「持続可能な地球環境を未来へ」(2003/05/11)

「持続可能な地球環境を未来へ」と題する本が出版されました。横浜市立大学の2002年度の総合講義「国際社会の将来」の一連の講義に基づいて編集されたものですが、小生も「地球環境と持続可能な森林管理」という章を分担しています。

国際政治学の分野で、主権国家が併存し中央政府が存在しない現在の国際社会の中で、国際的秩序を保っていくことが可能なのだろうか?また、それが可能になる条件は何か?ということが、重要なテーマとなってきました。それまず最初に戦争と平和をテーマに展開され、その後主たる議論は越境する公害の規制や地球環境の保全のテーマを巡って行われているようです。

この本の編者である横浜市立大学の毛利助教授はこの分野の気鋭の研究者ですが、1年半前に一通のメールをいただ時には、一面識もありませんでした。毛利先生のメールには、小生のホームページをご覧になってコンタクトをしていること、そして「なぜ、森林の管理に関する国際的な枠組みが出来ないのか、この10年を振り返って話をしてほしい」という趣旨が書かれていました。「国際的な森林の問題と日本の林業の問題とが密接に関係があり、日本の問題も最終的には国際的な枠組みが出来ないと解決できない(という面がある)のではないか」という問題意識を持っていた私としては、思い切って引き受けさせていただきました。

国際政治学の概論を聴講する学部の学生に森林をテーマをお話しするのですから、どうしても地球森林概論風になり、内容がちょっと物足りない面があります。ただ、私個人としては、森林問題の国際合意の問題を、オゾン層の保全や温暖化問題などの課題などと比較して考える機会が与えられ、いろいろ勉強させてもらいましたので、その一端は紹介させていただきました。

ポイントは、他の分野と共通の点と異質の点がありますが、第一は、森林の国際管理の課題は、「途上国の開発権の調整」という、他の分野が先送りしまだ本格的には取り組まれていない核心的な課題に真っ正面から取り組まなければならないこと、第二に、国と国との関係だけでなく、緑の消費者などの動向が鍵を握っていること、第三に、日本が間違えなくキープレーヤーの一人であることなどです。そして、森林の国際管理が出来るようになった段階で国際ガバナンスの質が変わるのではないか、と考えられるくらい困難があるけれど、それだけ重要な問題であることなのではないか、と改めて思いました。

全体構成は次の三つに分かれています。
第1部 環境と開発のグローバルガバナンス(総論編)
第2部 ガバナンスを担う多様な主体(国、自治体、産業、市民という縦糸)
第3部 地球環境と持続可能な開発の課題(気候変動、生物多様性、森林、有害物質、海洋、淡水という横糸)

興味のある方はご一読下さい。


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