのでしょうか?

国産材が増えていく局面で、そのサプライチェーンがどのように形成されるのかが一つのポイントですね。

輸入材に対抗して、高品質な材料を、安価にタイミングよく提供する大型のシステムを作り上げて対抗する、大型のサプライチェーン。国内で存在感を増してきた「大きな林業」。これがウッドショック的な場合にどんなに機能するのかは注目点です、が、少し心配。

信頼できる小さなサプライチェーン、建築関係者が山づくりを念頭にフェアトレードのチェーンを小さくても構築する、「小さな林業」。

これが一時的な需給ギャップによるウッドショックに強いことは間違えないでしょう。

左の図は、どうみるウッドショック木材調達の尺度は「価格からおなじみさんとの関係へ」木村木材木村司社長から。

右は遠藤報告の最後の1枚。

長期的視点から第3次ウッドショック後はどうなる?(どうする?)。

やっぱり新しい信頼のできるサプライチェーンの構築(SCM。でした(MEC Industryという鹿児島県の会社が例示、ローカルな会社なのかな?)。

SCM、日本木材備蓄機構以来、50年間色んな人が考えてきた難しい問題ですが 今後ともフォローして参ります。

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  「おかえりモネ」と木の建築賞ー第16回「木の建築賞」(東北地区)公募始まる(2021/7/5)

私も関わっている、木の建築賞。「いま、求められる、木の建築・活動とは」。建築関係者が森林と木材の関係について真剣に考える大変重要なイベントです。

主催者が今までのNPO木の建築フォーラムに加えて、今年から(公社)日本建築士連合会が関わり体制が変わりました((一社)ウッドマイルズフォーラムは引き続き開催協力)。

7月1日に募集開始(〆切り8月15日、エントリーは7月一杯)。今年は東北地方が舞台です

東北が対象地域というので、東北の知人に電話をてみました。まず、登米町森林組合で働く知人。(NHKの朝ドラ「おかえりモネ」の林業考証役をしています)。ひょっとして、モネが働く森林組合の事務所の片隅に、ポスターをちらっと張ってもらえないかなーなどと・・・。

「もしもし、『木の建築賞』って知っていますか?」

答え「知っていますよ!」「前回東北地区で開催したときに、当組合も関係したプロジェクトが受賞したんです」(え?)

太陽熱木材乾燥庫を活用した里山文化の創造的再興(芳賀稔/登米町森林組合)第12回2016年木の建築賞です」(えー!!!)

そういえば、モネが勤務している登米町森林組合で(6月28日放映分)木村さんが「木は乾燥が一番厄介、天然乾燥は時間が掛かり過ぎるし、人工乾燥は燃料代が高くかかる」と言っていましたが、モネは、ビニールハウスでの乾燥と乾燥機を組み合わせて解決していましたね

モネが提案した、プロジェクトが、木の建築賞に応募され、見事受賞!!?なんですね。おめでとう!!

ということで、今後自分の地域を主題とした朝ドラを検討されている方は、まず、木の建築賞に応募しましょう。

大賞でなくても受賞すれば、朝ドラ候補になれます。

募集期限は8月15日(エントリー(案件申し出)は7月一杯)です。

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次世代の森林の行方・カーボンニュートラルは?ー新森林・林業基本計画を読む<続き>(2021/7/15)

新なた森林・林業基本計画を読む
 課題1 令和の国産材時代の次の世代の山づくりは大丈夫?
ー森林のガバナンスはユーザーと連携で
 課題2 カーボンニュートラルにむけて森林と木材の政策が具体化しいますか?
ー特に木材利用とCNの関係は大切
 課題3 前計画の「林業成長産業化」と、グリーン成長・新しい林業の関係は?

新たな森林・林業基本計画(以下「新計画」といいます)は6月15日に閣議決定しました。

林野庁の関係サイト森林・林業基本計画(令和3年6月15日 閣議決定)及び農林水産大臣談話その他関係資料が掲載されています。

勉強部屋でもパブコメ版に意見を提出するなど、関心をもってフォローしてきましたが、何人の方からコメントを求められたの、パブコメに沿って、上記3つの課題にそって、標記の説明資料を作成してみました。

次世代の森林の行方・ カーボンニュートラルは? 新たな「森林・林業基本計画」を読む

パブコメ全体についての考え方については、6月4日付林政審の提出資料として林野庁のページに掲載されています。資料1 「森林・林業基本計画(案)」及び「全国森林計画(変更案)」に対する意見の概要

概要を説明します

((新計画の概要))

林野庁のリーフレットにもとづいて全体像を確認します。

図の左側

森林・林業 基本計画 とは?
どうやって 計画を変更 したのか?

