ニュースレター No.236 2019年4月23日発行 (発行部数:1450部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1  フロントページ:早生樹・エリートツリーの可能性(2019/4/20)
2. 気候変動への適応策と防災・SDGsの連携 ~COP24を受けて今後の対応を考える (2019/4/21)(2019/4/20)
3. 金融フロンティアとわが国林業・木材産業ー政策投資銀行の報告書(2019/4/20)
4. いよいよ森林環境譲与税スタート、都市の自治体は?(2019/4/20)
5. 文京区の森林環境譲与税の使い道(2014/4/20)
6.  日本の森林政策とFSCの基準:グローカルな視点ー勉強部屋ニュース235編集ばなし(2019/4/20

フロントページ:早生樹・エリートツリーの可能性(2019/4/20)
 

3月4日開催されたシンポジウム「「早生樹・エリートツリーの現状と未来~その可能性と課題を探る~」に出席しました。

成熟してきた国内の森林の次世代づくりで、市場との連携をとりながら事業が進む前提として、低育林コスト、短期の資金回収期間という二つの大きな課題に挑戦するわかりやすいイベントです。

左の図は、全体を取り仕切っていた、森林総研の宇都木ディレクターの総括報告早生樹とエリートツリーへの期待と課題から、「短伐期付加価値、下刈り省略による低コスト育林、超短伐期エネルギーの三つの目的を間違えないように。」

センダン、コウヨウザンなどといった未利用の広葉樹である早生樹、スギやヒノキの選抜育種の結果から得られてきたエリートツリーをつかった最新の情報が提供されました。プログラムは以下の通り


林野庁次長挨拶
(1)早生樹とエリートツリーへの期待と課題 13:40~
 宇都木玄氏(森林総合研究所研究ディレクター(林業生産技術研究担当))(PDF : 1,313KB)
 松村順司氏(九州大学農学研究院教授)(PDF : 5,220KB)
(2)早生樹~いくつかの樹種を事例として~ 14:20~
・「コウヨウザンの特性・育成」
  生方正俊氏(林木育種センター遺伝資源部長)(PDF : 4,188KB)
 松本寛喜氏(林野庁四国森林管理局森林整備部長)(PDF : 3,000KB)
・「エネルギー作物としてのヤナギ」
 原山尚徳氏(森林総合研究所北海道支所植物土壌系研究グループ主任研究員)(PDF : 6,496KB)
・「センダンの育成・利用と経済性」
 横尾謙一郎氏(熊本県林業研究指導所育林環境部長)(PDF : 5,820KB)
・「利用者側のアプローチ~センダン・広葉樹への期待~」
 中ノ森哲朗氏(パナソニックライフソリューションズ創研株式会社上席コンサルタント)(PDF : 1,767KB)
(3)エリートツリー 16:20~
・「エリートツリーの開発・普及」
 倉本哲嗣氏(林木育種センター育種部育種第一課長)(PDF : 2,362KB)
・「施業モデルの開発状況」
 宇都木玄氏(森林総合研究所研究ディレクター(林業生産技術研究担当))

(4)今後に向けて<林野庁> 17:30~
 今後の推進方向の説明、平成31年度予算の紹介
 林野庁職員(PDF : 808KB)

将来の課題を担う研究機関と行政機関の専門家の方々の中に、今の課題に取り組むビジネスの最前線からパナソニック住宅建材部門のビジネスの関係者中ノ森哲朗氏(パナソニックライフソリューションズ創研株式会社上席コンサルタント)(PDF : 1,767KB)が一人。とうとうそういう時代(次世代の森づくがビジネスの課題になる)になったのか!!!

中ノ森氏のプレゼン資料から一枚掲載↓

あとで、別途話しを伺う機会がありましたが、「パナソニックの住宅建材部門では、無垢や突板の木材を中心に動いていたが、2006年頃から基材(合板やMDF)の表面にオレフィンシートやペットシート(石化シート)に木目を印刷したシートを貼る製品が主流化してきたが、それはオカシイとして再び無垢材や突板をつかったものに復帰する必要を感じていてそこで、日本の早生樹が重要な役割を果たすはずと、考えて活動をしてきた」のだそうです。

是非こちらをどうぞ→ 「利用者側のアプローチ~センダン・広葉樹への期待~」中ノ森哲朗氏(パナソニックエコソリューションズ創研株式会社上席コンサルタント)

もちろんそんなタイミングで、林野庁が主催したタイミングの良いイベント。みなさんの話しの内容は、聞き応えがあします。シンポジウム「「早生樹・エリートツリーの現状と未来~その可能性と課題を探る~」にどうぞ。

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気候変動への適応策と防災・SDGsの連携 ~COP24を受けて今後の対応を考える(2019/4/20)
 

気候変動への対処法は緩和策と適応策があります(パリ協定第2条など)。

気候変動問題で森林関係者は(私も含めて)地球上の森林の減少吸収源としての森林の役割に力をいれてフォ ローしてきました。

それでは、適応策はどうなのか?

