気候変動対策の国際的枠組みと農林土地利用の役割ー静岡県食品産業の技術研究会で(2024/10/1)

9月26日、静岡市内で開催されたある会合で、、「気候温暖化対策の国際的枠組みと農林業土地利用の役割-COP28とIPCC最新報告を踏まえて」という演題で、話をさせていただく機会がありました。

会合の名前は「第14回シーズ&ニーズビジネスマッチング研究発表会-DX,GX 推進による食品・生物産業の創出-静岡県食品技術研究会第281回例会、静岡大学食品・生物産業創出拠点第62回研究会」

実施主体は主催:静岡県食品技術研究会,静岡大学食品・生物産業創出拠点 共催:静岡県工業技術研究所
後援:公益財団法人 静岡県産業振興財団静岡大学グリーン科学技術研究所

勉強部屋ニュースの読者でもある知人から御案内をうけ、静岡県の食品産業のビジネス関係者と研究者、静岡大学の学生などが集まる会合で、気候変動問題をお話する機会!!

大変充実した実りのある会合だったので(私にとっては。100名ほど集まられた出席者にとってはどうだったかはわからない?面がありますが・・・)ご報告します。

((基調講演のプレゼン内容ー農林土地利用と気候変動))

1時間いただいた時間で以下のような話をさせていただきました

1 気候変動枠組み条約と私たち
◦ 気候変動問題とは何か?
◦ 気候変動枠組み条約の経緯と仕組み
◦ 農業土地利用問題と気候変動問題
2IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書で提起されている問題
3気候変動枠組み条約締約国会合(COP28)で提起されている問題
3おわりに(気候変動に対処するうえでの農業土地利用の位置づけ)

(気候変動枠組み条約と私たち)

気候変動問題は私たちにとって大問題、ということをインパクトのあった(循環社会: 一枚のグラフの説得力 )左図をつかって、説明したあと・・・

GHG排出量の推移を、右の図で、説明しました。

GHGをガスの区分によって見てみると、

二酸化炭素化石資源由来が65パーセント、森林減少など土地由来が10パーセント、メタン({CH4)が16パーセント(農業由来がそのうち77%)、亜酸化窒素(ON2)4パーセント(農業由来がそのうち44%)(以上右図上)。(2010年)

最近の推移を2010年から2019年をみると、全体としてGHG排出量は増えているが増え方は減っている。が、増え方が減っているのは化石資源由来のCO2で、土地由来のCO2は増え方は減っていない。(以上右図の下)

気候変動枠組み条約の仕組み:

左の図にあるように、1992年に条約ができました。実施輪組として1997年に京都議定書、2015年にパリ協定ができました。

その間に大変なのは、先進国と途上国の関係性。パリ協定によって初めて、途上国の対応。

パリ協定になって初めて、途上国も削減目標をもつことに。


各国の目標:各国は、約束(削減目標)を作成・提出・維持する(NDCs)。削減目標の目的を達成するための国内対策をとる。削減目標は、5年毎に提出・更新し、従来より前進を示す。

グローバル・ストックテイク(世界全体での棚卸ろし):5年毎に全体進捗を評価するため、協定の実施を定期的に確認する。世界全体の実施状況の確認結果は、各国の行動及び支援を更新する際の情報となる。

以上が背景説明ですね

(農業土地利用問題と気候変動問題)

世界で農林土地利用は全排出量の23%ですが、日本では4%

地球温暖化対策計画が21年に変更になりましたが農林水産業の位置づけは、左図の通り。

農業分野における気候変動・地球温暖化対策について農産局農業環境対策課2024/1)からピックアップして説明

施設園芸・農業機械の温室効果ガス排出削減対策(・施設園芸における省エネ設備の導入・省エネ農機の普及)

農地土壌に係る温室効果ガス削減対策(・中干し期間の延長等による水田からのメタンの削減・施肥の適正化による一酸化二窒素の削減)

もちろん、森林吸収源探索も(・間伐の適切な実施や、エリートツリー等を活用した再造林等の森林整備の推進・建築物の木造化等による木材利用の拡大 等)

ーーー
(IPCCの最近の動向ーIPCC第6次報告書で提起されている問題)

・・・・

実施されている政策に基づいて予測される排出量と、NDCsから予測される排出量の間にはギャップがあり、(赤い線と青い線の関係)

資金フローは、全ての部門及び地域にわたって、気候変動目標の達成に必要な水準に達していない(確信度が高い)。(青い線の2030年の下向きの急降下が必要!!)

(AR6 SYR
SPM A.4)

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右の図は、IPCC第6次報告書に記載されている、図です

2030年に利用可能な排出削減技術のこつとと削減ポテンシャル

6つのカテゴリーに分けて使える技術が45ほど並んでいて。それぞれのコスト(青色から濃赤まで)と横長のポテンシャル(削減の可能性)が一枚の表に

前使った表を農業もいれて加筆

ポテンシャルの大きな5の技術のうち、2つは風力発電、と太陽光発電のエネルギー分野だが、後の3つは農林土地利用分野!!
①農地における炭素隔離(農地のCO2吸収・排出削減)、②森林などの他用途転換の抑制、➂森林などの復元

すくなくとも、30年まで、50年までの初期前期段階では農林土地利用は重要な決定的に重要な要素!!

