ニュースレター No.2172017年9月30日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:都市の地方議会の中の森林の議論ー区議会の森林話(2017/9/30)
2.   林産地と都市を結ぶネットワークをー山長商店榎本社長の死を悼む(2017/9/30)
3. 都市地域の緑の実態と課題ー文京区緑地実際調査から(2017/9/30)
4. 文京区のみどりー勉強部屋ニュース207号編集ばなし(2017/9/30)

フロントページ:都市の地方議会の中の森林に議論ー区議会の森林話(2017/9/30)

ある事情で文京区議会の議論をフォロールのことが多くなっています。

9月10月は決算審議の関係で、まとまった会議が集中する時期(平成29年9月定例議会(9月11日~10月17日))で、9月12日から14日まであった、本会議の一般質問を傍聴しました。

そこで、都会の地方議会の中で、森林に関する議論がしっかりされていることに気がつきました

森林保護と間伐材の利用促進について(自民党森守議員質問

質問

次は、森林保護と間伐材の利用促進について伺います。

7月の九州北部での大雨の被害は今もその傷跡を残しております。過去に例を見ないような大雨が降ったため大きな被害を引き起こしました。九州I北部だけではありません。・・・。なぜ、こうしたことが起こってしまったのかと思います。甚大な雨のせいでもありますが、森林の保護ができなくなっていることも原因に一つにあると考えます。

(中略)

森林の持つ多面的な機能は今申し上げたほかに地球温暖化防止があります。世界をみてもなかなか進まない温暖化対策です。私達は、都会で暮らしていく中で、地方の方々の努力や自然によって支えられていると思っています。農業での食べ物の生産、自然からの恵みの水、そして空気もです。したがって、森林を保護する取り組みの意義があると思います。

長々と持論も含め述べてきましたが、ここで単刀直入に質間をします。文京区として、森林保護の取り組みを他の自治体などと連携して行うことはどうかお聞きします。

東京の水を守ることや低炭素社会の実現を目指して地方と連携しての取り組みを実現したいものです。そこには私達が生活する上での様々なテーマに結びつくような意味があり、多様な区民活動とも連携できる可能性があると思います。

平成22年に施行された「公共建築等における木材利用促進法」があります。この法律を受けて、県レベルではありますが、大いに国産材を使って公共施設を建設した自治体があります。23区でもこの法律に基づきガイドラインを作った区もあると聞いております。そこで、伺います。本区もこのようなガイドラインを作ってはどうかと考えます。

私は、間伐材の利用促進を訴えてから10年が経ちます。
この間、区の施設建設、改修工事などで間伐材等、木を使う施設が多くなったと思います。木を使った公共施設は優しい雰囲気を醸し出していると感じており今後も木材を使った施設の建設に取り組んでもらいたいと思いますがその実績と取り組みへの区長の見解をお聞きします。
地球温暖化対策は待ったなしであります。ー自治体ができることに限りはありますが、区民の皆さんとともに意識の醸成に取り組んでいきたいと思います。区の積極的な取り組みを期待しこの質間を終わります。 

区長答弁

次に、森林保護と間伐材の利用促進に関するご質間にお答えします。

まず、森林保護の取り組みについてのお尋ねですが、

「環境基本計画」は、自然との共生や持続的発展が可能な社会づくりを目指し、環境施策 に総合的に取り組むことを目的としており、森林保護についても、重要な課題と認識して おります。本年度から検討を開始している「( 仮称) 生物多様性地域戦略」には、「都 心にある本区の営みは、森林等、国内外の生物多様性から生み出される自然の恵みに支え られている」という考えを盛り込むこととしております。まずは、この考え方を区民の皆 さんと共有していくことが重要と考えております。また、区と友好交流の関係にある自治 体との連携による森林保護等の取り組みについて、調査研究してまいります

次に、ガイドラインの策定についてのお尋ねですが、

第2次文京区役所地球温暖化対策実行計画」では、環境負荷低減に向けての取り組みとして、基本方針に、環境に配慮した資材等の活用を盛り込んでおり、この方針に沿って、公共施設の整備にあたっては、間伐材の利用を進めております。

