生物多様性条約最近の達成状況と森林ーGlobal Biodiversity Outlook 5(2020/10/10)

9月15日生物多様性条約の進捗状況をしめす報告書、地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)(以下の報告書といいます)が公表されました。

GLOBAL BIODIVERSITY OUTLOOK 5(条約事務局サイト)
地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)の公表について(環境省)

10年前名古屋で開催されたCOP10決定された、生物多様性戦略計画2011-2020及び愛知目標のとりあえずの目標年次が2020年で、その達成状況を目標年度で評価し、次のステップを検討する大切な報告書です。

森林に関する生物多様性の評価はどうなっているのか。概要を示します。

右の図が報告書の愛知目標の達成状況を総括した図です(環境省作成)。

愛知目標で4つの戦略目標と20の目標が設定されていますが、黄色が部分的に達成した目標、赤が未達成目標です。

(森林を含む自然生息地の保全は?)

愛知目標5 「2020 年までに、森林(1)を含む自然生息地(2)の損失の速度が少なくとも半減し、また可能な場合にはゼロに近づき、また、それらの生息地の劣化と分断が顕著に減少する(3)。」の達成状況は、左のようなポンチ絵が掲載してあり(1)森林の生息地natural habitats in forest)の保全については、「進捗したが未達成」(黄)、その他の生息地の保全は「大きな変化はない」(赤)、そして、(3)生息地の劣化と分断が顕著に減少するは「達成から遠ざかる方向(紫)なんだそうです。]
三つの中で森林の保全はよい方。

以下のような説明があります

最近の森林破壊のスピードは過去10 年間より減速しているものの、その減速率は3 分の1程度にすぎないほか、一部の地域では森林減少が再加速している可能性がある。特に熱帯地域の最も生物多様性に富む生態系では、森林や他の生物圏における生息地の損失、劣化及び断片化は依然として高い状態にある。原生地域及び世界の湿地は減少し続けている。河川の分断も淡水域の生物多様性にとって重大な脅威となっているままである。
本目標は未達成(信頼性:高)

右の図は報告書に掲載されていた地域ごとの毎年の森林の拡大と消失とする図です。真ん中から上が拡大、下が消失、左から、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北中米、南米、合計です(Fig5.1)

(持続可能な林業は?)

愛知目標7は「2020 年までに、農業(1)、養殖業(2)、林業(3) が行われる地域が、生物多様性の保全を確保するよう持続的に管理される。」

こちらの方は、三つとも進捗あるが未達成(黄)。以下のような解説が。

「近年の農業従事者主導によるアグロエコロジーのアプローチ等により、持続可能な農業、林業及び水産養殖業を推進するための努力は大きく拡大。高い水準ではあるが、肥料及び農薬の使用は世界的に安定している。こうした進捗にもかかわらず、食料や木材の生産景観における生物多様性は低下し続けており、食料及び農業生産は引き続き世界的な生物多様性損失の主要な要因となっている。
本目標は未達成(信頼性:高)。」

色々努力はしているが、生物多様性の保全を確保するよう持続的に管理はされていない、ということですね。報告書本文の当該部分の林業関係は以下の記述があがありました。(66-68ページ原文は英文藤原訳)

With regard to the sustainable management of forests, actions noted in the sixth national reports include the decentralization of forest management, improving forest governance frameworks and capacity-building, promoting restoration, encouraging forest certification, and updating and reviewing forestry licences. Some reports also note actions related to compensating or incentivizing landowners not to cut forests, and to promote silvicultural practices that also help with poverty alleviation.

Countries have provided comprehensive information on the status of forests as part of FAO’s Forest Resources Assessment (see also Aichi Target 5).20
Globally, about 1.15 billion hectares of forest is managed primarily for the production of wood and non-wood forest products, a relatively stable area since 1990. In addition, a decreasing amount, now about 750 million hectares, is designated for multiple use.

The area of forest under long-term management plans has increased significantly to an estimated 2.05 billion hectares in 2020, equivalent to 54% of the forest area, an increase of around 10% since 2010.21
The area of forestry certified under the Forest Stewardship Council (FSC) or the Programme for the Endorsement of Forest Certification (PEFC) schemes has increased significantly within the last decade (by 28.5% during 2010-2019). This indicates a growing proportion of timber production for which there is third party verification of responsible forest management with regard to biodiversity conservation, as well as social, economic, cultural and ethical dimensions.23

Despite these advances, overall, biodiversity in forests continue to decline.24
 森林の持続可能な管理に関して、第6回各国報告書に記載されている行動には、森林管理の分散化、森林ガバナンスの枠組みと能力開発の改善、回復の促進、森林認証の奨励、林業ライセンスの更新と見直しが含まれている。
いくつかの報告はまた、森林を伐採しないように土地所有者を補償または奨励し、貧困緩和にも役立つ造林慣行を促進することに関連する行動に言及している。

各国は、FAOの森林資源評価の一環として、森林の状況に関する包括的な情報を提供している(愛知県の目標5も参照)。
世界では、約11.5億ヘクタールの森林が主に木材および非木材林産物の生産のために管理されており、(この面積は)1990年以来比較的安定している。さらに、現在約7億5,000万ヘクタールの減少量が、複数の用途ににより生じている。

長期管理計画が作成されている森林面積は、2020年には推定20.5億ヘクタールに大幅に増加し、森林面積の54%に相当し、2010年から約10%増加してる。21
森林管理協議会(FSC)または森林認証プログラム(PEFC)スキームの下で認証された林業の面積は、過去10年間で大幅に増加した(2010〜2019年の間に28.5%増加)。これは、生物多様性の保全、ならびに社会的、経済的、文化的、倫理的側面に関して責任ある森林管理の第三者検証が行われている木材生産の割合が増加していることを示している23

これらの進歩にもかかわらず、全体として、森林の生物多様性は低下し続けている24
 21. Globally Important Agricultural Heritage Systems. http://www.fao.org/giahs/en
22. Taken from Figure 4.3 of FAO. 2019. The State of the World’s Biodiversity for Food and Agriculture, J. Bélanger & D. Pilling (eds.).FAO Commission on Genetic Resources for Food and AgricultureAssessments. Rome. 572 pp. http://www.fao.org/3/CA3129EN/CA3129EN.pdf.
23. IPBES (2019): Global assessment report on biodiversity and ecosystem services of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services. E. S. Brondizio, J. Settele, S. Díaz, and H. T. Ngo (editors). IPBES secretariat, Bonn, Germany; Biodiversity Indicators Partnership (2020). Area of forest under sustainable management: total FSC and PEFC forest management certification. https://www.bipindicators.net/indicators/ area-of-forest-under-sustainable-management-certification
24. FAO. 2020. The State of World Fisheries and Aquaculture 2020. Sustainability in action. Rome. https://doi.org/10.4060/ca9229en

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