第五回世銀経団連共同セミナー
「持続可能な開発と環境―生物多様性保全と森林管理に向けた企業・NGO・国際機関の連携」への発言要旨
森林総研 藤原敬
20年間の熱帯林保全レジーム(国際秩序)追求の中での炭素基金・温暖化対策の意義
要旨
80年代初頭に森林の減少荒廃が地球環境問題として認識されるようになってから20年がすぎ、未だに人類は解決の手段を手に入れていないのだが、温暖化防止の国際的な枠組みの中で生み出された経済的手段をテコとした企業・NGOと政府機関の連携による資金の流れが一つの展望を示している。
(20年間の各アクターの提言のレビューと、森林に関するレジーム形成の困難の要因。途上国の拒否権と熱帯林への資源配分の失敗。マーケットを通じた資金の配分の提案としての炭素基金の意義など)
発言内容
森林総研の藤原です。つくばにある研究所に勤務していますが私自身は研究者ではありません。林野庁で30年間行政官をしていました。私が行政官をしていた30年間はどこの国の森林官も共通していると思いますが、ローカルな森林問題が途中から突然地球環境問題と言う大きな文脈を与えられたとう時期で、私自身もとまどいながらも国際熱帯木材機関を日本に誘致するとかウルグアイラウンドの交渉など国際問題に携わってきました。
CIFOR理事長のカモウィッツさんが言われたように、20年前にFAOが熱帯林が急激に減少していることを発表してから20年たった2000年に相変わらず同じスピードで熱帯林が減少しています。地球サミット以来、森林問題はカーボンシンクのこともあるし生物多様性の保全のこともあるし、もっと重要だと私が思うのは、再生可能で製造エネルギーが少なく来るべき循環社会にとって必須の資材である木材を生産する装置としての森林、これをトータルに保全するめの国際森林レジームをどうして構築するか、ということをが議論されてきました。しかし、国際森林条約をつくる作業は未だに展望を見いだせていません。この間、他の環境分野で、はオゾン層を保全するためのモントリオール議定書だとか、今日のテーマとなっている気候変動レジームとしての京都議定書などの他のレジームが成果を生みだしてゆく中で、森林レジーム形成がうまくゆかなかった。何故なのかと聞かれるときがあります。
私は誤解を恐れず言えば、森林問題の発生が途上国に集中している、ということにあると思います。他のレジームであるモントリオール議定書・京都議定書は先進国のフレームで進んでおり、途上国の参画は後送りあるいは先進国と違った基準を適用するダブルスタンダードを採用しています。これを不満として米国は京都議定書を離脱したわけではありますが。森林の課題は途上国の農村部に、人と物と金を配分するという大変難しい重要な課題を負っています。これが出来れば開発と環境問題で解決できないものはない、というほど困難だが重要な問題だと思っているます。
二人のご意見をお聞きしていて最近の事情を改めて感じました。いろいろ幅広い話をお聞きしましたが、具体的な話として提示されたのは炭素基金の話です。
ビジネス関係の方々と最近話をしていて森林問題を話をするテーマが広がっていることを感じます。一つは、バイオマスエネルギーであり一つは、二酸化の吸収源という問題です。気象変動枠組みレジームの中で森林問題を話さなければならないと言うのは複雑な心境ですが、そんなことにはこだわっていられない重要な話です。
京都議定書の吸収源の枠組みについて、今年の12月のCOP9を目指して議論しているところ、まだまだ、3割ぐらいの合意しかできていません(最近の専門家会合のあらまし)。基本的に吸収源の問題を気候変動の枠組みに入れたくないと思っている人がいるので、ネガティブな対応をしているのが原因です。
私は森林の吸収源としての働きは経済効率的でもあるし技術的にも確立しているので、重要な手段だと思っています。いくつかの課題があり、例えば、どうモニタするか、追加性、ベースラインをどうするかなど信頼できる精度としてどうするかいくつか宿題は残っていますが、などなるべく簡単な手続きができ、わからないことは走りながら考える、ということでスキームが出来ることを期待しています。
世銀の炭素基金も京都議定書の合意と平行して運用されることになるのだと思います。これから12月までの国際的な議論の結論が重要なところで林業関係者は重要だと思っていますが本日お見えの方々も是非うまく吸収源の話が気候変動の枠組みに入り森林の保全に力になるように応援していただきたいと思います。
以上
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