それはそうとして、今回にポイントは、右側の「誰のための計画?」ですね。

森林の恵みを受ける全ての国民の皆様に関係します。例えば…「生活者」、「林業木材産業関係者」、「地方の行政機関」。(右の図)

新計画の「第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針」という中に、「4 森林・林業・木材産業関係者に特に必要とされる視点」という新なたセッションができました。

短いので全文引用しますね。

「施策の推進に当たっては、全ての国民が適切な役割分担の下、相互の連携を図りつつ、一体となって努力することが求められる。このため、国や地方公共団体においては、現場での具体的な取組が進むよう、施策の充実と効果的な展開に努めていく。
森林・林業・木材産業関係者においては、自らの短期的な利益のみを追求するのではなく、国土と自然環境の根幹である森林の適正な管理、森林資源の持続的な利用を確保すべく、効率的なサプライチェーンを構築して相互利益を拡大しつつ、再造林につなげるとの視点を共有し努力していくことを期待する。」

後述の「森林ガバナンス」とも関係する重要な記述ですね。

それから、もう一つ上の図に関連してパブコメで指摘したのは、生活者に山の情報をつたいえる重要な人が、建築関係者です。地域の山の木で地域の住宅を建てる人たち!

後述します

(これからの施策の方向と5つのポイント)

左の図はリーフレットの下半分、これからの施策の方向と5つのポイント。①森林資源の適正な管理・利用、②「新しい林業」に向けた取組の展開、③木材産業の競争⼒の強化、④都市等における「第2の森林」 づくり、⑤新たな山村価値の創造

(新計画、第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針2 森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向、の記述内容)

パブコメの課題がどこの記述と関係あるか、加筆してみました。

それでは、課題順に説明します。

((課題1令和の国産材時代の次の世代の山づくりは大丈夫?ー森林のガバナンスはユーザーと連携で))

パブコメ↓

 2 次世代に向けた山づくりのリスクへの対応、再造林に関するガバナンス

今計画案では、国産材利用が進んだ後の山づくりのリスクについて、認識を示しています。その対応が大切です。最も重要なテーマだと思います。

☆意見2-1 線引きの重要性

現行の育成単層林を条件に応じて、次期も育成単層林にするのか、複層林にしていくのか、線引きをすべきとの考えですが、その通りだと思います。
そこで、線引きの基準や見通しについてしっかり対応すべきだと考えますが、具体的なガイドラインが示されるべきと思います。
今の計画の数値だと660万ヘクタールは育成単層林にすると読めますが、現場の実態を確り反映していますか?私の知る限りもう少し少ないのでないかと思います。
立木価格で再造林費をまかなえる地域を線引きすると読めますが(3ページなど)、それで660万ヘクタールをカバーするということでしょうか?
この辺があいまいだと、実施過程で、問題が出てくると思います
木材関係者などの参画によって具体的な取組をすすめるとありますが(15ページ1(1)ア)
エンドユーザに近い建築関係者視野に入れて下さい。建築関係者は森林のガバナンスに心配している方が多いです。

☆意見2-2 消費者と連携したガバナンスの確立

15ページ「イ適切な伐採と更新の確保」についても、川下の情報提供のシステムの関しても、是非建築関係者を入れて下さい。リスクだけでなく管理された大切な素材だと言うことを含めて、川下に訴求していくシステムを作っていただきたいと思います。

(山づくりのリスクへの現状の認識)

左の図が、新計画の山づくりへのリスク認識部分。

主伐面積(間伐でなく皆伐)に対して、再造林が3割。造林未済地が1.1万ha。

造林地(育成単層林)のどれほどが再造林適地と考えているかというと、将来の「指向する状態」の育成単層林が660万haなんで、現状の人工林の6割が次に人工林(育成単層林)にする方向。

適地の半分が放置されている?!

この状態をなんとかしなければ、という、現状認識と問題意識が新計画でも明確にされています。

「令和の国産材時代に、次の世代の森林造成はうまくいくのか?」50年後の人たちが、この時代をどのようにみるのか、大きな問題が提起されています。

(次世代の人工林はどこに?線引きの大切さ)

50年前に植栽され造成された1010万ヘクタールの人工林。次の世代はどうするのか?

山のてっぺんのこんな所まで植林することはやめておいた方がよい、とか、こんな遠い不便なところまで植林することはできない(自立した林業はできない)といった、次世代に人工林にすべきでないところがあることは間違えありません。

全部に植林するのでないとしたら、山づくりが確りできるかどうかは、その線引きをしっかりして、みんながその方向に持って行くように努力しないと、はげ山が増えて言ってしまうリスクがありますね。

それが線引きの話です。右の図にあるように、新計画では「地域ごとに目標とする主伐量漁や造林量、発揮が期待される機能に応じたゾーニング等を定める」!と記載されています。