<気候変動ラウンドテーブル> 気候変動への適応策と防災・SDGsの連携 ~COP24を受けて今後の対応を考える~という会合に顔を出してみました。

森林と適応策の関係は二つの側面があると理解しました。
①気候変動によって降水量が不安定になり洪水のリスクがたかまる。その中でリスク緩和のための森林の役割は ?
②もう一つは2度ほど平均気温が上昇することにより森林生育環境の変化を森林整備の方針にどう反映させるのか ?

そこで、政府の方針がどうなっているか見てみました。適応策に関する政府の情報が以下のとおりです

気候変動適応情報プラットフォーム(2016年8月)
環境省適応化問題についてのポータルサイト

気候変動適応法(2018年6月交付、12月施行)
気候変動適応計画(2018年11月)

できたばかりの適応計画で関係森林林業に関係にありそうなセックションは

 第2章気候変動適応に関する分野別施策
第一節農林水産業分野の主な適応施策
(2)森林・林業に関する適応の基本的な施策
◇山地災害、治山・林道施設
〇山腹崩壊等に伴う流木災害が顕在化していることを踏まえ、流木捕捉式治山ダムの設置や根系等の発達を促す間伐等の森林整備、流木化して下流域へ被害を及ぼす可能性の高い流路部の立木の伐採などに取り組む。
○ 土砂の崩壊や土石流等が発生するおそれのある山地災害危険地区等においては、土砂流出防備保安林等の配備を計画的に進め、伐採・開発等に対する一定の規制措置を講じるとともに、土石流や流木の発生を想定した治山施設の整備や健全な森林の整備、それらの整備に必要な林道施設の整備を実施し、森林の持つ土砂崩壊・流出防止機能の向上を図る 

◇人工林

〇気温上昇や乾燥などの生育環境の変化を含めた気候変動に対する影響評価を実施するため、スギやヒノキといった主要造林樹種について産地が異なる種苗の広域での植栽試験の推進による造林木の適応性の評価、これら造林樹種の成長や下層植生などの樹木の周辺環境が受ける影響についての継続的なモニタリング、長伐期林にもたらされるリスクの評価を行う。さらに、高温・乾燥ストレス等の気候変動に適応した品種開発に着手する 

◇天然林
◇病害虫
◇特用林産物
第2節 自然生態系
第3節 自然災害・沿岸域

①の災害対策についての記述は具体的ですが、気候変動が現実の政策ににこれほど影響を及ぼすことはないと思われる、②人工林や森林整備の項目に、リスク評価や「品種開発に着手する」以外に具体的な取組が記載されていないのは、今後の課題?。

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金融フロンティアとわが国林業・木材産業ー日本政策投資銀行の報告書(2019/4/20)

金融フロンティアの開拓を通じて、企業と社会の課題を解決し、日本と世界の持続的発展を実現(金融力で未来をデザイン)という使命(DBJグループの企業理念)を掲げる日本政策投資銀行、「わが国林業、木材産業の今後の可能性」と題する報告書を掲載しています(2018年3月、1年前遅くなって済みません)。

ビジネス側から見た日本の林業木材産業の可能性は、「既存の需要拡充をはかりつつ、経済的に回収が期待しうる山林への集中投資等により、失われた時間を取り戻す必要」があるとしています。

欧州と比較した、再造林費・生産コストの比較など、指摘されるそれぞれの問題点に新味があるわけではありませんが、失われた時間、補助金の弊害、など、政策サイドへの厳しい批判(と期待)が込められたものです。

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 いよいよ森林環境譲与税スタート、都市の自治体は?(2019/4/20)

3月26日に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」(概要総務省)が、成立して、正式に今年度から無事に森林環境譲与税が各市町村の交付されることになりました。

森林環境税法が成立 24年度から1000円徴収(日経)

(森林環境税スタート、都市木造の原動力に!)

