花粉と森林ー森林林業白書特集と持続可能な森林への道筋(2024/6/30) | |
6月上旬に公表されたばかりの令和5年森林森林・林業白書の説明を林野庁担当者から聞く会が、日本林政ジャーナリストの会で6月12日に開催されたので、出席しました。 森林・林業白書についてはネット上に詳しいサイトがあり、令和5年度 森林・林業白書(令和6年6月4日公表)、以下のデータがダウンロードできる丁寧なページがあります(全文、概要版、参考資料、紹介された事例)。 左が目次です。 今年の白書の特集は花粉と森林。 岸田首相の肝いりの取組ということもあるですが、今のタイミングで、「人と森林のより調和した関係を目指す」森林政策を紹介する、わかり易い材料ということで、特集が組まれています。 特集ページを中心に紹介します。 (特集花粉と森林の構成)
「林野庁ではこんなことやっていますよー」というセクション3はわかるとして、セクション1と2(の前半)の歴史的経緯はけっこうインパクトがあり、セクション4の結論部分も特集をなぜ組んだかということがわかる部分です。その辺を中心に内容を紹介します。 (花粉症問題の背景としての日本の森林資源と造成の歴史) 概要版の最初のページ(1)森林資源の利用拡大と造林技術の発達というサブセクションに、以下のような記述があります。 ーーーーー スギやヒノキの林と日本人との関係を考えたとき、日本人が日本列島にくる前から(有史以前)スギやヒノキはには固有種としてそれらの植生は繁茂しており、日本人の生活様式の発展の長い歴史とともに少しづつ林の方も改変発展してきたという歴史があります(という重要なバックグランドの指摘部分です) (顕在化してきたスギなどの花粉症) 以下のような記述があります ーーーー スギ人工林の動向と、花粉症の有病率の関係はよくわかるのですが、長い間、日本人がつきあってきたスギ林ですが、なぜ1964年に花粉症が初めて確認されたのか、あるいは19世紀に欧米で花粉症が社会問題となったのか、分かりづらいところがあります。(ただ、ここは白書の主たるテーマでないのであまり記載されていません) (花粉歯制限対策の加速化と課題) (1)これからの花粉発生源対策 以上の形で記載されています (人と森林のより調和した関係を目指して) 特集の最後のセクションの題名が人と森林のより調和した関係を目指して 花粉症対策が、市民の花粉症への対応という面はもちろんあるんですが、「戦後造成されたスギ人工林は、近年ようやく利用期に入り、新たな森林づくりを進めるタイミング。この機運をとらえ、・・・花粉発生源の着実な減少と林業・木材産業の成長発展のために必要な取組を集中的に実施してきましょーというメッセージが込められているようです。原文を引用します。 ーーーー 森林・林業基本計画においては、森林を適正に管理して、林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させることで、2050年カーボンニュートラルも見据えた豊かな社会経済を実現する「森林・林業・木材産業によるグリーン成長」を掲げている。森林・林業基本計画に基づく施策を着実に進め、花粉の発生による国民生活に対するマイナスの影響を減らすとともに、森林・林業が国民生活を支える上で果たす役割を高めることで、国民が森林や林業、木材利用に親しみを持って積極的に関わり、森林からより多くの恩恵を受けられる社会につなげていくことが可能になる。同時に、社会全体が森林・林業の価値を認め積極的に関わっていくことで、森林もその姿をより望ましいものに変えていくことができる。 このように、長期的な視点を持って、花粉発生源対策を含め国民の多様なニーズに対応した森林を育み、人と森林のより調和した状態を目指すことが求められている。 ーーーー 以上です (皆が森林政策に関心を広げる機会) 個人的なことになりますが、私が小学校(東京都新宿区立)のクラス会などで話をしていると、私(藤原)がなにか霞が関で森林にかかわる仕事をしているということを知っている皆が、花粉症が話題にでてから急に、「戦後スギの人工林を急拡大し市民に花粉症という迷惑をかけたんだから、しっかり対応すように」と私に説教するようになってきました。 私の方も「日本人の日本列島に来る前からスギがあっので、そのような場所で暮らすなら、スギに花粉症が出ないようにするなどといった(スギにとって迷惑なことをするのでなく、)自分たちでその理由を考えるべきなんでないか(大気汚染・食生活などなど)と、防戦をしてきました。 昔は(1960年代より前)はなぜ、(都会ではともかく)スギの産地などで花粉症がなかのかなど分からないことがたくさんありますが、白書の意図のとおり、市民と森林行政がコミュニケーションをする機会を、スギの花粉が与えてくれています。 ーーー kokunai5-5<R5hakusyo> |
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