それをどんな形でやっていうのか、市町村の森林整備計画過程などの作業になるので、重要なポイントだと思います。パブコメでその点を指摘したら、答は「第3-1-(3)イの記述のとおり、再造林の実効性を高めていくため、造林適地を抽出する技術の高度化に取り組むとともに、市町村森林整備計画において、「木材等生産機能維持増進森林」として適切にゾーニングできるよう、これらの技術の普及を図ることとしています。」でした。

具体的に成果があがることを期待します。

(消費者と連携したガバナンス)

関連してして意見をいったのが、上記☆意見2-2、伐採後の再造林を管理するには、「木材関係者などの参画によって具体的な取組をすすめるとありますが(15ページ1(1)ア)エンドユーザに近い建築関係者視野に入れて下さい。建築関係者は森林のガバナンスに心配している方が多いです」という部分です。

それに対する答は「第3-1-(1)アに記述の森林・林業・木材産業関係者の参画を得ながら取組を進めることについては、地域の実情等に応じ、建築関係者の参画も想定されます。」でした。

本文のなかに、建築関係者ということばははいりませんでしたが、「木材産業関係者」には建築関係もはいる、という考えですね。

消費者・国民とともに山づくりをしていくときに、消費者と山側をつなぐ建築関係者が大切。是非具体的な事例を積み重ねていきましょう。

(( (課題2)カーボンニュートラルにむけて森林と木材の政策が具体化していますか?ー特に木材利用とCNの関係は大切))

★3 カーボンニュートラルの実現への貢献

20ページの「製造時のエネルギー消費の比較的少ない木材利用、化石燃料の代替となる木質バイオマスのエネルギー利用、化石資源由来の製品の代替となる木質系新素材の開発・普及、加工流通などにおける低炭素化等を通じて、二酸化炭素の排出削減に貢献していく」は重要な指摘

☆意見3-1 カーボンニュートラルと木材利用の関係

自社のカーボンニュートラルに取り組む企業のビルを木質化する場合、どのように排出量の削減に資するのか、示す必要があるとおもいます。カーボンオフセットを念頭においた木材利用拡大のクレジットの方法論など、検討方向としても是非記載していただきたい、と思います。
この点は、「(3)都市等における木材利用の促進」、「(7)消費者等の理解の醸成」の記述にも関係します。「消費者」というだけでなくビジネスの中での需要拡大を念頭においた表現を検討下さい。

☆意見3-2カーボンニュートラルと木質バイオマスのエネルギー利用

33ページの(5)木質バイオマスの利用に関連して、木質バイオマスのエネルギー利用は、カーボンニュートラルでないという議論が進んでいます(Letter Regarding Use of Forests for BioenergyーHundreds of scientists affirm that trees are more valuable alive than dead--both for climate and for biodiversity.)など。
その関係で、森林資源を保続を担保する観点での取組は大切になっています。
発電用FIT利用について由来を担保するシステム(林野庁:発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン)ができていますが、そのガイドラインの拡張や、熱利用についても由来を担保するシステムの導入が要なので、その点の指摘をお願いします。また、大量の木質バイオマス原料の輸入がされていますが、輸送中や製造過程の温室効果ガス排出などをガイドラインの基準にくわえることも念頭においた指摘をお願いしたいです。

 

(カーボンニュートラルと木材利用)

左の図は、今後計画が目標とする木材の総需要量と(国産材の)利用量の数値です。

小子高齢化の中で建築用材も含めて需要拡大を見通しています。それだけでも大きなハードルです。

パブコメでは、この点について、カーボンニュートラルの観点から、「カーボンニュートラルに取り組む企業のビルを木質化する場合、どのように排出量の削減に資するのか、カーボンオフセットを念頭においた木材利用拡大のクレジットの方法論など、検討方向としても是非記載していただきたい」としました。

それに対する回答は「第3-3-(7)に記述されている「消費者等」には民間企業等も含まれ、木材を持続的な形で利用する企業等へのESG投資にもつながるよう、木材利用の意義や効果等のエビデンスの発信や設計事業者や建設事業者、施主などのネットワーク化等に取り組むこととしています。」とされました。

確かに木材利用の意義や効果のエビデンスは、炭素の固定、化石資源の代替など、発進されていますが、今後必要になってくる、排出量削減努力をオフセットするための、たとえばJクレジットの方法論などができていないので、是非深めていっていただきたいと思います。

(カーボンニュートラルの木質バイオマスの利用)

燃料材の利用が増える方向はいいとして、パブコメではそのリスクが指摘されているので輸送中や製造過程の温室効果ガス排出などをガイドラインの基準にくわえることも念頭においたFITガイドラインの拡張、②熱利用についても由来を担保する必要を指摘しました。

回答は、「第3-3-(5)の記述のとおり、・・・、「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」の報告書に基づき、適正な伐採がなされた木材の燃料材利用等の取組を推進していく考えです。また、FIT認定に際し、ライフサイクルGHG排出量を考慮することが検討されていると承知しています。 なお、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」については、木質バイオマスの由来の証明を通じ、FITの調達価格を適正に適用するためのものです。」

つまり、①については研究会で方向性はでているけど、林野庁のFITガイドラインとは別に対処?②については熱利用はFITと関係ないかだめですよ、ということなんでしょうか?ごめんなさい、もう少し確認が必要ですね。

(((課題3)前計画の「林業成長産業化」と、グリーン成長・新しい林業の関係は?))

