『最新図説 脱炭素の論点 2025-26』ーご紹介(2025/11/30)

最近出版された、最新図設「脱炭素の論点2025-2026」という書籍を送っていただきました。

案内文によると、「脱炭素をめぐる焦眉の問題をわかりやすい総合知の形で、各分野の専門家や国民各層に伝えるために、気象学から工学、農学、人文社会科学まで、幅広い執筆者(2025‐2026年版は執筆者総数59名、頁数555頁)による図説の形で隔年で刊行しているもの」なのだそうです。

(イントロ)

編集主幹堀尾正靱氏共生エネルギー社会実装研究所による、「2025-26年版の刊行にあたって」というイントロは以下の通り

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世界は激震の時代を迎えています。いま、気候危機回避のために、リオサミット→京都議定書→パリ協定と、国際的な協調の中で構築されてきた大きな合意と努力の体制が、揺さぶられています。科学的事実をみれば、気候危機がこれからもいやおうなく激化していくことが分かります。
前回の出版からわすか2年という短期間に、猛暑日も激増し、山火事、水害などの被害も格段に大きくなりました。もはや、まった<猶予はありません。日本国は、2025 年2月18 日、次のNDC(国の温室効果ガス削減目標)として、2035 年度において60%、2040年度において73%まで削減すること(2013 年比)を、国連気候変動枠組条約事務局に通告しました。
しかし、本格的な取り組みはかなり遅れており、課題は山積しています。
本書2025-26年版では、前回から、章の構成も見直し、2025-26 年段階にふさわしい重要な論点について最新の情報と議論を提供したつもりです。
「最新図説脱炭素の論点」の出版の特色・ねらいは、以下の3点に要約できます:
①「総合知」の時代にふさわしく、分野横断・文理連携の編集・執筆体制で、気候危機の実情とそれへの対策(脱炭素)の全体を、すべての人々の目に届くように、伝えます。
②「日本国民の生存と未来のためには、どのような脱炭素が必要なのか」を、考えるための十分な資料を、わかりやすく提供します。
③企業で、地域で、家庭で、経済性の成り立つ形で、省エネ・再エネを中心とするエネルギー転換を進めるための指針を提供します。

本書は以下の5つの章から構成されています。
序章「気候危機」と「脱炭素」総論ー一明るい未來のために
第1章気候危機の科学と対策
第2章元気な社会を創る脱炭素
第3章気候危機対策の全体像
第4章「脱炭素」への技術的対策
序章は、通しで読んでいただくことを前提にしています。それ以後の章は、通して読むことも、項目こ、とに百科事典のように利用することもできます。各項目は、読み切りを前提として書かれていますので、一部の項目間には内容の重複も、あえて存在させています。
なお、気候変動問題のディテールについては、執筆者間の見解の調整はしていません。各執筆者はそれぞれの範囲で、内容に責任を持ちますが、それ以上ではありませんので、ご了解ください。本書が、皆様のお役に立つことを、祈念しています。

ーーー後略

 序章 「気候危機」と「脱炭素」総論─明るい未来のために

補論 その他の論点と政策の展開

第1章 気候危機の科学と対策($1から$23)
 1 地球温暖化とその原因
 2 温室効果ガス排出の現状 
 3 地球温暖化の影響
 4 気候危機の科学的理解と対策の経緯
 5 気候危機回避の課題

第2章 元気な社会を創る脱炭素($24から$46)
 1 「脱炭素」で日本経済と地域を活性化する
 2 全分野で対策・戦略を進める
 3 地域レベルの適応対策

第3章 気候危機対策の全体像($47から$74)
 1 温室効果ガス対策
 2 ゼロカーボンのためのエネルギー構造改革概論
 3 制度と政策で「脱炭素」を支援する

第4章 「脱炭素」への技術的対策($75から$115)
 1 エネルギー技術論の基本
 2 省エネ・エネルギー転換による需要削減
 3 再生可能エネルギー
 4 水素・アンモニア・原子力
 5 エネルギー輸送・貯蔵、分散型エネルギーシステム
 6 再エネの拡大にあわせた電力市場設計
 7 適応のための技術