(COP28の最新情報ーCOP28農林土地利用に関連して提起されている問題)

左の図はCOP28で何が決まったかを示した図です。(環境省202412:国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要(スライド版)から)

5年に1度の現状評価文書(GST)採択:世界全体で再エネ発電3倍、省エネ改善率2倍これに基づき、各国は2025年までに次期NDCs(目標年次2035年)を各国が提出

資金問題が前進、ロス&ダメージ(温暖化による干ばつ洪水海面上昇・・途上国への支援基金制度)の合意
気候基金の具体化プロセスなど少し前進

など

(COP28における食料システム農業に関する首脳宣言)

COP28で重要な内容が!!

日本を含む150か国以上が参加して、食料システム農業に関する首脳宣言(エミュレーツ宣言)

食料・農業分野の持続可能な発展と気候変動対応に向けた迅速な変革に向け、2025年までに以下の行動を強化。が目的て

5つの行動分野

① COP30(2025年)までに各国の国家適応計画等へ食料システム・農業を統合
②食品ロス・生態系の損失・温室効果ガス排出の削減、所得・生産性の向上等に向けた公的支援の再検討
③民間を含む、あらゆる形態の資源動員の拡大
④持続可能な生産性の向上を目指した科学・証拠に基づくイノベーションの推進
⑤ WTOルールに基づく公平で透明性の高い多国間貿易システムの推進

農林水産省のサイトにフルテキストも含めて掲載されています

(おわりにー気候変動対宅に対応するうえでの農林土地利用の役割)

・世界のGHG排出量の中で、農業、林業、その他の土地利用(AFOLU)は全体の1/4を占める
 AFOLUは気候変動緩和・適応双方にとって、重要な役割をもっている
 AFOLUの気候変動に対策に関して国際的な枠組みもでき(持続可能な農業・強靭な食料システム・気候変動対応に関する首脳級宣言)条件は整ってきた
 大気の温室効果ガス地球史のなかでも土地利用は主役を果たしてきたので再び主役に!!

以上が50分ぐらいに基調講演の中身でした

あとで以下のような質疑が・・・

問  答え
 地球温暖化係数として、メタンは二酸化炭素の約25倍となっております。従って、最近、畜産業で産出するメタンガスを燃料に用いること、例えばボイラー用に用することは
メタンを燃やして二酸化炭素に変換されますので温暖化防止策として有効な方法と考えて良いでしょうか?
 メタンをもやして、二酸化炭素で排出
どちらもGHGでうが、おっしゃるように有効な地球温暖化対策だと思います
 第6次IPCC 報告書によると、現状のままでは平均気温2℃以下の上昇に抑えるとは困難とされております。もし、このまま温暖化が進むとすると何度まで上昇する可能性がありますか?
また、その時に予想される環境の変化はどのような状況が想定されるでしょうか?
 IPCCの報告書でも4度まであがるという可能性が記載されているので、今程度のことをやっていったら、4度ぐらい上がってしますことになるでしょう。
   

以上が、私の報告の概要です

プレゼン資料をこちら静岡県食品技術研究会20240926報告(藤原)においておきます

(第14回シーズ&ニーズビジネスマッチング研究発表会・静岡県食品技術研究会第281回例会、静岡大学食品・生物産業創出拠点第62回研究会とは)

さて、この会合全体がなんなのか?ということはそのご、プログラムをきいていて、いろんなことがわかってきました。

その全体像をおしらせすることはできないのですが

(会議の全体プログラムー全体講演2つ)

 演題  講演者 主たるメッセージ   ネット上の関連情報
 講演①
「食品・化粧品産業のエビデンス取得サポート事例について」
 同志社大学大学院 生命医科学研究科、アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター教授 米井嘉一 氏  アンチエイジング(老化防止)のための酸化ストレス・糖化ストレスのメカニズムなど
化粧品産業・食品産業への具体的な提言
 老化を促進させる「糖化」から身を守る糖質の適切な摂り方
 講演②
「2050カーボンニュートラル脱炭素経営を進めるために」
 公益財団法人静岡県産業振興財団、企業脱炭素支援センター 業務アドバイザー 竹島寿夫 氏  脱炭素経営に向けて、攻めの経営姿勢を  ゼロからわかる脱炭素化に向けた普及啓発セミナー

(会議の全体プログラムー企業紹介)

以下の会社(ごめんなさし名刺交換させていただいた会社の方だけです)の方(研究部門の方が中心)が企業紹介をしました(1社5分づく)

日本食品化工株式会社/ 株式会社ニッセー/ 株式会社いちまる/ 株式会社カルナーカルシン/ 西光エンジニアリング株式会社/ 鳥居食品株式会社/

大企業でなく、BtoBの事業展開をされている会社なので、自社がどんなビジネスをしているか?を中心としたプレゼンでした。

こうやって、食品産業関連者(農産物を原料とした?)が健康食品だとか化粧品だとかの商品生産販売事業者とビジネスネットワークを広げている場なんだ・・・木材産業のビジネスの広がりとは大違い

私が誤解していたように「自分の会社が環境パフォーマンスがすごいんですよー」といったプレゼン内容ではありませんでした(勘違い)

(イベントに出席してー今後の期待)

静岡の食品関連ビジネス関係者のネットワーク活動の素晴らしい活動や、木材産業との違いなどを垣間見させていただきました

お役に立てたかどうかよくわかりませんンが、・・・・

地球環境問題に関連した食品ビジネスの関係性について、原料の供給(ゼロデフォレステーション・先住民・・・)のトレーサビリティとか、供給農業関係者の温暖化問題への真剣な取組の見える化(工場敷地の緑地の吸収量等も含めて)など、いろいろな今後の取組の可能性を感じました

森林のガバナンスと食品産業のかなどのとコミュニケーションが広がってゆけばよいなーと思いました

ーーーー
以上です

kokunai4-67<ondankaagri>

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