産業政策として、前計画では、林業成長産業化が、基本的な対応方向を示す一つのキーワードでした。

それに対して、今計画案は成長産業化という言葉は前計画の評価の文脈でしかありません。今計画では、「グリーン成長」ということばが出てきます。また、情勢変化を踏まえた対応方向(3)6ページに「新しい林業」という言葉が登場します。それらの関係がよく分かりません。

そこで、

☆意見1-1 成長産業化と新たな林業に関する説明を

成長産業化ということばが今計画からなくなっていますが、成長産業化がある程度達成されたからですか?成長産業化という言葉が不適切な面を包摂しているという理解なのですか?計画の中で説明が必要だと思います。また新たな林業との関係は説明して下さい。

☆意見1-2 グリーン成長は林業の役割の一部である(一部でしかない)ことを明確に

政府全体の中カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略が重要な課題になっているで、その関係をしめすことは重要だと思います。が、政府が経産省が中心になって提起しているグリーン成長戦略は、主として温室効果ガスを出し続けてきた産業の方向転換をしめす政策であり、多面的な環境性能と向き合ってきた林業との関係では多面的な機能の中の1つの分野(地球環境保全機能)に関するものです。その辺も含めた整理を是非お願いします。

 

()

回答は以下の通りです

「引き続き、林業・木材産業の成長・発展を図ることが重要と考えており、今後の対応方向の中でも、第1-2-(1)の記述のとおり、林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させることで、社会経済生活の向上とカーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現していくこととしています。 また、そうした成長発展を図るためには、生産性や安全性の抜本的な向上が不可欠であり、新技術を取り入れて、伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新たな林業」に向けた取組を展開する考えです。」

「林業成長産業化」ということばはないが、林業の「成長発展は重要と考えている。」でした。

「農林水産業の成長産業化を我が国の成長に結びつける」農林水産業・地域の活力創造本部(総理大臣が本部長)による「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成25年12月10日)といった動きに中で、自立化を念頭においた、「成長産業化早期実現」と言ったコンセプトが少し変わったみたいです。

経済を念頭においた成長産業化より、さらに、「カーボンニュートラルへの寄与」と幅をひろげた「グリーン成長」という言葉を使う。さらに、そのプロセスで新技術導入を全面に出した、「新しい林業」(スマート林業?)という関係みたいです。

ただ、林業の自立化という大きな目標はかかげ、その中にカーボンニュートラルの話などがどのように絡んでくるか、今後の課題でしょう。

((今後のフォローアップのためにZoomセミナーよろしく)

長くなりましたが、林野庁が今後の方向性の根拠としようとしている、新しい計画、持続可能な森林経営といった社会的環境的リスク(なんではないか)に基づいて指摘した論点について、基本的に同意はするし、その点は計画に織り込んでいますよ、といった返事をもらいました。

当方の不勉強な点もあるかも知れませんが、忘れないように確りフォローしていきたいと思い思います。

その辺の含めて以下のイベント計画通り実施しますので、ご参加下さい。

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第1回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー

タイトル:新なた森林・林業基本計画と国内森林政策の課題ー基本計画の作成過程からみえてきたもの

ゲスト:林政審議会土屋俊幸会長

日時:7月24日(土曜日)14時から

5年に一度の大切なイベントなので、少し勉強した結果を皆さんと共有しようと、これを題材としたZOONセミナーを開催することとしました。

ゲストに林政審土屋俊幸会長を迎えて「タイトル:新なた森林・林業基本計画と国内森林政策の課題ー基本計画の作成過程からみえてきたも」!!

以下に案内をしていますのでご関心のある方はぜひぞうぞ。

持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/6/15)

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G7サミットの中の森林と木材ーG7/2030年「自然協約」とは(2021/7/15)

主要先進国の7カ国が集まるG7サミット。6月11日から13日にかけて英国・コーンウォールで2年ぶりに開催され、パンデミックからの復興などについて、集中的に議論しました。(NHK6/12)

今回のサミットで合意された成果文書が外務省のサイトに掲載されています。マスコミには報道されませんが、森林に関わりそうな合意が結構あるので、ご紹介しておきます。

(G7首脳宣言)

合意本文G7首脳コミュニケ(和訳原文)の中の、気候及び環境のセッションの中に、以下のような文言があります。

パラ39 ●農業、林業及びその他の土地利用に関する分野では、我々は、我々の政策が持続可能な生産、生態系の保護、保全及び再生、炭素の隔離を奨励するよう確保することにコミットする。我々は、COP26における「持続可能な農業政策への移行に関する対話」と9月の国連食料システムサミットにおいて、これらの課題を議論する機会を歓迎する。

