現代日本とヨーロッパにおける林業と森林管理問題(2020/1/15)

少し昔のことになって済みません。

昨年11月9日上智大学で開催された、「現代日本とヨーロッパにおける林業と森林管理問題ー森林経済学によるアプローチ」と題するシンポジウムに出席しました。

当面の利害関係者である業界関係者向けでない、上智大学のSophia Open Research Week Symposiumというシリーズイベントの中で語られた現代日本林業と森林管理問題。

プログラムは以下の通りで、フィンランド大学のOlli Tahvonen 教授の基調講演が、現代ヨーロッパにおける林業・森林管理問題の森林経済学によるアプローチとした部分で、続いて講演された日本人の3人の話が、それを背景とした現代日本における林業森林管理問題。

フルに出席することができなかったので、すべての方から講演資料のデータをお送り頂き(ありがとうございました)、確認・勉強をし直しました。

基調講演については、おってご報告しますが、今回は国内林業政策の最前線の3本の講演を紹介します。

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開会の挨拶
堀江 哲也(上智大学経済学部 准教授)
司会 長谷部 拓也(上智大学国際教養学部 准教授)
基調講演
Olli Tahvonen (Professor, Economic-ecological optimization group, University of Helsinki) Economics of forestry, climate change and biodiversity
講演
転換期を迎える日本の林業~22世紀に森林資源をつなぐことができるか
三重野 裕通(林野庁経営課 課長補佐)
集約管理による小規模森林経営の展望
堀澤 正彦(北信州森林組合 業務課長)
1990年代以降の諸外国における林業の動向と日本の林産物市場への影響
立花 敏(筑波大学生命環境系 准教授)
パネルディスカッション
日本の森林資源管理と林業の課題解決に向けての新たな提案


(転換期を迎える日本の林業~22世紀に森林資源をつなぐことができるか)

 

林野庁経営課三重野裕通総括課長補佐



(転換期を迎える日本の林業~22世紀に森林資源をつなぐことができるか)pdf

目次

第1部 森と木 木と暮らし そのつながり
第2部 日本の林業現在の到達点
第3部 エコロジー(再造林)はエコノミーにつながりうるか
第4部 これを支える政策の動き

―――

色んな意味で転換期なのですが、特にサブタイトル「22世紀に森林資源をつなぐことができるか」が重要。こういうタイトルで林野庁の政策担当者の話がきけるというのは(業界関係者の集まりでない)学術的なイベントの楽しみ。

 話のほとんどは「第三部エコロジー(再造林)はエコノミーにつながるか?」

再造林の話は地域によっては、これからの課題だが宮崎勤務した経験からの今日の課題。

(デメリット)      (対応策)

・コストがかかるーーー>疎植+一貫作業等、下刈省力化により収支改善

・管理が必要ーーー>疎植により管理手間の少ない森林を造成伐採時の境界確認強化

・財産承継者が不明ーーー>経営管理制度の活用

・災害を受ける可能性ーーー>森林保険制度の活用

・無断伐採される可能性ーーー>合法木材流通対策を推進し透明性を確保

 担い手不足時代に適応した再造林の仕組みを作り・コスト面の競争力を高めることにより、日本をNZ、チリに並ぶ世界有数の暖温帯林業地帯して再生したい!!


(集約管理による小規模森林経営の展望)

北信州森林組合堀澤正彦事業課長

 (集約管理による小規模森林経営の展望)pdf

目次

北信州森林組合の概要
北信州森林組合の取り組み
あらたな森林管理スキームへ
おわりに

―――

「小規模分散型の私有林が多く、所有規模の問題が森林利活用の足かせになっている」典型的な私有林地帯

地域集約による受託管理や、情報インフラ整備を実施してきた

 新たな森林管理スキームは二つの流れ。①森林信託など所有権と経営権の分離を推進をはじめとした徹底的なマーケットの活用と②それができないところはESG(環境への支払)をベースとした環境林へ移行

森林経営管理制度が創設され、自治体が森林管理権の集積を行う動きもあるが、弱体化した地方林務行政では荷が重く、手に負えないという自治体も少なくない。ので、民間(産業)イニシアチブで積極的に集約管理(経営主体の転換)を進めるべき

森林組合というある種の公的組織の関係者が、ビジネスのイニシアティブを語ったこと印象的でした

 


(1990年代以降の諸外国における林業の動向と日本の林産物市場への影響)

 

筑波大学立花敏准教授

 (1990年代以降の諸外国における林業の動向と日本の林産物市場への影響)pdf

目次

⾃⼰紹介・講演のねらい
・持続可能な森林管理と材利
・諸外国の森林管理
本を主とする林産物貿易の
・需要から本の森林経営(林業)の

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最後は林政審議会副会長筑波大学立花敏准教授

グローバルなバックグランドのも含めた森林の課題はなにか①世界の森林⾯積の減少と⽊材消費量が増加しているので、②如何に化石燃料や枯渇性資源の消費を減らすか、③如何に再生可能な森林の管理と木材の利用を促すかが課題

NZでは、長い時間かけて生産性の向上がはかられ、ヘクタール当たり育林費が、日本の10分の一、米国では連邦有林や州有林が自然保護問題から木材生産から離れ、民有林の針葉樹人工林が木材の中心をほとんど担う、線引きの世界

それで、日本では、

きな向性

n柱取り林業から次のステージへ(無垢の製材品の需要拡は限定的)⇒植栽や下刈りを含む施業そのものの変・多様化
n林業適地の検討⇒ゾーニング
n所有と経営の分離⇒投資の促進
n⽴⽊価格を如何にめる

(産官学三者がかたる未来の林業)

大きな木材社会の到来を展望して、22世紀に森林資源をつなぐことができるか?

もう少し具体的な展望が語られると良かったかもしれませんが、①環境林と生産林の線引き、②環境林に対する公的な管理の徹底と、③生産林に対する市場の力の展開。そんな方向で進んでいる先進国と、少し違う日本の現状。違いは何で生じたか?それをふまえて行く道は、三人とも同じような方向を示唆されていたと思います。

kokunai6-52<sophia ringyo>  

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