徹底討論:林政の新展開を問う」林業経済学会が問うたもの(2019/12/15)

11月25日林業経済学会大会3日目に開催された、標記シンポジウムに出席しました。

09:00-09: 10 開会挨拶(土屋俊幸氏・東京農工大学)
09: 10- 09:30第1報告(柿澤宏昭氏・北海道大学)
「森林環境譲与税と森林経営管理法に関する批判的コメント・疑問」
09:30-09:50 第2報告(本郷浩二氏・林野庁)
「森林経営管理制度の取組状況について」
09;50-10: 10 第3報告(枚田邦宏氏・鹿児島大学)
「市町村アンケート調査結果からみた森林経営管理法への対応」 

森林林業政策の担当官庁の責任者林野庁長官が関係学会とホットな話題で議論。前日に三菱総研小宮山理事長の補助金が森林整備の企業活動をスポイル発言も気になり。

テーマは森林環境譲与税、森林経営管理制度。林業経済学会ではこの準備で、林業経済学会の研究ボックス「新たな森林管理システム」をみなで考える など準備を重ねてきました。

森林経営管理制度とはなにか?左の図は本郷長官の示したスライド(林野庁作成)の1枚目です。

森林所有者が関心を失い経営管理が行われていない森林のうち、林業経営に適さない森林は市町村が、適した森林は意欲と能力のある事業者に経営委託するというのです。

半分の市町村で公有林化に関する問い合わせが始まっている(枚田報告)、700社を越える事業体がノミネートされている(本郷報告)など、所有と経営の分離という大胆な施策が進みそうというところですが、本当動くのか?目的通りのものになるのか?目的が明らかでないので、よく分からない(柿沢報告)?

まだまだ、今後の課題がたくさん、ということのようです。

(施策の経緯と目的)

鼎談のなかで、本郷長官は施策の目的がわかりにくい、という質問に答えて、以下のように答えていました。

「(心配される)所有権移転話は、霞ヶ関では農地とか、空き家とか先行事例があって、そんな大きなハードルはなかった。

前提となる森林譲与税の使い道について、少しわかりにくくなっているが。経緯をはなすと、林野庁の施策にしたかった(林野庁の森林整備予算財源となる)温暖化対策税が、経済界が反対でどうしても実現せず。温暖化対策税は木材利用につかうことになり、あきらめていたところに、総務省から、「こんなの」でどうか?と、森林環境税が林野庁施策とはちがうものに使うようになった。ほったらかしになっていた森林に、焦点をあてた使い道に。それで、補助金が使えない分野に、といって制度の設計をしていたが、最後の段階で、市町村が使いたいことに何でもつかえるように、ということになった。若干の混乱あり。

わかりにくくなっているのは確かだが。成長産業化のためにも使える。天然林にも使える。・・・」(ごめんなさい、よく確認して下さい)

(少し心配な点)

成長産業化に環境譲与税が使われるとして、その、前提となるのが市町村が決定する、「この森林は林業に適しますという」線引きということになります。

保安林と別の線引きが、市町村によって行われる。どんな方向になるのだろうか。そして、林業に適しているというところに経営を委託された意欲と能力のある事業体が、前提とする、現在の補助金はどうなるのだろうか。成長産業に国が補助する理屈は何か?小宮山理事長のいった、「補助金が企業のマインドをスポイル」ということがば、気になります。

終わりに、フロアからの発言の機会があったので、ひと言言わせていただきました。

「所有と経営の分離は大切です。昨日地球システム・倫理学会のシンポジウムで将来のプラチナ社会に中での森林の在り方について基調講演を聴きました。すべて話すことはできないが、補助金が企業の動きをスポイルしているという話がでました。森林環境を保全するためにしっかり補助金が出る必要があるし、もっとたくさん必要だろう。ただ、成長産業の基盤への補助金はつけられるのかという問題がある。いずれにしても、補助金の理屈の議論をすすめるためにも、線引きが必要だろう。その意味で、市町村がとりくんでいる、今回の線引きは重要で、それを出発点として議論を発展させてほしい。」

kokunai14-9<gakkaisympo2019> 

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