次に、区有施設における間伐材等の利用実績と取り組みについてのお尋ねですが、これまでも、保育園や図書館等の改修工事において、間伐材等の利用に努めてまいりました

また、本年度までに、• 小学校6校、中学校5校の学校快適化工事を進めており、これらの改修工事をはじめ、誠之小学校などの改築工事についても、間伐材等の国産木材を使用してまいります。 

①地方の森林の整備の課題が、都市住民の水と安全につながり、②都市の購入資材の選択(間伐材・国産材利用)が、地方の山づくりにつながる。

この二つのつながりが、都市の地方の連携につながってゆく!、地方行政の第一線でこんな議論がされていることに、あれためて敬意を表します。

過去の文京区議会本会議での森林についての議論

2017年02月15日:平成29年2月定例議会本会議(第3日)森守

2014年09月10日:平成26年9月定例議会本会議(第4日)森守

2014年09月08日:平成26年9月定例議会本会議(第2日)藤原美佐子

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林産地と都市を結ぶネットワークをー山長商店榎本社長の死を悼む<2017/9/30>

ウッドマイルズフォーラムの理事で、山長商店社長榎本崇秀さんが突然なくなりました。

こころからお悔やみ申し上げます。

 榎本崇秀さんとのお別れ

榎本崇秀さん。突然の訃報にびっくりしています。

ウッドマイルズ研究会からウッドマイルズフォーラムへ、崇秀さんと一緒に一歩一歩歩いてきた道のり、次の一歩というときに崇秀さんを失って本当に残念です。

ウッドマイルズは木材や地域材の環境性能を輸送過程での環境負荷をきっかけに、消費者や建築関係に訴求しようという運動。地産地消や国産材利用が進む中で建築関係者などに関心を深めてもらいましたが、肝心の木材関係者への普及が今ひとつ。木材の環境的側面を消費者に伝える運動の大切さはよくわかるけど、自分のビジネスに結びつけてとらえきれないという面がありました。

崇秀さんは、都市の消費者と紀州の産地を結びつけるという明確な揺るぎないコンセプトを基に、自社のビズネスにウッドマイルズをつなげて先を考える素晴らしい先見性を示していただきました。

2012年のウッドマイルズ10年の歩みに掲載された「活動事例木材生産の環境貢献の見える化―地域優良住宅先導事業から地域型住宅ブランド化事業へ-」

2013年東京で開催されたウッドマイルズ2013で崇秀さんが報告された「地域型住宅ブランド化事業における環境貢献の見える化について」
もう一回見直してみましたが、内容のすばらしさに感銘します。
こんな事業を普及していくことが、みんながフォーラムを創ったときの目標だったのだ!!

まだまだ、素晴らしさはわかってもこんな水準の運動が普及するにはたくさんの方の努力が必要です。
崇秀さんが示した方向に向けてみんなで頑張ります。
しっかりと見守ってください。
こころよりご冥福をお祈りします。

2017年8月7日
ウッドマイルズフォーラム
藤原敬 



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都市地域の緑の実態と課題ー文京区緑地実際調査から(2017/9/30)

文京区内の緑がうすくなっているのでないか?という問題意識で、文京区の緑実態調査報告書(第7次)(2013年3月(前年調査))をみてみました。(ネット上にはなく、区役所の行政サービスセンターへ(この手の調査結果はネット上においてほしいです))(一部のコピーをおいておきました

調査の全体は以下の通りです

〇文京区の緑をとりまく環境
①基礎調査
〇樹木調査
②樹木調査(公共、民有施設別緑化調査含む)
③保護樹木調査
〇樹林・公園緑地調査
④樹林調査(公共、民有施設別緑化調査含む)
⑤公園緑地調査
〇緑被調査
⑥緑被調査(公共、民有施設別緑化調査含む)
⑦屋上緑化調査
⑧壁面緑化調査
〇緑視率調査
⑨緑視率調査
〇道路および河川に関わる緑の調査
⑩道路内植栽調査(ポケットパーク、グリーンスポット含む)
⑪接道緑化調査
⑫河川緑化調査(今回より新たに実施した独自調査)
〇緑の地域カルテ
⑬緑の地域カルテの作成
〇文京区の緑の特徴と分析
⑭緑の状況、特徴を分析

