地域の未来は未来は拓かれるか?ー自伐(型)林業で定住化の流れー第3回勉強部屋Zoomセミナー(2022/2/3)

1月28日第3回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナーを九州大学大学院農学研究院佐藤宣子教授をお招きして開催しました。

演題は「地域の未来は未来は拓かれるか?ー自伐(型)林業で定住化の流れー」

「国民の田園回帰」や地方の移住の動きに重要な役割を果たしつつある「山林所有の有無にかかわらず、森林の管理や施業を自ら行う自立自営型」の『自伐型林業』

自治体と連携した地域政策でどんな役割を果たしていくのかな?さらに、森林の未来にはどんな影響を果たすのかな?

30名ほどの参加者と佐藤教授の話を聞いて議論しました。

佐藤教授のプレゼン資料はこちらのページに→、持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第3回開催

以下藤原が概要をつまみ食いして紹介します

(講演の全体像)

講演は右のように、6つのセッションで構成されています。

順に説明

(書籍紹介)

今回の講演内容のベースは一昨年出版された左の書。「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」(林業改良普及協会

全国北海道から九州まで、3年間かけて17か所をあるかれて、200名以上の関係者にヒアリングをされた結果。

昨年の令和2年度版森林林業白書にもコラムに引用されました!!

(自伐型林業とななにか?)

自伐林家と自伐型林業という二つの言葉があります。

主人公である言葉の定義をしておきます。(知人の森林関係者でないかたが、「なんのことを話しているのかわからなかった」といわれましたので)

自伐林家 という言葉が先にあり(1970 年代~) 林業(素材生産)の家族経営は戦後的なもの–主に所有林を所有者自ら が伐採・搬出(家族経営的)、林業の担い手(戦後造林木の間伐施業)として主に 西日本地域 で注目 されたんだそうです。

そこで、自伐型林業 (2010 年代~)は・・・

「山林所有の有無、あるいは所有規模にこだわらずに、森林の経営や管理、施業を自ら(山林所有者や地域) が行う、自立・自営型の林業 」

「山林を保有していない場合であっても、自治体や集落が有する山林を保有していない場合であっても、自治体や集落が有する 山林や私有林を借りて、あるいは所有者から受託または請け負って 、小規模な林業をおこなうこと」

地域に定着した小規模事業体が森林を取り扱う将来を見通した安定的な事業が想定されますが、こんな形が本当に広がっていくんでしょうか?

(自伐型林業は広がっているの?広がる可能性あるの?)

広がる可能性をしめしたのが、右の図。戦後の今の伐採時期になった森林山づくりを担ったのが農家林家(小規模の森林を所有する農家)で自伐林業なんですね。第一世代。

その子の世代が定年後に移住Uした層がおり、いま、移住しつつあるのは、第三世代。

都市から農山村への移住の傾向は、(後述)

左図は素材生産がだれによって生産されたか、5年に1回の農林業センサスに基づいて作製した図。四つの四角の右上Aが自家保有林の小規模生産、右下Cが他者の山林の小規模生産、左上Cが自家山林の大規模生産、左下がDが他社山林の大規模事業者です。

Aが自伐林業、Bの一部が自伐型林業です。

上の図が2010年、下の図が2015年、2010年にはAもBもシェアを増やしたが、下の15年はシェアを減らしています。

国産材時代といって生産量が大きく増える中で、それを担ったのは大規模な事業者Dであり、自伐型林業は地域の活性化をになってはいるが、大きな物流のトレンドをになうような働きはしていないということでしょう。

(自伐型林業の農山村地域での役割)

上記のように物の流れを数値でみると自伐型林業のパワーがよくわからないんですが、人の流れを見てみると、自伐型林業の可能性がいろいろわかってきます。、

右の図が、市町村の地域政策お中で、自伐型林業を掲げている市町村の図です。

でどころは、NPO法人自伐型推進協議会の作製した、自伐型林業展開自治体・地域推進組織MAP

昨年の12月現在で、54自治体が同NPOと連携して自伐型林業の研修、などの支援を行っているんだそうです。

例えば群馬県のみなかみ待ち自伐型林業研修2021

田園回帰への動き都市から中山間地域への移住東京23区、初の「転出」超過 専門家「この流れ簡単に戻らない」、などなどトレンドの最先端をとつながって、市町村の定住政策として自伐型林業が位置づけられているんだそうです

