気象変動枠組み条約の「伐採後の木材製品に関するワークショップ」(UNFCCC workshop Harvested Wood Products)が8月30日から9月1日にかけて、ノルウェイのリレハンメルで開催されました。
京都議定書で温暖化ガスの吸収源としての森林の評価方法では伐採した場合、排出と見なされるのですが、木材や紙製品として蓄積される二酸化炭素を評価すべきだという主張に基づき、そのカウント方法についての議論が進められています。今会合は、条約の事務局が関与した重要な技術会合でした。
京都議定書によって、森林の吸収源としての推計、報告、計算の方法が決められたことにより、日本の森林政策に重要な影響があったことを考えると、ポスト京都議定書における木材の取り扱いにより、木材の消費や貿易政策に大きな影響が出てくる可能性があります。
会議に出席した、森林総研の外崎さん、環境研の橋本さんから話をきくことができ、小HPとしても関連資料の整理を試みてみました。(第21回科学技術補助機関会合SBSTAに向けたWSの結果報告書)
伐採木材を条約上どう評価するかという手法が、現在のところ4つテーブルに上っています。現在京都議定書で採用されているIPCCの暫定法(the IPCC default approach)と、1998年のセネガル専門家会合で提案された大気フロー法(the atmospheric-flow approach)、同蓄積変化法(the stock-change approach)、同生産法(the production approch)の三つです。(それぞれについては小HPポスト京都議定書の吸収源対策にむけてー秋の学会から(2003/10/14)で簡単な説明がしてあります。くわしくは、外崎真理夫(2004)、福田淳(2004)、セネガル専門家会合報告書(英文))
今回の会合は、昨年(2003年)9月の開催されたボンにおける専門家会合(会合の概要)を受けて12月の第19回条約科学技術補助機関会合(SBSTA)に提出されたテクニカルペーパーをベースにして、@伐採後の木材の推計、報告、計算の範囲と定義、A伐採後の木材の複数の計算手法による、先進国途上国別の影響、持続可能な森林管理とバイオマスの利用、輸出国輸入国及び貿易などに及ぼす影響、B木材製品の推計報告手法に関する事項、を議題として議論されました。(今会合に関する条約事務局のHP)(第21回科学技術補助機関会合SBSTAに向けたWSの結果報告書)
提示されている評価の方法は、輸出国の輸入国にとって全く逆の利害関係になるため、議論には政治的な要素をはらんでいますが、信頼性のあるモニタリングができるか、締約国が責任を持った管理ができるか、持続可能な森林経営のインセンティブになるか、木材の耐久利用の促進になるか、貿易の増加による輸送ネルギーの排出をもたらさないか、などの基準による、落ち着いた議論の展開が必要だと思います。
蓄積された木材が持続可能に生産されたものかどうかといった点から、森林認証制度の議論が気候変動枠組み条約上で進展する可能性もあります。また、木材の蓄積量と輸送過程のエネルギーの比較という形で、ウッドマイルズの議論の発展にも関係してくる可能性もあります。
【参考資料】
最近、日本語の情報も提供されるようになってきました。以下は必読文献です。
外崎真理夫(2004)「『伐採木材』に関する専門家会合」、木材工業 Vol.59、No.1(筆者と日本木材加工技術協会の承諾を得て提供します本文pdfファイル)
福田淳(2004)「気候変動枠組み条約における伐採木材製品の取り扱いに関する考察」、林業経済 Vol.57、No.5(04年8月)(概要pdfファイル)(本文テキストは筆者本人に請求下さい)
橋本征二(2004)「日本における伐採木材のマテリアルフロー・炭素フローデータブック」、地球環境研究センター、国立環境研究所(地球環境研究センターのHP解説ページ ダウンロード元)
(過去40年間の伐採木材の木製製品、紙製品、埋立地中廃棄物等としてのストックの経年変化を推定しています)
Sandra Brown, Bo Lim and Bernhard Schlamadinger(1998)"Evaluating Approaches for Estimating Net Emissions of Carbon Dioxide from
Forest Harvesting and Wood Products (森林伐採および木材製品から排出される二酸化炭素の純排出量の推計に関する評価手法」の報告書(英文))(三つの手法が提案されたオリジナル報告書)
条約事務局(2003)Estimaton Peporting and Accounting of Harvested Wood Products (FCCC/TP/2003/7) (伐採木材製品の今回の会合のベースとなった技術報告書)(今会合で使われたプレゼンテーション用のソフト)
今会合に関する条約事務局のHP
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