日経クロステックというサイト森林環境税スタート、都市木造の原動力に!というページが掲載されています。

「森林環境譲与税の使途について、三菱地所竹中工務店三井住友信託銀行、日経BP社で構成する「都市木造を考える会」が、民間の視点から都市木造に関する提言(案)をまとめ、公表した」のだそうです

国産材の利用拡大に向けて、民間事業者による中大規模建築物の木造化を促進する内容となる。現状で負担が大きい木造化のコストアップ分を支援するため、森林環境譲与税を活用した「ためる」「たばねる」「つなぐ」「あわせる」「あたえる」の5つの提言

「森林環境譲与税は公共建築だけでなく、もっと大きな市場である民間建築にも活用すれば、自立的に木造化を促進するインセンティブ(誘因)になり得る」としています。都市自治体とっては小さな金額で大きな効果、重要な視点ですね。

(23区での森林環境譲与税の使い道)

都政新報という東京都の都政や自治体関係者が(だれでも)読んでいる行政専門紙の3月19日号に「森林環境譲与税/森林ゼロで使途に苦慮も」という記事が掲載さ、同紙が実施したアンケートの結果が掲載されています。

森林を持っていない都会の自治体の森林環境譲与税の主たる使い道は、二つあり、連携する地方の自治体の森林整備のため、公共建築物などの木材利用その促進のためです。

前者、他の自治他の森林整備に充当するのは千代田区、中央区、新宿区、中野区、板橋区の5区。中央区では檜原村の村有林を借り受けて中央区の森事業を実施して、区民の自然体験ツアーなどの実施手いるそうですが、その事業の支援に使われるそうです。

後者をリードするのは港区。今まで実施してきた地方の木材生産地の市町村と連携して、木質化アドバイザーを新たに配置し、開発事業者向けに内外装での交流自治体の木材活用を支えるのだそうです。

日経の指摘する公共建築だけでなく大きな市場である民間建築に、がしっかり視野に入っていますね。

森林環境譲与税をみなとモデル制度の充実に活用します~木質化アドバイザーが協定木材の活用を支援します(港区)

文京区も木材利用組ですがその辺はどうなっていますか?

今回のアンケートでは、大田区、渋谷区、台東区、目黒区などでは、基金に積み立てることとし、資金規模を拡大しすることとし、「区民に理解が得られるようにするには時間が必要」(目黒区)としています。今後の課題が多いですね。

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 文京区の森林環境譲与税の使い道 (2019/4/20)

森林環境譲与税出発!

地元の文京区の一般会計予算で、森林環境譲与税がどのように記載されているでしょうか?

ネット上の文京区平成31年度当初予算というページの平成31年度各会計予算・事項別明細書として掲載されている、平成31 年度文京区一般会計予算事項別明細書、に54ページ、歳入第7款地方譲与税、3項森林環境譲与税とあり、前年度予算0千円、本年度予算8,000千円とありました。

それではそれに応じた歳出はどのようになっているのか?とすべての明細書を開いてみましたが、森林環境譲与税を財源としたとわかる支出項目はありません。そこで担当課長に聞いてみると、事項別明細書(歳出・10款教育費~12款予備費)(PDFファイル; 697KB)
7款 教育費 2項 学校教育費 6目 学校/幼稚園施設整備 9 学校施設快適性向上 1,262,946千円の一部が当該支出で、「老朽化した学校施設の内装を多摩産材をつかった部材で改装する」のだそうです

(使途を公表することを義務づけられているので、おってネット上に公開されるといっていましたが、3月15日現在まだ、公表されていないようです)

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 ビジネスの本流と林業の本流ー勉強部屋ニュース236編集ばなし(2019/4/20)

国産材の、木材市場の中での拡大によって日本に森林を供給源とする木材産業の動向はビジネス関係の関心が広がっていますが、ビジネスの関係者の林業への関心は大きなハードルがあるのでないかと思っていました。ビジネスの短期的資本回収期間という視点から林業の長期的視点うまく調和しない。

そういう視点で、次世代林業に向けての重要なステップに関連して、パナソニック総研、日本政策投資銀行というビジネスの本流からのメッセージについて、今月号で、情報を提供できるのは大切なことだと思います。

SDGs等と通じて、既存のビジネス関係者が長期的な視点を意識し始めています。今後ともビジネスと森林の関係をしっかりフォローしていく考えです。、

次号以降の予告、神田明神で多摩産材-木材流通網の持続可能性、森林外交論続き、日本森林学会大会コレクション、EU内森林のリスクとフェアウッド、世界の中の日本の森林環境税、木で創る新しい社会ー街を森にかえる環境木化都市の実現へ

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp