ニュースレター No.195 2015年11月24日発行 (発行部数:1390部) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原 |
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フロントページ:持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム(2015/11/24)
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10月13日から15日に和歌山大学で開催された林業経済研究会秋季大会で、「持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム」と題する報告をしました。 (概要) 緑の認証森林会議SGECの森林認証における森林施業にかかる計画事項の要求事項と、森林法の森林経営計画の認定における要求事項を、森林生産の管理、生物多様性の保全などの持続可能な森林管理の国際的な基準をもとに比較検討おうというものです。
(報告の背景と問題意識) 森林管理の義務と支援を直接対象とした国際約束をめざした国際森林条約の不調(1992年地球サミット、国連環境開発会議)を背景に、国際的な持続可能な森林管理に向けた活動は、市場を通じたアプローチが一つの方向性を示すものとなりました。第三者により認証された森林をベースとする「森林認証システム」、行政機関が判断した森林法の手続きの合法性をベースとする「合法性証明システム」など、です。 持続可能な森林管理を巡る国際的レジーム形成に向けて、市場を巻き込んだ森林認証システムは重要な役割を担っていいます。明確な枠組み/グリーンな消費と結びついた外部からの圧力の可視化/第三者による信頼性の担保などによるものです。 ただし、中小企業のネットワークが支配的な市場では、森林認証の普及に第三者管理によるコスト問題n障害などがあり、行政との連携を強めることで出口は見えないだろうか、という問題意識をもって取り組みました。 (森林経営計画の認定のための要求事項) 森林法11条5項、同施行規則38条などに規定されている、森林経営計画の認定基準の概要は以下の通りです。
認定をする、市町村が作成する市町村森林森林整備計画が認定基準で重要な鍵を握っていることがわかります。 (SGEC森林管理認証要求事項 7の基準) SGECの森林管理認証基準は、「SGEC森林管理認証基準・指標・ガイドライン」に規定されており、以下の7つの基準の下、38の管理認証指標、94の管理認証ガイドラインからなっています。
SGEC森林管理認証基準・指標・ガイドライン(改正)(SGEC文書3 2012 理事会2015.4.1)(SGEC文書全般(2015.0401)の中に掲載) (二つの基準の比較方法) 二つの基準の関係を、第一にSGEC 38の指標を以下の基準に基づき、森林経営計画の必須事項から、同計希求では計画事項でないので対応していない、まで5段階で評価しました。
そして、必須事項でないBからDまでについて、森林経営計画に含めるとしたらどのような課題があるのかを検討しました。
この結果が、以下のとおりです (結果の検討) SGECの求める要求にたいして、現在運用されている森林経営計画の作成過程の実態は、多くの場合対応していないといえるでしょう。 グラフ左側、「経営計画の計画事項ではないと理解されているので対応していな」が38のうち、29をしめています。本当に計画事項でないのかといえば、そうではなく、仮にSGECの要求基準に合うようにするには、(市町村がその気になれば)、市町村森林計画にSGECが要求する基本的な事項記述し、森林経営計画の長期方針の部分に、市森計の該当項目を引用し、この部分は特に留意して実施する、と記載するなどの対応が可能です。 次に、グラフの右側ですが、SGEC基準に対応するのに必要なことは、すでに対応しているものと森林計画策定時・実施過程の注意義務で対応できるものが6割、コストの負担を含めた所有者のコンセンサスなどが4割程度でしょうか。 全体として「きつめな評価でないか」とフロアから議論がありました たとえば、基準3指標1は「土壌及び水資源の保全に与える影響を事前に把握し、森林管理計画等や実施過程における悪影響を最小化するよう努めなければならない。」は今回D1に分類しています。この指標のガイドライン(3-1-1)に 「伐採、林道開設等の林業活動における環境変化や保全水準を認識するとともに、環境に配慮すべき項目を整理し、従業員や委託・請け負わせ先に周知徹底が図られなければならない。」といった記述があり、「最小化するよう努める」具体的要求事項を現在の森林経営計画がカバーし切れていないという市町村の担当者の意見に基づくものです。 これらに対応するには施工上のコストがかかるものでなく、計画時と施工時の注意がしっかりできる体制を求めているものでしょう。少しの工夫でクリアできるものがたくさんある、というのが主たるメッセージです。 (報告の意義と課題) このような対応の可能性の議論にどんな意味があるのか?フロアから批判的な議論がありました。「日本の森林が持続可能な森林経営であることのグローバルな発信をすることがどの程度重要なのか」という認識の問題ですが、もしも重要なのだと考えるなら、森林法の合法性の要求事項と、グローバルなスタンダートになりつつある森林認証の基準の関係を議論していく意味は大きいと思います。(この報告の準備過程で、林野庁の担当者とも話もしましたが、「オープンの議論に期待する」とというポジションです。) この評価の客観性が問題、という厳しい指摘がフロアからありました。市町村の森林経営計画の担当者の方と一緒に作業をしたとはいえ今回の報告のABCD部分について客観性はありません。「どういう議論のプロセスが必要かという提示をしたという意味があ 今後、SGECだけでなくFSCの文書も対象とする、客観的な評価といえるシステムの検討などいろいろ課題が見えています。 座長からは、「過去に「 森林認証制度が発展していけば、森林法はいらなくなる?そんな議論も含めた基本的な制度問題を議論できる、大変有益な機会でした。
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「木材に利用が切り拓く未来」(2015/11/24)
国立研究開発法人森林総研の恒例の公開講演会が今年は10月15日「木材に利用が切り拓く未来」のタイトルで開催されました。
木材利用拡大分野は、日本が世界に発信できる重要な分野です。 旧来の住宅新築分野から新たな分野に木材の利用が拡大する転換期に、森林総研という国立研究機関が、この分野の研究開発の主人公であることを主張する、力を込めた情報発信です。 junkan3-3<ffprimkouen2015> |
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日本から世界への森林分野の情報発信News Leter rom Japan Foerest Information Review(2015/11/24) 勉強部屋の海外への情報発信部分を担う、英語のページは、Japan Foerest Information Reviewとタイトルをつけていますが、この情報発信を強化するため、ニュースレターを配信することとなりました。 第一号は以下の通り、世界林業大会で交流した方々に以下のように配信されました。
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循環社会の主役の再生可能な木材利用の拡大という課題を、どんなプレーヤーが担っていくのか。 住宅に加えて、大規模建築への木材利用を視野に入れた場合、公共建築物の建設の企画建設の主体である国・地方自治体とともに、企業のビジネスの中での社屋・工場・店舗の木材利用、自社の商品展開の中での木材利用がどのようにすすで行くかは重要なポイントとなります。 そのようなタイミングで、日経BP社から、標記の本「企業に広がる都市の木づかい」が発刊されました。
オフィス、商業施設、コミュニティ施設に三つのカテゴリで50近い木材利用の実例が、写真解説で紹介され、魅力的解説書になっています。 地方自治体が自分の地域の県産材・地域材利用を進めるのは、単純な論理ですが、グローバルマーケットを視野に入れた企業が、他方で国産材利用にどんな切り口で迫るのか。 解説が気になるところです。 すこし、長文になりますが、引用します。 ■建物の環境評価でも国産材利用は有利にまだ広く認知されていないが、国産材からつくる伐採木材製品(H WP = H arvested W oodProducts) の活用は「炭素固定」としてカウントし、各国のC02排出削減量に計上できる。2011年に南アフリカ・ターバンで開かれた第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17) で、新たに認められたものだ。それまで木材中の炭素は、木材が伐採・搬出された時点で大気中に排出されるものとみなされていたが、現在は国産の伐採木材製品を使うメリットが、国際的なルールのなかで位置付けられている。 木材を運搬するのに消費するエネルギーという環境負荷の点でも、岡産材の利用は大きなメリットがある。今、日本の木材自給率は3割弱で、多くを輸入材に頼っている。しかし、船で海を渡ってくる運搬の際に、多くの化石燃料を消費し、C02を排出してい木材の輸送に伴う環境負荷を示す指標に「ウッドマイレージ」がある。木材の「輸送量」と「輸送距離」との掛け算ではじき出し、輸入が多い国ほど高く、少ない国ほど低い。輸入の多い日本のウッドマイレージは、米国などよりもはるかに大きく、環境に負荷をかけているのが現状だ(図1・6)。 海外では、建物などの環境性能を評価する際、地域の資源の使用は有利にカウントされる。そのため、建物のクライアントやオナー、あるいは設計者の間に、自国の木材を積極的に選ぶ下地が整っている。日本でも同様に、こうした指標を使って国産材利用を進める余地がある。 以上です 企業の木材利用の新たな動向に、ウッドマイルズが力を発揮できるか注目されます。 energy2-69<kigyoukidukai&WM> |
