森林環境税フルスタートを前にした森林環境譲与税に係る所要の見直しの検討(2023/10/12) |
総務省のウェブサイトに平成6年度税制改正要望というページがあり8月下旬に各省庁から提出された地方税に関する改正要望のリストが掲載されいますが、農林水産省からの要望リストに、「森林吸収源対策を一層推進するための森林環境譲与税に係る所要の見直しの検討」という要望の内容が掲載されています。
森林環境税が来年度から国民に課税されます(左の図)。準備期間が終わって来年度からフルスタート
手入れの行き届いていない森林について、市町村が森林所有者から経営管理の委託(経営管理権の設定)を受け対処する、森林経営管理法(2017年)にもとづく森林経営管理制度制度。その、市町村の負担に対応して2019年にできた、森林環境税と森林環境譲与税の、市町村への配分方法の変更が検討されています。
(環境譲与税に関する見直し作業概要) 総務省への要望書の「要望内容の概要」という欄に以下の記載があります。 「令和元年度からの譲与開始以降、各地方公共団体において、地域の実情に応じ森林環境譲与税を活用した取組が進展しつつある中で、私有林人工林を多く抱える地方公共団体においては、森林整備に想定以上に経費がかかっていること等を踏まえ、都市部等における木材利用の取組に配慮しつつ、森林整備をより一層推進する観点から、令和6年度からの森林環境譲与税の譲与額の増加に併せて、私有林人工林面積による配分の割合を高めるよう譲与基準の見直しを要望する。 関係条文 森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律 第28条第1項、第29条」 (関心の広がり) マスコミでもこのテーマでの取材にもとづく、発信がされています。 1人1000円取られる税金なのに活用されない!?NHK政治マガジン(2022/11/24)森林環境税とは? 創設の背景や問題点、税金の活用事例を解説(朝日新聞デジタル2023/9/8) 右の図は、林野庁のサイトの掲載情報から、配布された譲与税の使われ方をみたものですが、R3年度に市町村に配布された340億円の譲与税でつかわれたのは217億円、35%が使われずに基金に積まれています。 右の下は、基金につんでいる市町村を私有林人工林が多い市町村と、少ない市町村(都市の市町村が多い)にわけて、表示したもので、後者がたくさん基金に積んでいます。 上記のNHKの記事作成過程で取材された、東京のある区役所の担当者は、「都市部なので、林業に対する考えが及んでないというか、よくわかりません。特定の事業に使う想定はありません」と正直に答えています。 いよいよ来年度から住民税の中で誰にも一律に森林環境税が1000円課税される、という中で、その使い道が、特に都市部の自治体で使い道が不明であり、積立金になっている、という議論は重要なポイントになっています。 (学会関係者での議論) 少しコミュニケーションがある、現代総有研究所で、関係情報を聞きたいという話があり、最近少し話をする機会がありました。 20分ほど時間をいただき、「森林の管理とその財源-森林環境譲与税の配分変更問題」というタイトルで話をしました、(こちらにプレゼン資料) 森林管理法と森林環境税森林環境譲与税の仕組みをはなして、最後に左の説明をしました。 1 配分基準への問題 配分基準の3割が人口なので、都市に多く配分される これが問題だとして政府内部で議論がはじまるので、森林地域に配分を増やすチャンスだとしたらーーー 政府の議論は農林水産省からの要望のタイトルが「森林吸収源対策を一層推進するための」となっているように「「気候変動に対応した 森林吸収源対策」に集中しています。その他に、国民に納得される森林の多面的機能を根拠にした議論の展開が必要ではないでしょうか。 また、都市住民にたくさん配分されていることは、都市住民が森林を自分のことと考えるチャンスでもあるはずですーーー 木材利用とかJクレジットなどを利用して ある農山村の森林とある都市自治体ががつながるストーリーが必要となってくるのでしょう 2 森林ガバナンスの課題 森林の所有と森林の多面的機能 森林は、国土の保全、水源の涵養、保健レクリエーション、地球温暖化の防止、物質生産(木材生産など)、生物多様性の保全、快適環境形成、文化など多面的機能をも持っています(森林機能一覧表)。 日本の森林は58%が私有林 森林機能が私的収益の根拠となるのは木材生産機能、レクリエーション機能などであるが、木材生産機能の収益性が低下して、私的所有権を背景とした、管理義務の施行が困難な状況 公的管理の仕組みと実現のための財源が必要となっています 私有林への公的資金と成長産業、私企業の経営体が管理する森林と管理できない森林の線引き・・・たくさん課題があります ーーー以上、森林分野が専門でない私的所有物のガバナン論を議論されている研究者への説明終了 質疑の中で、現代総有研究所のメンバーは保安林制度、先行していた森林税などの取組にかかわった方もいて、具体的な議論もできました。 また、特に森林経営管理法で市町村を通じた、ガバナンスの次の段階がどのように行われるようになるのか具体的成果を聞きたいと、関心が示されました。 (フルスタートが始まる大切な時点) 林野庁のサイトにも、関連情報が結構たくさん掲載されている(森林環境譲与税の取組状況、森林環境譲与税に関する広報・情報提供(森林環境譲与税を活用した都市・山村連携に関するアンケート調査・・)・・)ので、もう少し勉強して議論を深める必要を再認識しました。 このサイトでも、出発点から問題意識をもっていたテーマです。徹底討論:林政の新展開を問う」林業経済学会が問うたもの(2019/12/15) いよいよ準備期間がおわって、来年からフルスタートフルスタート(森林環境税の課税が始まる) 今後、しっかりフォローしていきます kokunai14-11<joyohaibun> |
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