パラ43 本年の昆明での生物多様性条約COP15及びCOP26における自然のための力強い結果を支持し、2020年の第75回国連総会で立ち上げられた「リーダーによる自然への誓約」に留意し、我々は、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支えるG7・2030年「自然協約」(G7 2030Nature Compact)を採択する。「自然協約」により、我々は4つの主要な柱にわたり行動をとることにコミットする。

ーーなど

首脳宣言(コミュニケ)の他に、今回のG7で3つの付属文書が合意されましたが、その一つが、G7 2030Nature Compact和訳 G7 2030年自然協約)です。

(以下抄訳です)

(G7・2030年「自然協約」(G7 2030Nature Compact))

我々、G7首脳は、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な使命にコミットする。我々は、2030年までに、自然にとって必要な2030年への道筋を定めることを支援するため、メッス生物多様性憲章及び「リーダーによる自然への誓約」を基礎とし、その履行に尽力し、今行動を起こす。・・・

F.次の10年間を通して、我々は、生物多様性の損失を止めて反転させるために、それぞれが政府全体を基礎として動員し、(1) transition移行、(2) investment投資; (3)conservation保全; and (4) accountability説明責任の4つの主要な柱にまたがる行動をとる。

(1) transition移行、一つ目の柱/自然資源の持続可能かつ合法的な利用への移行を主導すること

(1A)持続可能なサプライチェーンを支持し、国内における明確な行動を示すこと等により、森林減少に対処すること。我々は、違法な土地転換を含む森林減少及び森林劣化から農業生産を切り離す持続可能なサプライチェーンを支援するため、ベストプラクティスを共有し、適切な場合にはデューディリジェンス要件の導入を含み得る適切な国内行動を検討することについて、貿易大臣が環境省及び他の省庁と共に取り組むというコミットメントを歓迎する

(1B)COP26の森林・農業・コモディティ貿易(FACT)対話に参加し支援すること

(1C)いくつかの補助金が環境に対して有害な影響を持つこと、及び自然に悪影響があると分かっている政策を改革する必要性を認めること

(2) investment投資; 二つ目の柱/自然に投資し、ネイチャーポジティブな経済を促進すること

(2A)財務省及び関係する省庁に対し、経済や財政の計画及び意思決定において自然について説明責任を果たす方法を特定するために、共に取り組むことを指示すること。我々は、他国や非政府主体がそれに続くよう奨励し、生物多様性に関する経済活動のフットプリントを考慮する。我々は、生物多様性の経済学に関するダスグプタレビュー及び関連するOECDの生物多様性に関する政策ガイドを歓迎する

(3)conservation保全; 三つ目の柱/野心的な世界目標等を通じたものを含め、自然を保護、保全、回復させること

(3A)この10年間に必要とされる、保全と回復の努力のための重要な基礎として、2030年までに世界の陸地の少なくとも30%及び世界の海洋の少なくとも30%を保全又は保護するための新たな世界目標を支持すること

(4) accountability説明責任 四つ目の柱/自然に対する説明責任及びコミットメントの実施を優先すること。

(4B)定期的に本協約の進捗状況をレビューすること。これは、2030年のビジョンの実現を確保するため、必要に応じて我々の行動と野心を徐々に高める選択肢のレビューを行う今後5年間のG7首脳サミットを含む、既存のG7メカニズムを通じて行われる。

ーーー以上

以上森林に関連有りそうな部分の抄訳ですが、やはり英国グラスゴーで11月に開催予定の気候変動枠組み条約COP26にむけて重要な作業が提起されレいるようなので、関心のある方は、以下の原文を参照下さい。勉強部屋でもフォローしていきます。

G7 2030Nature Compact和訳 G7 2030年自然協約

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森林投資とカーボンオフセットーある投資セミナー関心事項(2021/7/15)

先般、投資信託など機関投資家向けのセミナーで、「カーボンニュートラル2050と森林・木材の吸収・固定量―カーボンオフセットの可能性」という演題で話をする機会がありました。

貴重な経験、ご紹介します。

(セミナー開催経緯)

6月中旬勉強部屋読者からのフォードバックページに以下のような問い合わせがありました。

ーーーーーー

「私は投資信託などの機関投資家向けに、セミナーや勉強会の企画・運営を行っております。その主な対象者は株式投資を行っている運用・調査担当者です。

昨今株式市場でもESG投資が活発になってきております。特に昨年10月の2050年カーボンニュートラル宣言から、環境関係への注目が非常に高まっております。その中で日本にはあまりなじみの無い森林投資に関する問い合わせが増加しております。国土の大半を森林が占める日本において、カーボンニュートラル達成に向けて森林は重要な役割を果たす可能性がある一方で、海外のように森林投資が盛んではないという現状はなぜなのか?それが解決し、海外のように活発になることはありうるのか?等を知りたいと考えています。