このうち、区の行政区域全体の緑を把握しているのは、アンダーラインを付けた三つの調査です。

1 保護樹木調査

区内全域の胸高直径50cm以上の樹木を調査しています。(前回の調査までは30センチ以上だった!残念)
樹木位置樹木地図帳を作成(住宅地図、縮尺1/1,500に樹木位置をプロットしたもの)が作成されていて、樹種、樹高、直径などが記録され、報告書には、町内別、土地利用都市構造区分および都市計画による区分別に、集計され、調査結果は、胸高直径別、樹種別、区域別、施設別(公共・民有)に集計しされています。





樹木調査の対象となる胸高直径50センチ以上という大きな樹木は、8割が、学校用地・公園用地・社寺用地にあり、伐採されるケースはすくなく、成長をつづけて直径の大きな樹木になっています。希少価値の樹林帯は守られる体制になっていることは読み取れます。

ただし、今回から調査対象外となった、30センチから50センチの中大径木は前回の調査までの結果をみると減少傾向がみられていました。

2 緑被率調査

樹木被覆地・草地からなる緑被面積の割合




上空からみたこの種の数値は、東京都区部で、公園緑地の増加、農用地の減少、再開発緑地など最近増加傾向になった(平成25年「みどり率」(*)の調査結果について)といわれていますが農用地農用地と関係のない文京区でも同様な傾向です。中高層住宅専用地域での上昇が大きいことから、高層住宅化にともなう、再開発緑地の整備が影響している可能性があります。また、一部住宅地域の減少気になるところです。

3 緑視率調査

均等に配分された格子(メッシュ)に近い特定の交差点(全区で202地点)から人間の視覚に近い画像の中の緑の割合


少し上がっていた緑視率が下がっています。

緑の緑視率(通行者からみた緑)が減少しているのは、「みどりのまちなみ」の充実・維持という点から問題がありそうです。

住宅地の敷地の細分化など、都市の緑の構造的な問題点が見えてきます。

報告書の総括部分で、今後の課題として、「沿道部の緑化、塀の生垣等への変換、河川の護岸設備の緑化など、緑被地の増加と同時に緑視率の向上に結びつく施策を拡充していくことも合わせて必要である。」としています。

緑被率に水面などを上乗せしたみどり率という数値が東京の環境白書に掲載されていますが、都市の緑地の全体像をトータルに把握するための、データの統一化など課題があるようです。

kokunai13-2<buntoshimidori>

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 文京区のみどりー勉強部屋ニュース217号編集ばなし(2017/9/30)
降ってわいた衆議院の解散。税金の使い方や税収の構造が議論されることになりそうです。森林環境税はよいとして、消費税、こども保険、富裕税、国際連帯税・・・議論がふかまることを期待します。とおもっていたら、トランプ政権の法人税減税ですか?〇〇ファースト政権が、どうしても解決できない低税率競争の悪夢ですね。

たまたま、文京区議会にどっぷりつかる用があり、議論の中で、森林環境税、公共建築物の木材利用、生物多様性地域戦略などなど、持続可能な森林に関連する話が結構話題になっていることがわかりました。

都市の地方行政の第一線の森林話、ときどき勉強部屋でも紹介していきます。

次号以降の予告、SDGs時代の森林×企業シンポジウム~持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい~が10月11日に開催されるので、これは参加してきます。また、クリーンウッド法の登録制度が動き始めています。関係する林業経済研究所が登録実施機関になろうと情報収集してきましたが、ある理由で方向転換。いずれにしてもこの制度がいままでの業界団体のやってきた仕事とどんな関係になるのか、その辺はフォローをしていきたいです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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