ニュースレター No.2222018年2月12日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:日本の「森林外交」と国際ガバナンスーガバナンスのグローバル化の次の展開の中での森林の役割(2018/2/12)
2. 自然資本プロトコルー森林レクリエーション誌へ(2018/2/12)
3. 自然資本プロトコルの森林・木材産業版ガイドライン最終案ー意見募集(2018/2/12)
4. 森林破壊と無関係な食料ー勉強部屋ニュース222号編集ばなし(2018/2/12)

フロントページ:日本の「森林外交」と国際ガバナンスーガバナンスのグローバル化の次の展開の中での森林の役割(2018/2/18)

1月29日標記の長い演題で、大学生に話をする機会がありました。

国際基督教大学ICU教養学部「行政学」(西尾隆教授担当)の授業の一環として、「『森林外交』を『行政学の文脈』で話をするように」という依頼でした

次代を担う若い人に、自分のやってきたことを整理して話をする、という大変ありがたい機会をいただきました。

とりあえず、話の内容のあらすじを紹介し、宿題も含めた各論は別途機会があれば紹介します。

 受講者には将来行政に関わりたいという人が結構多い。多くが都会の若者

その人たちに、「森林外交」が自分と関係あると少しでも感じてもらえるか?
 森林外交:といわれても、霞ヶ関ではあまり使わない言葉。
しっかり、概念を規定してから取りかかります。

行政学的文脈:なんとなくわかるのですが、分析の対象となっていた世界の住人が、分析のツールを使いこなすまでには至りませんでした。(今後の宿題)
 森林のもたらす便益がしっかり行き渡っているか?国境を越える便益の立ち振る舞いが、森林外交の原点

貿易外交と、環境外交の二つがありそうなので、二つを話します
   木材貿易外交の歴史

戦後混乱期、重要拡大期、需要停滞期(安定期)、需要縮小期に四期に分けて説明

ここのところは、追ってもう少し分析を進めて紹介します
 環境外交としての森林外交史

地球環境の課題となった熱帯林問題に対して、日本の対応は結構重要な役割をはたした!!

ここのところも、もう少し作業を進めて紹介します
 最近の事象がしっかり追い切れていませんが

とりあえず重要な点は抑えてあります
 後半は、

次世代を担う人にどれだけ、大きな風呂敷を見せることができるかな

グローバルな経済の落とした物をしっかり拾って新しいグローバル化をすすめるのに、森林は大切な役割をします!!
 森林管理のグローバル化に、市民・消費者の役割は大切!!
   最近の違法伐採問題、クリーンウッドの取り組みを紹介
 しつこいようですが
もう一度

経済体制のグローバル化の次のガバナンスグローバル化の中で
森林外交の果たす役割は大切
脇役から主役へ!
あなたの参加も必要!!
ご清聴ありがとうございました

配布した以下の資料の関連データを資料室においておきます

  • 日本の「森林外交」と国際ガバナンス(レジメー本体の資料)
  • 戦後森林外交史年表(作成途上ですが)

3時15分から6時近くまでの長い時間でしたが、主催者のICUの毛利勝彦教授、ゲストの学習院大学阪口功教授をまじえて、楽しい時間を過ごしました。(受講者やお二人からは、外交政策で農業と林業の違いの理由、国際熱帯木材機関誘致外交の担い手と原動力などなど質問をいただきました)

行政学という世界で、森林行政をテーマでいろいろ議論がなされていることも、知りました。
「現代の行政と公共政策」9公共政策と政策型思考(西尾隆)、戦前と戦後の木材貿易政策の対比(これも追って紹介します)

少し教わった行政学というツールをもう少し磨いて、戦後の森林外交史の駆動要因、効果を分析し、そして未来へのメッセージという形で提起できたらなー、と思いを馳せました。

ご期待ください

boueki1-12(ICUrec1)

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自然資本プロトコルー森林レクリエーション誌へ(2018/1/21)

 

森林インストラクターの資格試験や認定などを行っている森林レクリエーション協会会員誌「森林レクリエーション」巻頭に窓という欄があり、2月号に「自然資本プロトコル」という標題で寄稿させていただきました。

読者は森林や林業の関係を長くやっていた方々が多いでしょうが、それ以外の企業の方々が、自分の企業と森林の関係を議論しなければならない状況が生まれている、ということを知っていただこうという趣旨でした。

このサイトでも、自然資本プロトコルは紹介をしてきました。自然資本プロトコルと森林(2017/3/12)

事務局のご了解をえて、転載します。

 自然資本プロトコル

世界の200社ほどが参加するWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)などが中心となり「自然資本プロトコル」が作成普及されている。聞きなれない言葉だが、「自然資本(人々に一定の便益をもたらす再生可能あるいは非再生可能な天然資源)の直接的及び間接的影響(ポジティブな場合とネガティブな場合がある)や依存度を特定、計測、価値評価するための標準化された枠組み」とされ、昨年の2月に和訳がネット上に公表されている(自然資本プロトコルと森林(2017/3/12)http://jsfmf.net/jyunkan/NCPrtcl/NCPrtcl.html参照)。

コカ・コーラ、ダウ、ロシュ、ネスレ、シェルなどビッグビジネスの関係者が自分たちの企業活動を投資家たちに説明する過程で、森林との関係を検討する必要がでてきたことが背景にある。

森林のレクリエーション機能は、自然資本の生み出す4つの便益(供給機能、調整機能、文化機能、基盤機能)のうちの文化機能であるとされ、評価事例が掲載されている。大規模な工場を設置する場合の用地内にある森林を除去するのか工場内に配置するのか、工場内の森林を市民にレクリエーション林として共有することの意義、企業の研究所を既存のレクリエーション林の近郊に設置することの価値、などなど、森林と自社との関係を、金銭的な価値評価に基づいて取締役会で議論することが普通のことになってくると すれば、協会の活動の視野に入れておくべきことだろう。

junkan6-5(NCPrecri)

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自然資本プロトコルの森林・木材産業版ガイドライン最終案ー意見募集(2018/2/10)

Forests require long term planning and investment and therefore it is not surprising to me that the first new guidance since the launch of the Natural Capital Protocol is from a sector that is always thinking of the future.