そこで藤原様に
(1)海外での森林投資の現状をカーボンオフセットの制度も含めてお話頂き、
(2)日本での現状と今後の展望に関してお話頂く
という勉強会をオンラインで実施頂きたいのですが、ご対応頂けますでしょうか?
今回はESG投資に注力しているとある機関投資家から、森林投資に関して専門的な知識を有する方との勉強会の設定を依頼されております。」 

森林投資に関する問い合わせの増加!国土の大半を森林が占める日本において、海外のように森林投資が盛んではないという現状はなぜなのか?それが解決し、海外のように活発になることはありうるのか?と問い合わせをうけ、お断りをする選択肢はありません。

なんのために、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」の情報発信をしてきたのか?

そこで、「諸外国の森林投資と林業経営―世界の育林経営が問うもの」という著書がある林業経済研究所の餅田治之さんと相談し、林業経済研究所のプロジェクトとしてセミナーをすることとなりました。

テーマセミナー:【ビデオ会議】森林投資を考える ~海外の実情と日本での可能性、カーボンオフセット~
日 時:2021年07月08日(木) 11:30-12:30 (東京時間)
形 式:ビデオ会議
スピーカー:一般財団法人林業経済研究所フェロー研究員・筑波大学名誉教授 餅田 治之 様
       (森林投資を考える-海外の実情と日本での可能性-)
      一般財団法人林業経済研究所フェロー研究員・ 持続可能な森林フォーラム 代表 藤原 敬 様
       (カーボンニュートラル2050と森林・木材の吸収固定量―カーボンオフセットの可能性)
司会・進行:SMBC日興証券 株式調査部 シニアアナリスト/プロダクトマネージャー 小山内 譜巳男

報告内容を紹介します

(森林投資を考える-海外の実情と日本での可能性-)

こちらにファイルがおいてあります→(森林投資を考える-海外の実情と日本での可能性-)

・主に1980年代以降、アメリカにおいて林業に関する新たな動きが展開。

機関投資家向けに森林投資のサービスをする、TIMO(Timber Investment Management Organization)、消費者向けに森林投資のサービスをするT-REIT(Timberland-Real Estate Investment Trust)といった仕組みがあるが、左の図にあるように、売買の実績が積み上がっている。

米国に比較して日本は?

米国と比べて日本の育林費はおよそ10倍。削減努力もあるが森林投資環境は厳しい

日本素材生産事業者、製材工場が山林を購入するケースが増えているので調査をした。

その結果
(1) 素材生産業者の林地取得状況(2015年調査)
○素材生産業者へのアンケート調査の回答者の約50%が、過去10年間に林地を取得したことありと回答。
○林地取得の理由:
「土地ごと購入しなければ立木が手に入らなかった」(33.3%)
「立木在庫を潤沢にし安定的な事業につなげるため」(34.9%)1

(2) 製材工場の林地取得状況(2016年調査)
○製材工場へのアンケート調査の回答者の約4割が、過去10年間に林地を取得したことありと回答。
○林地取得の理由:
「立木所有者に土地ごと買って欲しいと言われた」「原木獲得競争に対処するための産業備林」「価格が安いので買えるときに買っておく」

森づくりの森林投資のために隣地取得した人は殆どいなかった。
ーーー

(カーボンニュートラル2050と森林・木材の吸収固定量―カーボンオフセットの可能性)

こちらにファイルがおいてあります→(カーボンニュートラル2050と森林・木材の吸収固定量―カーボンオフセットの可能性)

 
「カーボンニュートラルCN2050に向けての施策と森林・木材」という部分で政策の動向をみてから、

「森林や木材利用の炭素を通じたビジネスの拡がりの可能性」という部分でカーボンオフセットの可能性を議論します。
 
 
10月に総理が「2050年にカーボンニュートラルだ」と言ったときに、どのように進めていくかの議論はされていなかった(はず)。

暮れの2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」という文書が大切。
年があけて、作業が進み、6月の新たな森林・林業基本計画の中にも位置づけられています。

順番に説明
 
左の図はグリーン成長戦略に出てくる全体像。電力はすべて2050年までに脱炭素。

非電力も頑張るが、どうしても足りない部分は植林などのカーボンオフセット(右端の黒い破線)。
 
6月にできた新たな森林・林業基本計画の、リーフレットです。左上は全体のコンセプト、後は5つのポイント。

左上、全体のタイトルが、「森林・林業・木材産業によるグリーン成長」、その締めの言葉が「2050カーボンニュートラルも見すえた豊かな社会経済を実現!」です。
上の中、「森林資源の適正な管理・利用」の締めは、「森林吸収量確保に向けた取組を加速。」
下の中「都市等における「第2の森林」づくり」。「都市に炭素を貯蔵し温暖化防止に寄与」。

というように、新計画のメインコンセプトは-「カーボンニュートラル」の実現です
 
といった中で、7月はじめに1億1千万人の人が住む416の自治体で、2050年にカーボンニュールを宣言。

企業も同じような宣言をしています

これらの方が、カーボンオフセットをするクレジットの潜在的な購入者です。
 
森林のポテンシャル。

日本の人工林は伐採されるようになるまでに、日本全体が排出する二酸化炭素の3年分ほどを吸収。

世界全体では途上国の森林が減っているので、毎年日本の排出量と同じ程度の排出をしている。途上国が中心なので、途上国の森づくりのクレジットも取り引き材料になるでしょう
 
企業が、カーボンオフセットを実施するようになるのは、二つの前提があります。

第一に
①行政による罰則も含む義務・規制、/②自主的努力(ESG投資な)どによる企業の削減努力の対外表明

第二に
買われるクレジットの、第三者による保証・認定(Jクレジットなど)
 
政府が関与している、クレジットの認証はJクレジット。

手続きが公表されていて、5つのカテゴリーの方法論があります。森林は5番目のカテゴリーで、方法論は二つ。木材利用の方法論はありません。
 
林業経済研究所が5年前に取り組んだ「森林づくり・木材利用の二酸化炭素  吸収・固定量の「見える化」事業」。その時作成したガイドラインのダウンロード数が左の図です。

5年間でダウンロードされたものの半分が1年以内にダウンロードされています。関心が高まっています。
 
 Jクレジットが政府がバックになった認証システムなので、その方法論そってチャレンジしてください。

ただ、木材利用の方法論がまだないんですね。

企業イメージのPR・自主目標達成への購入なんだったら、Jクレジットの方法論でなくても大丈夫かも

色々相談して下さい
 
Manulife Investment Manegmentが提供する日本語の情報がありました
グローバルインテリジェンス2020年下期投資環境見通し
というpdfファイルの17ページ以下に「森林投資とカーボンオフセット市場の有望性」という記事が

カリフォルニア州のカーボン削減義務、それを達成するためにオフセットするために超過達成したところから超過分を購入(キャップアンドトレード)
オゾン層破壊物質など6つのカテゴリーのうち、過去にオフセットで取引された8割は、「米国の森林」なんだそうです

おもしろいです
 
森林の吸収量・木材の固定量をベースとするカーボンオフセットが拡大する可能性は高まっていますが、吸収量・固定量を増やす活動を認定・確認する仕組みの整理等が必要です。

森林は二酸化炭素吸収だけでなく、山村や都市の市民・企業にさまざまな環境的社会的サービスを提供する可能性を持っています。

今後ともよろしくお願いします。

ーーー

以上の報告に対して、以下のような質疑がありました。

 A
 森林を造成すると、何でそのコストが日本は米国の10倍もするのですか?なんとからないのでしょうか?  日本の気候条件、生物多様の条件、地形地質など、森林を効率的な人工林にしていく自然的な条件が違うことが一つの理由。また、どの国にも条件の悪いところ、いいところがあるのでどこまで木材生産をするために手をつけるのかという判断があるでしょう。日本も線引きを確りして、条件のよいところだけ人工林にしていくという必要があるでしょう。また、森林投資を前提として、ぎりぎりにコスト削減をしなければならないいと一生懸命検討している人が少ないかも知れません。
 カーボンオフセットが重要だと認識したが、Jクレジットなど認証を進めていくのはどのようにしていったらよいのでしょうか?  日本で森林造成のクレジット取引が米国のようにすすまないのは、草地に森林を造成するなど、わかりやすい適地があまりないという理由があるでしょう。すでに森林造成に関しては、FO001森林経営活動FO002植林活動の二つの方法論ができています。それをつかってクレジット化の取組をしてもらえばよいでしょう。木材利用に関するJクレジットの方法論がないの課題だと思います。

以上、例によってネット上のやりとりでしたが、楽しかったです。

junkan10-2<Investsemier>

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COP26は世界の森林を保護するために貢献ーFACT対話始まる

11月に英国グラスゴーで一年遅れて開催される気候変動枠組み条約COP26に向けた準備が進んでいるようですが、英国政府は「COP26を世界の森林を守るために」として、the Forest, Agriculture and Commodity Trade (FACT) Dialogue(以下FACT対話)呼びかけています。

英国政府のプレスリリース COP26 brings countries together to protect world’s forests(2/2)

tropicalforestallianceが運営する専用サイトCOP26 FACT Dialogue

4月15日、28か国が参加してFACT対話閣僚級円卓会議第一回会合がウェブ会議形式で開催され、FACT対話を推進するために各国が協力することを宣言する共同声明が5月27日公表されました。