地域おこし協力隊と連携した自伐型林業の普及例(左の図、島根県津和野町協力隊募集、安芸太田町青森県九戸村

(農山村に移住ということ)

このような仕組みが整ってきたので少しづつ自伐型林業と関連した農山村への移住が進み始めています。

どんな人たちが移住を始めているのでしょうか?興味深いので、議論の中でお聞きした。

「自伐型林業をやりたいと移住している人達は、専業で林業を行うことを目指しているのでは無く、副業として位置づけている場合が多い。 1990年代までの自伐林家は農業と林業を組み合わせた形態であったが、近年ではITやウェブデザイン、木工、アウトドアスポーツのインストラクターなど多様となっている。 自ら生活力があり、自らのライフスタイルを確立する先進地と中山間地を位置づけている人が多い気がする。」

コロナでさらにライフスタイルが変わってきたのでしょうね。

どんな人たちが担い手になるのか?興味深いです。

(林業の産業政策、森林政策の中での自伐型林業)

1時間に及ぶ講演のまとめの一枚(右)の最後は、「産業政策や資源政策としても自伐(型)林業を位置づける重要性」という言葉です。

今後の重要な課題と言われました。

関連して、昨年6月の森林林業基本計画には「自伐林家、自伐型林業」の言及がない、有機農業運動と自伐型林業運動の親和性、自伐林業による施業は環境保全型林業といえるのか?たくさんの重要な指摘が講演内容に含まれています。どうぞプレゼン資料を参照ください。

また、講演のあとの議論の中で、森林組合の管理形態についての自伐型林業運動の重要性とう議論もありました。

たくさんの需要な課題があるので、勉強部屋でもしっかりフォローしていきます。

さて、中山間地域の活性化といった地域政策をさらにこえて、林業政策、森林政策の中での自伐型林業をという問題提起を少し検討してみます。

(次世代の森づくりのリスクは)

国産材の供給量がたかまり、皆伐が広がっていますが、それを主導しているのは規模の大きな素材生産事業体(前述のDの事業者だけがシェアを増やしている)

それらの伐採跡地の資源が次世代の森林づくりをしっかり形成していけるのか?伐採跡地の環境的保全のリスクはないのか?というのが二つの資源政策上、産業政策上の課題だと思います。

これに対して森林林業基本計画は、伐採跡地の人工林の形成が3割程度と、リスクを指摘しています。

自伐型林業は基本が間伐か小面積皆伐であるうえ、地域に密着した自伐型事業者による運営であり、地域の資源を地域の将来にとって形成とい意思も働きやすく、リスクが少ない形態であることは間違えないと思います!!

ただし、問題点はどれだけ広がる可能性をもっているのか?この点、佐藤教授に「自伐型林業の主流化はどんな見通しなのか?」と伺うと、「主流化するとは考えていません」というお話でした。

森林林業基本法では今後10年間で国産材生産量を1千万m3増やして2030年までに4千万m3とすることとしています。自伐林家の数は、先ほどのAグループの人たちが1万事業体程度、頑張て自伐型林家がもう1万人増えるとして、(今後自伐型林業の一人当たり年間の生産量が300立方メートルとして)自伐型林業が担う素材生産量は6百万m3ですね。2割程度を自伐型林業の人たちが担う絵がかけますね。

その他のところは大規模生産、大規模皆伐。

この二つのスタイルを、どんな線引きをしながら、配置し、環境に優しい自伐型林業が少し広がってくるというインパクトを、大規模事業者がどのように受け止めてガバナンスの強化を図っていくのか?ということが資源政策森林政策の課題の一つになってくるんでないかと思います

今後ともこのテーマ続けていきます。

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