Foreword by Mark Gough, Executive Director, Natural Capital Coalition 
 森林は長期にわたる計画と投資が必要であるので、自然資源プロトコルの最初のガイダンスが、常に将来を見通しているこの分野から始まることは、私には不思議なことではない。

自然資本連合、マーク・グース会長による前書き

自然資本連合(NCC The Natural Capital Coalition)が「企業の経営判断のために信頼され、信用でき行動に繋げられる情報を作り出す支援をするための枠組み。ビジネスと自然資本の関係を検討に含めることで、より良い判断がなされることを目指す」として創った自然資本プロトコル(日本語版)の、セクター別ガイドラインが作成中だが、森林・木材分野版ドラフト冒頭の言葉である。

ドラフト版意見募集の案内とともに以下のサイトに掲載されています。
Forest Products Sector Guide

 

上図は上記のページに掲載されている作成スケジュールですが、昨年から作成をはじめて、もうすぐできるという最終版ということです。

 

85ページにわたるきれいなイラストのガイドラインです。

6社の仮想事例の会社が載っています。

①Continental Paper Co.(製紙会社)、②Biomex(発電エネルギー供給)、③Homes & More (家具の製造販売)、④「Northern Lumber Inc.(大規模な製材所)、⑤Whitford Wipes (多国籍ケア製品メーカー)、⑥Country A government(ある木材輸入国政府)

どれも、主たる製品に木材や木質バイオマスを使う大企業の事例となっています(政府が乗っているのはびっくりですが)。

プロトコルが提起しているフレーム(なぜ?)、スコープ(何を?)、計測と価値評価(どうやって?)、適用(次は何?)の4つの段階の作業のうち、事例では2段階までの記述しかなく、Steps 05-09 of the hypothetical examples are not included in this draft guide for consultation but will be included after feedback and pilot testing.(あとの二つのステップに含まれる(05-09章の事例はこのドラフトガイドには含まれていないが、フィードバックの作業が終わり先行的テストが終了後に掲載される)としています。

いろいろな選択肢を視野に入れた森林その他の自然資本へ影響(プラス面とマイナス面)が貨幣価値(だけではありませんが)で提示される、ということで、その結果を含めたセクターガイドを是非見たいものです。

とりあえず、最終ドラフト段階で意見を言うことも出来るようなので(多分ー〆切間近)、上記の事例の中で、鉄骨のプレハブ住宅のメーカーが木造の家を提供した場合(ローカルな木材と輸入材)どのような便益が比較できるのか、という事例を入れてほしいと意見をいうことにします。クリーンウッド法のこともいっておきます。

また、木材を使った場合他の化石資源を使った場合との比較が、上記の事例分析の中でどのようになされるのかということも注目点ですね。違法伐採やクリーンウッドの取り扱いも注目。

今回は、森林分野の会社へのガイドですが、すでに、食料やアパレルのガイドが公表されています。Sector Guides

このように他の分野の企業の原料調達課程の森林への影響などが記載されているようです(まだしっかりみていませんが)。今後他産業のガイド作成上で自社のビジネスをしていくときに、森林分野をどのように意識することになるのか注目点です。

また、生物多様性のプロジェクトも進んでいるようです。

こう見てくると自然資源プロトコルー大きなエネルギーを感じるプロジェクトです。今後ともビジネスと森林の関係を規定する重要な仕事をしていくことになりそうですね。

わすれていました、上記事例の6番目、A国政府は木材輸入大国なのだそうです。その国がいろんな政策選択をした場合のストーリーも掲載されることになるようです。どこまで説得力のある議論が展開されるのか、目が離せません。

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 勉強部屋20年の蓄積とICUー勉強部屋ニュース221号編集ばなし(2018/1/21)

国際基督教大学の講義は自分の行政経験を分析して若い人に伝えるという準備過程が大変なプロジェクトでしたが、紹介いただいた毛利教授は、16年前に勉強部屋のページをみて、横浜市立大のプロジェクトによんでいただいた方でした。今回久しぶりに声をかけていただき良い機会をいただきましたが、勉強部屋20年の歴史がつまったプロジェクトでした。もう少しフォローアップを頑張ります。

あと二つ、自然資本プロトコルの話。幅広い企業が森林との関係を議論するきっかけになるプロジェクトですが、森林木材産業ガイドはとりあえずの版がもうすくできるようなので、そのときまた掲載します

次号以降の予告、持続可能な調達ー調達先で生じる社会問題の対応(日経エコロジー)、森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムSDGs時代の森林×企業シンポジウム~持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい~、森林の管理・活用に関する総務省行政評価、関係する林業経済研究所が70周年記念イベント国土と森林、新建築誌「CLTに関して」 、木匠塾訪問

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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