附録 世界と日本のエネルギーと温室効果ガスデータ

(全体の中での森林に記載箇所)

右が目次です

その中で、森林の関係あるのは、以下の4つのセクセクションです

$7 土地利用と気候変動… •••98
$10  森林によるCO2 吸収一森林生態系の炭素サイクル・・… •110
$46  温暖化対策と森づくり政策… ••254
$97 バイオマスの熱利用•発電·… ••466

115セクションのうち4セクション

其々内容を見てまいります。(セクション名とタイトル、要旨、筆者)

($7 土地利用と気候変動)

「震業、林業及びその他の土地利用部門の気候変動の緩和策は、大規模な温室効果ガスの排出削減と除去の促進の可能性が期待されている重要な対策の一つであり、適切に実施すればコベネフィット(相乗便益)を生み出すことができます。」
by森田香菜子(慶応義塾大学准教授)、→本文

($10  森林によるCO2 吸収一森林生態系の炭素サイクル)

「森林は樹木の光合成によりCO2を吸収し有機物として固定しています。有機物は枯死・分解して大気に戻りますが、人間がその前に収穫し一部を利用する場合は、排出があっても人為的排出とはみなされません。」
by相川高信(PwCコンサルティング(合)マネジャー)→本文

($46  温暖化対策と森づくり政策)

「京都議定書以降、温暖化対策を名目としたわが国の森づくり政策は、CO2の貯蔵を軽視し、本末転倒した「荒い間伐」や「短伐期皆伐施業」を選択しました。ストックを重視する真の温暖化対策施業が求められています。」
by泉英二(愛媛大学名誉教授)→本文

($97 バイオマスの熱利用•発電)

「世界で最も多く使われている再生可能エネルギーであるバイオマスは、種類も利用方法も様々で、非常に良い(持続可能な)利用から悪い利用まであり、十分な理解のうえで利用を進めることが大切です。」
by泊みゆき(バイオマス産業社会ネットワーク理事長)→本文

紹介は以上

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(コメント::森林吸収量の評価のしかたと、課題)

日本国土の2/3が森林であり森林は減っていない、ので、日本の森林の状況が気候変動問題に貢献していることは間違えなく、そのことがNDCのように、、評価されるのは、嬉しいことで、そのようなことを中心に脱炭素の論点が記載されいるのかな?

NDCの中で、森林の役割について、林野庁がネット上で解説しています
パリ協定(2020年以降)の下での目標
森林吸収量の計上対象となる森林とは

ここに記載されているようように、NDCでは日本の森林の吸収量全体を掲載いするのでなく、1990年以降の「新規植林」、「再造林」、「森林経営」及び「森林減少」といった人為的な活動による二酸化炭素の吸収・排出量の算定・報告を行っています。」

重要なことですね。「森林経営に手をかけた森林だけを評価する。」ただ、本来ならば、間伐した森林の成長量と、間伐しない森林の差を計算して、その量を間伐面積に乗じるという計算をすべきなのでしょうが、そのような面倒臭いことはやっていません。「森林経営」の内容は各国がそれぞれ決めることと(パリ協定では))

そういう弱点があるので、$46指摘されるように、「温暖化対策を名目としたわが国の森づくり政策は、CO2の貯蔵を軽視し、本末転倒した「荒い間伐」や「短伐期皆伐施業」を選択しました」、と批判されるような側面が出てきているのですね。

ということで、この論点の指摘は、林野庁公式見解だけでなく、学術的な蓄積をふまえた厳しい指摘も見られます。

本当に新し情報が抜け落ちている面もありますが・・・そして、日本人が熱帯林に貢献する資金問題など、グローバルの視点がないかな?

いずれにしても、気候変動問題に貢献する森林の役割を検討していくうえで、重要な書籍だと思います

最新図説 脱炭素の論点 2025-2026

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