農林水産省プレスリリース「森林、農業、コモディティ貿易(FACT)対話」共同声明が公表されました

Joint statement on principles for collaboration under the Forest, Agriculture and Commodity Trade (FACT) Dialogue

「森林、農業、コモディティ貿易(FACT)対話」の下での協力の原則に関する共同声明(原文、仮訳)

「森林・農業・コモディティ貿易(FACT)対話」の下での協力の原則に関する共同声明(仮訳)

1. 農産物は、持続可能な開発目標を達成するために重要であり、特に経済発展の促進、貧困の削減、食料安全保障、そして何十億もの人々の生活の向上に貢献している。その一方で、持続可能でない農業生産がなされる地域の拡大とその他の形態の土地劣化は、私たちの環境、森林やその他の重要な陸域生態系の持続可能性、排出量の増加、気候変動の影響に対する強靱性の低下、生物多様性の損失の原因となるなど、重大な課題を引き起こす可能性がある。

2.農業、林業、その他の土地利用は、温室効果ガスの純排出源となっている。熱帯林、温帯林、泥炭地を含む森林、サバンナ、自然草原、湿地などの陸域生態系の損失と劣化は、毎年の温室効果ガス排出の要因となっている。一方で、持続可能な土地管理の政策や技術は、気候変動への適応や温室効果ガスの排出量の軽減に貢献することができる。パリ協定と持続可能な開発目標の目標を達成するためには、すべての国が、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則に従って、温室効果ガスの排出量を削減し、緩和と適応の機会を利用するために協力しなければならない。 
・・・

同じプレスリリースで、野上農林水産大臣ステートメント(令和3年4月 15 日)も公表されています。「みどりの食料システム戦略」で「2030年までに食品企業における持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現を目指す」

ーーー

森林減少ゼロに貢献する商品の推進!! 市民が消費生活を通じて、遠くははれた森林について再認識する重要な機会ですね。

森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム(2018/1)など

コモデティは農産物やパームオイルなどに加えて、牛肉や林産物も含まれるようになるのかな?輸入原材料だけでなく、国内原材料は?、森林減少をなくすだけでなく、森林が増えた所からの産物の表示はできない?

幅広い市民の消費生活の中での森林対話ができるとよいですね!

気候変動枠組み条約COP26 は今年後半の重要な社会的イベントになるでしょうから、このページでもフォローていきます。

kokusai2-78<COP26_FACT>

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 持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第1回御案内(2021/7/15) 

持続可能な森林フォーラムでは、皆さんとのコミュニケーションを双方向で深めていくため、ゲストをむかえて、Zoomセミナーを開催する計画です。

とりあえず、第1回目は「新たな森林・林業基本計画」が作成されたタイミングで、ゲストに、林政審会長をつとめた、土屋俊幸東京農工大学名誉教授をむかえ、作成過程のいきさつと改訂のポイントを話していただきます。

そして、勉強部屋からも意見を出した、令和の国産材時代の次の世代の森づくり、森林のガバナンスの強化に対する建築関係者などユーザーとの関係など、議論をしたいと思います。

どうぞ皆さん、ご参加下さい。

参加はこちらからどうぞ→参加ご希望の方はこちらから御連絡ください

(正会員・賛助会員以外の方は入場料をいただきます)

 konosaito3-1<zoommt1st>

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勉強部屋とビジネス関係者ー勉強部屋ニュース263編集ばなし(2021/6/15)

今回のフロントページは、ウッドショック問題。ビジネス関係者にとっては一大事。木材価格が急に上がるショックは50年間で5回目なんです。

業界関係者にとってはだけでなく、市民にとっても住宅がどうなるという社会的トピックスなので、そのたびに対応策などが議論されます。最初は日本木材備蓄機構ができたんですが、それはうまくいかなくて・・・その後何が生まれるのかな?

勉強部屋の視点でいうと、サプライチェーンマネジメントや「小さな林業」の議論なんですが、ショックが終わっても冷静に議論できるようにフォローして参ります。

もう一つ、ビジネスとの関係で大切なのは、森林投資セミナーの経験です。機関投資家向けにセミナーなどを企画されている会社の担当者から、勉強部屋の問い合わせページに相談。

「森林投資に関する問い合わせの増加しているので、セミナーができないですか?!」勉強部屋の内容がビジネス関係者にも少しインパクトが生まれてきたのかな。

問い合わせのキーワードは「海外で進んでいるカーボンオフセット」です。日本では森林でないところに森づくりをするような分かり易いクレジットが難しいので、世界で始めて木材利用とJクレジットなんでしょうか?

これも課題ですね、

次号以降の予告、サプライチェーンマネジメントってどんなこと?バイオマス熱利用の普及拡大への道筋、地域の未来自伐型林業で定住化、地球温暖化対策の推進に関する法律改正は?地域的な包括的経済連携(RCEP)協定と森林・木材ーTPP/EPAとの比較、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com