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《国際セミナー》違法伐採対策と合法木材貿易の振興(2015/11/24) オランダの経済大臣が来日されてのを機会に、オランダ大使館が標記セミナーを開催したので、出席をしました。議員会館で開催されたこのセミナーは自民党、民主党で違法伐採問題の法制化などを検討している関係議員も出席し、興味深いものでした。
(背景) 2014年のグレンイーグルスG(サミットでの違法伐採対する取り組みの呼びかけに応えて2005年に日本はグリーン購入法で国の調達する木材木材製品について、合法性が証明されたものであることを義務づけ、その証明のため木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン を公表しました。それから来年の2月で10年がたちます。 一方、EUは2003年より森林法の施行強化などに関する二国間合意を途上国との間で求めてきましたが、その対策を強化する意味で、2013年より「EU木材規則」を成立施行さています。 本規則により、1)違法に伐採された木材や違法伐採木材を用いた製品のEU市場への出荷が禁止される(第4条1項)、2)EU市場に最初に木材製品を出荷するEU内の取引業者に対し、「デューディリジェンス(適切な注意)」を行使するよう義務付け(同2項)、3)域内取引業者は自社の供給業者および顧客について記録し保管する(第5条)ことが規定されました。 米国では2003年にレーシー法の改正、オーストラリアでも新たな法制が施行されるなかで、「空白となった日本」に、違法伐採の材木が輸入されるリスクが高まってる、との主張がされています。 左の図は、今回のセミナーで欧州木材貿易協会 アンドレ・デ・ボア氏が、示したものです。 (日本とEUの違法伐採対策の比較)
二つのシステムを比べると、日本のシステムはすべてのサプライチェーンの証明を求め、それにグリーン購入法によるメリットを与えるのに対して、EUは100パーセントとは行かないが善良な管理者としての努力義務を与え、それに反したものに罰を与えるとなっています。 中国の木材の輸入業者と話をする機会がありますが、すべての木材のサプライチェーンの管理を要求される日本の場合、EUの適切な注意義務ではクリアできない、という意見を輸入に従事する大手の企業の担当者から何度も聞きました。当然、罰則がつく場合と、恩典がある場合での条件のハードルが前者に軽くされるのは当然だという話をすることがあります。 他方で、EUのような罰則規定があるかどうかの点はシステムの信頼性の観点から大きなポイントで、前述の日本のシステムのハードルが高いという人は、自社の社会的責任をクリアするために検討している場合であり、それがはずれると、日本のシステムの信頼の担保が、「業界団体の社会的責任」に一手にかかってくることになり、大きな問題点ともいえます。 「海外の違法行為を根拠とした日本国内での罰則規定」という話を霞ヶ関中でした途端に、法律策定の専門家からは「あり得ない」と一笑に付されるのが目に見えるようですが、最近は法制局の専門家も巻き込んだ検討が行われているようです(セミナーでの小島議員の話など)。10周年を迎えた日本の業界団体認定のシステムに新しいステップが加わるのかと、期待をしています。 (EUにとっての業界団体認定に意味) 今回のセミナーで「意見がある人はいませんか?」といわれて、一言話をさせてもらいました。「日本の業界団体認定の仕組みをEUでも研究して下さい。輸入材でなくEU域内の違法伐採問題のリスクに対処するため、中小企業のサプライチェーンの多い地域で対処するには業界団体認定のような仕組みをつくっておくことは、(それですべてが解決するという意味でなく)大切なステップになるはずです」。 いつもEUや中国の人と話すときにいっていることです。細かいサプライチェーンの管理をするために、業界団体の社会的責任をどのような形で発揮させていくのか、どのような限界があるのか、今後同じような課題を抱える中国やEUの人たちと、日本型の業界団体認定の発展方向の議論が進むことを期待しています。 boueki4-58(gohowood&EUTR) |
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