循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向ー「農村と都市をむずぶ」誌寄稿(2017/9/30)

農村と都市をむすぶという雑誌(全農林労働組合発行)に、標記論考が掲載されました。

木材の自給率の回復傾向が定着してきた状況が、「農業の自給率向上にとって、何らかの示唆がえられるのでないか」というのが、筆者に編集部から声をかけていただいた趣旨。

編集部の了解をえて、こちらにpdfファイルを置きます

目次とイントロは以下のとおり

循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向
ウッドマイルズフォーラム 藤原敬

1 はじめに
 2015(平成27)年度森林・林業白書(以下27白書という)は、2014年の木材自給率が30%を上回ったことを受けて、「国産材の安定供給体制の構築に向けて」という特集を行っている。木材の自給率の回復傾向が定着してきた状況が、「農業の自給率向上にとって、何らかの示唆がえられるのでないか」というのが、筆者に編集部から声をかけていただいた趣旨だった。
筆者はもと林野庁の行政官、全国木材組合連合会のマネジメントの一端に携わりながら、ウッドマイルズフォーラムという団体 を立ち上げて、木材・地域材の環境貢献度を評価する試みを建築関係者などと進めてきた。地域材の利用が進み自給率が拡大することは好ましいことだが、最近の木材自給率の向上や関連する施策に検討すべき課題があると考えている。
27白書の自給率を巡る記述に基づいて、自給率の動向とその背景、関連する施策の動向を紹介しながら、市場に対応する国産材の可能性とリスク、木材・地域材の消費者への普及の課題などを検討したい。農業分野の自給率に関する議論の進展に資すことができれば幸いである。

2 木材の自給率の動向と国産材の安定供給体制の構築に向けて施策
(1)木材の需要と供給
(2)国産材の安定供給体制の構築に向けた施策

3 国産材時代の安定化のための課題
(1)木材の地域材の環境貢献度の見える化への取組
(2)サプライチェーンを管理するコストと国産材・地域材

4 おわりに
グローバル化する木材の流通のかなで、日本の国産材が自給率を伸ばしている背景には、国産材の流通過程が国際競争の真っただ中に入っており、市場競争力を高めるための施策と、資源管理にかかる供給側の施策が展開されていることを紹介してきた。しかしながら、ローカルな資材を持続的・循環的に利用していくためには、ローカルな商品の環境貢献という視点で需要者にアプローチすることの必要性あり、ウッドマイルズフォーラムの活動の一端を紹介した。グローバル化の問題はその他に、輸送過程の環境負荷など重要な視点があり、化石燃料にたよる輸送機関が排出する温暖化ガスへの課税など、木材にかかわらず農産物を含む様々国際商品について、環境的側面からさらなる重要な課題があるだろう。

kokunai6-44<nousontotoshi>
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